『第31回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:10月23日

 ドームの前橋競輪場を舞台に開催された「第31回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月23日に最終日が行われた。決勝は古性優作が先行策。包まれていた新田祐大だったが、最終2センターから内を進出して直線で古性の内から抜け出してV。19年のオールスター以来、通算8度目のGI制覇(4日制以上)で優勝賞金3532万円(副賞含む)を獲得。また、15年の日本選手権の優勝から6個のGIすべてを制して、4人目のグランドスラムを達成した。これで新田は、年末に平塚で行われる「KEIRINグランプリ2022(GP)」の出場権も手に入れた。

決勝戦出場選手が意気込みを語る
決勝戦出場選手が意気込みを語る

決勝戦 レース経過

 スタートは平原康多、小松崎大地、井上昌己が勢いよく飛び出すが、内枠の平原が誘導員の後ろを占めた。初手は吉田拓矢-平原、松浦悠士-井上、古性優作-稲川翔、新田祐大-小松崎-守澤太志の並びとなった。
 青板を過ぎると新田率いる北日本勢が上昇を開始する。これに古性-稲川も続く。新田が吉田に並びかけると、吉田はスンナリ車を下げた。北日本勢が前に出た上を、更に古性-稲川が押さえて前に出る。松浦は吉田の内を突き、赤板は古性-稲川、新田-小松崎-守澤、松浦-井上、吉田-平原で通過した。2コーナーで吉田が一気に踏み込む。ジャンで古性がベースアップしていたため、後続の出方を窺っていた3番手の新田は前と車間が空いてしまい、古性-稲川の後ろに吉田-平原が入り込む。8番手となった松浦は2センターから反撃を開始した。松浦は5番手まで踏み上げると、最終ホーム過ぎの2コーナーから新田を押し込み内に潜り込む。2コーナーを立ち直ったところから3番手から吉田がまくりを敢行、どん尻となった守澤もまくり上げる。じわじわと迫ってきた吉田を2センターで稲川がけん制すると、空いた内に松浦が入り、更に新田が松浦の内に進路を取る。新田は先行する古性が松浦をけん制したすきに空いた内に入ると、ゴール前で抜き去って優勝。輪界4人目のグランドスラマーとなった。2センターから大外を回された守澤ながら、山を乗り越えると直線はイエローラインあたりをぐんぐん伸びて2着。3着には4コーナーで稲川の内をすり抜けた松浦が入った。


<4R>

太田竜馬選手
太田竜馬選手
 青板3コーナーで飛び出した橋本優己だったが、取鳥雄吾が叩いて主導権を奪う。橋本は4番手に下げて、太田竜馬(写真)が後方に置かれる。打鐘を通過して3コーナーで太田がカマしで出る。太田がスピードの違いで取鳥をとらえて、松本貴治、佐々木雄一まで出切る。もつれもあり4番手以下は大きく離れて、太田ライン3車の勝負。太田が二の足で逃げ切った。
 「レースが読めなかったですね。(中団に入った)中部が本気で行くのかっていうのもあった。迷ったところもあったけど、集中はしてました。ああなるとは思わなかった。でも、やりやすい形にはなりました。(シリーズを通して)感じは悪くなかった。ただ、(前橋は)1つ失敗でツケがまわってくる。裏目に出たら難しいですね。33バンクは勉強になります」
 太田の加速に踏み出しでは車間の空いた松本貴治だったが、自力を有しているだけに難なく付け切ってワンツー。
 「(太田が)行くとわかっててもヤバいかなと。(付いていくのは)なんとかですね。出切ってからも1回バックにいれたんで、抜きにいくのは無理でした。(人の後ろと自分が先頭の)どっちの時でもとは思ってます。前だったら最低限、仕掛けてラインにチャンスがあるように。後ろだったらちぎれないようにと。(後ろの時は)余裕がない。いっぱいいっぱいです」

<8R>

佐藤友和選手
佐藤友和選手
 眞杉匠もスピードをつけて押さえに来るが、前受けから新山響平が突っ張って主導権は明け渡さない。3番手に隅田洋介が続いて、浮いた眞杉が5番手に収まりかけると、後方から渡邉雄太が仕掛ける。しかしながら、新山がペースを上げて、渡邉は5番手まで。新山の小気味いいペースで最終ホームを通過する。2コーナーからまくった渡邉は、3番手の隅田に阻まれる。新山の番手で絶好の佐藤友和(写真)が抜け出した。
 「スタートを取ったら眞杉も同じことをやってただろうし、スタートが取れたのは大きかった。(2車のラインで)もっていく制限もあるので、なるべくもっていかないようにと。ただ、誰が来たかとかじゃなくて、横に来たのを止めなきゃと。(シリーズを通しては)期待以上の結果だった。ここまでの結果を残せるとは思ってなかった。楽しみではあったけど、不安もあった。(自分の感じは)前回とは全然違って良かった」
 周回中から3番手を手に入れた隅田洋介だったが、仕掛けられずに直線勝負での2着。
 「追走が下手になって自分に余裕がない。この4走で(感覚が)やっと戻ってきた。(落車の怪我で)長欠もあったし、共同通信社杯も帰っちゃったから。脚のアタリ的にはいいんですけど、決めきれないのが…。仕掛けも遅くなっている。自分だけの競走が続いているんで、しっかりとやらないと」

<9R>

山崎賢人選手
山崎賢人選手
 さすがのダッシュで山崎賢人(写真)が、茨栃勢を出させない。前受けから山崎が、レースを支配する。浮いた吉田有希は7番手に下げて、今度は打鐘の4コーナーで4番手の三谷竜生が反撃に出る。逃げる山崎後位で車間を空けた山田英明がけん制。自力に転じた坂井洋、単騎の川口聖二もまくるが、山崎の掛かりがいい。園田匠、山田英、山田久徳の強襲を振り切った山崎が1着。
 「連日、叩かれていたので、今日(最終日)は叩かれたら不甲斐ないと思った。(このあとは)競輪祭を走ります。(競技)大会は(来年の)2月までないので、12月は(あっ旋が)入ると思う。(競輪祭まで練習して)戦えると思う」
 山崎との車間を詰めながら三谷を阻んだ山田英明は、インを突いた園田匠、山田久を僅差でしのいで2着。
 「(山崎)賢人が強かった。近畿勢は中団を回ると思っていた。番手選手としては未熟だけど、仕事をしてから抜きにいくのは最後にしようと。九州の後輩がこういうレースを見てくれれば。味方に信頼してもらえるように。あれで抜ければ100点でした」

<10R>

成田和也選手
成田和也選手
 赤板手前で先頭に立った岩本俊介ラインに、単騎の成田和也(写真)が切り替える。浅井康太もすかさず踏み上げて、打鐘過ぎに岩本との踏み合いを制して主導権を奪う。成田が今度は中近ラインを追いかける。両ラインで消耗したところを、最終ホームから清水裕友がまくって出る。あおりもあって原田研太朗が付け切れず、2コーナーで成田が清水にスイッチ。前団をまくりで仕留めた清水を成田が交わして1着。
 「浅井もジャンくらいだったら一発ありそうだし、前々にと思ってました。タイミング的に浅井のラインにいけそうな感じもあったけど、あおりもありました。そしたら(清水が)すぐに来たんで、ピッタリうまくスイッチできた。南(修二)のブロックがあったんで、内に行こうかと思ったけど追い込めて良かった。(シリーズを通して)調子は良かったし、感覚も良かったけど反省だけですね。すべて日々勉強です」
 浅井の積極策は想定外だった清水裕友だったが、流れを見極めてロングまくり。
 「負けたあとは雑なレースが多かったんで、しっかりと組み立てようと思ってました。浅井さんの早めの巻き返しは予想外でビックリした。(まくりのタイミングは前を)見ていて遅くなった。(最終)バックで出切る感じだったらラインで決まったかなと。(4日間)やることをやれたけど、昨日(3日目)は33バンクで前々にいないとっていう気持ちが裏目に出た。2日目にいい動きができただけに、脚を余して負けたのが…」

<11R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 決勝戦を前に、郡司浩平(写真)がしっかり期待に応える走りを披露した。正攻法の位置を確保した郡司を青板バックで山田庸平が押さえ、赤板でさらにその上を切って雨谷一樹が先頭に立つ。一方、6番手に下がった郡司は打鐘目掛けて反撃を開始。腹をくくった雨谷はペースを一気に上げ、さらに中団に位置した山田庸平が強烈ブロックで、郡司の上昇を阻みにいく。しかし、立て直した郡司はグングンと加速。最終1コーナーで雨谷を叩き切ると、スピードを落とすことなく別線を完封した。
 「持つ距離だったし、前が駆ける前に下りの伸びていくところでいこうと。かなりいいのをもらったけど、乗り越えられた。連日、ハナに立つレースができていなかったし、今日のあのイメージで行ければ良かった。もったいない開催になりました。今年も残り少ないレースになってきたので、1走1走をムダにしないように。声援がすごかったです。あの声援を決勝で受けたかったですね。(川崎がバンク改修で)平塚に入って練習をしています」
 いよいよ熾烈さを増すグランプリ出場権を巡る争い。郡司の目はすでに最終決戦となる競輪祭へと向いていた。
 郡司ライン3番手の和田圭は離れていて、雨谷の番手から3番手に切り替えた諸橋愛が激しく詰め寄ったが、佐藤慎太郎がしのいで2着を確保。
 「郡司が強かった。(自分は)力不足を感じる。(オールスター、共同通信社杯で落車した)ケガの痛みというよりも治療している間の空白に練習ができない影響。筋肉の入れ替えには2、3カ月はかかる。来年に向けて、いいスタートを切れるように、目の前のことをやっていきたい」

<12R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 絶体絶命の状況にも勝負をあきらめなかった新田祐大(写真)が、井上茂徳氏、滝澤正光氏、神山雄一郎と並ぶ史上4人目のグランドスラマーとなった。レースは、青板バックで新田が切った上を古性優作が押さえる。2コーナー手前から吉田拓矢が猛然と巻き返していくと、古性もダッシュ。新田は前との車間が空き、3、4番手に吉田-平原康多の関東勢が割り込む。これで8番手となった松浦が最終ホームで新田の外まで追い上げてきて、さらに1センターで新田を締め込みながら内へと切り込んでいく。前団は逃げる古性を吉田がまくりに行くが車が出ずに稲川翔と番手がモツれる。その後ろも松浦と平原で併走と大渋滞。松浦の後ろまで下がった新田だったが、外をけん制する松浦の内に入り、最後は古性の内まですくって抜け出した。
 「理想は前の方が良かったけど、なった位置から組み立てようと。(内に詰まっていたところは)古性君が行って、次々と来ると思ったら、こなくて、3番手にはまって、タイミングを計ろうと思ったら、吉田君が来たことが内に詰まった原因。1周。詰まり続けて、バックもすごいことになって、イチかバチか、何も考えずに踏んだ。守澤君のスピードが良かったので差された気持ちでグランドスラムは簡単ではないと感じていました。(周囲に)1着だと言われていたが、審議が挙がって、昨年のイメージを払拭できずに、また来年かあ、今年も難しいなあと感じた。(優勝が決まって)どちらかというと、第3者目線でものごとを考えていて観客的な感じでゾワっとした。前日までのコメントでも出していたんですけど、一戦一戦、1日のベストを出せるようにコンディションをつくって挑んできた。若手だと、新山(響平)、小原(佑太)がいて、同級生では守澤、永澤(剛)、和田(圭)に気を使ってもらって、先輩にもいいコンディションをつくってもらっていたので、試合に集中して挑むことができた。自分だけで成し遂げた部分ではないですね。あまり思い出を語る方ではないけど、ここで初めて(GIの)決勝に乗って、山崎(芳仁)さんが優勝した思い出の地。そこでの優勝は感慨深いものになった。グランプリは想像していなくて12月が(肩鎖関節脱臼をした部分の)手術の予定だったので、それを早めるか、どうかで今後が変わってくる。いいことが起きたので、いい意味でスケジュールを調整したい。グランドスラムといったらすごいことだとわかると思うので、僕を使って競輪を広めてもらえたらうれしい」
 新田が内に詰まった2コーナー最後尾から守澤太志はまくりに転じる。グングンとスピードに乗っていった守澤は、稲川が吉田をブロックした2センターの山も乗り越えて、直線大外を強襲。
 「新田君が内に入っていって、番手なら付いていくけど、3番手なら付いていってもチャンスはないので、申し訳ないけど、外を踏ませてもらった。バックからはずっと夢を見ていました。みんなが脚を使っている中で、いけたと思ったけど、稲川さんのあおりが大きかった。(今年は)GI以外はなにも成績を残していないけど、(GI決勝は)3、3、2。これでグランプリには近づけた」
 新田をキメて内に切り込んだ松浦悠士は、吉田をブロックした稲川の内を突き、大阪勢の間のコースを伸びたが、内外を北勢に行かれて3着まで。
 「古性君が駆けるタイミングで、(吉田が行って)踏み合ってくれるかなって思ったけど、(3番手に)スポッと入って慌てて追い上げた。(吉田も仕掛ける準備をしていて)あの外はなくて、平原さんの内が一瞬空いたので、行けるところまでと。古性君が最内を空けたのが想定外で、稲川さんが戻ってきて踏み止めたのもある。新田さんが行けてなくても、守澤さんには行かれていたし、やっぱり当たらないでいかないとですね。見せ場は作れたけど、それだけに、獲りたかった。僕が獲っていれば、(清水)裕友もグランプリに近づいていたのに残念です」

次回のグレードレースは、京王閣競輪場開設73周年記念「ゴールドカップレース」GIIIが、10月29日~11月1日の日程で開催されます。
今シリーズは平原康多、宿口陽一、古性優作のSS班3名をはじめとして、新田祐大、眞杉匠ら各地から強豪が参戦。熾烈なV争いから目が離せません。
また、最終日第3レースにて「ガールズルーキー企画レース」が第122期生7名により一発勝負で行われます。こちらもご注目ください。

10月17日時点の出場予定選手データを分析した、京王閣競輪「ゴールドカップレース」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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