『第72回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:6月20日
 

リニューアルされた岸和田競輪場を舞台に開催されていた「第72回高松宮記念杯競輪(GI)」は、6月20日に最終日が行われた。決勝はS級S班の中国コンビが主導権。単騎で仕掛けた山崎賢人に乗って追い込んだ吉田拓矢マークから、宿口陽一がGI初優出で初Vをつかみ取った。優勝賞金3083万円(副賞含む)を獲得し、年末に静岡で行われる「KEIRINグランプリ2021(GP)」の出場権も初めて手にした。

決勝戦 レース経過

 松浦悠士-清水裕友が前受け、以下は稲川翔、小松崎大地-佐藤慎太郎-守澤太志、吉田拓矢-宿口陽一、山崎賢人の順で周回を重ねる。
 赤板の1コーナーで切った吉田を小松崎がすかさず叩いて出るが、松浦が打鐘から襲いかかる。小松崎を最終ホームで叩いた松浦が先行。小松崎はその後位で粘る形に。前団がもつれたところを単騎の山崎がまくり上げるが、清水が外併走の態勢から番手まくりを打つ。両者で激しく踏み合うが、山崎に続いていた吉田が4コーナーで外に持ち出すと、さらにその外を宿口が鋭く伸び切り、GI初制覇を果たした。吉田が2着で関東ワンツー決着。北日本3番手回りから大外を強襲した守澤が3着に食い込んだ。


<6R>

鈴木裕選手
鈴木裕選手
 稲毛健太が先頭に立って主導権を握るが、8番手から森田優弥が叩きに出る。諸橋愛が連結を外して、中団から1車追い上げて阿部力也をキメた鈴木裕(写真)がインを進出。稲毛をとらえた森田に、山田久徳を張ってさばいた鈴木が続く。直線で森田を交わした鈴木が抜け出した。
 「自分が前だったんで好きにやらせてもらいました。ジャンの3コーナーくらいに森田君が来てたんで、(森田ラインの)3番手に飛び付こうかと思ったら、稲毛君が掛かってた。それで1車追い上げて、空いてたんで神田(紘輔)君、山田君のところまでいった。考えずに体が動きました。(4日間を通しては)人の後ろでパッとしなかったところもあるけど、悪くないシリーズでした」
 鈴木にインから当たられた山田久徳だったが、立て直して2着に伸びた。
 「森田君がカマして来たのが見えて、鈴木さんも一瞬見えたんですけど、途中で消えてしまった。森田君を振ったんですけど、(内から来た鈴木は)対処しようがなかった。すくわれてからも、思った以上に踏めてました」

<8R>

北津留翼選手
北津留翼選手
 赤板2コーナー過ぎに北津留翼(写真)が先頭に立ちペースを握ると、単騎の成田和也が追い上げて番手がもつれる。寺崎浩平はいったん中団に入ってから再度巻き返して、村上義弘が付け切れない。北津留が寺崎を追いかけて、その上をまくり返して1着。
 「(自分たちのラインは)3車だし、ああやってはまるかなっていうのもあった。(2車で出られて)村上さんの後ろをキープできれば、そこからまくり追い込みでと思ってた。寺崎選手が見えたんで、目いっぱい踏んだ。あの上を行けないかなと思ったけど、なんとか1着にいけました」
 最終2コーナーから7番手の吉田敏洋がまくって、付けた坂口晃輔が外を伸びた。
 「(吉田)敏洋さんの後輪に集中したかったけど、(北津留の番手がもつれてたんで)そこにも反応しないとなっていうのがありました。敏洋さんが吸い込まれていくまくり追い込みを抜けているんで、確実に状態は上向いている」

<9R>

三谷竜生選手
三谷竜生選手
 赤板の1コーナーから一気に仕掛けた新山響平に合わせて、野原雅也が中団から踏み上げる。新山が打鐘前から主導権を握り、飛び付いた野原は佐々木雄一をさばいて番手を奪う。最終バック前から野原が番手まくりに出ると、車間を空けて詰めながら追い込んだ三谷竜生(写真)がシリーズ3勝目を挙げた。
 「野原君が本当にやる気満々だったので。先行する気持ちでいたと思いますし、出られたら引かないと思っていたので想定内ですね。野原君が頑張っていましたし、上手くフォローできればと思っていました。余裕もありましたし、(野原が)行ってくれたんですけど(山田)ヒデさんも来ていて。一回止まったようにも見えたんですけど難しかった。GIで3勝できたので。準決は単騎でなにもできず終わってしまい悔しいですけど。今後は単騎でもなにかできるようにしていきたい。徐々に調子が上がってきている中で今回試した新車がかみ合ってくれた。まだ改良の余地はありますけど、今回の(自転車とセッティング)をベースに考えていきたい」
 後方から好回転でまくり上げた山田英明は2着まで。
 「野原君は三谷君も付いていたし、後ろに南(修二)さんもいたのでどう組み立ててくるかなって感じでした。(野原が番手をさばくのは)想定はしていました。(新山が)すごいスピードだったので出られたらあるかなって。和田(圭)君と佐々木さんが併走になって入れるのかいれないのか整うのを見てしまった。でも現状で2着に入れているので。自分の中ではやったほうかなって。ここ最近、調子が悪い中でいかに力を出し切るかをテーマに戦ったんですけど。まだ喜べるレベルじゃないですけど、収穫や閃きはあったので。自転車も体も含めて調整していきたい。次の大きな目標はオールスターです。次は久留米記念ですけど、GI並みに気合を入れて頑張りたい。悔しいし、格好悪いけど、今は耐える時だと思っている」

<10R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 山口拳矢がペースを握るが、単騎の山田庸平が4番手から切って先頭に立つ。深谷知広(写真)が8番手から仕掛けるが、中村浩士は付け切れない。最終ホーム過ぎに深谷が主導権を奪い、山田が番手に飛び付く。黒沢征治が猛然と巻き返すも、深谷が合わせ切ってそのまま押し切った。
 「日に日に疲れが抜けていって、徐々に戦える状態になった。今回は一番最低っていっていいくらいの状態できているんで、これ以上悪いことがないくらいだった。(競技大会での海外遠征後の自主隔離もあったりしたけど)変化はそこまでなくて、練習と調整ができれば戦えるかなと」
 単騎で魅せた山田庸平は、深谷に流れ込んで2着。
 「車番も悪かったし、組み立てが難しかった。周回中に考えながら、あそこは1回叩いた方がいいなっていう判断でした。それで黒沢君が来るかなと思ったら、深谷君だった。付いていければチャンスはあるかなと。単騎で見せ場をつくれたんじゃないかと」

<11R>

古性優作選手
古性優作選手
 和田真久留、古性優作(写真)の順で切った上を山崎芳仁が打鐘前に叩いて逃げる。後方となった松本貴治がすかさず反撃に出るが、東口善朋のブロックでスピードが鈍り、大槻寛徳のブロックで力尽きる。中団を確保していた古性が最終2コーナーからその上を豪快にまくって人気に応えた。
 「想定していた初手の並びと違ったので切りに行くタイミングを遅らせたのが良かった。もう一回転したらキツいと思ったので。もう東口さんが後ろだったので安心して自分のレースをさせてもらいました。今日(最終日)は修正して、残念ですけど(今回の中で)一番良かったかなって。差されるかなとも思ったんですけど振り切れたので。いつもここで行われる高松宮記念杯はいつもの自分じゃないような感じなんですけど、今回は落ち着いて走れました。もう一皮、二皮むけないと安定して決勝には乗れないなって。決勝のメンバーはいつもと同じなので。今までは僕はたまたま乗ってただけなので」
 東口善朋が好アシストから古性にしっかり続いて2着。近畿ワンツーが決まった。
 「古性君としっかり走ると決めて、あとはワンツーを決められればと思って走っていました。松本(貴治)君も僕の横でどうするのかなって感じでしたけど、古性君の前まで行かないようにと思って。抜ければベストですけど、あそこまで詰められたので。昨日(3日目)はゴチャゴチャして脚を使わずに終わったんですけど、4日間気持ちは入っていましたし、ワンツーで締めくくれて良かったです」

<12R>

宿口陽一選手
宿口陽一選手
 松浦悠士が最終ホームから主導権を握るが、叩かれた小松崎大地が後位で粘る形に。前団のもつれを単騎の山崎賢人がまくり、松浦の番手から出た清水裕友と激しく踏み合う。山崎を追いかけた関東コンビで直線はマッチレースに。宿口陽一(写真)が外を鋭く伸び切り、GI初優勝を飾った。
 「信じられないですね。まさかこのメンバーで勝てるとは思っていなかったので、正直、自分が一番驚いています。出脚が良くて最後は夢中でした。(ゴールの瞬間は)僕の方が車輪が出ていたので分かりました。直前に平原(康多)さんが肘のケガで大会にでられなくなってしまって。平原さんが一番悔しいと思いますし、その分まではとはいかないですけど、平原さんの分までと思って。いい報告ができますね。(タイトルを獲ってグランプリ出場が決まったが)まだそういう選手じゃないので、まだ1から。年末にそういう方向で迎えられたら。GIを優勝できたのでひとつ選手として目標が達成できた。周りの目線は変わってくると思うけど自分は変わらずに。ひとつ、ひとつレースをこなしていきたい」
 吉田拓矢が2着に入り、関東ワンツー決着となった。
 「嬉しいです。ラインで決まったので、それが一番です。後ろからだったので一回、回して行けるところから行こう。山崎(賢人)さんがいったので上手くスイッチして。ホームで一杯だった。独特の緊張感で脚が上手く回らなかった。でも宿口(陽一)さんが優勝して自分も2着だったので。久々に関東にGI優勝を持って来れたので。次は1着を目指して」
 北日本ライン3番手回りの守澤太志が大外を伸びて3着に。
 「松浦(悠士)君が出たので中団からになりましたね。ずっと併走が長引いて(佐藤)慎太郎さんも稲川(翔)君にからまれていて難しかったですね。3コーナーから外を踏んだんですけど、僕が一番スピードをもらえないところから踏んだのでキツかったですね。良く伸びたほうだと思います。初日に不甲斐ないレースをしてしまったんですけど、今後は自信を持って慎太郎さんの前を回れるように頑張っていきたい」

次回のグレードレースは、久留米競輪GIII「第27回中野カップレース」が6月26日~29日の日程で行われます。
S級S班の清水裕友、佐藤慎太郎の2名を中心に、野原雅也、吉田拓矢、寺崎浩平など強力な自力型にも注目です。
また、最終日第3Rにてレインボーカップチャレンジファイナルが行われます。
こちらも是非ご注目ください!
6月13日時点の出場予定選手データを分析した、久留米競輪GIII「第27回中野カップレース」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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