『第74回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 3日目編

配信日:6月15日

 伝統の東西対抗と新設のガールズGI。岸和田競輪場を舞台に開催されている大阪・関西万博協賛「第74回高松宮記念杯(GI)」と「第1回パールカップ(GI)」は、6月15日に3日目が行われた。東西激突となったパールカップの決勝は、最終ホームでカマした児玉碧衣が逃げ切りの完全Vで優勝賞金490万円(副賞含む)を獲得した。新設GIの初代クイーンに輝き、年末の「ガールズグランプリ2023」の出場権を誰よりも早く手に入れた。また、高松宮記念杯は東西の一次予選2が行われ、郡司浩平が連勝。1走目で落車に見舞われた地元の古性優作は、1着でポイントを加算して二次予選に勝ち上がった。シリーズも6月16日の4日目から後半に突入。一次予選のポイント上位選手による青龍賞(東日本)、白虎賞(西日本)は、V戦線を占う意味でも見逃せない。
 シリーズの開催中は毎日、東西ガチンコ予想会、オリジナルグッズが当たる未確定車券抽選会、岸和田グルメフェスティバルなどが行われます。また、6月16日の4日目は、SPEEDチャンネル専属コメンテーターの村上義弘さんのトークショー、日本名輪会によるトークショーなども予定されています。岸和田競輪場では、みなさまのご来場お待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

パールカップ決勝出場選手特別紹介
パールカップ決勝出場選手特別紹介

パールカップ レース経過

 比較的ゆっくりしたスタートから荒牧聖未が誘導員の後ろに付いた。初周で荒牧、那須萌美、久米詩、柳原真緒、児玉碧衣、小林莉子、坂口楓華の並びとなり、しばらく静かな周回を重ねる。
 赤板過ぎの2コーナーを立ち直ったところから久米が前と車間を空けはじめる。ジャンで誘導員が退避し、3コーナーで坂口が上昇すると、2センターで久米が合わせるように踏み上げた。最終ホームで先頭が内に荒牧、中に久米、外に坂口で3車並走になると、6番手の児玉が一気にスパート。児玉が先頭に躍り出ると、後ろは坂口と小林が接触して小林が落車。坂口もバランスを崩してイエローライン付近までふらついたが何とか立て直した。2コーナーでは逃げる児玉の後ろは5車身ほど離れてしまい、児玉は独走態勢に。落車を内に避けた久米が児玉を懸命に追い、立て直した坂口が3番手に入り、柳原、荒牧、那須で続き最終バックを通過。児玉と久米の差はなかなか詰まらず、児玉は2着以下に4車身の差をつけて逃げ切り。初代パールカップクイーンに輝き、ガールズグランプリの出場権を獲得した。児玉を追いかけた久米が2着、坂口が3着に入った。








<1R>

東口善朋選手
東口善朋選手
 赤板2コーナーで阿竹智史が、じわりと嘉永泰斗を押さえて先頭に立つ。単騎の隅田洋介が4番手に続いて、嘉永は5番手に下げる。最後方の野田源一がインを進出すると、打鐘2センターから三谷竜生が巻き返す。それに反応した阿竹もペースを上げて最終周回。近畿勢を追うように、嘉永が2コーナーからさらにまくり上げる。バックで久米良が三谷をブロックして、あおりで接触した嘉永は失速。しぶとくまくり切った三谷を、東口善朋(写真)が追い込んだ。
 「7番手になってしまいましたけど、嘉永君が内にいましたし(三谷は)いいタイミングでいってくれました。(最終)1センターはどうなるかなって思いましたけど、(三谷)竜生がまた踏んでいってくれた。最悪、小川(勇介)君を張れればと思って見ていた。(三谷を)交わせて良かったです」
 阿竹に合わされながらも、三谷竜生はロングまくりでじわじわと進んで最終4コーナーで前団をとらえた。
 「嘉永君が切って流したんで、中四国が駆ける展開も想定できました。自分はあのタイミングで行かないと。嘉永君が自分を警戒して締めてたんで、外しかないんで外を踏ませてもらいました。前も踏んでましたけど、我慢できたのは良かったですね」

<2R>

松井宏佑選手
松井宏佑選手
 前受けの新山響平が、松井宏佑(写真)を突っ張りそのまま主導権。松井はうまく下げて4番手に入るが、鈴木裕は連結を外す。5番手は長島大介で後位に雨谷一樹が追い上げる。ペースを握った新山が、そのまま駆けて最終周回。4番手の松井は、タイミングを取ってバックから仕掛ける。直線で並ばれた成田和也はけん制できず、松井が突き抜けて1着。
 「新山君が前を取ったらほぼ突っ張りかなと。1回突っ張られて、後ろに下がったら(勝負権が)ないと思ったんで、中団を取りにいきました。しっかりと対応ができたと思います。後ろが(鈴木)裕さんじゃないのがわかったので、ためて、ためていきました。(1走目も)いい感じだったんで、イケるかなっていうのがありました。ここに来る直前に体調崩して、思うような練習はできなかった。けど、ケアはしてきた。自転車の感触がパッとしないので、もう少しいじってと思います」
 新山の積極策を利した成田和也は、松井を止められる展開にもならず複雑な表情で振り返る。
 「新山君が(最終)2コーナーくらいから踏み返していたんで、自分はブロックの態勢を整えていた。だけど、(別線のまくりが)来なかったんで難しかった。松井君は徐々に踏んでいる感じもあった。最後は松井君に踏み勝てれば良かったんですけど」

<3R>

伊藤颯馬選手
伊藤颯馬選手
 九州勢を受けて4番手に入った清水裕友だが、追い上げた山口拳矢と接触して車体故障。伊藤旭の先行で打鐘を通過して、4、5番手に中部コンビが入る。車間を空けて別線の反撃に備えた伊藤颯馬(写真)は、最終2コーナーからまくった山口に合わせて番手まくり。山口に踏み勝った伊藤颯が1着。
 「自分は付いて行くだけでした。もう(伊藤旭が)キツそうだったんで、出ていく感じになりました。ほかのラインの仕掛けが遅かったんで引きつけるだけ引きつけたんですけど、(山口)拳矢さんのスピードが良かったんで前に踏む選択をしました」
 2位入線の山口が失格。山口のまくりに付けて外を踏んだ浅井康太が2着に繰り上がった。
 「ポイント制なんでしっかりとライン形成をしてって心掛けていました。最後は内に行ければ良かったんですけど、外を踏んで勝負しようと思った。(打鐘で伊藤旭が踏んで山口)拳矢が切れないスピードだったんで、厳しい展開にはなりましたね。(九州の2段駆けは)想定していましたけど、そこまでいかないのかなってうのもあった。(状態としては)現状維持かなって感じですね」

<4R>

平原康多選手
平原康多選手
 4番手の深谷知広は、後方から上昇した飯野祐太をけん制しながらポジションをキープして赤板を迎える。前受けの眞杉匠が、先行態勢を取り打鐘。飯野はインを押し上げて深谷と併走になる。浮いた深谷は1車下げて、5番手に入り最終ホームを迎える。眞杉がリズム良く風を切り、5番手からまくり追い込んだ深谷は伸びない。番手で絶好の平原康多(写真)が、直線半ばで眞杉を交わして1着。
 「(眞杉は別線が)来づらいうまいペースにハメ込んでいた感じでしたね。自分も(眞杉の)スピードが落ち着かないと車間が切れないので、(最終)ホーム前から徐々に空けていけばと。自分はそんなに調子がいい感じではないんで、自信をもってやれている感じではない。ただ、できることをと。今日(3日目)の1着でホッとしたというか、多少なりともやれるかなっていうのはあります」
 関東ライン3番手の宿口陽一は、直線で外に持ち出して2着に伸びた。
 「3番手は慣れてないので動きが難しかった。それで平原さんと眞杉君に迷惑を掛けてしまった。自分も気持ち車間を空けていたけど、平原さんがすごく仕事をしていた。自分ももうちょっとなにかできれば。直線はまあまあ踏めていると思う。今回から新しい自転車で、全然違うセッティングでやっているんで、合わせていってと。脚自体はいいと思います」

<5R>

山田庸平選手
山田庸平選手
 打鐘手前では近畿勢に包まれて詰まった感もあった松浦悠士だが、最終ホームでは皿屋豊と石塚輪太郎の叩き合いになり、中団の松浦に流れが向く。後方から踏み上げた北津留翼は、中途半端で外に浮いて立て直しを余儀なくされる。1センター過ぎからまくった松浦が前団をとらえる。その上をまくった北津留は一息も、乗った山田庸平(写真)がシャープに伸びて1着。
 「踏み合ってくれたので、北津留さんがまくりやすい展開になったと思います。(最終)2コーナーで踏んで合わされてやめて、もう一度行ってくれた。あとは内か外かを見極めながら、(北津留の)内へいった感じですね」
 松浦マークから差し脚を伸ばした岩津裕介は、微差での2着。
 「松浦君は柔軟に走ってくれるので、思ったままに行ってくれた感じですね。みんな脚を使っていたのでしんどいレースにはなったんですけど、よく外に持ち出してくれたなって感じです。決まったと思った瞬間にすごい勢いで行かれたんで悔しかった。山田(庸)君がすごかったですね」

<6R>

和田圭選手
和田圭選手
 赤板1コーナーで新田祐大が、大石剣士を押さえて出る。北日本3車が出切り、4番手に引いた大石は、坂井洋との併走になる。スローペースのままレースは流れて、外の坂井も中団の腹をかためて、新田の先行で最終ホームを通過する。2コーナーで坂井が4番手を取り切るも、新田のペースに動けない。番手の和田圭(写真)が、ゴール寸前で新田を差し切った。
 「(周回中は)一番後ろは嫌だったけど、あとは新田が行けるところから必ず仕掛けるだろうし、信頼して付いていました。セオリー的には坂井が来ると思ったけど来なかったんで、新田も駆ける感じだった。あとは坂井は中団からのカマシもあるし、どこで新田がダッシュするのかなと。1走目は自分の調整ミスだったのか、(新山)響平の走りで刺激が入った。あれで今日(3日目)の方が楽でしたね」
 先頭に立った新田祐大は、スローペースに落として別線にプレッシャーを与える。新田の強烈なダッシュに坂井も動けず、新田がそのまま先行策で2着に粘り込んだ。
 「僕は最近バック本数が少ないので、大きなことは言えないけど。あの展開になったら、先頭の3人はみんな同じことを考えてたんじゃないかと。2周で押さえたところから先行っていうのは、自分も頭にあった。1走目の走りで成田(和也)さんに勇気をもらえて、それが今日(3日目)の走りになったのかなと」

<7R>

古性優作選手
古性優作選手
 愛媛コンビが赤板1センターで押さえて出て、単騎の大川龍二が続く。松本秀之介は内の古性優作(写真)を警戒しながら、4番手併走で打鐘を迎える。さらに踏み込んだ松本秀が主導権を奪う。古性は俊敏に反応して、九州勢を追って外に持ち出す。松本貴治と吉本卓仁がからんで、あおりもあった古性だが最終2コーナーから加速するとあっさり前団を仕留めて断然の人気に応えた。
 「(あおりがあって)ちょっと初日のことが頭をよぎりましたね。あれでバックを踏んだんで、スピードの乗りは良くなかった。けど、ラインで決まったんで。踏んだ感じは出切れると思ったんで、粘れるように最後まで踏むだけでした。初日に人気になっていたんですけど、落車で迷惑を掛けてしまったんで良かったです」
 直線でも詰められなかった稲川翔だが、危なげなく続いて地元ワンツー。ファンの期待に応えた。
 「(古性は1走目に落車しているが)走り出したら忘れると思っていた。自分は(古性)優作が出切ったあとのことを考えていましたね。(駆け出しは)無心で付いてきました。後ろを確認したら村上(博幸)さんも3番手を守ってくれていたので心強かったですね」

<8R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 吉田拓矢にフタをされた北井佑季は、後方に下げて反撃の態勢を整える。赤板1センター過ぎから踏んだ北井は、山降ろしで加速して主導権を奪取する。4番手から合わせて動いた吉田は、神奈川3番手に飛び付いて東龍之介をさばく。外に浮いた東は諸橋愛の一発で後退。逃げる北井に郡司浩平(写真)、吉田、諸橋で最終バックを通過する。2センター付近から追い込んだ吉田を外に張った郡司が、諸橋の中割りもしのいで1着。
 「みんな踏んでたんでキツかったと思うけど、(北井が)ここってタイミングで下りを使いながら行ってくれた。ただ、3番手はタイミングが合ってたんでからまれそうだなと。それで後ろにヨシタク(吉田拓矢)が入ったのがわかった。最後は冷静に引きつけていけた。ヨシタクが外を踏んだんで、それけん制して諸橋さんは絶対に内に来るだろうと。そこをもっと早く対処できていれば、もっと楽にワンツーだったと思う」
 打鐘で主導権を握った北井佑季は、臆することなく風を切る。郡司のアシストもあり、2着ポイントを加えて二次予選に進んだ。
 「初手の並びの段階でいろんなパターンを考えていた。ああいう風に走るのが、一番(ラインで)決まりやすいかなと。ワンツースリーは決まらなかったけど、出切れたんで良かった。踏むべきところで踏めた。1走目は新山(響平)さん相手に不甲斐ないレースをしたんで、気持ちを入れ直した。今日の方が心も体の状態もいい」

<12R>

児玉碧衣選手
児玉碧衣選手
 7番手の坂口楓華が打鐘3コーナーから上昇して、それに合わせて3番手の久米詩も動き出す。最内から荒牧聖未、久米、坂口の3車が重なった4コーナーで児玉碧衣(写真)は、迷うことなく一撃にかけてスパート。さすがのダッシュで最終ホームで先頭に立つ。児玉に続いた小林莉子が、飛び付く坂口と接触して落車。坂口もバランスを崩して、逃げる児玉の後ろは大きく車間が空く。2番手の久米は児玉のスピードになかなか詰められず、直線を向いてもセーフティーリード。児玉がひとり旅で、パールカップの初代クイーンの座に就いた。
 「めちゃくちゃうれしい、本当に嬉しいです。(坂口)楓華が動いて(久米)詩の横でちょっと止まって見合う感じになった。それでペースがガクンと落ちたんで、ここしかないと思って思い切り踏みました。やっぱり初日と2日目と1着できてるんで、それが自信になった。自信をもって踏み込めたのかなと思います。後ろに(小林)莉子さんがいて、1周行ったら抜かれるかなと。でも、抜かれたら、そこでまた練習すればいいしと。仕掛けるところで手を抜かずに全力で行こうと思ったのが、今日の結果につながったのかなと思っています」
 最終1コーナーでは目の前でアクシデントが起こった久米詩。避けて視界が開けた時には、すでに児玉がスピードに乗っていて届かない位置にいた。
 「(児玉)碧衣さんが上からカマして来るのも、ふまえながらだった。ただ、もうちょっと早く動いていたら、落車に巻き込まれていたかもしれない。自分の判断が迷ったところもあった。自分の準備不足って感じです。もうちょっと車間が詰まっていればっていうのがあったけど、吸い込まれる感じがなかった」
 小林との接触で大きくバランスを崩した坂口楓華は、最終2コーナーで久米の後ろに入り態勢を整える。直線勝負には持ち込んだものの、久米を交わせず悔しそうに振り返る。
 「(久米)詩ちゃんを押さえて、自分の行けるところでと。みんなのタイミングをズラしたかった。そのあとは接触があったけど、あきらめずに踏んだ。(最終)バックで余裕もあった。詩ちゃんの外にいける脚があったのに、守りに入ってしまった。まだゴール前でも脚があったのに…」