『第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 初日編

配信日:10月19日

 舞台は2年ぶりに弥彦。「第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」が、10月19日に弥彦競輪場でスタートした。初日のメイン、「日本競輪選手会理事長杯」は、単騎の3人で決着。まくった古性優作が白星で好スタートを切った。また、特選は山田久徳、平原康多が1着で勝ち上がり、一次予選では地元の諸橋愛が勝ち星を挙げてファンの声援に応えた。10月20日の2日目には、理事長杯、特選の上位選手による「ローズカップ」が行われる。V戦線を見据える意味でも見逃せない一戦だ。
 GIシリーズは開催中の毎日、日替わりで先着1000人にオリジナルグッズをプレゼント(2日目はオリジナルボールペン)。10月20日の2日目は、「きむちゃんねる」の公開生配信、「名輪会」のトークショーなどが予定されています。弥彦競輪場では、みなさまのご来場お待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

開会式
開会式
敢闘宣言をする諸橋愛選手
敢闘宣言をする諸橋愛選手
日本競輪選手会理事長杯出場選手特別紹介
日本競輪選手会理事長杯出場選手特別紹介

<1R>

阿竹智史選手
阿竹智史選手
 赤板過ぎに久米康平が、寺崎浩平を押さえて出る。徳島勢に山崎芳仁が続いて、和田真久留も5番手を追走。3つのラインを送り出して7番手になった寺崎は、打鐘から反撃に出る。東口善朋が付け切れず、寺崎がスピードの違いで最終1センターで久米をとらえる。離れた番手に久米が飛び付いて、阿竹智史(写真)。内から山崎をさばいた東口が4番手でバックを通過する。車間を詰める久米はいっぱい。2センターから外を追い込んだ東口に合わせて踏んだ阿竹が突き抜けた。
 「泳がされた感じはあるが、(久米)康平がしっかりと踏んでレースをしてくれた。もう1回行けると思ったが、後ろにも東口さんがいて内は空けられないなと。最後の直線で踏んだ。新車が2台きて、ここ最近、自転車を変えていたけど、今回はまた違う新車できた。練習でも良かったので」
 スタートでのけん制もあり、前受けを強いられた寺崎浩平は、出切って援軍を失う苦しい流れ。それでも持ち前のスピードで2着に踏ん張った。
 「中団からが良かったが、けん制が入ったので前を取ってでした。そこからは引いてから行こうと。(最終)ホームでいけるイメージでいきました。(打鐘)2センターで東口さんが内に見えたけど、自分も踏み込んでいたのでいけるところまで行こうと。(出切ってからは)ペースで踏んだけど、直線は長く感じた。久々に朝早いレースで、体が思うように動かなかったですね」

<2R>

村上博幸選手
村上博幸選手
 松岡辰泰が切ると、青野将大の上昇に合わせて佐々木悠葵も動く。赤板2コーナー手前で先頭に立った青野が主導権。3番手を佐々木が確保する。青野の先行でレースは流れ、隊列は一本棒。最終1センターで7番手の三谷竜生がまくりを打ち、合わせて5番手の松岡も出る。佐々木も3番手で反応するが、嶋津拓弥、松岡と接触して3コーナーで落車。大外の三谷が、アクシデントを避けて逃げる青野をとらえる。きっちりと続いた村上博幸(写真)は、計ったように差し切った。
 「落車のアクシデントも把握していたんで、そこをかわしてから自分の間合いも取れた。それで(三谷を)交わしにいけたんで、思ってたよりも良かったです。(1カ月空いたのは)持病の股関節痛が出た。季節の変わり目は出やすいんですけど、(ほかにも)痛いところだらけですよ(笑)。でも、ここに来る3日前くらいですかね。体の使い方でひらめいたところがあって、それでだいぶ良くなった。間に合った感じですね」
 近畿ライン3車で上位を独占。後方に置かれたものの、三谷竜生は別線を力強いまくりで仕留めた。
 「5番(松岡)がジャンのところで遅れた。それも1つ苦しい展開になった理由ですけど、自分のタイミングで仕掛けて、前がまくってもその上を行けるようにって思ってました。落車もあって結果的にいけたけど、調子はいいと思います。練習でも調子はいいですし、競走もいい感じで来られてます」

<3R>

岩本俊介選手
岩本俊介選手
 赤板で3番手の岩本俊介に併せ込んだ太田竜馬は、外併走から打鐘で仕掛けて主導権を握る。単騎の内藤宣彦が4番手に続いて、佐藤友和が5番手に入る。太田が風を切り、最終ホームを通過する。7番手の岩本俊介(写真)は、2コーナーから踏み込む。佐藤も合わせてまくるが、岩本のスピードがいい。外めのコースをまくった岩本が、山田英明のけん制をパスして抜け出して1着。
 「(周回中の中団は)作戦のなかの1つでした。太田は(前回の京王閣で)この前、戦ったばかりで、うまいことカマせないように踏んでいましたね。(車は)思ったよりも出ていると思う。いい意味でリラックスしてできました」
 最終3コーナー過ぎからのあおりを乗り越えた松谷秀幸だったが、付けた岩本の加速に1車身半離されての2着。
 「太田君がいい感じで踏んでいて、(岩本は)1回行けるところがあったと思うけど、これは(最終)2コーナーからだなと思って離れないようにと。悪い時と比べれば、少しずつ良くなっている。(コンディションは)いいと思う」

<4R>

渡部幸訓選手
渡部幸訓選手
 赤板1コーナーで吉川希望が先頭に立つ。中部ラインを追った根田空史は、3番手の外でタイミングを取り、再度スパートして打鐘過ぎに主導権を奪う。根田に突っ張られて浮いた阿部将大は3番手に入り直して、松本貴治が7番手に置かれて最終周回へ。もう一度仕掛けた阿部は不発。2センターでは浮いた阿部の内を踏んだ重倉高史が接触して落車。外を踏んだ松本が大きなあおりを受ける。番手の渡部幸訓(写真)が、逃げる根田との間合いを詰めて追い込んだ。
 「(1着が取れているのは)前の選手が頑張ってくれるので、それだけですね。(ラインが)2車なんで、阿部君の後ろに大塚(健一郎)さんもいるんで大きくは張れないなと。ギリギリまで引きつけて、真横まで来たらと思ってた。でも、根田君の掛かりが良くて、そこまで仕事する必要もなかった。フレーム新車なんですけど、進んでくれたんで自信をもって(あとの)3日間を走れます」
 レースの流れを見極めて阿部を突っ張って逃げた根田空史は、大塚、松本を退けて2着に踏ん張った。
 「予定よりも吉川君が誘導を切る時も、ジャンのところも踏んだ。ペースが上がったんで、もう阿部君を出させたら、番手は大塚さんですし、まくるのはキツいかなと。(阿部を出させない)判断もうまくできているのでいいのかなと。ずっと腰痛が出て、そのケアと練習がうまくいっていない。(前々回の松戸のあとの)地区プロでカーボンに乗って、クロモリとの違いで(感覚も)おかしくなった。クロモリに合わせられるようにと思ったけど、まだ違和感はある」

<5R>

渡部哲男選手
渡部哲男選手
 切って出た山崎賢人を志田龍星が、押さえて打鐘手前で先行態勢。すかさず吉田有希も仕掛けて、志田との踏み合いを制して主導権を奪う。山崎は最終1コーナーから反撃に出る。抵抗する吉田を山崎が3コーナー過ぎにとらえて、ラインの中四国勢が続く。直線で番手から桑原大志が差し脚を伸ばすが、3番手の渡部哲男(写真)が外を突き抜けて1着。通算400勝をGIで飾った。
 「(山崎)賢人君が強いので、しっかり追走することに集中していた。ここで行って欲しいってタイミングで行ってくれたのが大きい。直前の練習で良かったわけではなくて状態は横ばいですね。腰痛が出ないようにトレーニングをしていた。今日(初日)は最近のなかでは感触が良かったです。(通算400勝は)メンバー的に1着が取れそうになかったんで、うれしいですね。区切りの1勝ができたんで、また次に向けて頑張る」
 桑原大志は番手から山崎を交わしたが、後ろの渡部に屈して2着。
 「山崎君が頑張ってくれたけど、後ろの渡部君の脚力が違った。前回の反省を生かして大幅に自転車をいじって、ちょっと見えてきたものがある。準決を目指して頑張りたい」

<6R>

和田健太郎選手
和田健太郎選手
 赤板1コーナーで先頭に出た窪木一茂ラインに、野田源一が続く。そこを渡邉雄太がスピード良く巻き返して先行策。窪木は3番手に収まり、後方になった取鳥雄吾は打鐘4コーナーから仕掛ける。逃げる渡邉雄後位の和田健太郎(写真)が、再三にわたり取鳥をけん制。スピードが鈍った取鳥は不発。小倉竜二は最終バック過ぎに窪木をキメるように内に降りて、久米良は外を追い込む。8番手の野田も久米の上を踏む。が、別線の強襲を退けた和田が1着。
 「赤板からジャンまで(窪木に)想定していた以上に踏まれて、(渡邉)雄太もキツかったと思う。あとは取鳥(雄吾)君が仕掛けてくれれば、4番手ないしどこかと思ってた。(打鐘)4コーナーくらいで(取鳥が来たのに)気づいたけど、けん制できるところまではと。(けん制を)あんまりやりすぎて、内に来られてもラインがグチャグチャになってしまうんで、できるだけ最小限にと。最後は僕の技量不足です」
 仕掛け遅れを反省する野田源一は、大外をシャープに伸びたが2着まで。
 「渡邉(雄)君の動きを見ているうちに、(仕掛ける)タイミングを逃してしまった。取鳥君が仕掛けて、あとはどの程度、渡邉(雄)君が抵抗するかなと。止まったら一発と思ってたけど、上の方を走っていたんで理想の形にはならなかった。もうちょっと早く仕掛けて、後ろを連れ込めたら良かったです」

<7R>

佐々木雄一選手
佐々木雄一選手
 小林泰正も合わせてペースを上げるが、打鐘で小原佑太が先頭に立ちそのまま駆ける。3番手で小林と併走になった清水裕友は、4コーナーから仕掛ける。小原が合わせてフルアクセル。清水は最終ホーム手前で佐々木雄一(写真)のところに勢い良く降りるが、佐々木は番手をキープする。まくった堀内俊介のスピードもいいが、佐々木の横で力尽きる。ワンツーはならずも、佐々木が小原とともに勝ち上がって1着。
 「(清水)裕友にからまれていたので必死だったが、(小原は)うまく駆けてくれた。距離は長かったけど、いつも頑張ってくれるし、安心して付いていた。練習は変わらずにやっていて、新しいことにもチャレンジしながらやっている」
 清水が外に浮いて、荒井崇博は最終2コーナーから内に切り替える。結果的には清水との併走になったが、そこを我慢して直線で伸びた。
 「(清水がからんでいて)自分はリカバリーに入らないとって。(清水)裕友は自分でなんとかするだろうと。必死だったので、伸びはわからない」

<8R>

太田海也選手
太田海也選手
 8番手にいた菅田壱道の仕掛けを待たずに、赤板手前で5番手の太田海也(写真)が踏み出す。1センター過ぎに太田が押さえて出て、打鐘手前でラインの3車が出切る。そこで勝負あり。別線にプレッシャーをかけた太田は、中団のもつれをしり目に最終ホームから踏み上げる。4番手は新村穣が稲垣裕之に踏み勝つが、仕掛ける余力はない。別線に隙を与えず、太田が二の足で岩津裕介を振り切った。
 「(前回の)オールスターでやっていたことが、引き続きできたのかなと。ペース配分だったり、パワーコントロールですね。自分では踏み始めた時からゴールまでの流れはいいかなって感じたけど、もっと余裕をもっていけたらと思います。今日(初日)もコントロールができるか、ずっと心配だった。けど、こういう形で終われたので、明日からはもっと良くなってくると思います」
 先月のアジア大会でも結果を出した同県の後輩を称えて、岩津裕介が振り返る。
 「(太田は)ご存知の通り、世界で戦っている脚力があるんで、(自分は)必死でした。打鐘のところでは稲垣さんが上がってきたんで、どうなるかと。ただ、(太田は)余裕があるのか、そこもしっかりと見えていた。それで合わせるぞっていうのがあるから、(別線は)なかなか来られないですね。1週間くらい前に練習中に落車したんで不安はあったけど、そのわりには走れますね」

<9R>

諸橋愛選手
諸橋愛選手
 最内枠の深谷知広がスタートを出て前団に構える。松本秀之介を赤板過ぎに突っ張り、深谷は主導権を渡さない。園田匠に迎え入れられた松本は、4番手に収まって打鐘を迎える。そのまま深谷のペースで最終ホームを通過して、7番手の島川将貴は2コーナー手前からまくりを打つ。松本が島川に合わせて出てじわじわと迫る。逃げる深谷の番手の諸橋愛(写真)は、直線半ばでも松本を振って追い込む。松本に僅差まで詰め寄られるも、地元のGIで1着スタート。
 「深谷とは最近厳しい展開が続いていたので、こういうこと(突っ張り)をしてくれてとてもありがたい。うれしかった。(深谷が)2周行っている分、残せなかった。できることをやろうと思っていました。プレッシャーはなくて、落ち着いていた。体調は問題ない。セッティング、体調面はいまの時点で完成形で準備できた。4日間を通して初日の体調を維持できれば、勝負できるかなと思います」
 深谷に突っ張られて脚力を消耗した松本秀之介だったが、中団からのまくりでしぶとく2着に入った。
 「(深谷の)突っ張りを意識していて、踏んで島川さんが遅れたところを先輩たちが位置を取ってくれた。(最終)ホームで行けそうなところはあったけど、踏み返されていた。島川さんが来た時に反応できて良かった。スライスもしていないし、ゴール前まで踏み切れた。いつもより軽い感じがした。前回よりもやれるのかなと」

<10R>

山田久徳選手
山田久徳選手
 前が取れた新山響平は、いつも通りのスタイルで中島詩音を突っ張る。新山の先行で打鐘を迎える。3番手は山田久徳(写真)がキープして、7番手の嘉永泰斗は最終ホーム手前から仕掛ける。2コーナー付近で山田とからんでスピードが鈍った嘉永は、番手までは至らない。山田は小松崎大地が空けた内を踏んで、北日本コンビの間を鋭く追い込んだ。
 「(周回中は)自分が前か、新山ラインの後ろが理想だった。(新山ラインの後ろが取れて)スタートで全部、決まった感じだった。そこからは先にまくらなきゃダメだったけど、そこまでの脚の余裕はなかった。嘉永に行かれたらまずいなって思って、(さばけはしなかったけど)なんとか脚を使わせられたかなと。小松崎さんも余裕がありそうだったんで、空いたところをワンチャン行こうと。道中楽だったし、ゴール前は思ったよりも進みました」
 最終4コーナーで山田に大きく外に張られた小松崎大地は、直線で立て直して伸び返して2着。
 「(別線は)内もあるし、来ると思っていた。あそこでしっかりと対応できれば、(新山)響平と決まってたと思うので申し訳ない。感じは悪くないと思います。日に日に良くはなってきているんで、そういう感じで少しずつ上向いてはいると思います」

<11R>

平原康多選手
平原康多選手
 関東勢が前に構える。3番手の中野慎詞に併せ込んでフタをした犬伏湧也は、外併走から打鐘で踏み上げる。南修二と犬伏後位を競った山田庸平が落車。南も付け切れず、最終ホーム手前で犬伏が出切る。冷静に見極めた眞杉匠が、番手に収まる。中団の中野はバックからインを踏むが、平原康多(写真)は中野のコースを阻み、犬伏と眞杉の間をスムーズに抜け出した。
 「(犬伏の後ろに入ったのは)眞杉の判断でした。しばらく左足で踏めていなかったが、それがまともになって両足で踏めた。それでゴール前で余裕があった。新車とかではなく、体の問題ですね」
 眞杉匠は1人になった犬伏湧也を受けて、番手から最終3コーナーから踏み上げた。
 「(首の調子は前検日の)昨日よりいいけど、それなりの走りしかできなかった。(犬伏の後ろに入り)ワンテンポ早く、(最終)2コーナーで行ければ良かったがそこがダメだった。首のケアに専念したい。(自転車のセッティングは)前回より全然いいが、微調整しようと思う」

<12R>

古性優作選手
古性優作選手
 赤板を通過しても6番手の菊池岳仁は動かない。9番手にいた山口拳矢は、インを押し上げていく。雨谷一樹と併走になり、スローペースのまま打鐘。3コーナーでようやく菊池が仕掛けるが、前受けの新田祐大もスイッチが入り菊池を出させる気配はない。新田と菊池の叩き合いで、最終1コーナーに突入。単騎勢のなかでは一番前の6番手にいた古性優作(写真)は、2コーナーまくり。菊池を合わせ切った新田を、古性が直線の入口でとらえた。
 「(菊池が)あまりにも来なかったんで、どうなっているのかわからなかった。来た時のスピードもあんまり良くなくて、これはもしかしたら新田さんが踏むかなと。新車に乗ったんですけど、なんかイマイチの気がしたんで明日(2日目)は戻してみるつもりです。それで3日目にいい方(のフレーム)で走れたらなと。自分の力を100パーセント伝えられていた今年の前半のような感じがない。物足りなさを感じます」
 周回中から古性の後ろにいた松浦悠士は、半車輪まで迫っての2着。修正点も見つかったようで、再度単騎の2日目のローズカップの動きには注視したい。
 「あそこまで(レースが)動かないと思わなくて、僕も自分で切ろうかと思った。そしたら(前にいた)古性君が(動く)雰囲気を出していたんで、見てからと。余裕もなかったし、自分で仕掛ける手ごたえはどうだったのか。付いていく分にはいい。(いい時にはそのあとに脚の)ゲージがたまっていくんですけど、たまっていく感じがなかった。自分のなかでわかっているところがある。体ですね、そこを修正したらどうかなっていうのがある」
 関東勢をアテにした郡司浩平は、最終ホームで9番手。反省の振り返りも、感触は悪くないようだ。
 「菊池は(周回中に単騎の古性、松浦を)入れちゃったんで、あんだけ後方になると行くだろうと思った。そしたら思ったよりも行かなくて、(関東勢に)期待をしすぎた自分が悪いんですけど。ジャン過ぎの4コーナーくらいで菊池が行った時に、付いていかなかったのも失敗。(山口)拳矢に入られた。そのまま付いて行けば、行き切れたかはわからないけど、仕掛けることはできた。感覚的には道中、楽だったので手ごたえはある」