『第70回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:6月16日

 伝統の東西対抗が70回の節目を迎えた。岸和田競輪場を舞台に開催された「第70回高松宮記念杯(GI)」は、6月16日に最終日が行われた。東日本5人、西日本4人で争われた決勝は、唯一、地元地区の近畿から勝ち上がった脇本雄太が主導権。脇本マークの中川誠一郎が、新田祐大のまくりに合わせて追い込みV。優勝賞金2890万円(副賞含む)を獲得し、2月の全日本選抜に次いで今年2度目のGI制覇を遂げた。


間寛平さんステージ
間寛平さんステージ
決勝レース出場選手特別紹介
決勝レース出場選手特別紹介
GIRL'S KEIRIN NEWCOMER RACE
GIRL'S KEIRIN NEWCOMER RACE
GIRL'S KEIRIN NEWCOMER RACE 1着 山口伊吹選手
GIRL'S KEIRIN NEWCOMER RACE 1着 山口伊吹選手

決勝戦 レース経過

 号砲で出た平原康多がなかなか誘導員に追いつこうとしない。これを見た清水裕友が前に入って、清水-小倉竜二の中四国勢が前受け。3番手以降は平原-木暮安由-新田祐大-渡邉一成-脇本雄太-中川誠一郎-小原太樹の並び。
 後ろ攻めになった脇本はカマシ狙い。赤板ホームでも動かず、清水、平原、新田は前との車間を空けて脇本の仕掛けに備える。脇本は2コーナーから一気のカマシ。察知した清水も誘導員を下ろして踏み上げるが、単騎の小原まで3車がきれいに出切ってしまう。8番手になってしまった新田はホームからすかさず巻き返し。渡邉が離れるほどのスピードで前団に迫ったが、気づいた中川が合わせて踏み込んで2月全日本選抜に続き今年2度目のGI制覇。まくった新田は2着まで、終始脇本ラインを追った小原が3着に食い込んだ。







<4R>

稲毛健太選手
稲毛健太選手
 南潤が上昇した松谷秀幸を阻み、赤板で突っ張って先行策。打鐘からペース上げる。4番手の吉澤純平が最終2コーナーからまくりを打つと、南の番手で車間を空けた稲毛健太(写真)は外に張りながら自力に転じる。番手まくりで吉澤を合わせた稲毛が、きっちり勝ち切った。
 「石塚(輪太郎)も中西(大)もないし、和歌山の後輩に付くのが(最終日の南が)初めてだった。前だったら別でってなってたかもしれないけど、自分も(番手で)やっていかないと。(別線を)引きつけて、引きつけてと思ってたけど。(吉澤のまくりは)直線だったんで止まらなかった」
 稲毛に合わされながらも、まくった吉澤純平は最終コーナーを踏ん張って2着。
 「(周回中の)順番的にも自分が、先行すると思ってたんですけど。(南が突っ張って)掛かってた。あとは力勝負と思ってたし、行けても行けなくて(最終)バックではっていうのがありました。悪い時だと浮いてしまうんで、感じが戻ってはきている」

<6R>

太田竜馬選手
太田竜馬選手
 和田健太郎に押さえられた前受けの太田竜馬(写真)は、稲垣裕之を外に張って返す刀でインをすくって主導権を奪う。香川雄介は付け切れず、後位には和田がはまる。ラインを失った太田だったが、4番手以下をちぎって最後は和田の追撃もしのいだ。
 「(内は)反射的にですね。あのまま外に行っても余分に脚を使うんで。切ってから(香川の追い上げを)ちょっと待ちました。(和田が入ったんで)ペースを意識して、あんまり流しすぎずにいきました。もっとルールに応じた走りを勉強していかないと。全然、いままでとは別物ですね」
 太田にすくわれた和田健太郎は、とっさにインを締めて太田後位に入る。8分の1輪差で交わせずの2着で、太田の強さに脱帽する。
 「(太田の内は)ちょっと頭にはありました。まくるどころか離れちゃうんじゃないかと。(太田は)やっぱり違いますね」

<7R>

古性優作選手
古性優作選手
 地元の古性優作(写真)が、最終日に意地の白星を挙げた。中団から先に動いて切った古性は小川真太郎を受けて3番手に収まる。6番手の外に浮く形になった桐山敬太郎が打鐘の3コーナーから一気に踏み込んで主導権を握る。5番手となった古性は最終2コーナーから仕掛けようとするが、同じタイミングで小川が3番手からまくると、3コーナーで内に進路を変更。中村浩士が小川を大きく張ったことでガラ空きになったインコースをすり抜けた。
 「自分が思っていたレースというか、やりたいレースにならなかったし、できなかった。ホンマにたまたま勝てて、たまたまラインで決まった感じですね。赤板で先に切ろうって感じでもなかったし、結果的に動いた感じ。最後は昨日(3日目)とまったく一緒の感じで前が膨れた。でも、今日(最終日)は吸い込まれるように内にいけた。正直、新ルールに対応し切れずに終わってしまった感じですね。地元で連日、人気になってましたけど、応えることができず、裏切り続けてしまって。力不足も感じましたし、練習も含めていろいろと見直します」
 椎木尾拓哉が懸命に古性を追いかけて2着に流れ込み、近畿ワンツー決着となった。
 「キツかったですね。ちょっと離れ気味になってしまったし、最後の判断も難しかった。もう少し余裕があればいいんでしょうけど…」
 奇襲のカマシを放った桐山敬太郎は、ゴール寸前で末を欠いて4着に沈んだ。
 「あのまま(小川が)踏めばあの位置(古性ラインの後ろ)に入れたけど、踏まなかったから浮かされると思って。最終ホームが向かっているから前が緩んだところで叩ければと。でもキツかったですね。まだ新ルールに対してこれだってものが見つかっていないし、探り探りやっていくしかない」

<8R>

村上義弘選手
村上義弘選手
 鈴木竜士が、前受けから松浦悠士を突っ張る。松浦は3番手の外で併走して、反撃のタイミングをうかがう。打鐘の4コーナーで松浦が踏み込むと、鈴木も合わせてペースアップ。松浦は番手の長島大介をキメて、山田久徳のまくりに合わせて出る。松浦と山田の踏み合いになり、冷静に前の2人の動きを見極めた村上義弘(写真)が直線で外を抜き抜けた。地元地区での村上の白星にスタンドから多くの声援が飛んだ。
 「実績とかではなくて、選手としてすばらしい3人の3分戦だった。松浦君もどんな競輪にも対応できる隙のない走りだし、そのなかで(山田)久徳が先行も含めて前々に踏んでいくという気持ちが伝わってきた。負け戦だけど地元地区で応援をしてくれる方々がたくさんいて、1着を取ってそれに応えられて良かった。(新しいルールのなかで)選手はそれに対応していかないといけない。あとは見ているファンの方々がどう見るかですね。いままでよりも面白いと思ってもらえるルールにならないといけないですね」
 「気持ちを前面に出したレースができて良かった」とは、松浦悠士。鈴木に突っ張られるも、そこから“らしい”順応力のある立ち回りで2着に入った。
 「鈴木君の今日(最終日)のレースは今後の勉強になった。(長島をキメて)休みたかったけど山田さんが見えたんで、無理やり仕掛けた感じです」

<11R>

南修二選手
南修二選手
 後ろ攻めから上昇した近藤隆司が3番手の三谷竜生にフタをすると、正攻法の竹内雄作が赤板過ぎに誘導を降ろして先行態勢を取る。近藤は車を下げ、3番手の位置で車間を空けた三谷竜生は打鐘の2センターからスパート。ホームで竹内を強引に叩いて逃げる。後方6番手からまくり上げた坂本貴史は3番手の横でいっぱい。番手絶好となった地元の南修二(写真)が直線で抜け出し、シリーズ2勝目を挙げた。
 「三谷君が頑張ってくれたし、本当に強かった。自分にもっと余裕があれば良かったけど、自分だけというか決められなかった。今回はもちろん決勝に乗りたかったけど、GI自体が久々だったので楽しさもありましたね。ルールが変わってレースの流れも違うけど、しっかりと対応していけるように練習したい」
 南に続いた東口善朋が2着をキープ。3日目の反省を踏まえてレースを振り返る。
 「しっかりと集中して走れました。昨日(3日目)が全然ダメでレースにならなかったので。自分のなかではまだまだですけど、新ルールに早く対応できるように頑張りたい」
 最終2コーナーで近畿勢の切り替えた吉田敏洋が3着。今シリーズは4走とも人の後ろを回り、新ルールを含めて難しさを語った。
 「誘導の早さは前受けのうちらには関係なかったけど、突っ張ったあとの対応がね。竹内もいつもだったらそのまま駆けているだろうけど、いつもとレースの流れが違うというか感覚にズレがあったと思う。今回は復帰戦で、しかもずっと人の後ろだったから正直、自分の状態をうまくつかめないなかでの戦いでした」

<12R>

新田祐大選手
新田祐大選手
小原太樹選手
小原太樹選手
 中川誠一郎が今年2度目のGI制覇を果たした。レースは赤板を過ぎても動きはなく、後ろ攻めの脇本雄太が打鐘を目がけて一気にスパート。単騎の小原太樹まで3車で出切って最終ホームを迎える。後方8番手に置かれた新田祐大はすかさず反撃。グングンと加速して前団に迫ったが、外を張りながら4コーナーから踏み込んだ中川が真っ先にゴールに飛び込んだ。
 「ワッキー(脇本)の掛かりがすごくて。最終バックで(小原の後ろが)離れていたから、もう誰も来ないと思っていたけど、新田君はさすがですね。小原君が後ろにいたけど、それよりも新田に合わせて踏まないとないなって思って無理やり車を外に外しました。今回は体力的にも技術的にも、精神的にも調整がうまくいきましたね。準決、決勝ってピークを持ってこれるように。(GIの決勝で)初めて他力で勝てた(笑)。でも、20年間は自力で頑張ってきたし、これくらい恵まれてもバチは当たらないですよね」
 新田祐大(写真)が中川に張られながらも、懸命に外を懸命に踏み込んで2着に入った。
 「隠れながら行ったけど、(中川と)タイミングが合ってしまった。小原君が最後に内で変な動きをすればチャンスはあると思ったけど。タラレバですけど、もう少し早く仕掛けられていれば、苦しい思いをせずに中川さんに迫れていたと思います」
 初のGI決勝の舞台となった小原太樹(写真)は3着と大健闘。初手から脇本のラインを追走して表彰台に上がった。
 「このメンバーで自分が圧倒的に脚がないのはわかっているので、先手ラインに乗るしかなかった。ワッキーが後ろ攻めになるのは予想外でしたけど。なんとか付いていけたので。初めての決勝でしたけど、緊張はしなかったですね。リラックスして臨めたし、楽しかった」

次回のグレードレースは6月22日~25日まで開設69周年函館記念「五稜郭杯争奪戦」となります。開設69周年函館記念「五稜郭杯争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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