『第30回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 3日目編

配信日:10月23日

 弥彦競輪場を舞台に開催されている「第30回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月23日に3日目を迎えた。ファイナルをかけて熾烈な戦いが繰り広げられた準決では、菅田壱道、新山響平、平原康多が1着で決勝に進んだ。また、新田祐大は2着で勝ち上がり、最終日にグランドスラムをかけて決勝の舞台に立つ。いよいよシリーズも大詰め、今年5回目となるGIの決勝の号砲が、弥彦の杜に響き渡る。
 開催中、弥彦競輪場では、事前抽選による入場許可証をお持ちの方のみの入場となります。「競輪・オートレースにおける新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」に沿った開催となります。検温、手指の消毒、マスク着用などのご協力とご理解をお願いいたします。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

脇本勇希選手
脇本勇希選手
 打鐘で神田龍を押さえた蕗澤鴻太郎が主導権。神田にフタをされていた脇本勇希(写真)は、立ち遅れて一本棒の7番手に置かれる。脇本は最終2コーナー手前からまくりを打つ。合わせてまくった神田は不発。逃げる蕗澤をとらえた脇本が、直線で抜け出して1着。2度目のGI出場で初勝利を遂げた。
 「(GIで1着を)取れると思わなかったですね。初日、2日目と、競輪の流れでレースができていなかったので、落ち着いてセオリー通りにいこうと。仕掛けが遅い気がしましたし、まくりはまだまだです。今日(3日目)は1着で良かったけど、満足せずにやっていきたい」
 最終バックから内に切り込んだ村上博幸は、萩原孝之と接触して4位入線も失格。神田が不発も、志智俊夫が追い込んで2着に入った。
 「(神田は)車間も空いていたので、踏み出しがキツそうでしたね。後ろの気配を感じて、かぶらないようにとは思っていたけど。脇本君が思った以上のスピードできていた。もっといい走りだったら、とか思うけど、周りが強い」

<7R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 押さえて出た岩本俊介を、長島大介が打鐘の2センターで叩いて駆ける。後方の小川真太郎は、最終ホーム手前から巻き返すが早々に不発。小倉竜二は渡邉雄太をすくって進出する。岩本は4番手から車間を詰めていっぱい。番手の佐藤慎太郎(写真)が、直線で余裕をもって抜け出した。
 「(長島が仕掛けた)あそこは(岩本が)踏んでいるところだったけど、行ってくれていい先行でしたね。バックが向かい風で長島君は脚力ロスもあったと思う。(前回落車の影響は)知らないところで、多少あるのかもしれない」
 直線で小倉にからまれながらも、永澤剛が流れ込んで2着をキープした。
 「打鐘のところはキツかった。離れそうになりました。昨日(2日目)も離れていますからね。状態とかよりも、自分の脚力不足だと思います」

<8R>

鈴木裕選手
鈴木裕選手
 赤板1センター過ぎに先頭に立った三谷竜生は、7番手から巻き返した深谷知広に合わせてペースを上げる。しかしながら、深谷のスピードが断然。南関3車で出切り、三谷が中団で立て直して最終ホームを迎える。まくり返した三谷は、小原太樹の横まで。番手で脚をためた鈴木裕(写真)が、チャンスをモノにした。
 「(深谷が)気をつかって駆けてくれて、全部やってくれた。いいスピードだったし、飛び付かれたとしても1回、先に降りればと思ってた。自分には全然仕事をさせてくれなかった(笑)。ただ、距離が長かったぶん、(深谷は最終)4コーナーから踏み上がっていかなかった。もうちょっと遅めでも良かったけど、駆けてるのが深谷君なんでそんな余裕はなかったです」
 南関ライン3番手の小原太樹は、まくった三谷との併走をこらえて2着に伸びた。
 「(深谷は)ラインで仲間ですけど、力の違いを感じました。(深谷が仕掛けて)自分が敵だったら、あそこ(自分のところ)狙うのでしっかりと思ってた。自分のせいでラインに迷惑を掛けないようにと。日に日に良くなっている感覚はあります」

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菅田壱道選手
菅田壱道選手
 赤板の2コーナーで清水裕友を押さえた吉田拓矢が先行態勢を取る。前受けの新田祐大は、8番手まで下げて一本棒で打鐘。吉田がペースを落とすと、反撃のタイミングをうかがっていた新田が4コーナーからフルアクセル。スピードに乗せた新田が、外めを踏んで最終バック手前で出切る。まくり切った新田に菅田壱道(写真)が続き、直線は北日本両者の勝負。菅田が新田を差し切って1着。
 「ジャン過ぎのあたりで新田先輩が(仕掛けて)行きそうな雰囲気があった。自分は離れないようにと。あおりもあったけど、なんとか追走ができて良かった。出切ってからは(新田と)ワンツーができると思った。でも、新田先輩だけでもなんとかっていう思いもあったんで、仕事はしようと。昨日(2日目)は仕掛けて、今日は番手でしっかりとできたんで気持ちも乗っている。自分には競輪祭(の出場権)がないので、(今年)最後のGIで気持ちをつくってきた」
 吉田のスピードが上がらないと見るや、新田祐大は打鐘の4コーナーからちゅうちょすることなく仕掛ける。強烈なダッシュで前団をのみ込んだ。
 「レースの通りでした。あとは清水君、木暮(安由)さんのけん制が重なって予想以上の動きにはなったけど、基本的には予想通りの感じでした。今回はグランドスラムを獲りにきているので、その目標を達成できるように。僕自身、王手をかけられて良かった」
 ペースを握った吉田拓矢は、新田のカマシ、まくりを計算に入れながら踏み上げる。結果的には北日本コンビに行かれたものの、3着に粘り込んだ。
 「僕が先行態勢に入って、あとは新田さんが来るかどうかでした。だから、ガムシャラに踏まないで力まずにできた結果かなと。(新田に)行かれても最後まで踏むことができた。余力もあるんで状態はいいと思います。決勝に乗れたんで、優勝を目指して頑張ります」

<11R>

新山響平選手
新山響平選手
 赤板過ぎに郡司浩平が切って出ると、新山響平(写真)はいったん5番手に入り後方の中川誠一郎を警戒しながら打鐘から踏み上げる。北日本勢の主導権。続いた単騎の雨谷一樹が追い上げるが、番手は大槻寛徳がキープする。打鐘の4コーナーから仕掛けていた中川は、ペースアップした新山に合わされて力尽きる。最終3コーナーからまくり追い込んだ古性優作だが一息。軽快に逃げる新山が二の足で後続を振り切った。
 「(最終)バックで横に車輪が見えたので、死ぬ気で踏みました。自分でも落ち着いて走れたのがわかる。この落ち着きで明日(決勝)も走りたい。体も気持ちも前々に動けているので問題ないです。今回は(決勝を)目標にしてきたのでひとつクリアです」
 流れ込んだ大槻寛徳が2着に入り、15年以来、2度目のGI決勝のキップを手に入れた。
 「俺らの後ろには郡司君か、古性君が必ずいるので、長い距離を踏まないようにと。理想の展開になりましたね。郡司君か古性君が後ろにいたらしゃくられちゃうけど、新山が掛かっていたので、自分は仕事の必要もなかった。勝ち上がっているからじゃないけど、日に日に良くなっていますね」
 不発の中川が後退すると山田庸平が、雨谷との併走から外を踏んで3着。
 「(中川に)しっかりと付いていくことだけを考えていた。深く考えずに、体が動くままにでした。早めに仕掛けてもらって、内も空けてもらってコースができた。あとは中川さんの気持ちと、頑張りをムダにしないようにと。自分が力不足で前を走れない悔しさもあります。日に日に体は軽くなってきました」

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平原康多選手
平原康多選手
 3車の近畿勢が先頭に出て、平原康多(写真)は4番手。赤板2コーナーから加速した渡邉一成に伏見俊昭は付いていけない。主導権を奪った渡邉後位には合わせて踏んだ平原が入り、諸橋愛が野原雅也をキメて続く。最終ホームから反撃に出た太田竜馬のスピードもいいが、平原が番手から出る。3コーナー過ぎに平原は太田を外に振って、太田は後退。平原が押し切った。
 「(渡邉の仕掛けは)想定外でしたけど、自分が踏むべきところで思い切って踏んだら、あの位置(渡邉の番手)になった。番手だったけど、(自分が仕掛けて)行くって決めてた。行ったら太田君がもう横にいた感じだった。諸橋さんを後ろに付けて、メインの番組ですごく緊張感がありました。自分はだいぶ体調も戻ってきて、自分の本来の動きができてきてる」
 平原の動きにきっちりと対応した諸橋愛は、地元の舞台で14回目となるGIファイナルに進んだ。
 「(平原は)最後はいい位置を取って、まくってくれたんで言うことはない。臨機応変に動けるのが(平原)康多の強み。どんな展開でも勝ちにいける王者の走りだったかなと。(地元のGIで決勝に勝ち上がり)報われた瞬間かなと思いました。やっと地元の責任(を果たして)とこれでやっとスタート台に上がれたかなと」
 諸橋にキメられた野原雅也は、村上義弘のアシストで最終ホームで4番手で立て直す。平原のけん制で太田、松浦悠士が大きく外に膨れて、懸命に踏んだ野原が3着。初めてGIファイナル進出を決めた。
 「(GIの決勝に)初めて乗れたのはすごくうれしい。ただ、組み立てとか終始の動きとかは、そんなに良くなかった。村上さんにも何回も迎え入れてもらって、後ろには申し訳ないレースだった。内容としては反省点が多かった。決勝に乗れているのはいいけど、感覚的にはそんなに良くないですかね」