『第30回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:10月24日

 弥彦競輪場を舞台に開催された「第30回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月24日に最終日が行われた。決勝は北日本勢が主導権を握ったが、番手まくりの新田祐大に切り替えた平原康多が追い込んでV。17年2月の全日本選抜以来、通算8度目のGI制覇を遂げた。優勝賞金3083万円(副賞含む)を獲得して、年末に静岡で行われる「KEIRINグランプリ2021(GP)」の出場権も手に入れた。

決勝戦 レース経過

 号砲で諸橋愛、新田祐大、菅田壱道が飛び出し、新田がスタートを取る。したがって新山響平-新田-菅田-大槻寛徳の北日本カルテットが前を占め、その後ろに単騎の山田庸平が入る。更に吉田拓矢-平原康多-諸橋の関東勢が続き単騎の野原雅也が最後方で周回を重ねる。
 青板過ぎのバックで吉田が徐々に車間を切りはじめると、新山も誘導員と車間を空けて後続の動きに備える。赤板で吉田がスパートすると、新山も出させまいと全力ダッシュ。新山は吉田を突っ張り切ったが、3番手の菅田が遅れてしまい平原に割り込まれた。平原は外に浮いていた吉田を迎え入れ、打鐘は新山-新田-吉田-平原-諸橋-菅田-大槻-山田-野原で通過。山田が内を突いて番手を上げ、野原は外を踏み上げるが前は遠く、最終ホームでも前団の態勢に変わりはない。最終2コーナーで3番手の吉田が仕掛けると、これを見た新田が踏み込む。吉田はまったく車が出ずに終わり、新田に平原-諸橋が切り替えた。最終4コーナーは新田が先頭で回り、平原-諸橋が続いて直線へ。懸命に粘った新田だが、3番手から鋭く伸びた平原が1着でゴール。2017年2月の全日本選抜以来となるG1制覇を飾った。2着には新田が入ったが、外斜行し諸橋を落車させたと判断されて失格。3、4着の大槻、菅田がそれぞれ2、3着に繰り上がった。

<4R>

坂井洋選手
坂井洋選手
 赤板2コーナーから仕掛けた中西大が、打鐘の3コーナーで主導権を握る。堀内俊介が4番手に入り、坂井洋(写真)は6番手。外に浮いていた小川真太郎は結局、後方に下げる。逃げる中西の後ろの三谷竜生が車間を空けると、最終2コーナー手前から坂井がまくりを打つ。坂井のスピードが良く、三谷は止められない。中西をとらえて直線で先頭に立った坂井が余裕のゴール。
 「思った展開ではなかったですね。小川さんが切ってくれれば、そこをカマそうっていう感じだったんですけど。ああなったんで冷静に一発勝負でした。今日は寒いし重かったんで、早め早めに(仕掛けよう)と思ってた。踏み出した感触も良かったです」
 三谷竜生は坂井マークの佐藤友和をさばいて追い込んだ。
 「坂井君のスピードも良かったんで、(来たのが)直線だったんで難しかった。もうちょっとやり方があったのかなと、勉強してかないと。コーナーに入ってくれれば、坂井君にも仕事ができたけど、(佐藤)友和さんのところでしたね。昨日(3日目)も力勝負をした。でも、(自分の調子が)上がっていくなかで、まだまだですね」

<5R>

小森貴大選手
小森貴大選手
 脇本勇希が赤板2コーナー手前で押さえて先頭に立ち、菊池岳仁は4番手。打鐘を通過して3コーナーで6番手の岩本俊介が仕掛けるが、脇本もペースを上げる。合わせて出た菊池、岩本を逃げる脇本後位の小森貴大(写真)が、最終ホームでけん制する。岩本は不発もしぶとく迫る菊池に対して、小森は番手まくりで応戦。菊池とからんだ笠松信幸は付け切れず、小森が後続を振り切りGI初勝利を挙げた。
 「(脇本)勇希の気持ちが強かったですね。引きつけながら駆けてくれた。(番手での動きは)正直、当たったのはわかったけど、よくわからなかった。外を振ってから、前に踏んで冷静に判断ができなかった。必死に走った結果です。GI初勝利はうれしいけど、それ以上に勇希が前を走ってくれて、笠松さんが後ろに付いてくれた。いままで先頭で走ってきて、自分が番手を回る立場になって感じることもありました。それをまた近畿の自力型として生かしていきたい」
 単騎の島川将貴は最終ホームで最後方。その後は包まれるシーンもあったが、直線で強襲した。
 「単騎だったし、岩本さんのスピードをもらっていこうと。それで自力を出せるところからは出してっていう感じでした。1着まで届いた感じはあったんですけどね」

<8R>

中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 根田空史、太田竜馬の順番で出て、打鐘の3コーナーで先頭に立った谷口遼平が先行態勢を取る。隊列は一本棒になり、8番手の中川誠一郎(写真)が、最終ホーム手前からスパートする。坂口晃輔のブロックを乗り越えて、中川が出切る。園田匠は2コーナーで坂口に阻まれて、谷口が番手から追いかける。直線で後続に詰め寄られた中川だったが、谷口に4分の3車身の差で押し切った。
 「今日(最終日)が4日間で一番、キレが悪かった。100パーセント、疲れですね。本当に今日はギリギリでした。(後ろがいないのは)なんとなく気配でわかりました。それでタレてるけど、押し切れるかなっていうのはありました。結局、(4日間)同じような展開で(最終)ホームからカマす感じだった。仕掛けられているだけ悪くはなかった」
 同県の坂口との息の合ったプレーで2着に入った谷口遼平は、先輩の援護に感謝する。
 「すべて坂口先輩のおかげです。太田君が先行する気満々なら、(中団で)根田さんのところで勝負かなと思ったんですけど。太田君が流したんで。ただ、出る時にスピードに乗っちゃって、あのまま踏みっぱなしで僕の先行だとまくられて終わっちゃうなっていうのもあった。引きつけて誰か(来てくれれば)と。自分のやれることをやりました」

<9R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 最終日も気持ちを切らすことなく深谷知広が、渡邉一成を叩いて先行勝負に出る。番手絶好となった郡司浩平(写真)だが、初手から南関後位に照準を絞っていた好調・山田久徳が真後ろにいて難しい判断。しかし、うまく深谷との車間を切ると、先に踏み出してくる山田をギリギリまで引き付けての抜け出しで、深谷とのワンツーを決めてシリーズを終えた。
 「(深谷と)お互い勝ち上がれなかった中で、次につながる走りでした。前のペースが上がっている中だったので、(別線も)脚を使っていて、これはこれないだろうと。(ワンツーを決めるために)うまくギリギリの感じは難しい。こういうところでワンツーができたのは次(の深谷との連係)につながる。今回は真ん中の2日間で自力でしたけど、勝とうが負けようが自力を見せたかったが、何も残らないレースでした。(南関を)引っ張っていかないといけないし、勝ち上がりを逃して南関の士気を下げてしまった。今年はあと、四日市(記念)と競輪祭を走ってグランプリを迎えるんですけど、残り少ないレースで悔いのないようにしたい」
 二次予選で勝ち上がりを逸した深谷知広だったが、先行屋としての持ち味を4日間発揮した。
 「(レースで)自分らしさは出せた。自分の距離ですし、(相手が)踏みたくない位置から踏んでいる。今は練習量を増やして追い込む期間。直前まで追い込んできていた。静岡の若手、萩原(孝之)さん、岡村(潤)さんたちと、声をそろえて、イチからトレーニングをしている。今は苦しいけど、期間を考えるとまずは競輪祭が第一目標ですね。(今後の郡司との連係は)自力選手として郡司に限っては格上の選手。自分のわがままを言ってきたけど、時と場合で後ろの覚悟も視野に、タイミングがきたら考えていきたい」

<10R>

古性優作選手
古性優作選手
 北日本コンビを連れた雨谷一樹が、打鐘過ぎに出て先行策。4番手をすんなり手に入れた古性優作(写真)だったが、2センターから単騎の小原太樹がインを進出して4番手に押し上げる。5番手になった古性は、最終2コーナーから踏み込む。佐藤慎太郎のけん制を乗り越えた古性が1着。
 「(小原の切り替えがあって)それでツーテンポくらい(仕掛ける)タイミングがズレて、後ろの村上(義弘)さん、東口(善朋)さんに申し訳なかったです。あれがなければ(最終)ホーム過ぎくらいに行けるかと思ったけど、時間が掛かってしまった。感触も重くて、乗り越えていっぱい、いっぱいでした」
 踏み出しで一瞬、遅れた村上は最終2センターでいっぱい。4コーナーで外に持ち出した佐藤慎太郎が追い込んだ。
 「地区が違うけど連日、前の選手が頑張ってくれた。もうちょっと脚をつけてサポートできればっていうのがあります。自分の状態が悪くてそういう風に感じているわけではないけど、今日(最終)ももうちょっと車間を切れば、まくりのタイミングをズラせたかなっていうのもある」

<12R>

平原康多選手
平原康多選手
 関東勢の頭脳プレーの勝利。史上4人目のグランドスラム達成に燃える新田祐大らを倒して平原康多(写真)が17年2月の全日本選抜以来となるGI優勝を遂げた。スタートで新田が飛び出して4車の北勢が前受け。関東ラインを率いる吉田拓矢は6番手に構える。吉田は赤板目掛けて発進するが、北ラインの先導役の新山響平も全力で突っ張る。出切れず吉田は外に浮くが、1コーナーで内に降りた平原が菅田壱道をキメて3番手を奪取。すぐさま吉田を前に迎え入れて関東勢に流れを呼び込む。吉田の最終2コーナーまくりが不発に終わると、平原は新田後位にスイッチ。そのまま新山の番手から出て行った新田との力勝負を制してゴール前鋭く突き抜けた。
 「ラインが二分戦でほぼ、関東対北日本の二分戦。自分は援護して迎え入れられたけど、新田が強かった。前を取った方が突っ張るような流れになると思った。拓矢が踏んだときに、新田が慌てて踏んでくれたので、拓矢も気を使ってくれた。(新田の後ろになって)自分が思い切り行くような感じにならないと、諸橋さんにもチャンスがないと思って思いっきり行った。ワンツーだったら、何の心残りもなく喜びだけの開催になったんですけどね…。(競輪祭、グランプリに向けて)もっと体の状態をよくしていい走りができるように頑張りたい」
 新田はゴール前で中を割りにきた諸橋愛の落車の原因を作ったとして2着失格。俊敏な中団切り替えから最後は大外を伸びた大槻寛徳が繰り上がった。
 「着は良いが、レースは良くない。(菅田が)離れることも、追い上げないのも良くなかった。自分がいくなりとも思った。4車でラインがしっかりしていたのにそれができないのが反省点。壱道は、これからGIを獲る獲らないだから、あえて厳しいこと言うけど、レース内容がひどかった。仕事して着がどうこうではなかったので、そこで負けてしまった」
 平原にキメられて一旦8番手まで下がった菅田壱道は必死のリカバリーで直線伸びたが、口を突いて出てくるのは反省の言葉ばかりだった。
 「全部、俺のせい。脚力のなさを痛感しました。(新山)響平、新田先輩のナショナルチームで洗練されたダッシュに付け切れなかった。そこにいれば、新田先輩の優勝だった。反応はしていたと思うが、何も言い訳はできない。脚力不足です。悔しさというか申し訳ない。新田先輩のグランドスラムへの思いで北はひとつだった。これを糧に足りないところが見えた。課題に取り組んでいつか迷惑をかけないよう」

次回のグレードレースは、防府競輪GIII「周防国府杯争奪戦」が10月31日~11月3日の日程で行われます。
S級S班からは地元エースの清水裕友をはじめ、松浦悠士、新田祐大、守澤太志の4名が出場予定です。全国各地からは、稲川翔、吉田拓矢、諸橋愛、太田竜馬、小倉竜二らが出場予定です。また、清水裕友は本記念競輪での4連覇がかかっています。
10月18日時点の出場予定選手データを分析した、防府競輪GIII「周防国府杯争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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