『第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:10月22日

 弥彦競輪場で開催された「第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月22日に最終日が行われた。GI初ファイナルの選手も2人いた決勝では、3車の福島勢が主導権。中団から仕掛けた古性優作が、まくりで仕留めてV。2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯に次いで、4連勝の完全Vで今年3度目のGI制覇。優勝賞金3890万円(副賞含む)を獲得して、通算6回目のGI優勝を飾った。

決勝出場選手特別紹介
決勝出場選手特別紹介

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴るとすかさず好枠を生かして飛び出した佐藤慎太郎が誘導員を追う。初手は小松崎大地-佐藤-渡部幸訓、古性優作-南修二、和田健太郎、犬伏湧也-諸橋愛、河端朋之の並び。
 青板バックを過ぎて、小松崎がしきりに後方を警戒し、誘導員との車間を空け始める。4番手の古性も後ろを確認するも動きはないまま赤板を通過。赤板2コーナーから小松崎が腰を上げて、ジャン前で誘導員を交わしてスパート。それを見て7番手の犬伏も持ち前のダッシュを生かして2センターから一気に前へと踏み上げる。しかしながら小松崎のカカリが良く、犬伏の仕掛けは4番手外まで。最終2コーナーで犬伏が勢いが止まると、4番手の古性がすかさずまくりを開始。古性のスピードはかなり良く、2センターで先頭の小松崎を捕らえる。それを見て小松崎後位から切り替えようとする佐藤と古性を追う南でもつれ合って後続の和田が落車。南を捌いた佐藤は前の古性を追うも、古性が追撃を振り切ってのV。今年3度目のGI制覇を完全優勝で飾った。切り替えた佐藤は古性には届かずの2着。佐藤追走の渡部がGI初決勝で表彰台入りとなる3着に入った。







<3R>

嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手
 嘉永泰斗(写真)が切った上を、赤板2コーナー手前で窪木一茂が押さえる。しかしながら、打鐘を通過しても窪木のペースは上がらず、7番手の島川将貴が仕掛ける。カマした島川が最終ホームで出切り、嘉永が素早い反応で踏み上げる。島川の掛かりもいいが、空いた車間を詰めながらまくった嘉永が、前団をとらえて人気に応えた。
 「枠(車番)が悪かったので、後ろから押さえていつも通りのレースをすればいいかなと。(前回の落車があり)今開催はもうちょっとやれると思ったけど全然でした。このあとは体のケアをしっかりして、来月の競輪祭に向けて、もう1回体をつくり直さないといけないですね」
 嘉永マークの小川勇介は、久米良のブロックの乗り越えて2着に流れ込んだ。
 「(嘉永は)すかさず仕掛けて行ったので、強いなと思った。力的にも嘉永君が抜けていたし、自分は追走することだけ考えて走りました。今開催は状態も反応の面でも着通りに、しり上がりだったと思う」

<5R>

中野慎詞選手
中野慎詞選手
 前受けの中野慎詞(写真)は、赤板過ぎにダッシュを利かせて根田空史を突っ張る。根田は後方に下げて、中野はペースを落としながらも別線の反撃に備える。4番手の山田英明も動かず、隊列は一本棒のまま。中野は最終ホームからペースを上げる。スピードに乗せた中野の先行に、別線は動けない。3コーナー過ぎから踏み込んだ山田も、前の2人を脅かすことはできない。2度目のGI出場の中野が逃げ切りでGI初勝利を挙げた。
 「GIの初勝利はうれしいけど、連日、失敗続きで悔しいというか、自分にガッカリしていました。後ろに山崎(芳仁)さん、(渡辺)正光さんが付いてくれたので気合を入れて走りました。今回は初日の特選という、いいところから走らせてもらった。二次予選も(4着で準決の)Aだったのにまだペースを上げなくてもいいところで上げすぎて、勝ち上がれなかった。昨日(3日目)も不発でした。最終日は同じミスをしないように突っ張ろうと。オールスターから失敗続きで、今回は思いっきり行こうとインタビューでも言ったのに、思っている以上の失敗をしてガッカリしてしまいました」
 直線で詰めた山崎芳仁が2着。北日本のホープを労った。
 「中野君が落ち着いていましたね。(山田)英明君も出ていない感じだったので、自分はひと振りして詰めた勢いで踏もうと思った。北日本の若い先行屋は貴重だし、これからも大切にしていきたい」

<8R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 赤板から吉田有希がペースを上げて主導権を握るが、突っ張られた太田海也も踏み込んで打鐘では壮絶な叩き合い。平原康多が4コーナーで清水裕友をさばいて、単独の位置を確保する。しかしながら、関東勢の後ろの稲川翔が最終1センターからまくる。8番手でタイミングをうかがっていた深谷知広(写真)は、2コーナーで外に持ち出してスパート。稲川がまくり切るも、その上を抜群のスピードで深谷知広がまくって1着。
 「車番が悪かったけど、(和田)真久留が位置取りをしてくれて、いい位置が取れた。(吉田)有希が2周半で雰囲気を出していたんで、突っ張りにいくだろうと。(自分は)しっかりと(太田と吉田の叩き合いの)状況を見極めながら準備をしていました。(まくりは)最初3、4歩が足踏みしたけど、そのあとが伸びていったんで良かった。そっち方面のフレームなんで、まくりを打てたのは収穫だった」
 深谷の踏み出しに打鐘から備えた和田真久留は、脚力を消耗するもまくりにきっちりと続いて2着。
 「太田君の上を深谷さんがジャンで行ってしまうのかと思って、ずっと先踏みしていました。そのあとの(最終)ホーム、(1)センターくらいでもそうでした。深谷さんも脚を使わないで、サラ脚の一撃だった。ただ、(深谷が)フレームを換えているせいか、いままでの伸び方と違いました」

<10R>

東口善朋選手
東口善朋選手
 赤板2コーナー手前で押さえ出た中部勢に、単騎の松谷秀幸が切り替える。そこを前受けから8番手に下げてタイミングを取った渡邉一成が仕掛ける。最終ホームで渡邉が主導権を奪い、福島勢に反応した松浦悠士も踏み込んで行くが3番手の外まで。隊列が短くなったところを、三谷竜生が2コーナーからまくる。直線半ばで三谷がまくり切り、東口善朋(写真)が外から差し切った。
 「近畿の自力選手はここっていうところで行ってくれるので、(三谷には)安心して付いていました。ピッチが上がっていくなかで、後方に置かれて苦しいかなと思ったけど。(三谷は)仕掛けてくれたし、あの加速では僕も抜けないかなと思った。(今シリーズは)初日、2日目は自分の思うように体が動いてくれなくて、調整の部分でかみ合ってなかった。ただ、3、4日目になって遅いですけど、しっかりと踏めた」
 後方にはなったものの、さすがの強烈なまくりで三谷竜生が前団をのみ込んだ。
 「前の方を取りたかったんですけど無理でしたね。このメンバーでは(渡邉)一成さんがカマすかなっていうのがあったけど、(山口)拳矢が思ったよりも踏んでくれたんでいい展開になった。松浦君が僕のところに降りてきたら、危ないなって見てたらそのまま前に行ってくれた。それで行きやすかったです。調子自体はいいんですけど、昨日(3日目)失敗して今日は疲れもありました」

<11R>

松井宏佑選手
松井宏佑選手
 新山響平が、前受けから赤板過ぎに松井宏佑(写真)を突っ張る。松井は4番手に降りて、今度は2コーナーから踏み込んだ寺崎浩平が新山を叩いて主導権を奪う。新山は3番手に下げて、8番手の松本秀之介が仕掛けて最終周回へ。新山は松本ラインが外にいて包まれたまま。松本ラインを目標にまくった松井のスピードがいい。寺崎をとらえた松本の上をさらにまくった松井が1着。
 「後ろからになったので、1回動いてからでも位置を取りにいこうと。新山君の先行にならなかったけど、そこからはしっかり踏み込めた。乗り越えられる自信はなかったけど、行けたってことは上向きなのかなって。ただ、まだヒザに違和感はありますね」
 不慣れなマーク戦も松井に流れ込んだ岩本俊介は、半車身差で2着。
 「いつも自力ですけど、マークの時はその仕事をしようと。アシストすることはできたかなと。自力でまくりも出ていたし、マークでも着はまとめられた。けど、昨日(準決)、勝ち上がれないのが僕なのかなって。そこ(準決)を勝ち上がれるように頑張っていきたい」

<12R>

古性優作選手
古性優作選手
 3車の福島勢が前団に構える。小松崎大地は赤板前から誘導との距離を取り別線の反撃に備えるが、7番手の犬伏湧也は動かない。小松崎が先行の腹を固めるように誘導を降ろして打鐘を迎える。犬伏が2センターから仕掛けると、諸橋愛は踏み出しで遅れる。1人で前団に迫る犬伏だが、いつものような勢いがなく出切れない。福島勢の後ろにポジショニングした古性優作(写真)は、浮いた犬伏の内を最終2コーナーからまくる。佐藤慎太郎は止められず、4コーナー手前で逃げる小松崎をとらえた古性が圧巻の完全Vを遂げた。
 「どうなるかわからなかったし、赤板前からはその時の判断でと思ってました。(思ってた展開と)全然違いましたね。(これからの目標は)グランプリを含めたグランドスラムをしたい。(今シリーズは)脇本(雄太)さんがいなくてさみしかったけど、(優勝できて)自分でもビックリしています。(決勝までの3連勝は)たまたま1着が取れている状態で感触も良くなかった。けど、決勝はすごく良かったです。4日間のなかでは一番冷静に走れたし、一番(感触が)良かったです」
 先行策の小松崎の番手で佐藤慎太郎は、最終2センターで南修二をブロック。もつれた2人のあおりを受けて接触した和田健太郎が落車に見舞われる。結果的には南をさばいて審議対象にはなったが、セーフ判定の佐藤が離れた2着に入った。
 「小松崎大地は、本当にいい走りをしてくれた。犬伏のまくりが見えて、どう止めようかと思っていた。その時に古性も来て、対応ができなかった。苦しまぎれに(南)修二のところにいったが対応しきれなかった。自分としては最善のことはできたかな。小松崎大地がいい選手だというのを再確認できた。俺も勝ちたいけど、大地には獲って欲しい。(年末のグランプリへ)賞金の上積みができました」
 福島3番手を固めた渡部幸訓は、内を締めて直線まではじっと我慢。アクシデントもあったが、GI初ファイナルで初めて表彰台にあがった。
 「内を締めておくのが3番手の仕事。3番手を固めさせてもらって、その仕事をこなせるようになってきたという実感がある。今開催はラインのおかげだし、自力選手の頑張りで恵まれました。(佐藤)慎太郎さんに食らいついていたので、3着というのはわからなかった。初のGI決勝で表彰台はデキすぎですね。競輪人生で(GI決勝に乗れて)満足していたところもあるが、ラインのおかげです。自分の力よりもラインの力。(今後は)初心に返って一戦、一戦、コツコツやっていきたい」

次回のグレードレースは、京王閣競輪場開設74周年記念「ゴールドカップレース」GIIIが10月28日~31日の日程で開催されます。
今シリーズは平原康多、新田祐大、佐藤慎太郎のSS班3名が参戦する豪華メンバー。しかも眞杉匠、北井佑季、町田太我ら超ド級の先行型がズラリとそろっているので、優勝のゆくえは混とんとしています。
また、最終日第3レースにて「ルーキーシリーズプラス」が第123期生7名により一発勝負で行われます。こちらも注目です。

10月12日時点の出場予定選手データを分析した、京王閣競輪「ゴールドカップレース」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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