『第29回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:10月18日

 前橋競輪場を舞台に開催された「第29回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、18日に最終日が行われた。東京五輪代表の脇本雄太、新田祐大の2人を含めたS級S班4人をはじめとする豪華なメンバーで決勝が争われた。レースの主導権を握った脇本が、別線に反撃の隙を与えない完ぺきな逃走劇で優勝。6月の高松宮記念杯に次いで今年2度目、通算5度目となるGI制覇で優勝賞金2940万円(副賞含む)を獲得した。

決勝レース出場選手特別紹介
決勝レース出場選手特別紹介

決勝戦 レース経過

 やや見合ったスタートから脇本雄太が前に出ようとするが、その外を松浦悠士が上がって、この動きに新田祐大が続く。単騎の郡司浩平は中団に入って、周回は松浦-橋本強-新田-守澤太志-郡司-脇本-東口善朋-山田英明-山田庸平の並び。
 青板前から山田英が上昇。この動きに郡司が続いたが、脇本は8番手で様子を見る。前受けの松浦は下げて誘導後位には山田英が。6番手の新田は車間を切って脇本の仕掛けを警戒する。けん制状態から松浦が赤板ホームで前に出ると、脇本はホームで新田を乗り越えて一気に加速。打鐘前から東口を連れて主導権を握る。3番手で口が空いた松浦の前に新田が入って最終ホームを通過。4番手の松浦はなかなか車間が詰められず、後続も巻き返せない。車間を詰めた勢いで3コーナーから新田が仕掛けるが、脇本にツキバテした東口をとらえるのが精いっぱい。脇本が押し切って今年6月高松宮記念杯に次ぐ今年2度目、通算5度目のGI優勝を飾った。







<2R>

嵯峨昇喜郎選手
嵯峨昇喜郎選手
 赤板で出た野口裕史に合わせて動いた畑段嵐士が番手に飛び付く。土屋裕二をさばいた畑段が、野口後位を奪取。松岡健介、神田紘輔が続く。6番手の嵯峨昇喜郎(写真)が最終1センターから仕掛けると、畑段も番手から出る。ゴール前は、畑段、松岡、嵯峨の3人で横一線。外の嵯峨が松岡をわずかにとらえて、今年の2勝目がGI初勝利になった。
 「(今年1着が)2回目なんで良かった。グレードレースで1着を取りたいと思っていたんでうれしいですね。今日は積極的に行くつもりだったし、野口さんが流したらカマすつもりだった。けど、野口さんはいいペースだった。正直、直線であそこまで伸びると思わなかった」
 「畑段らしいレースでしたね」とは、松岡健介。畑段マークから差し脚を伸ばしたが、嵯峨に僅差の2着。
 「畑段もいいペースでまくっていったし、自分も余裕はあったんですけど難しかった」

<3R>

川口聖二選手
川口聖二選手
 川口聖二(写真)がGI初勝利を挙げた。池田勇人、佐藤博紀の順で切ったうえを皿屋豊が赤板の2コーナーで叩いて駆ける。番手の川口は車間を空けて後続をけん制してから鋭く追い込んだ。
 「皿屋さんが全部やってくれた。タレている感じもあったけど、車間を空けていたし、後ろの人たちもしんどいだろうなって思っていた。仕事して誰かが内に来るだろうなとは思っていた。(高橋陽介が)内へ来たので踏ませてもらった。G1初勝利はうれしいけど、次は自力で勝ちたいですね」
 3番手を取った佐藤は不発。最終2センターから内を突いた高橋陽介が2着に入った。
 「ここのバンク特性上、先行は掛かっちゃうし、佐藤君もまくりづらかったと思いますよ。佐藤君が踏んでキツそうだったので、内へ突っ込んでいきました。今回は調整ミスでした。初日から体がかみ合わなくて…。日に日に良くはなってきたんですけど」

<8R>

内藤秀久選手
内藤秀久選手
 新山響平が前受けで、取鳥雄吾、根田空史の順で動いて、根田が赤板から駆ける。4番手の取鳥は車間が詰まらず、最終2コーナー過ぎから原田研太朗が、自力でまくって前団に迫る。原田を3番手の岡村潤がけん制して、原田のスピードは鈍る。番手の内藤秀久(写真)が、追い込んで勝機をモノにした。
 「(3番手で原田のまくりを張った)ジュンちゃん(岡村)のあれがすべて。いいところをすべてもっていかれた(笑)。もうラインのおかげです。(落車明けで)初日はびびりながらたってたけど、日に日に良くなっていった」
 自力に転じた原田研太朗が届かず、区切りの400勝はお預けになった。
 「取鳥君のおかげです。ただ(最終)2コーナーの立ち上がりで詰まらなかったんで、もう行かないと間に合わないと思った。(シリーズの)4日間はいい時と悪い時の差があったし、まだ技術不足なところもありますね」

<10R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 青板3コーナーで小林泰正が先頭に立つと、前受けの深谷知広(写真)が中団に収まる。内を狙っていた清水裕友は空かずに、一本棒の7番手で赤板を迎える。そのまま小林がペースを上げて逃げる。深谷は最終ホームを目がけて仕掛ける。椎木尾拓哉は付け切れず、離れながら諸橋愛が切り替える。後続を引き離した深谷が押し切ってシリーズ3勝目を挙げた。
 「車番的にも(周回中は)一番前か後ろだと。(前になって)清水君が切ったところを(後方に下げて)すかさず叩いてと思っていた。そしたら(中団になったんで)掛かってなかったら行くつもりだったけど、(小林)泰正が掛かっていた。諸橋さんは脚があるので、(最終ホームの)直線で(仕掛けて)と思った。まだ完ぺきではないけど、コンスタントに競輪を走れているので徐々に手応えをつかんでいる。(GIの)決勝に乗るか、乗れないかっていうところまできている」
 小林の余力とスピードを確かめた諸橋愛が、最終2コーナー手前で切り替えてまくり気味に深谷を追いかけて2着。
 「(深谷は)飛び付くスピードじゃなかったし、あのままだと清水君がまくってくるだろうから。一瞬、見てから(判断した)。(後ろの大槻寛徳に)食われるかと思ったけど、練習の成果が出ている」

<11R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 前受けの吉田拓矢(写真)が青板のバック過ぎに村上義弘を突っ張って先行策に出る。平原康多はハグれてしまい、吉田の番手は内に村上義弘、外に松本貴治で併走となり打鐘を通過。村上が2センターで松本を飛ばして番手を取り切る。村上後位の3番手で立て直した平原が最終バック前から仕掛けるが、車は進まない。後位のもつれをしり目に、吉田がそのまま押し切った。
 「後ろはどうなっているかわからなかった。残り2周半のところはとりあえず踏んでと思っていたけど、迷いながら踏んでしまったので平原さんも付きにくかったと思う。後方になりたくなかったので踏んでおけばなんとかなるかなと思っていた。ラインで決まらなかったが、1着取れるとは思っていなかったので結果としては勝てて良かった」
 最終2センターから内を突いた佐藤慎太郎が、2着に食い込んだ。
 「1着を狙っていったけど、最初から突っ込めばアタマまであったと思うけど。平原が仕掛けてからだし、村上さんの動きも待ってからになった。今シリーズは状態は悪くなかったので、また次につなげていけばいいと思う」

<12R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 脇本雄太(写真)が圧巻の逃走劇で、今年2度目のGI制覇を果たした。赤板で飛び出した松浦悠士を脇本が2コーナーで叩いて主導権を取る。うまく3番手に追い上げた新田祐大が最終3コーナーからまくり上げるが、脇本がこれを振り切って鮮やかに逃げ切った。
 「自分が思っていたよりも恵まれた展開になりました。山田(英明)さんが動いた時は動きたくないなって思っていて、新田さんの動きを見てからだなと。新田さんも車間を空けて僕の位置や動きを注意していたので、そこの勝負に負けないように。(2日目の)ローズカップの組み立ての反省も生かしつつ決勝に臨んでいた。自分から人気になっていたし、それに必死に応えるつもりでかなり余裕はなかった。先行逃げ切りで優勝できたのはうれしいし、グランプリに弾みをつけられたと思う」
 絶好の3番手からまくった新田祐大は、2着でグランドスラム達成はならなかった。
 「初手の位置があの状態になったら、この展開になるだろうって。脇本君に対して警戒を強めすぎた。昨日(3日目)と同じ位置から仕掛けていれば力勝負できたと思うけど、見てしまった。東口(善朋)さんの外を伸びないところから仕掛けてしまった」
 脇本マークの東口善朋は、最終3コーナーから徐々に離されてしまったが、3着に踏み止まった。
 「(脇本は)他のラインから動いたあとに仕掛けるって形になりましたね。とにかくもう他は脇本の番手か3番手を狙っているかと思っていたので、脇本の後ろに集中していた。昨日(3日目)いいピッチで踏んで付いていて何とかなるかなと思ったけど、今日(最終日)はギアが1個上がりましたね。いい経験をできたし、良かった。ああいう離れ方をするのは自分の競輪人生で初めてのことです」

次回のグレードレースは10月24日~27日の日程で、京王閣競輪場にて開設71周年記念「ゴールドカップレース」が開催されます。
S級S班からは、松浦悠士、平原康多、佐藤慎太郎、村上博幸の4名が参戦。更に、古性優作、菅田壱道、高橋晋也、太田竜馬ら各地から自力型の健脚がズラリ。
地元からは、移籍後初めての地元記念に参加する鈴木竜士、河村雅章を主力に一丸となって強豪を迎え撃つ。
最終日第3レースには、第117期生による「ルーキーシリーズ2020 プラス」が行われます。こちらにも要注目!!

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