『第72回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 初日編

配信日:6月17日

 伝統の東西対抗。リニューアルされた岸和田競輪場を舞台に「第72回高松宮記念杯競輪(GI)」は、6月17日に4日間のシリーズが始まった。初日のメイン、特選では、西日本が清水裕友、東日本は吉田拓矢が勝ち星を挙げた。18日の2日目には、一次予選、初日特選を勝ち上がった東西の18人により、白虎賞(西日本)、青龍賞(東日本)が行われる。
 今シリーズは初日、2日目が有観客(5000人を超える場合は、入場制限をさせていただきます)、3日目、最終日が無観客での開催になります。岸和田競輪場にご来場の際は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。本場だけでなく、テレビ、インターネット中継などでも観戦をお楽しみください。

<1R>

原田研太朗選手
原田研太朗選手
 打鐘の3コーナーで先頭に立ち風を切る北津留翼に、山口拳矢が襲い掛かり最終ホームを迎える。山田庸平の再三にわたるけん制で、山口のスピードが鈍る。松本貴治は2コーナーでインを進出し、四国ライン3番手の原田研太朗(写真)は、自力に転じて最後方からまくり追い込む。山口マークから坂口晃輔が追い込み、北津留も逃げ切りを図るが、外を強襲した原田が届いて1着。
 「(松本)貴治がかぶっていたのでどうするかなって、落ち着いて見ていました。(井上)昌己さんのところは自分が付いていったらアウトかなと。う回しないとダメだと思って見てました。最後は前も詰まってしまったので、踏ませてもらいました」
 山口は直線でいっぱい。坂口晃輔が山口の余力を見極めて2着に追い込んだ。
 「(山口は)タイミング的にはいいところで外にもち出してくれたんですけど、ちょうど向かい風のところを下から踏んだのでキツかったと思います。でも、ああやって張りついて進んでいけるのは、(山口)拳矢の脚質だと思います。山田君のブロックがしつこかったですけど、行ってしまうんやろうなって思っていたので、内は見ず外だけ見てました。余裕はあったし外を踏んだんですけど、(原田が)最後一人だけスピードが違った」

<2R>

山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
 カマした坂井洋がグングンと加速して、栃茨コンビで後続を千切る。離れた3番手がもつれて渡邉雄太が踏み勝つが、最終2コーナー手前から後方にいた山崎芳仁(写真)がまくって出る。逃げる坂井を直線半ばで、山崎がとらえて1着。
 「(周回中の位置取りは)後方は避けたいなっていうのがありました。坂井君が仕掛けると思ったんで、落ち着いていきました。(中団争いの)勝敗がついてからまくって行こうと思ってたんで、そこで緩んだし、しっかりと仕掛けられた。(調子は)悪くない。(1着が2日目の青龍賞っていうのは)知らなかった(笑)。最高ですね」
 北日本3車での上位独占は、番手の永澤剛が2着をキープした。
 「ゴール前で大森(慶一)さんに食われそうになったんで弱い。ジャンからペースも上がってキツかった。脚がないんであとは練習をするだけです」

<3R>

南修二選手
南修二選手
 前受けの太田竜馬を押さえて赤板過ぎから上田尭弥が先頭に立つと、中団が引いた太田と山本伸一で激しい取り合いとなる。これを見た上田はペースで駆けていくが、掛かりが一息。中団外併走の状態のまま最終2コーナーでまくった山本が前団を一飲み。最後は南修二(写真)が差し切った。
 「(地元のGIで1着スタートとなったが)良かったです。(お客さんの声援もあったと思いますが)嬉しかったです。(山本は)いつもいいレースをしてくれるので任せていました。僕は追走だけしっかりと思って。長い距離併走だったので僕が抜けたと思う。(久々のレースとなるが)怪我をしていたわけじゃないので大丈夫。(白虎賞に向けて)体調だけしっかりと整えたい」
 力を示した山本伸一だったが、準決勝がフリーパスとなる1着と2着の差は大きい。
 「初手が大事だと思っていたので集中していました。太田君は引くかなって思ったけど引かなかったので外併走でいいかなって。中団を取り合う感じで脚を使ったわりに思ったより出は良かったと思う。苦しい展開になりましたけど最後差されたので。そこだけ改善しないと上では戦えない」

<4R>

宿口陽一選手
宿口陽一選手
 スタートけん制があり、前受けを強いられた眞杉匠は5番手で飯野祐太と併走。最終ホームで5番手を取り切って、眞杉が1センター過ぎからまくる。飯野に張られて踏み出しで遅れた宿口陽一(写真)だったが、萩原孝之のけん制も乗り越えて、最後はまくりで抜け出した眞杉を交わした。
 「(飯野とからんだところは)余裕があったけど、(眞杉の)踏み出しに口が空いて、3コーナーで萩原さんにもってこられてキツかった。あとは(眞杉を)抜けるか抜けないかだった。(初日は)体がフワフワしている感じがあったけど、1走して刺激が入った」
 周回中から思惑通りにはいかず、主導権を握れなかった眞杉匠はまくりで2着。
 「前からっていうのが作戦になかったけど、(スタートで)けん制が入ってしまった。遅ければ突っ張るつもりだった。でも、(飯野が)いい感じで来た。もうまくるしかないなと。初日は負けたくないっていう思いもあったし、(1着で2日目の青龍賞進出の)夢みました」

<5R>

山崎賢人選手
山崎賢人選手
 赤板で前団を切った山崎賢人(写真)を押さえて取鳥雄吾が打鐘前2コーナーから主導権を握る。中団は山崎と稲毛健太でモツれ、そのまま取鳥が先行態勢に入る。何とか最終2コーナーで外の稲毛をドカした山崎は強烈なまくりで中国ラインを襲いかかった。3コーナー過ぎに取鳥を捕らえた山崎は後続を千切ってゴール。
 「後ろからになるだろうなって思って組み立てを考えていました。ちょっと中途半端だったので稲毛さんも自分の所にきたのかなって。ちょっと難しかったです。仕掛けた感じは脚も使っていなかったですし、問題ないかなって思っていたんですけど。調子は悪くないけど出はそんなに良くなかったですね」
 山崎後位だった松川高大、園田匠は山崎のまくりを追える態勢ではなく、取鳥の逃げを利した柏野智典が2着。
 「中団から切った上を叩いて相手の出方を見るって感じで考えていました。叩かれれば合った所を捌いてと思っていましたけど。山崎君が引くかなっていうのも頭にあったんですけど、併走になってくれてビジョンでも確認して。個人的にはちょっと重かったですね。ラインに助けられた感じです」

<6R>

小松崎大地選手
小松崎大地選手
 一本棒の7番手でタイミングを取っていた松井宏佑が、打鐘手前から反撃に出る。先行態勢の小松崎大地(写真)もペースを上げて、中団にいた鈴木庸之は松谷秀幸をさばいて松井にスイッチする。最終1コーナーで松井が強引に先頭に立つと、鈴木を成田和也がブロック。松井の番手に小松崎が入り鈴木も迫るが、小松崎に接触した鈴木が落車。それでも番手から追い込んだ小松崎が1着。
 「(松井を)出させないつもりで踏んで出られてるんで、そこは悔しいですね。(後ろが)成田さんと和田圭なんで、自分がしっかりと走れば、ラインが機能するかなと思ってた。(番手に入ってからは)これだけのメンバーなんで誰かしら追い上げてくるっていうのもあった。その動きが落車を呼び込んでしまったかなと。勝ち上がりでラインで決める最高の形だったんで良かった」
 外から追い込んだ成田和也は、4分の3車輪差まで詰め寄っての2着。
 「松井が先行するのはわかってたし、松谷が付いて来るのかと思ったら、後ろが鈴木だった。松井はけん制しきれない感じだったんで、鈴木をどかした。いいサポートができた。最後、抜ければ良かったけど、ラインでワンツースリーで良かった」

<7R>

三谷竜生選手
三谷竜生選手
 初手で5番手に位置した寺崎浩平に併せ込んでけん制してから踏み込んだ河端朋之が赤板2コーナーで先頭に立つが、追って3番手に入った寺崎は打鐘2センターですぐさま巻き返す。最終ホーム過ぎに河端をねじ伏せて寺崎が先手を奪取。その動きにしっかり反応して続いた三谷竜生(写真)が最後は差し切って好スタートを切った。
 「自分が思っていたタイミングというか寺崎君のタイミングで行ってくれた。(先行でもまくりでも)どっちでも良かったんですけどね。あそこで行ってくれた方が悪い方向には向かないかなって思うので良かったです。(後ろの状況は)しっかり確認できなかったですね。しっかり出切ったあともペースで踏んでくれて誰かくるかな?来ないかなって感じでした。神田(紘輔)さんのコースを空けようと思って踏んだんですけど。調子は悪くないですけど、若干重たかったですね。朝の指定練習は軽かったんですけど。明日(白虎賞)もしっかり走って準決も頑張りたい」
 吉田敏洋らの追撃を振り切って2着にも寺崎浩平が粘り込んだ。
 「(前回の)広島で前受けして中団にこだわってから外を踏んだんですけど。その後(村上)義弘さんとも話をして。河端さんが切った後に少し緩めた感じだったので、中団を取り合うよりは出切った方が良いと思って。あとはどれだけ粘れるかって感じでした。正直、重たい感じがしましたね」

<8R>

黒沢征治選手
黒沢征治選手
 高橋晋也が中団の黒沢征治(写真)にフタをして赤板を迎える。2コーナーから再び踏み込んだ高橋が先行策に出て、黒沢は7番手に置かれる。前との車間が空いた黒沢は、詰める勢いでまくる。最終バック手前から合わせる和田真久留をスピードの違いで乗り越えた黒沢が、北日本勢も飲み込んだ。
 「最悪の流れで後ろにすごく迷惑を掛けてしまった。(2日目の青龍賞は)意識しなかったけど、(1着は)すごくうれしい。フタをされて(高橋が)駆けた時にあの上を行ければいいけど、内藤(秀久)さんのあおりとかで、怯んだのは反省点です。余裕はあったんで、あとは詰まったところで(仕掛けて)行こうと。踏み出しのところで踏んじゃって、イメージ通りじゃなかったけど、バックで流れました。明日(2日目)はもっと気持ちを出して、自分らしさを出したい」
 最終3コーナー過ぎのあおりをなんとかこらえた木暮安由が2着をキープした。
 「黒沢君は落ち着いてレースを見ていたし、行くところでしっかりと行ってくれたんでワンツーでした。(佐藤)友和さんも余裕があって、あおりもあったけど。(自転車を)うまく寝かせていけて良かった。(感触は)上積みはなく現状維持ですね」

<9R>

野原雅也選手
野原雅也選手
 合わせて動いた野原雅也(写真)は、中部ラインを受けて4番手を確保する。皿屋豊が風を切って、7場手の小川真太郎は打鐘の2センターから仕掛ける。が、皿屋はペースを上げて、小川は稲垣裕之の所に降りるのが精いっぱい。最終1センター過ぎからまくり一気の野原が、鮮やかに抜け出した。
 「中団を取れたらベストだと思っていたので、考えられる一番理想の形でした。あの並びになったら小川さんよりも先に仕掛けないといけないと思っていました。そんなに出は良くなかったですね。出切っていっぱいでした。でも1着で通過できているのでいいと思います」
 からまれた稲垣は付け切れず、逃げた皿屋豊が2着に粘り込んだ。
 「いつも野原君にはやられているので、今日(初日)は勝ちたかったですけど、まんまとやられてしまいました。合わせ切れればベストでしたけど、(野原は)中団からさら脚だった。でも、明日以降にはつながったと思います」

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竹内智彦選手
竹内智彦選手
 渡邉一成、長島大介を中団で併走させて、根田空史が主導権を握る。鈴木裕は逃げる根田との車間を空けて、最終バック手前からまくった長島をけん制。渡邉もインを突いて、前団の隊列が凝縮される。9番手も2センターからコースを探した竹内智彦(写真)が、シャープに突き抜けた。
 「(最終バックで9番手から)ちょっと内は混戦で外をって思った。でも、一番外は自分の脚力的に伸びないっていうのがあったんで、その内側をいった。(神山)拓弥が降りてくる前に押してでもコースを作っておかないとっていうのがあった。踏んだら伸びたんで、あとはどこまで伸びるかっていう感じだった。感触はいいと思います」
 長島は不発。竹内に張られながらも外を伸びた神山拓弥が2着。
 「根田君が思いのほかすごくヤル気で、長島君も苦しかったと思う。根田君のペース配分がすごく良かった。(竹内が突っ込んできたのは)わかってたんで対応して寝かせたけど、竹内さんがうまかった」

<11R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 赤板過ぎに出た松浦悠士が、ペースを握る。中四国ラインに浅井康太、山田英明が続いて、古性優作は6番手で反撃のタイミングをうかがう。松浦がそのまま逃げるが、最終ホーム手前から古性が踏み込む。中四国ライン3番手の小倉竜二が古性をブロックするが止まらない。バックから番手まくりを打った清水裕友(写真)が勝ち切った。
 「小倉さんが(最終)1センターで古性さんをもっていったのが見えた。それで止まったかなと思って待ったけど、古性さんの加速がすごくて中途半端になりかけた。ラインが全部つぶれるところだった。無風で回ってきて、ただ出ただけなんで余裕はありました」
 清水に合わせられた古性優作は、さすがのリカバリー。小倉のコースを塞いで2着に入った。
 「練習通りの感じじゃんかったんで、あんまり良くなかったです。修正はできると思うので、明日(2日目)までにしっかりと修正します。今節に合った状態で(体を)合わせていきたい。あれならジャンの3コーナーで行かないとダメだった」
 稲川翔が3着に入り、古性とともに2日目の白虎賞に進んだ。
 「松浦を相手に(古性)優作がしっかりと力勝負をしてくれた。隙を見せると一瞬でやられるし、自分も後ろに2人も付いてもらっているので、なにがなんでもという気持ちでした。いまできる100パーセントの状態で臨もう思っているだけ、そこの不安はない」

<12R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 打鐘過ぎに新山響平を叩いて、岩本俊介が先行態勢を取る。3番手に入った新山だが岩本がペースを落とすと、最終ホームから反撃に出て主導権を奪い返す。踏み出しで遅れながらも守澤太志が追いかけて、深谷知広が後方からまくりを打つ。諸橋愛は切り替えて、バック9番手の吉田拓矢(写真)が大外を突き抜けた。
 「新山さんが行ったところを切ろうと思ってたら、立ち遅れて失敗しました。一番後ろはマズいと思って深谷さんのところまで行って入ったけど、そのあと和田(健太郎)さんに後ろまで行ってしまった。それでも道中は脚を使ってなかったんで、(最終2センターから)踏んだ感触的にもイケるかなっていうのがありました」
 横一線の2着争いは逃げた新山響平が踏ん張った。
 「後ろの人たちに付きづらいレースをしてしまったかなっていうのは反省です。だけど、余裕があったからあそこで動けたんだと思います。最後は直線に入ってからも後ろが来てなかったんで、息を吹き返すことができた」
 最終2コーナーからのまくりが思うように進まなかった深谷知広は、こう振り返る。
 「あそこ(8番手に)引いても、スローだったんでチャンスがあったけど、自分のキレがなくて、出も悪かった。ただ、粘って3着に入れているんで、(内容は)ゼロではない。まずは疲れを取ること。そうすれば(ナショナルチームのトレーニングと比較して)運動量も減ってきて、(キレとかが)戻ってくると思う。あとは1走したんで自分の感覚を整えて、戦える状態にもっていければ」