『第68回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:6月18日

 岸和田競輪場を舞台に開催された「第68回高松宮記念杯(GI)」は、6月18日に最終日を迎え決勝が第11レースで行われた。レースは吉田拓矢が主導権を握ったが、後続がもつれる展開。新田祐大が一気のまくりで、通算4度目のGI制覇(4日制以上)を遂げた。優勝賞金2890万円(副賞含む)を獲得し、年末の「KEIRINグランプリ2017(GP)」の出場権をつかんだ。

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どぶろっくライブ
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東西対抗予想会 岡本新吾、井上薫、山口幸二、山口健治
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ファイナリストが意気込みを語る
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決勝戦 レース経過

 号砲で新田祐大がいち早く飛び出して誘導の後ろを取り、以下は成田和也、稲垣裕之-村上義弘、山田英明-井上昌己、吉田拓矢-平原康多-武田豊樹の順で並んだ。
 周回が進み、青板周回の2センターから吉田が動きを見せると、山田と稲垣が先に上昇し、山田が赤板前に誘導を下ろして先頭に出た。すると、すぐにその外を吉田が叩いて主導権を握った。打鐘が入り、吉田がハイペースのまま逃げていくと、稲垣が6番手外併走から反撃に出る。しかし、稲垣は武田の横までが精一杯。その武田が1角で稲垣を飛ばしにいくと、空いた内を山田が潜り込んでいく。隊列がゴチャついたところを、新田のまくりが襲いかかる。新田は一瞬にして前団をまくり去ると、成田も懸命に追って福島コンビでセーフティーリード。最後は新田が力強く押し切って大会連覇を達成した。マークした成田が2着。内をすくった山田は平原を退かし、番手から抜け出して3着に入る。





<1R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 早坂秀悟が合わせて踏んだ根田空史を打鐘の3コーナーで叩いて主導権。そのまま別線の動きを確認すると、再度反撃に出た根田に合わせてギアをトップに入れる。根田は出切れず外に浮いて不発。車間を切っていた佐藤慎太郎(写真)は、まくってきた長島大介をけん制すると、直線で追い込んで1着。
 「(早坂)秀悟が積極的に行ってくれた。いいレースをしてくれましたね。掛かりも良かったし、終始ペースで踏んでいて残りそうだったんで秀悟を残したかったです。(シリーズを通して)脚は悪くなかったですけど、負け戦でも修正できなかったし、みんなより気持ちの準備ができていなかったです」
 早坂秀悟は佐藤悦夫にゴール寸前で交わされて4着。惜しくも確定板入りならず。
 「根田と意地の張り合いをしてしまいました。あれで4着だし、なにかが足りない。次の久留米はもっと工夫して」
 5着の長島大介は、組み立てを悔やむ。
 「本当は先に押さえて、根田さんが切ってくれるかなと。それで、前を踏ませて3番手からまくるのが理想でした。失敗しましたね。最後も(佐藤慎の)振りを予想はしていたんですけど、体が逃げてしまって。ああいうのが(上位陣との)差ですね」

<2R>

和田真久留選手
和田真久留選手
 打鐘手前で押さえて出た山田久徳の番手に競り込んだ芦澤大輔が、その上を叩きに出た根本哲吏の番手に飛び付く。もつれたところ俊敏に反応した和田真久留(写真)がロングまくりで押し切った。
 「打鐘のところでぐちゃっとして難しかったですね。でも、すぐに体が反応してくれた。最終バックで後ろが離れているのがわかったけど、出切ってからはそのままペースで踏めました」
 和田のまくりに置いていかれた内藤秀久だったが、そこを踏ん張って最後は4分の3車輪差まで詰めた。
 「やっぱり和田君の駆け出しは難しいですね。行くのか行かないのかが、わかりづらい。自分は後ろに迷惑を掛けてしまいました」

<3R>

松岡貴久選手
松岡貴久選手
 赤板で稲毛健太が飛び出すと稲毛ラインに松岡貴久(写真)が続いて、前受けを余儀なくされた新山響平は7番手に下げて仕切り直し。2コーナーから巻き返して稲毛を叩いた新山が主導権を奪って逃げる。番手で車間を空けた坂本貴史に松岡貴久がまくりで襲い掛かる。最終3コーナーで坂本のブロックを凌いだ松岡貴が、直線で抜け出して1着。
 「(坂本が)出て行くと思ったら、結構(ブロックに)来た。でも、今日は自転車が流れてくれた。体は問題ないし、自転車で言えば今日が一番だった」
 青森コンビを追走した成清貴之が、狭いコースをこじ開けて2着に伸びた。
 「(前に)離れちゃいました。強いのは知っているんで、危なかった(笑)。1着が欲しいけど、(ラインの)3番手で2着なら1着みたいなもんですかね。脚的には仕上がっていたんで、準決くらいまではいきたかった。あと一歩足りないですね」

<4R>

近藤龍徳選手
近藤龍徳選手
 近藤隆司が先行策に出るが、松浦悠士が番手に飛び付いてもつれる。前団の様子をうかがっていた柴崎淳は、最終ホームからスパート。危なげなく柴崎に続いた近藤龍徳(写真)が、きっちりチャンスをモノにした。
 「作戦通りにいきましたね。柴崎さんが強かった、さすがですね。深谷(知広)さんに足首の角度を指摘されて、そこを直したら前回の高知でいきなり優勝ができて。最近は強い人に付いていこうと思って踏み込み過ぎていたけど、角度を変えて脚を回せるようになって余裕がでてきた」
 ダービー以来の今シリーズとなった柴崎淳だったが、持ち前の軽快なスピードでラインを上位独占に導いた。
 「立ち上げがまだまだキツいから打鐘で前と離れてしまったけど、ペースが上がってからは脚を回せている。日増しに上向いていますね。次の久留米記念までには、もっと良くなりそう」

<5R>

古性優作選手
古性優作選手
 古性優作(写真)が地元の意地を見せて白星で締めた。レースは近畿勢の先頭を任された中井俊亮が、渡邉雄太を突っ張って出させない。渡邉雄は引かずに踏み続けたが、打鐘の2センターで力尽きる。中団の友定祐己も追い上げた渡邉晴智に絡まれて脚力をロスしてしまう。車間を切っていた古性優作は、冷静に友定をけん制すると、直線で追い込んだ。
 「(中井)俊亮がホンマにいいレースをしてくれた。全部やってくれたし、僕はなにもしていません。俊亮と西岡(正一)さんのおかげですね。(今シリーズは)最終日に1着が取れたけど、それはラインのおかげ。初日、2日目、3日目とあんなに応援してくれて。期待してもらったお客さんに申し訳ないです」
 中井俊亮は直線で失速して5着に沈んだが、気合いの先行策で古性の白星に貢献した。
 「遅かったら突っ張ろうと考えていました。(4月の)川崎記念で(古性と)連係したときも仕事をしてくれたし、頑張りたいなと。(3着までに残れなかったのは)実力不足ですね」

<6R>

山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
 後続を一本棒にして飯野祐太がレースを支配するが、打鐘の3コーナー過ぎから河端朋之が反撃。河端が叩いて主導権を奪ってグングンと加速する。対し、山崎芳仁(写真)は自力に転じて中四国コンビを追いかけ、そのまままくりでのみ込んだ。
 「(河端に)合わせて出るつもりが、スピードがすごくて無理でした。遅れて切り替える形になったけど、追いつける感じはしたので間合いを取りながら踏みました」
 菊地圭尚が流れ込みの2着。松川高大に付けた大塚健一郎は直線で内を鋭く伸びるも3着まで。
 「外じゃ間に合わなかったし、あそこしかないでしょ。(車が)伸びましたね。ハンドル回りを修正して、だいぶ楽に出るようになりました。今日はリラックスして走れたし、良くなってきている」

<7R>

坂本亮馬選手
坂本亮馬選手
 赤板で小松崎大地を押さえて出た山中秀将ラインに単騎の三谷将太が切り替えて、中団に九州コンビが収まる。打鐘手前から小松崎が叩きに出るが、山中が突っ張り主導権をキープ。しかしながら、前団の隊列が凝縮して、坂本亮馬(写真)には願ってもない流れ。坂本が最終2コーナーから踏み出し鮮やかなまくりで2着を5車身ちぎった。
 「周回中から脚はいっぱいだったけど、気持ちですね。初日は自在性を見せられたし、今日はショート(まくり)が出た。今回は合格点です。次の(地元記念に)判断材料になった。どうにか戦えそうですね」
 坂本のまくりに合志は付け切れず、山中秀将の逃げを利した中村浩士が離れた2着、山中は4着だった。
 「小松崎さんがあんまり早く来るようなら、出させてもと思ったけど。小松崎さんは迷っている感じだったんで(突っ張った)。前に出てから2周だし長かった。普段、駆けてないところからだから、すごくタレた。それで4着なら、もうちょっと工夫して走れば3着に残れる展開が作れるのかと。得意なパターンで1着を取るレースはできてるんで、あとは苦手なパターンで3着までに入るレースができるように」

<8R>

神山雄一郎選手
神山雄一郎選手
 赤板の2コーナーで先頭に立った池田勇人がちゅうちょすることなく逃げる。菅田壱道のまくりを阻んだ神山雄一郎(写真)が、直線で早めに抜け出し2月以来久々の白星を挙げた。
 「ジャンからすごかったね。(池田勇は)出切ってそのまま駆けて行っちゃうんだから。外に気配を感じたけど、たぶん来れないだろうなって思いました。かなり久々に1着を取れたし、うれしいね」
 オーバーペースかに思われた池田勇人だったが、直線でもしぶとく踏ん張って4着。
 「流したらどっちのラインも来そうだと思ったので、そのまま駆けちゃいました。でも、昨日までと違って重かったし、最終バックも全然追い風じゃなくてキツかったですね。初日に力を出し切れず失敗したので、そのあとは吹っ切れた感じですかね。いいレースはできたけど、もういっぱいでした」

<9R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 前受けから7番手に下げた深谷知広は、赤板の2コーナーから巻き返す。抵抗する郡司浩平を力でねじ伏せて、最終ホームで主導権を握った。番手の浅井康太は別線との間合いを図り、直線で差し切り勝ち。検車場に引き揚げて来ると、「(深谷が)いいレースをしてくれましたね」と、振り返った。
 3着にも坂口晃輔が続き、中部で上位を独占。その立役者となったのは深谷知広(写真)だ。
 「踏むところは踏めました。(ラインで決まって)一番良かったです。初日、2日目と浅井さんに迷惑をかけているので。でも、(末の粘りは)まだまだですね。乗り方も変えているので。(競技用の自転車を乗っていて感覚のズレは)多少あると思いますけど、やるからには。一戦、一戦集中して、練習してきます」
 郡司浩平は力勝負を挑んだが、深谷に完敗。
 「(深谷が中団で)粘るかなと思っていたんですけど。そしたら、引いていってしまって。そうなったら、突っ張ることしか頭になかったです。他のことも頭にあれば、もう少し着にからむレースができたと思います」

<10R>

武井大介選手
武井大介選手
 6人が落車に見舞われるアクシデント。金子貴志を連れて持ち前の先行パワーを見せた竹内雄作がレースを支配する。5番手の三谷竜生がまくり上げると、最終3コーナー過ぎに金子と絡んで落車。4番手の武井大介(写真)は内に落車を避けて、逃げ切り図る竹内をゴール寸前で交わした。
 「石井(秀治)さんは三谷君を叩きましたからね、強かった。石井さんは余裕がありそうだったけど、かぶってしまったので、金子さんをすくって内に行きそうな気配もあった。そこでちょっと(落車の)匂いがしました。自分も余裕があったけど、前もタレていたので抜けました」
 先行策で力を出し切った竹内雄作は、後続の大量落車もあって2着に粘り込んだ。
 「打鐘で石井さんに踏まれたからキツかったですね。もう少し出切ってから流せば良かった。でも、ゴールまでと思って踏んでいたけど、しっかり逃げ切らないとダメですね」

<11R>

成田和也選手
成田和也選手

山田英明選手
山田英明選手
 13年、ここ岸和田の高松宮記念杯で成田和也を優勝に導く逃走劇を披露した新田祐大が、今度はまくりでタイトルを奪取。高松宮記念杯連覇で成田とのワンツーを結実させた。
 「本当に理想通りというか、スタートが取れてそこからの組み立てが作戦通りでした。力を出せたことが勝利につながった。優勝を心に置きながらっていうのはもちろんですけど、一番は成田さんとワンツーを決められるようにと思っていた。成田さんがお前の好きなように走れ、信じているからって言ってくれて。自分も自信を持って仕掛けられた。あの時(13年)成田さんが優勝して、自分もそれを目の前で見ていて、僕もああいう風にタイトルを獲りたいってなって思った。それでダービーとオールスターを優勝できて、高松宮記念杯は特別な思いがありますね」
 関東勢が主導権を握って、打鐘から稲垣裕之がじわじわと前団に襲い掛かる。中団を確保していた山田英明がインを進出してもつれると、新田が最終2コーナーから一気のまくり。懸命に新田に食らいついた成田和也(写真)が、吸い込まれるように流れ込むも1車身半遅れてのゴール。
 「新田が(優勝して)よかったなっていうのと同時に、自分が追走できてよかったなというのがある。もうちょっと迫れるようにしたいですね。新田には気にせず自分のタイミングでっていう感じだった。すごいスピードだったし、自分はもう覚えてない。(GIの舞台に)戻ってきたっていう感覚があったけど、こんなに早くこういう機会が来るとは思わなかった」
 関東ラインの後ろをキープした山田英明(写真)は、最終1センターで内を進出すると、平原康多を2コーナーでさばく。見せ場を十分にメイクしたが、福島コンビに外をのみ込まれて3着まで。
 「僕は内、外に関係なく行けるところを前々にと思っていた。自分のタイミングがいいようには来ないですから。そこがかみ合えばいいんですけど。外がかぶってたんで、内しかないと。イチかバチかだった」
 吉田拓矢が風を切って番手の平原康多にチャンスが訪れたが、山田の奇襲で万事休す。
 「途中までいい形で進めていたけど、(山田に)対処できなかった。悔しいのひと言です…」と、言葉を絞り出した。
 外に浮きながらも稲垣は、最終ホームであきらめずに前へと踏み込む。連係が外れかけた村上義弘だったが、再度稲垣を追って3コーナーからは自ら外を踏むも7着。
 「あの辺の組み立ては稲垣に任せていたんで、あとは自分の判断でした。(外に浮いてたんで)立て直して、新田君を動かしてっていう形があるのかと思ってたら。その前に稲垣が前々に行った。それで連結を外さないように(稲垣を追いかけて)だいぶ脚を使った。いまの僕では無理でした」
 赤板過ぎに新田に内から盛り返された稲垣裕之は、苦しい外併走を強いられる。そこから敢然と仕掛けるも、武田豊樹の横で力尽きた。
 「赤板のところで新田君の差し残しで、位置を取られてしまった。それが敗因のひとつでもありました。それで新田君と併走になって、外々に動かされる苦しい展開になった…」