『第30回共同通信社杯(GII)レポート』 最終日編

配信日:4月29日
 伊東温泉競輪場で開催された第30回共同通信社杯は4月29日、4日間にわたる熱戦に幕を下ろした。強豪ぞろいの決勝戦を制したのは新田祐大。深谷知広を出させなかった稲垣裕之を1コーナーからのまくりで飲み込み、初めて4日制のビッグレースを制した。


加瀬加奈子選手 山原さくら選手 トークショー
獣電戦隊 キョウリュウジャーショー
清水宏保氏 トークショー
ファンの熱い声援が飛ぶ
決勝戦 レース経過
 号砲で深谷知広が飛び出し、正攻法に構える。深谷に岩津裕介-小倉竜二の中四国コンビが付けて前団、稲垣裕之-村上義弘-稲川翔の近畿勢で中団を形成、単騎の平原康多が続き、新田祐大-成田和也の福島コンビが後攻めの形で隊列は落ち着く。
 青板周回の1コーナーから新田が上昇。3コーナーで誘導員を交わして先頭に立つ。すかさずその上を稲垣が叩いて赤板前から先行態勢に入る。単騎の平原が近畿勢を追って4番手、この後ろは新田と深谷で併走になる。稲垣がそのままペースを上げて全開で逃げる中、外併走を嫌った深谷が打鐘から強引に巻き返す。最終ホーム手前で稲川が深谷をブロックすると、深谷マークの岩津は内に斬り込む。さらに車間を空けていた村上のけん制で深谷は後退する。村上の内をすくった岩津が番手に割り込むが、最終1コーナーから車を外に持ち出した新田が前団のもつれを鮮やかなスピードでまくり切った。懸命に続いた成田が2着で福島ワンツー決着。福島コンビに合わせて番手から踏み込んだ岩津が3着に入った。


胴上げ
胴上げ
ゴール
ゴール
表彰式
表彰式
<1R>
石井秀治選手
石井秀治選手
 強気な石井秀治(写真)が最終日にしてようやく1勝を挙げた。レースは目標の岩本俊介が突っ張られたものの、上手く中団を確保すると石井が自力に転じてバックまくりで快勝した。
 「岩本がそのまま押さえて行けばよかったけど、矢口も内を空けて(竹内を)行かせる作戦できたので。でも、上手く中団3番手を取ってくれたし、もう一回チャンスを作ってくれたので。岩本が仕掛けてくれたけど一杯だったんで自分で行かせてもらいました。最終日に勝ててよかったですね」
 竹内雄作は「力がないですね」と肩を落とす。
 「あそこで引いたら後ろになってしまうので。内が空いたし、コースが見えたのでいきました。岩本さんがきて被ってしまうといけないから思い切り踏んだけど、脚がなかった」

<2R>
上原龍選手
上原龍選手
 中団にこだわった上原龍(写真)が上野真吾に合わせてまくり発進。最終日にしてようやく1勝を挙げた。
 「やっとこですね。赤板で雨谷(一樹)くんのラインだけなら下がったけど、後ろに南関勢も来てるの見えたし内にもぐり込んだ。その後は上野(真吾)くんがまくって来たのも見えて併せられたし、落ち着いて走れましたね。先輩のおかげです」
 志村太賀は「よかった。突っ張るとは思わなかったので口が空いた」と上原とのワンツーにホッと胸をなでおろす。

<3R>
松谷秀幸選手
松谷秀幸選手
 郡司浩平が三谷竜生を強引に主導権を握ると、続いた松谷秀幸(写真)が後ろからの反撃に合わせて番手まくりを敢行し、1着を手にした。
 「郡司君のおかげです。あれだけ行ってくれたので。後ろから神山(拓弥)君と三谷君が来たのが見えたんで、あそこで持って行くと後ろから内をすくわれるので、悪いけど前に踏ませてもらいました。ラインが3車なら違ったけど、郡司君の気持ちを汲んで行きました」
 郡司浩平は力を出し切り納得の様子。
 「3日間、思ったとおりのレースができてなかったから、今日は思いきって前に出ようと思ってました。結果は悪かったけど、これで何かが見えれば」

<4R>
片寄雄己選手
片寄雄己選手
 今シリーズ2度目の連係となった静岡コンビ。2次予選とは前後が入れ替わって、最終日は田中孝彦が前で主導権を握ると、2コーナーから片寄雄己(写真)が番手まくり。シリーズ2勝目を挙げた。
 「もっと待ってもよかったけど、山崎(芳仁)君が来るかもしれないし、古性(優作)君もいる。それが怖かった。せっかく行ってもらったのに1着を取らなきゃと思いました。あとは新田(康仁)さんが頑張ってくれれば」
 うまく片寄のまくりに乗る形になった2着の結果にも吉田敏洋は硬い表情。
 「自分の状態がヤバイですね。デビュー以来初めての原因不明の腰痛で、ダービー後は真剣に練習できてない。何とか体を戻さなきゃ」

<5R>
荒井崇博選手
荒井崇博選手
 中団で執拗に蓋をされた脇本雄太は苦しい展開となった。しかし、荒井崇博の援護を受けて5番手単独となった脇本はバックからスパートし、最後は荒井崇博(写真)が追い込んで1着でゴールした。「脇本はじっと我慢してればよかったのに」と話すのは好援護した荒井。小埜が踏み遅れるとすぐに位置を確保し脇本を迎え入れた。その脇本雄太は伸びを欠いて3着となり「2人でやり合ってしまった。(鈴木裕が)押さえていくと思ったけどね。内も空かなかったし」と誤算が重なり、最後は脚が一杯に。
 早坂に乗った菅田壱道が追い込んで2着。
 「中団がもつれてたのが分かったんで、早坂さんも徐々に駆けてくれれば残れると思った。ちょっと早かったですかね。僕も早坂先輩を残せなかった」
 「踏んでいて感じが良かったし、残れると思ったんですけどね」と逃げた早坂秀悟は4着に沈んだ。

<6R>
林雄一選手
林雄一選手
 打鐘前2コーナーで松坂英司が、そして打鐘の2センターで伏見俊昭のブロックにより芦澤大輔が落車するアクシデント。大きく外に膨らんだ伏見に代わって渡邉一成に続いた林雄一(写真)が直線鋭く抜け出した。
 「(伏見が接触して)ガリガリッていってるし、自分が追わないと過度けん制になってしまう。追いついてよかったです。展開が向けば何とかなりそう。中2日の平塚記念にはしっかり疲れを取って臨みたい」
 落車した芦澤を避けて最後方になった宗景祐樹だったが内から4番手に車を上げると、そのままバックからまくって出る。
 「直前にも接触があったし、気をつけないとと思ってました。諦めないのがよかったですね。(内をすくってから)バック踏めないしまくれないけど、へばりついて行こうと思ってた。初日はダメだったけど、何とかまとめられましたね」

<7R>
菅原晃選手
菅原晃選手
 一旦は突っ張られた川村晃司だったが、すぐに巻き返して主導権を握る。すると東口善朋は追走できず、菅原晃(写真)が番手にスイッチする展開に。菅原は池田勇人に飛び付かれたが、これを凌いで1着。シリーズ2勝で締めくくった。
 「まさか池田(勇人)君は突っ張るとは思わなかった。川村さんが押さえた所を自分が叩いて行こうと思ってたんだけど。でも結果的に展開が向きましたね」
 神山雄一郎が菅原をマークする形で2着に入った。
 「池田君が前に踏んで行ってくれたおかげ。今日が一番感じが良かったね」
 川村晃司は懸命に逃げたが、直線で力尽きて4着に終わる。
 「池田君が突っ張る作戦だったですね。引いても位置がなかったし、こうなったら行ける所まで行くしかないと。出切った所で脚が一杯でした。後ろに迷惑をかけてしまいました」

<8R>
原田研太朗選手
原田研太朗選手
 打鐘から内藤秀久がカマす予想外の展開にも動じず原田研太朗(写真)がまくり一閃。敗者戦を3連勝で締めくくった。
 「予想外すぎますね。最近はずっとデキがいい感じだったし、そのまま今回を迎えられた。初日が残念だったけど、3連勝できてよかったです」
 内藤秀久は「(菊地)圭尚さんが内に来たとき、原田も締めるし、金子さんも内に見えた。みんな内に詰まってるし行ったら決まると思った」と奇襲のカマシ先行に出た理由を話した。
 予想外のレースに立ち遅れてしまった金子貴志は不本意な結果でシリーズを終えた。
 「全然動けてないですね。ダービー後に詰めて練習した疲れが出てる。ここからは計画的にやります」

<9R>
浅井康太選手
浅井康太選手
 小川勇介がフカして主導権を握り、番手の吉本卓仁が車間を空けて後ろをけん制。九州の二段駆けかと思われたが、中団を取った浅井康太(写真)が後ろからの反撃に合わせてスパートすると、スピードの違いを見せ付けて快勝した。
 「すんなり(の中団)だったけど、前が全開で行ったんでキツかった。少し反応が遅れたけど、何とかいけました」
 林巨人がきっちりマークして2着を確保した。
 「吉本君が車間を斬ってたんで番手まくりかと。あとは浅井君がどのタイミングで行くかになった。それにしても凄いスピードだった。踏み出しで口が空いたけど、付け切れてよかった。F1ではなかなか体験できないスピードなんで、付いていけて自信になりましたね」
 吉本卓仁は「シビアに出なきゃダメですね」と悔やむ。「僕も先行選手なんで、分かってはいても反応できなかった。浅井君に行かれても、せめて僕が番手から出て(中川)誠一郎さんと形を作らないといけなかった。(小川が)あれだけ行ってくれたのに申し訳かなった」。
 岡田征陽はホーム前から仕掛けたが、浅井の先まくりを喰らい万事休す。
 「もうちょっとだったね。あとちょっとだけ浅井の前に行けていれば、締め込みながらいけたんだけど」

<10R>
牛山貴広選手
牛山貴広選手
 藤木裕が主導権を握ると単騎の磯田旭が番手を奪う。最終バックから南修二が内から番手を奪い返すが、「脚がたまっていた」と話す牛山貴広(写真)がバックまくりで快勝した。
 「磯田君は先行の番手に飛び付くだろうし、後ろに(2車)九州が付いてた松岡(貴久)君も行くんだろうなと。仕掛けたのは外が抜けたバック手前から。(6カ月の自粛前最後のレースで)凡走して終わるより、最後1着でよかったです」
 離れながらも牛山を追った園田匠が2着に入った。
 「牛山君は仕掛けるだろうと思ったし、あおりが終わってから追いかけようと思った。そのままついて行けばよかったですね。今回は調子も問題なかったので昨日がもったいなかった。でも久しぶりに手ごたえのあるグレードレースでした」

<11R>
成田和也選手
成田和也選手
村上義弘選手
村上義弘選手
 決勝戦は稲垣裕之と深谷知広で激しい主導権争いに。稲垣は深谷を出させない気迫の走りを見せたが、脚をためた新田祐大が渾身のまくりで初めて4日制ビッグを制した。2着には成田和也(写真)が続き、福島コンビでワンツーフィニッシュ。
 「みんな普段以上の思いがあったと思うし、負けないくらいの気持ちで臨んだつもり。新田君と2人で気持ちのこもったレースができたと思う。差せなかったけど、自分なりに頑張れたと思う」
 深谷後位からホームで内に切り込んだ岩津裕介が村上義弘をすくって稲垣裕之の番手を奪取。福島コンビに切り替えたが、前2人には届かなかった。
 「深谷には何とか出切ってくれと思ってたけどね。自分としてはあれが精一杯でしたね。責任ある位置でプレッシャーを感じてレースができて、成長できるんじゃ?って手ごたえはありました」
 1コーナーで内をすくわれた村上義弘(写真)は何とか立て直したが4着までが精一杯。
 「勝負としては残念だったけど、自分たちのレースをするという点では一切迷いがなかったですし、自分たちが全力を出し切る真剣勝負はできたと思う。(1年の自粛に入るが)この後に関しては今は何も考えてません」
 深谷知広は稲垣との真っ向勝負を選んだ。
 「今日は完全に自分の力不足。自分で作戦を立てて通用する相手ではないんで、とりあえず前受けからと思ってた。今日は行けるところから思い切って行こうと、それしか考えてなかった。また、みんな帰ってきたときに力勝負できるように、練習して強くなりたいです」
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