『第74回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:6月18日

 岸和田競輪場を舞台に開催された大阪・関西万博協賛「第74回高松宮記念杯(GI)」は、6月18日に最終日が行われた。東日本4人、西日本5人が激突した決勝は、3車のラインができあがった脇本雄太が主導権。番手から追い込んだ地元の古性優作が優勝。2月の全日本選抜に次ぐ今年2度目のGI制覇で高松宮記念杯を連覇。通算5回目となるGIのタイトルを獲得して、優勝賞金4590万円(副賞含む)を手にした。

決勝出場選手特別紹介
決勝出場選手特別紹介

決勝戦 レース経過

 けん制気味のスタートから脇本雄太が出ていって、脇本-古性優作-稲川翔の近畿勢が前受けを選択。以下は松浦悠士-山田庸平、松井宏佑-郡司浩平、新山響平-佐藤慎太郎で隊列は落ち着いた。
 動きなく青板バックを過ぎたところで脇本が誘導との車間を徐々に空け始める。3コーナーから新山がジワジワと上昇していくが、脇本はもう出させない。赤板でもまだ並び掛けてこない新山を突っ張って、そのまま先行態勢に入った。出切れなかった新山は2コーナーで諦めて引いていき、南関勢とモツれた末に、2センターあたりで6番手に収まる。脇本の先行ペースで流れる中、最終2コーナーに差し掛かったところで松浦がまくる。好スピードで上がっていった松浦だったが、3コーナーでの古性のブロックで止められる。新山、松井は仕掛けられないままで、佐藤が2センターから空いた内のコースに突っ込んでくる。ゴール手前で脇本はさすがに失速し、番手から鋭く抜け出した古性が地元での高松宮記念杯連覇を達成した。稲川はなおも踏み止めない松浦と絡んで車が外に流れ、そのインを突いた佐藤が2着に入った。








<4R>

吉本卓仁選手
吉本卓仁選手
 赤板2コーナー手前で先頭に立った青野将大が、そのまま主導権。3番手は追い上げた吉澤純平(外)と大川龍二で取り合いになり打鐘を通過する。前受けから8番手になった岩谷拓磨は、タイミングを取って最終1センターから仕掛ける。岩谷がまくり一気に前団をのみ込んで、ゴール寸前で番手の吉本卓仁(写真)が交わした。
 「岩谷が1番車だったし、全部任せてあとは、岩谷が行けるところからと。(最終)ホームくらいからじわっと仕掛け始めてた。青野君もフカしてたんで、全体的に赤板くらいからスピードが上がってた。だから(踏み出しの)ダッシュはそこまでキツくはなかった。後輩のおかげで連に絡ませてもらっている。1着なんで気持ち的にはうれしいけど、自力じゃないので自信っていうのはないですね」
 5走目の最終日にしてようやく手ごたえをつかんだ岩谷拓磨が、スピード感あるまくりを見せた。
 「あのまま切って、切ってだったら、僕が先行しようと思ってた。すんなり下げないで、切れ目で止まってと。順番を崩さないようにと思ってました。連日、踏み切れてなくて脚がいっぱいになってた。今日(最終日)はセッティングを修正したら良くなった。力が伝わっている感じがしました」

<6R>

伊藤旭選手
伊藤旭選手
 眞杉匠に併せ込んでフタをした取鳥雄吾が、赤板1コーナー過ぎから踏み込んで出る。取鳥が徐々に踏み上げてそのまま駆ける。4番手を稲毛健太と併走になった眞杉は、打鐘2センターからスパート。先行態勢の取鳥も慌てて合わせるが、眞杉が叩き切る。関東勢を追った単騎の伊藤旭(写真)は、前団のもつれを見極めて最終2コーナー過ぎからまくる。脚力を消耗した眞杉はいっぱいで、まくり切った伊藤が1着。
 「点数を見た時に眞杉さんが一番持っているし、あの並びなら(関東勢から)と思ってました。(眞杉と取鳥で)モガき合うかなと思ったら、モガき合ったんで、(最終)2コーナーで行きました。神山(拓弥)さんにブロックされるかなと思ったけど、いい感じで自転車が進んでくれた。GII、GIでの1着は全部単騎なんですよね。なんでもできるっていうのはあるけど、もっと底上げが必要ですね。それを(シリーズを通して)痛感しました」
 関東ライン3番手の武藤龍生は、岩津裕介ともつれた前の神山拓弥の脚色は確かめて外を追い込んだ。
 「自分は連結を外さないようにと。今回は7(着)と並べてますけど、手ごたえはずっとあって5走を通して、ある程度、余裕もあった。ただ、(展開的に)どうにもいかないこともあって、今日(最終日)はチャンスだったんで、眞杉とカミタクさん(神山)の動きを見てから踏みました」

<8R>

北井佑季選手
北井佑季選手
 雨谷一樹、松本貴治の順番で切って、前受けの北井佑季(写真)は一本棒の5番手。三谷竜生を後方に置いて、北井が打鐘で仕掛ける。強烈なダッシュで北井がカマして、福田知也は車間が空く。最終ホームでは松本と福田でもつれるが、松本がさばいて逃げる北井を追いかける。その外をまくった三谷は不発。松本が空いた車間を詰めて、北井に詰め寄り、阿竹智史も外を追い込む。が、四国勢を退けて北井が押し切った。
 「細切れだったんで、いろんな形を考えてました。行けるタイミングで行こうって思っていて、あれが行けるタイミングでした。ただ、福田さんが離れてしまっているので、僕が行くタイミングでも福田さんには厳しかったのかそこはしっかりと考えないと。出切った段階で後ろがピッタリ付いてないのはわかった。そこからはしっかり踏み上げて、踏み直せるようにと。でも、あんだけ詰め寄られているっていうのは、踏みすぎていたのかなっていうのもあります」
 北井のカマシに松本が番手に飛び付く。福田をさばいて詰めた松本に乗った阿竹智史が、ゴール前で松本を交わして2着。
 「(松本が)全部やってくれました。駆けてもいいくらいの感じだったし、自分が1つでも波をつくってあげられれば良かったんですけど。あとは三谷と雨谷の動きを見てでした。今回はまったく伸びてない。(前回の)落車の影響もあって、(最終)4コーナーから踏み切れてない5走だった」

<9R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 菅田壱道が押さえたところを、すかさず伊藤颯馬が出て主導権を握る。北日本勢が中団に収まり、深谷知広(写真)は7番手。単騎の隅田洋介が最後方で打鐘を通過する。伊藤が最終ホームを目がけてペースアップ。4番手の菅田は2コーナー手前からまくりを打つ。番手の山田英明が、菅田をブロック。3コーナーから大外をまくった深谷が、上がり10秒7のハイスピードで前団をごっそりのみ込んだ。
 「(先行した伊藤が)本当にギリギリのいいペースで行ってたんで、タイミングを逃してしまった。(菅田が)行かなければ自分も行ってたタイミングでした。落ち着いて、(気持ちを)切り替えていきました。(今シリーズを通して)スピードの面ではつくれていたんですけど、持久力の面がまだまだでした」
 菅田のまくりを阻んだ山田英明は、直線で追い込むも2着。
 「(伊藤が)むちゃくちゃ強かったですね。自分は車間を空けるつもりじゃなかったんですけど空いちゃった。(菅田が先にまくってきたが)あんまり厳しくすると落車もあるんで最低限ですね。あとは深谷君との脚力勝負でした。大外を来ていたのはわかったんで、(伊藤)颯馬も頑張ってくれましたし、最後はタテに踏ませてもらいました。(3月で40歳になり、後は追い込みとしてやっていく)いいタイミングなのかなって思っている。もっと技術を磨いていきたい」

<10R>

坂井洋選手
坂井洋選手
 渡邉一成が犬伏湧也の上昇を阻んで、赤板過ぎに突っ張る。4番手は単騎の坂井洋(写真)がキープし、近畿コンビが5、6番手。7番手に戻った犬伏は、打鐘手前から再び仕掛ける。渡邉がペースを上げて、犬伏を合わせ切る。香川雄介、桑原大志が中団に降りて、坂井は最終1センターで7番手から踏み上げる。成田和也のけん制を坂井が好スピードで乗り越えて、近畿勢が坂井を追走する。南修二が迫るも、坂井が振り切って1着。
 「(北日本、中四国勢)どちらが前でもその後ろからレースをしようと思ってました。(突っ張られたラインが)降りてくるのも想定していたけど、悪いタイミングで降りてきて脚はたまってなかった。後ろに南さんもいたんで、(かぶる前に)早めに仕掛けようと。整ってなかったけど行きました。(桑原と)接触するアクシデントもあったけど、もう行けるところまでと。(外に浮いていた犬伏のところも)待っちゃうと出なくなっちゃうので、思い切り突っ込むだけでした」
 結果的には坂井のまくりに続いた近畿勢が2、3着。地元の南修二は、仕掛けられずの流れ込みをこう振り返った。
 「(坂井よりも)先に仕掛けたい気持ちが強かった。(村上博幸に)任せていただいたのに申し訳なかったです。自分がしたいレースを(坂井に)やられてしまった。(坂井のまくりに付いていって差せなかったのは)脚力通りです。展開をモノにできなかった」

<12R>

古性優作選手
古性優作選手
 別線にとってはまさかの展開だったのかもしれない。赤板で脇本雄太が新山響平を出させずに突っ張って、そのまま主導権を握る。松浦悠士は4番手をキープして、新山はなんとか6番手で最終周回。車間を詰める勢いで松浦が、2コーナー過ぎからまくる。しかしながら、逃げる脇本の番手の古性優作(写真)も盤石の態勢。松浦を一発のブロックで仕留めると、追い込んだ古性が直線で抜け出して地元優勝を飾った。
 「初日(に落車して)、本当にお客さんに迷惑を掛けてしまった。申し訳なかったです。(決勝は)新山君が押さえに来るのが遅かったので、もしかしたら(脇本に)スイッチが入るかなと。そのあとは松浦君がいいスピードで来たので、しっかりと張って稲川(翔)さんにもチャンスがある走りをと思いました。難しい判断になりました。(初日に落車があってここまで)お客さんの声で、なんとか自分の精神状態を保って走れた。これだけのお客さんの前で優勝できたのはうれしい。(通算)300勝もうれしいです」
 佐藤慎太郎は、最終バックを7番手と前が遠い。目標の新山が浮くと3コーナー過ぎから内よりを進出。直線で稲川が松浦を外に張った隙を見逃さず、瞬時の判断で稲川のインを強襲した。
 「(新山は)タイミング的にワンテンポずつ遅かったかもしれない。脇本が誘導との車間を(そこまで)空けてなかったので、突っ張られるんじゃないかと思いました。そのあとはギリギリ松井(宏佑)を入れずにすんだのが、2着までいけたのかなと。自分ではしっかりと見極めていけたし、あのなかでの2着っていうのは収穫があった」
 「こんなに申し訳ない3着はないですね…」とは、稲川翔。古性との地元ワンツーかに思われたが、直線で松浦とからんだところを佐藤に伸びられた。
 「前の2人(脇本、古性)は最高のレースをしてくれた。自分も役割をまっとうして優勝を狙おうと。甘いですね。内には誰も入れないつもりだったけど、自分のコースを確保しようと松浦に当たったら、(佐藤)慎太郎さんに…。(古性)優作は苦しかったと思うけど、優作が優勝してくれてうれしかった」

次回のグレードレースは、久留米競輪場開設74周年記念「第29回中野カップレース」GIIIが、6月24日~27日の日程で開催されます。
今シリーズは3億円レーサー脇本雄太とグランドスラマー新田祐大の激突に注目。地元勢では昨年の覇者である北津留翼に連覇の期待がかかります。
また、最終日第9レースにて「レインボーカップチャレンジファイナル」が一発勝負で争われます。こちらも目が離せません。

6月13日時点の出場予定選手データを分析した、久留米競輪「中野カップレース」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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