『第33回共同通信社杯(GII)レポート』 最終日編

配信日:9月19日

 武雄競輪場で開催されていた第33回「共同通信社杯(GII)」は9月19日に最終日を迎えた。激戦を勝ち抜いた9名のファイナリストによる決勝戦は平原康多のまくり乗った諸橋愛が直線で鋭く差し切り、ビッグ初制覇を果たした。平原が2着で、関東ワンツーが決まった。

決勝戦出場選手特別紹介
決勝戦出場選手特別紹介
B級グルメで腹ごしらえ
B級グルメで腹ごしらえ

決勝戦 レース経過

 号砲で平原康多が迷わず飛び出し、平原-諸橋愛の関東コンビが前受け。単騎の松谷秀幸が続き、中団に渡邉一成-新田祐大-守澤太志の北勢、村上義弘-村上博幸-稲川翔の近畿勢が後攻めとなって周回を重ねる。
 レースが動いたのは青板3角から。まず村上義が上昇を始めると、渡邉は引いて中団に近畿勢と態勢が変わる。村上義は北勢の動きを見ながら2角でダッシュ。打鐘で平原を交わして先手を握るが、追った渡邉は一息入れる間を与えることなく村上義に襲い掛かる。村上博がけん制に行くも、凌いだ渡邉はホームで村上義を叩いて主導権を奪取。村上義は中団に下がる一方、平原が1角からまくり発進。強烈な加速で前団迫っていく。これにバック番手まくりで応戦せんと、新田が車を外に外した瞬間だった。平原はスピードを殺すことなく内に切り込んでくる。イン平原、アウト新田で車を併せてモガき合いとなるが、腰砕けとなった新田は2センターで遅れる。さらに平原のトリッキーな動きにも付け切った諸橋が4角で新田を弾き、優勝争いは関東コンビの一騎打ちに。粘る平原をゴール前で交わした諸橋がGII初制覇を達成した。






<1R>

稲毛健太選手
稲毛健太選手
 稲毛健太(写真)が打鐘で堀内俊介を叩いて先行策に出る。3番手に収まった堀内は最終ホーム前から反撃に出るが、これをきっちり合わせた稲毛が力強く逃げ切った。
 「作戦は何も決めてなかった。2車だったんですけど、昨日(3日目)の反省もあるので、思いっきり行こうと思ってました。打鐘で出てホームでペースに入れたかったんですが、もう(堀内俊介が)来たので、踏みっぱなしでした。でも粘れたんでよかったです。今回は動き自体は悪くなかったけど、仕掛けに迷いがありました」
 番手好アシストの畑段嵐士が2着に流れ込み、近畿ワンツー決着となった。
 「稲毛さんが強かったです。堀内さんの動きは見えてました。展開が早かったので池田さんが来るかと思ったけど、来なかったですね。しっかりワンツーが決まってよかったです」

<2R>

小川真太郎選手
小川真太郎選手
 松川高大、その内をすくった長島大介、さらに打鐘でもう一度松川が前に出ると、そこを小川真太郎(写真)が叩いて主導権を握る。3番手から巻き返して来た松川のまくりも松浦悠士の横まで。直線でも後ろがモツれると、そのまま小川が押し切った。
 「(押し切りは)たまたまっす。松浦さんもしっかりしてるし、安心して行けた。(周りが)『小川先行しろ』みたいな空気だったし、楽に駆けられました。ビッグ初勝利はうれしいっすね。やりたいこともできたし、充実の4日間でした」
 松川後位から直線外を踏んだ吉本卓仁が2着に食い込んだ。
 「松川に任せてたし、自分のできる仕事はしようと思ってた。いつまでも前を走りわけにはいかないんでね。(松川は展開次第で)カマすかもって言ってたし、そうなったときにどういう仕事ができるか。ちょっと緊張はしてました。今回は連日、人の後ろでいい勉強になりました」

<3R>

横山尚則選手
横山尚則選手
 後ろ攻めの山田庸平が中団の横山尚則にしばらくフタをしてから打鐘前に踏み込むが、前受けの坂本貴史が突っ張る。最終ホーム前に外に持ち出した横山が前団の混戦をまくると、これに乗った神山雄一郎が直線で鋭く追い込み、連勝で締めくくった。
 「苦しい展開でした。横山も厳しかったと思うけど、頑張ってくれた。離れずに何とか付いていけてよかったですよ。本当に苦しかった」
 前々に積極的に仕掛けた横山尚則(写真)が2着。関東ラインを上位独占に導いた。
 「坂本さんとは何度も対戦しているので、突っ張りも頭のなかにありました。連日、自分のレースができていなかったので、しっかり仕掛けようと思ってました。結果、ワンツースリーが決まったんでよかったです。今回は体調じゃなくて、気持ちですね。反省をしっかりして、これからのトレーニングをしっかりやっていきます」

<4R>

太田竜馬選手
太田竜馬選手
 打鐘で土屋壮登がハナに立つと、伊藤成紀がすかさず仕掛けて両者で踏み合う形に。最終ホームで伊藤が土屋を強引に叩き切るが、後方で脚を溜めていた太田竜馬(写真)が2コーナーの手前から豪快にまくって完勝。上がり10秒8の好タイムで、シリーズ2勝目を挙げた。
 「前がやり合っていたし、落ち着いて仕掛けていこうと思いました。自分のスピードは悪くないけど、このバンクの特徴なのか、なぜか仕掛けにくくて昨日(3日目)も仕掛けられてなかったので。今日(最終日)はゴールまで自転車が流れてくれました。(今開催は)思いどおりに3日間戦えてなかったので、警戒される立場のレースを覚えておかないとって思いました」
 太田マークの池田良は口が空きながらも懸命に追いかけて2着を確保した。
 「太田君のスピードが強烈でした。正直言うとホームで仕掛けてほしかったですね。あの仕掛けだとラインで決まるのは難しい。最後はいっぱいでした」

<5R>

中井太祐選手
中井太祐選手
 赤板ホームで新山響平が誘導員を下ろす。中井太祐を7番手に置いてペースに持ち込もうとしたが、打鐘前から後閑信一が新山を叩きに行く。これで前団の隊列が短くなると、打鐘過ぎ2センターで5番手まで車を上げていた中井は4コーナーから一気のスパート。ライン3車で出切ると、番手の山内卓也が抜け出し、シリーズを連勝で締めくくった。
 「しっかり仕掛けるとこで仕掛けて、相手も動かして。近畿の先行屋はそういうところがしっかりしてるなと思った。中井は2着に残った? だったらよかった。神山(拓弥)が来てるのが見えてたし、1着取らんわけにはいかなかったので」
 中井太祐(写真)は2着に粘った。
 「(新山が)すんなり駆ける前には叩きに行こうと思ったけど、展開がよかったですね。(4日間を振り返って)まだまだですね。こっち(ビッグレース)で慣れて、(しっかり戦える)そういう選手になれたら。全然歯が立たないわけじゃないので、これからレベルアップしていきます」

<6R>

金子貴志選手
金子貴志選手
 後ろ攻めの取鳥雄吾が3番手の小松崎大地にフタをしてから打鐘前に踏み込んで主導権を握る。徐々にペースを上げる取鳥に対し、すんなり4番手に収まっていた金子貴志(写真)が最終2コーナーからまくる。瞬く間に前団を抜き去った金子が快勝した。
 「いい展開になりました。いい感じで踏めて、スピードも出たと思います。今回は全体的によかったんですけど、準決勝で仕掛けられなかったのが…。肝心なところでダメでした。でも、その分、最終日はしっかり自力を出して勝てたので、次につながります」
 6番手となった小松崎大地は最終1コーナーからまくったが、金子に合わされて2着まで。
 「金子さんが行く前に仕掛けようと思ってました。金子さんを越えられればよかったんですけどね。金子さんが強かったです。今回はいろいろと収穫もあり、課題もある開催でした」

<7R>

桐山敬太郎選手
桐山敬太郎選手
 赤板の2コーナーで切った鈴木裕がそのまま先行態勢へ。追い上げた吉田拓矢を内から退かした中井俊亮が3番手をキープして最終ホーム。中井が後方から仕掛けた原田研太朗を合わせて踏み上げるが、これに合わせるように桐山敬太郎がバックから番手まくり。最終3コーナーで内に斬り込んだ椎木尾拓哉が直線で桐山を抜き去った。
 「もっとハイピッチのレースになるかと思いました。吉田君があまりやる気がなかったのかな。今節は状態が悪いなりに着はまとめられているし、1日1日修正しながら走っていた感じです。中井君が頑張ってくれました」
 番手まくりを放った桐山敬太郎(写真)は2着に。
 「鈴木君が頑張ってくれました。番手から出て行くなら、1着を取らないと。後ろもある程度は見えていました。今節は確定板3つなので上出来ですね」

<8R>

中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 打鐘から鈴木竜士と渡邉雄太で激しい主導権争いに。そこをホームから久米康平がまくりに行くと、このラインに続いた井上昌己が2コーナーから好回転でまくる。番手の中川誠一郎(写真)と2車で出切って後続を千切ると、最後は中川が逆転した。
 「踏み出した瞬間に行ってしまうなと。そのときは交わせないかなと思いました。最後(井上が)タレた分交わせました。95%ぐらい昌己のおかげですね。10月はGIと地元記念なんで。気持ちがピリッとすればいいと思う」
 中川に差されたが井上昌己のまくりも鮮やかだった。
 「若いのがやり合ったから恵まれです。まくって2着なら上出来ですね。(番手が)誠一郎ならどっから行っても差されますよ」
 久米後位から伊藤正樹を飛ばして九州コンビを追いかけた坂口晃輔が3着に食い込んだ。
 「(久米は)休まず行った感じだし、いいタイミングで行ってくれた。バックは苦しかったですね。(井上のまくりが)来るかなと思ったらスピードが全然違ったので。久米君が前々にいい勝負をしてくれました」

<9R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 深谷知広(写真)が豪脚を披露。シリーズ最終日にして、ようやく勝ち星を挙げた。赤板の2コーナーから一気に仕掛けた深谷は完全にレースを支配。他を寄せ付けずに逃げ切った。
 「警戒されたけど、しっかり主導権を取れました。感じもよかったです。日に日に筋肉痛も取れて、よくなりました。次につながると思います」
 深谷の番手にターゲットを絞った単騎の伊勢崎彰大は踏み出し勝負で高橋和也に勝って続くと、成田和也にゴール前で交わされたが、3着で確定板に上がった。
 「(深谷の番手は)狙ってました。作戦どおりです。でも、深谷が強かったね。ひとつでも上の着と思っていたし、結果的に深谷の番手を狙って正解だったと思う。久しぶりのビッグレースでそれなりにやれたし、楽しめました」
 最終ホームで3番手を確保した山崎芳仁は伸びを欠いた。
 「8番(高橋)が来ていたので、車間を切って態勢を整えてからと思ったんですけど、3コーナーから深谷がどんどん伸びていく感じで厳しかった。でも、今回の感触は悪くなかったです」

<10R>

竹内雄作選手
竹内雄作選手
 打鐘で吉澤純平を叩いた竹内雄作(写真)が先行策。吉澤が渡部哲男をさばいて3番手をキープして最終ホームを迎える。後方から反撃に出た山田英明を合わせるように、吉澤が最終バックから仕掛ける。しかし、浅井康太がこれをブロックし、内を突いた木暮安由も締め込む。援護を受けた竹内が力強く逃げ切った。
 「浅井さんのおかげです。信頼して走っていました。力は出し切れたのでよかったです。渡部さんがさばかれたことは分からなくて、自分の事で精いっぱいでした。今回はいろいろと課題が見つかった開催だったので、寬仁親王牌に向けて修正していきたい」
 2着には大外をまくり上げた三谷竜生が食い込んだ。
 「ちょっと見すぎる部分もあったので、次までには修正していきたいです。自分の動きもレース内容もよくないので、しっかり練習してまた頑張ります」
 最終3コーナーで内を突いた木暮安由だったが、4着が精いっぱいだった。
 「吉澤君は気合入っていましたね。自分は付いていっただけでした。吉澤君が強引に仕掛けたので、まくれないなって思って内へ行きました。状態はだんだんとよくなっていると思います。次は頑張ります」

<11R>

平原康多選手
平原康多選手
 決勝戦を制したのは諸橋愛だった。レースは打鐘で先行態勢に入った村上義弘をホームで渡邉一成が強引に叩いて最終主導権。最終1コーナーからまくった平原康多がバックでけん制する新田祐大の内に切り込むトリッキーな動き。「そこは想定外だったけど、冷静に対応できたかな」。遅れることなく続くと、4コーナーで新田を飛ばして粘る平原をゴール前でとらえ、ビッグ初制覇を果たした。
 「正直、優勝できると思ってなかったのが本心だけど、チャンスがあればと思ってました。4コーナーでは抜けないなと思ったけど、ゴール前で抜けてるって感じがあったし、周りを見ながら誰もいなかったんで(優勝は)自分だなと。(年末のグランプリ出場を)狙える位置まで来てるのかな。しっかり残りのGIや残りの試合に集中して、グランプリに出られたらなと思います」
 平原康多(写真)は持ち味を存分に発揮した。俊敏な動きで北日本勢を翻ろうしたが、惜しくも優勝はならなかった。
 「行けるところで全開でカマシ気味のまくりで行きました。2段駆けは見えていたんで、越えられないと思ったんで内に行きました。優勝しか狙ってなかったんで。悔しい気持ちはあるんですけど、いつも戦ってる仲間なんで優勝と同じくらいうれしい。(2着の結果は)力が足りないだけです」
 新田祐大にとって平原の動きは想定外だった。渡邉の頑張りに結果で応えることができず、3着に終わったレースを悔しそうに振り返る。
 「気持ちは入ってたけど、空回りしちゃったのが。(平原のまくりは)振れば合わせられると思ったし、振れば(ラインの)誰かが優勝できると思った。そこ勝負してゴールまでと思ったら、内にすごい気配があって見たら平原さんがいたんで…。ふっ飛んじゃいました。考えた結果、あの動きになったのが敗因になってしまった」
 叩かれたとはいえ村上義弘は渡邉との真っ向勝負を選んだ。
 「両面で構えてました。後ろも付いてるんで凡走にならないように。レースを作りながら相手の出方を見ようと思った。(渡邉が)強かったです。また次(のGI)に向けて一生懸命頑張るだけです」