『第69回高松宮記念杯競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:6月17日

 伝統の東西対抗。岸和田競輪場で開催された「第69回高松宮記念杯競輪(GI)」は、6月17日に最終日が行われた。東、西に分かれた熾烈な勝ち上がりからファイナルにコマを進めた9選手。その決勝では、近畿勢がレースを支配した。番手の三谷竜生が逃げた脇本雄太を交わしてV。ダービーに続いて今年2度目のGI制覇で、優勝賞金2890万円(副賞含む)を獲得した。

決勝戦出場選手・特別紹介
決勝戦出場選手・特別紹介
日本名輪会トークショー
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井上茂徳 VS 滝澤正光・高松宮記念杯競輪覇者トークショー
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浅尾美和 アスリートトークショー
浅尾美和 アスリートトークショー
予想会・東西対抗戦
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決勝戦 レース経過

 号砲で勢いよく村上博幸が飛び出して正攻法の位置を確保。周回は脇本雄太-三谷竜生-村上-原田研太朗-山田英明-菅田壱道-吉澤純平-武田豊樹-木暮安由の並び。
 青板のホーム過ぎから木暮が武田のアウトに追い上げると、武田は車を下げる。バックから上昇した吉澤が4コーナーで誘導員を下ろすと、3番手で続いた武田が内をすくって木暮との併走がはじまる。関東ラインの動きに原田が続き、単騎の菅田は6番手。後方に下げた脇本は打鐘前2コーナーから一気に踏み込むと、4コーナーで近畿3車がきれいに出切ってしまう。やや離れた4番手で吉澤が追いかけるが、後ろで競った2人も吉澤に離れ隊列はバラバラに。村上も徐々に車間が空きはじめ、脇本、三谷の2人にしぼられた優勝争いはダービーに続いて三谷が脇本をとらえてGI連続優勝。4コーナーで吉澤は村上に追いついたが、1センター、7番手からまくった原田が空いた車間を使ってグングン加速し、3着に食い込んだ。



<1R>

杉森輝大選手
杉森輝大選手
 早坂秀悟が清水裕友の上昇に合わせて前に出る。早坂に主導権を譲る気はなく、清水は3番手の山賀雅仁と併走。激しいポジション争いをしながら、最終ホームを通過する。8番手で様子を見ていた杉森輝大(写真)は、満を持して1センターからアタック。逃げる早坂を2センターでとらえた。
 「ホームで行こうと思っていたんですけど。前がゴチャついていたので、もうちょっと待ってから仕掛けようと思いました。レースも見えていたので、あとは自分の脚力で行けるか、行けないかだと。感触も良かったし、最後まで踏み切れました。でも、今シリーズは思ったように走れなかったし、いろいろ考えさせられましたね」
 最終日の補充となった岡光良が、きっちり続いて2着を確保。
 「落車が(名古屋記念、川崎FIと)2回続いて。怪我もあったけど、心もボロボロ。(大宮FIを欠場して)ゆっくり休んできました。自力型がいっぱいいたけど、ごちゃごちゃになって脚を使ってくれましたね。杉森君が良いタイミングで仕掛けてくれた」
 杉森にまくられた早坂秀悟は、直線で失速して5着に終わった。
 「(杉森を)合わせられるのが一番ですけど。もうちょっと抵抗できたら3着に残れたかもしれない。簡単に杉森さんにまくられてしまって。ああなると、三宅(達也)さんとかにコースを縫って来られてしまいますよね。もうひと勝負できるような脚をつけます」

<2R>

取鳥雄吾選手
取鳥雄吾選手
 後ろ攻めの高橋陽介、和田真久留の順に動く。赤板の2コーナーで単騎の藤木裕が出た上を、取鳥雄吾(写真)が押さえて主導権。3番手を確保した藤木は最終2コーナーからまくるも、車の進みはいまひとつ。絶妙なペースで駆けた取鳥が、別線を完封して押し切り。
 「湊(聖二)さんが初手でいい位置を取ってくれた。みんなが動いて、いいタイミングで前に出られました。ホームで高橋さんが来たのが見えたけど、このまま駆けた方が安全かなって思って踏みました。ホームは少し向かい風ですけど、バックが追い風なのでいい感じで駆けられましたね」
 「ホンマに強かったですよ」とは、取鳥に続いて2着の湊聖二
 「取鳥君は掛かってましたしね。(最終日に)補充で来て展開にも恵まれて、ツイていますね。差せなかったけど、ヨシとします」

<3R>

香川雄介選手
香川雄介選手
 前受けから引いた金子貴志に早めに順番が回って来て、赤板の2コーナーから踏み込む。打鐘の3コーナーで主導権を握った金子貴志が快調に飛ばす。郡司浩平のまくりは不発で、3番手に入った阿竹智史も伸びない。阿竹マークから香川雄介(写真)が追い込んで1着。
 「むちゃくちゃキツかった。(2日目に落車したけど)自分も3日目の方が楽で、(最終日は)顔見せからヤバかった。全然、余裕がなかった。(阿竹は)車間を切って脚を使ったのか、1回待ったけど(外に行って)帰ってこなかった。それで内に切り込んでいった」
 近藤龍徳は、金子の先行に後続との間合いを計りながらギリギリまで我慢。先輩との呼吸を合わせて直線勝負の2着。
 「阿竹さんが郡司君を止めていたように見えた。これなら金子さんとワンツーと思って距離を計っていた。自分は連日、金子さんのおかげです。補充で2着、2着は、展開も脚も悪かったら取れないですから」

<4R>

河野通孝選手
河野通孝選手
 同県の先輩を背負った横山尚則が、坂本亮馬を打鐘で押さえて気迫の先行策。芦澤大輔はまくってきた坂本をブロックしにいくが、坂本に内へ切り込まれてしまう。茨城ライン3番手の河野通孝(写真)は坂本マークの園田匠を2センターで弾くと、直線で追い込んで1着。
 「まずは、横山君の走りがうれしかったです。後ろも気持ちが入りました。でも、坂本君にエックス攻撃を食らってしまって、対応できなかったです。悪いことをしてしまいましたね。これが今年の初勝利。上位と走るようになってから白星はないです。ラインのおかげですね」
 芦澤大輔は坂本と併走しながら4コーナーを回る。最後は車が伸びずに3着。
 「2日目の連係で横山の感触がわかっていたので、仕事がしやすいイメージでした。坂本君が入ってきたのはわかっていたし、思いのほか内にいってくれてラッキーでした。河野が3番手から伸びるのは当たり前。納得というか、次の開催に向けてですね」

<5R>

萩原孝之選手
萩原孝之選手
 松浦悠士のイン切りを警戒した小松崎大地が、赤板の2コーナーで突っ張り気味に踏んでペースを上げる。単騎の三谷将太が小松崎ラインの4番手に切り替えて、その後ろが柴崎淳と松浦で取り合い。逃げる小松崎の番手の萩原孝之(写真)が、三谷のまくりを阻んで勝機をモノにした。
 「もう少しうまくやれれば良かった…。三谷君がまくってきたのが意外だったのもあるけど、柴崎君にその外を踏まれたから止められなかった。車間を空けて(タイミングを)ズラせればよかったですね」
 最終2コーナー過ぎに松浦との5番手争いにカタをつけた柴崎淳が、まくって2着。
 「(松浦に)頭以外は当たられなかったので脚は残っていましたね。でも、三谷さんが先にまくりを打ったから、タイミングがズレてしまった感じ。ちょっと背中の痛みもあって、着は悪くないけど感じはイマイチでした」

<6R>

中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 周回中、後方に待機していた石塚輪太郎は、桐山敬太郎を警戒しながら早めに上昇を始めて先行態勢を取る。赤板の1センターで6番手の桐山が外に持ち出すと、石塚も踏み込む。石塚が絶妙なペースで風を切って、単騎の中川誠一郎(写真)は一本棒の最後方でじっくりと脚力を温存する。中団からまくった成田和也は一息。最終バック手前からまくり上げた中川が、豪快に大外を突き抜けた。
 「3日目に比べると早くから踏み出したんでキツかった。でも、いい感じで踏み切れました。ギリギリでしたね、ゴールで届いたかなっていう感じだった。でも、3日目よりは踏み切った感がある。(最終日は)自分らしいって言えば、自分らしいけど。誰かしらスピードに乗せてもらってと思ってたんで苦しかった」
 石塚輪太郎ラインの南修二、笠松信幸が2、3着。シリーズを通して先行策に出た石塚の内容の濃い走りが光った。大粒の汗をぬぐい石塚が振り返る。
 「桐山さんと2分戦だったんで、いらん脚を使わせられる前に2周半でしっかり押さえて。あとは行けるところまでと思っていた。南さんがもっていってくれたのもわかった。最後は3着までと思ったけど、その辺は力不足ですね」

<7R>

吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 仕掛ける順番が回ってきた渡邉雄太が、打鐘で吉田敏洋(写真)を叩いて先行策。絶好の3番手を確保した吉田は、前を行く和田健太郎が大きくけん制した内を抜けて渡邉の後位へ。最終2センターから踏み込んで白星を手にした。
 「ホームは別線を目で殺したけど、余裕はなかったですね。まくりに行こうとしたタイミングで(和田)健太郎が振って。いい言い方じゃないけど、うまい感じではなかった。これなら(内から)通過できるだろうと思いましたね。(高速バンクの岸和田の)高松宮記念杯に来て毎回思うけど、タイムが違ってきている。どんどん漢字の競輪から、カタカナのケイリンになってきているね。積み重ねだけで生き残るのは厳しくなってきたし、なにかを変えないと」
 和田健太郎は坂口晃輔にも内を行かれてしまったが、態勢を立て直して2着に突っ込んだ。
 「やってしまいました。いくら(渡邉)雄太がうまいペースで駆けても、吉田さんは実力があるから。雄太が頑張ってくれているし、なんとかしようと思って(けん制が)大きくなりすぎてしまいました。そのあとは、ゴールまでひたすらに踏んだ。雄太に申し訳ないことをしてしまった」

<8R>

松谷秀幸選手
松谷秀幸選手
 中団外併走から打鐘の2センターで仕掛けた太田竜馬が、主導権を奪って逃げる。が、渡部哲男は連結を外して、番手の高原仁志は飛び付いた長島大介ともつれる。最終1コーナーから岩本俊介がまくりを打って太田に並ぶと、岩本に付けた松谷秀幸(写真)が追い込み1着。
 「すごいですよね、(岩本は)ペースが上がっているのにあそこから仕掛けられるんですから。本当に岩本君は強いですね。付いていて苦しかったし、(最終)バックで諸橋(愛)さんとも接触してヤバかったけど最後抜けた。(ラインの)3人で決められれば良かったけど、渡邉(晴智)さんもキツかったと思います」
 ゴール前でわずかに太田をとらえた岩本俊介が、2着を振り返る。
 「太田君にはやられっぱなしだったので。そろそろどうにかしようと思っていました。強い太田君を相手に、自分のスタイルを貫いて勝てたんで。それを許してくれた先輩にも感謝ですね。自信になりました」

<9R>

古性優作選手
古性優作選手
 周回中、3番手にポジションを取った古性優作(写真)は、赤板の1センターから仕掛けた新山響平を根田空史が突っ張ると慌てることなくその位置をキープ。北日本勢に割り込まれることなく、最終2コーナーからまくりを打ってシリーズ2勝目を挙げた。
 「自分の思い通りの展開にもっていけました。迷ったところもあったけど、結果的に展開が向いた。それで自力も出せたんで良かった。(根田は)めちゃめちゃ掛かってたんで、無理やり(まくって)行った。なんとか次につながると思います」
 打鐘の2センターではわずかに古性に遅れるシーンもあった椎木尾拓哉だったが、2着に流れ込んで近畿ワンツー。
 「(古性が)強かった。無理やりまくって行ってくれたし、(根田も)すごかった。僕はもうちょっと修正がいるかなっていうのがありますね」
 新山にフタをされた竹内雄作は、後方からの立て直しを余儀なくされる。最終ホーム手前から巻き返したものの、前団に迫る前に外に浮いて終了。
 「久々に自分の思う展開になったのに、脚がついてこなかった。最終ホームくらいで迷いましたね、迷わずに行けばよかった」

<10R>

小倉竜二選手
小倉竜二選手
 前受けから4番手となった平原康多は後方にいる深谷知広の動きを警戒すると、打鐘の2センターから踏み込んで小川真太郎から主導権を奪った。叩かれた小川は番手に飛び付こうとするが失敗に終わる。小倉竜二(写真)は神山拓弥をさばくと、小川の余力を見極めて関東の3番手にスイッチ。深谷を大きくブロックした芦澤辰弘の内を突いて、ゴール前で平原を交わした。
 「復活してきたら、小川を迎え入れようと思っていたけど。あれ以上は待てませんでした。伸びたのはたまたまですよ。自分は一番脚を使っていない状態だったので。あとは、前(芦澤)がいなくなったんでね」
 平原康多は白星こそ逃したが、積極策でレースをつくって2着に粘り込んだ。
 「流れの中で中団になって。ジャンからはいつでも仕掛ける気持ちでいました。(小川が)踏まなかったので、行きました。最近は小川と対戦することが多くて、本当に強くなっているなと感じますね。この後にサマーナイト、オールスターもあるし、(自分は)もっと力を付けて」

<11R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 京都コンビが押さえた上を、吉田拓矢が出て打鐘過ぎから逃げる。前受けの新田祐大(写真)が5番手を確保。3番手の川村晃司が不発で自力に転じた村上義弘を追った新田は、最終バック過ぎからまくって1着。
 「いい位置には入れましたけど、余裕はなかったですね。川村さんの仕掛けと村上さんの踏み込みを考えてもあそこのタイミングで仕掛けるのがベストでした。後ろの山中君のまくりは見えていなかったですね。とにかく必死に踏み込むことだけを考えていました」
 山崎芳仁が新田の踏み出しに離れ気味で、後方からまくった山中秀将が2着。
 「先に切ろうと思っていたんですけどね。完全に自分のミスですね。作戦通りに走れず失敗でした。脚の感触は4日間のなかでも一番だったので、踏み出した感じはすごく良かったです。でも、新田さんとの違いは3コーナーの登りもさらに加速するくらいに踏み込める脚力。そこを埋めるためにもしっかりと位置を取らないといけなかった。最後も振られてしまって、離される感じでした」

<12R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手

原田研太朗選手
原田研太朗選手
 早めに誘導を降ろして先頭に立った吉澤純平の後ろは、武田豊樹と木暮安由で併走。一枚岩で結束した近畿ラインの先頭を務めた脇本雄太が、赤板の2コーナーで一気に踏み込む。吉澤は後位の併走が死角になって飛び付けない。脇本に三谷竜生がきっちりと続いて、3番手の村上博幸は車間が空くも出切ってさらに4、5番手が大きく離れる。脇本の掛かりに別線は成す術もなく、三谷とのマッチレース。三谷がゴール前で差し切り、脇本の番手からGI連続Vを遂げた。
 「ダービーも今回もそうだけど、本当にラインのおかげです。初日は(脇本を)抜けてないですし強いんで、自分はまずは付いていってから勝負と思ってました。ゴール線を1着で通過したのもわかりました。緊張はしたけど、そのなかで結果を出せて良かった。去年は(ダービーを優勝して)前半戦で終わってしまったけど、今年は一年を通して頑張っていきたい」
 別線を置き去りにする圧巻のパフォーマンスでタイトル奪取を狙った脇本雄太(写真)は、半車輪、交わされての準V。初戴冠はお預けになったが、悔いなしを強調する。
 「タイミングはあれでドンピシャ。仕掛けどころは、間違ってない。イメージ的にはダービーより遅かったし、これだったら勝負できるっていうところで(仕掛けて)行っている。(ナショナルチームで)こういう練習をやっている以上は、踏みだしたらやめられない。踏んだりやめたりする脚質じゃないんで。踏んだところは後悔しない。ただ、思った以上に(別線の)抵抗がなかったんで、ああなりますよね。そこまでは考えてなかった」
 3、4、5番手がそれぞれ車間が空いて、原田研太朗(写真)は最終ホームで先頭から大きく離れた7番手。1センターから踏み出して関東勢と村上は乗り越えるもV圏外の3着が精いっぱい。
 「位置取り的にはあれで良かったけど、もうひとつ言えば(菅田)壱道さんを自分の前に置きたかった。あれだと(関東勢の)併走を見ながらになってしまう。(先に)切っても脇本さんの展開ですし、もうああなったら無理です」
 原田に乗って追い込んだ山田英明は、菅田に中を突かれて5着。
 「3着に来なきゃいけないのに5着だった。内に行こうか迷って外に行ったんで、そこら辺はVTRを見て修正します。また、原田君と一緒に乗って、今度はワンツーができればいいですね」
 「まったく見えなかった。木暮君が外にいたんで…。頭の中では突っ張ろうと思っていた」とは、吉澤純平。脇本の仕掛けに反応が遅れて、打鐘の4コーナーでは村上に締め込まれて万事休すだった。

次回のグレードレースは、6月23日~26日まで久留米競輪場で開催予定の「開設69周年記念・第24回中野カップレース(GIII)」となります。
6月11日時点の出場予定選手データを分析した「開設69周年記念・第24回中野カップレース(GIII)」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください

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