『第72回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 3日目編

配信日:6月19日

 伝統の東西対抗。リニューアルされた岸和田競輪場を舞台に開催されている「第72回高松宮記念杯競輪(GI)」は、6月19日に3日目を迎えた。東西に分かれて準決の4個レースが行われ、西日本からは稲川翔、清水裕友、東日本から宿口陽一、佐藤慎太郎が勝ち星を挙げてファイナルに進んだ。いよいよシリーズも大詰め、20日の最終日には東5人、西4人が勝ち上がった東西対抗戦の決勝の号砲が鳴らされる。
 今シリーズは初日、2日目が有観客で行われましたが、3日目、最終日は無観客での開催になります。3日目以降は、テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

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浅井康太選手手
浅井康太選手
 取鳥雄吾が先頭に立ち赤板2コーナーから皿屋豊も仕掛けるが、取鳥がペースを上げて逃げる。8番手にいた稲毛健太は最終ホームから反撃に出て、抜群のスピードで前団に迫る。皿屋が不発で稲毛、神田紘輔を浅井康太(写真)が追いかける。稲毛が4コーナーで取鳥をとらえるが、シャープに伸びた浅井が外を突き抜けた。
 「稲毛君が行ったタイミングで自分も仕掛けたかったんですけど、先に仕掛けられたので稲毛君ラインの3番手に切り替える形になった。中部が3車だったら(自分の後ろにも付いてるので)、(最終)ホームで仕掛けてます。ただ、そうじゃなかったのでワンテンポ見た。体は動いているし、調子も悪くない。硬くした新車も、体と自転車がマッチしている感じがある。何回も踏めるし、ゴールに向けて伸びていく感じです」
 ロングまくりの稲毛健太は、浅井の強襲にあったもののタイヤ差の2着。
 「まくりにいく段階で(浮いていた)皿屋さんがどうするかなって、動きを見ていて自分は外を行った。みんな積極的な選手ばかりだし、雨がキツかったんで見てしまったところもあるけど、(感じは)悪くないです」

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大森慶一選手
大森慶一選手
 最終ホーム過ぎに吉田敏洋が、山本伸一を叩いて駆ける。山本は3番手で立て直し、7番手から中本匠栄がまくりを打つ。中本のまくりは不発で坂口晃輔に絶好の流れになった。が、最終バックでは9番手、単騎の大森慶一(写真)が、空いた中のコースを鋭く追い込んで1着。
 「(単騎だけど)あんまりチョロチョロしてもと思ってました。岩本(俊介)君なり、中本君ならどこか仕掛けるだろうし、そこのラインに付いていって、あとはどこまで突っ込めるかでした。(中本が)まくり切れないかなって時に、前を見たら空くかなと。そしたらおもしろいように(コースが)空きました。自分の持ち味が出せたし、この1着は自信にもなります」
 山本を外にけん制した坂口晃輔が、吉田の番手から追い込んで2着。
 「(吉田は)出切ったタイミングでスピードも一番出ていたんで、そこで車間を切ってしまうとっていうのがあったんで、引きつけてと思ってた。内も気にして外に張りながらだったけど、(大森は)勢いが違いました」

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稲川翔選手
稲川翔選手
 合わせて動いた野原雅也の上を四国ラインが出るが、原田研太朗と野原が接触して打鐘手前で両者が落車。松本貴治の先行に阿竹智史、稲川翔(写真)、東口善朋の隊列。松浦悠士が5番手になる。最終ホームを通過して、松浦が仕掛ける。3番手の稲川も松浦を外に張りながら、まくり上げる。阿竹も前に踏むが、まくり合戦を制した稲川がデビュー通算300勝を地元で飾った。
 「(野原が落車してしまったが)本当に短い時間で、自分に冷静になれって言い聞かせた。野原が3番手の状況を作ってくれた。阿竹さんが出るのはわかっていたんですけど、ダメでもしっかり自分で動こうと思っていました。松浦君が来るのはわかっていたので、自分の道を確保するための動きでした。普通、あのブロックで止まるんですけどね。なんてヤツやって(苦笑)。正直、もう松浦君はいないと思っていたのに、これが賞金ランキングトップなのかって感じです」
 松浦悠士は稲川に猛ブロックを受けながらも、ロングまくりで2着はキープした。
 「(最終)1センターで稲川さんに振られてキツかったですね。あのまま阿竹さんに出られたら終わってた。でも、稲川さんが前に踏んでくれた。それでチャンスがあると思った。(打鐘の)2センターで叩ければ一番良かったんですけど、誰がこけたのか様子を見てしまった。自信を持って叩いて1周行けていれば良かったんですけど、不安が残っていた」

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宿口陽一選手
宿口陽一選手
 合わせて踏み上げた新山響平だったが、黒沢征治のスピードを確かめて埼玉コンビを受ける。黒沢の先行で最終回へ。車間を詰めながら新山が3番手からまくると、番手の宿口陽一(写真)は前に踏み込む。切り替えた守澤太志を僅差でしのいだ宿口が、初のGI決勝進出を果たした。
 「昨日(2日目)と違って新山君の突っ張りはないかなと思ってました。山崎(芳仁)さんが突っ張られてからは、黒沢君が冷静に走ってくれたんで良かったです。僕も余裕があったので、来ないでくれと思ったけど。(新山は)力上位ですし、来たから仕方なく踏みました。今日はすごく直線が長く感じました。平原(康多)さんにはいつもお世話になってるし、周りの方々の支えもあって、やっと(GIの決勝に)乗れた。乗れるつもりで練習はしてるけど、まさか乗れるとは思ってなかったんでうれしい。平原さんは直前で怪我をして欠場になってしまった。その分までとはいかないけど、ここまでこられて良かったです。脚の感じはいい」
 合わされた新山が外に浮くと、守澤太志が宿口に切り替えるように踏んで2着。
 「できれば前受けはしたくなかったけど、(S班の)自分の立場上、受けて立つっていう使命もあるので、(新山)響平君には申し訳なかったです。(福島勢は)いつも一緒に走っている先輩方ですけど、(別線なので)しっかりと勝負するっていうのが礼儀だと思っています。あの並びだったんで、新山君が(山崎を)突っ張るのも1つだった。(宿口が番手から)ちゅうちょなく出ていって、(和田圭が)しっかり締めてくれたのに、さらに僕が締めて申し訳なかった。宿口さんが強かったんで差せなかった」

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清水裕友選手
清水裕友選手
 先頭に立った清水裕友(写真)がペースを落として、打鐘では中団が渋滞になる。古性優作は5番手で間合いを取り、8番手の山崎賢人は2センターからカマす。山崎の踏み出しに遅れ気味の山田庸平が、中団から出た古性にさばかれる。山崎が1人で出切って、清水は番手に飛び付く。古性を張った小倉竜二が落車して、内から橋本強が山崎、清水を追いかける。3番手以下は離れて、前2人の勝負は、早めに追い込んだ清水が1着。
 「1回動いてと思ってましたけど、(山崎が)1人で飛んできてくれたので展開が良かった。準決ですしあそこで叩いてくる人もいないだろうと。自分自身、落ち着いて走れた。でも、手放しでは喜べないですね。アクシデントもあって小倉さんがこけたのも確認していた。複雑でした。山崎君が掛かっていたので後ろからは、来られないだろうっていう感じでした」
 ラインを失った山崎賢人だったが、さすがのスピードで別線をのみ込み2着に粘り込んだ。
 「ちょっと緩むところがあるだろうなって思っていたので、全部引いて行けるところでと思っていた。自分の感じは良いと思います。ペースでうまく踏めた。やっとまた(GIの決勝に)乗れたって感じですね」

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佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 吉田拓矢を叩いた小松崎大地が主導権を握り、佐藤慎太郎(写真)、永澤剛の3車で出切る。が、すかさず深谷知広が襲い掛かる。佐藤もけん制するが、深谷のスピードがいい。深谷が先頭に立つと、佐藤は松谷秀幸を最終1コーナーで阻む。態勢を立て直した小松崎が深谷を追いかけて、徐々に差を詰めていく。吉田もまくりで迫り、直線へ。小松崎マークから外を踏んだ佐藤が1着。ラインの力を強調するして振り返る。
 「(小松崎)大地が先行態勢に入って、出すか出さないかは大地に任せていました。大地も頑張ってくれてたし、ラインがそれぞれの仕事ができれば、強いラインになる。永澤も含めていいレースができたかなと思います。外を踏めるコースがあったんで、そこを踏んで伸びているし状態もいい。前検日の段階で調整がうまくいってれば、こんな感じだと思います」
 結果的には深谷に出られた小松崎大地だったが、しぶとく深谷を追い詰めて3度目のGI優出を遂げた。
 「自力型のなかでは、自分が一番脚力が劣っているのはわかっている。だから、とにかく前々に攻めようと思ってました。ただ、ラインの力が一番強いのは自分たちだと思ってたので、とにかく僕は自分の仕事を全うしようと。決勝に乗れているので、やってきたことが少しは形になっているのかと」