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レース展望


  第16回寛仁親王牌が前橋競輪場で開催される。暮れのグランプリからタイトルを独占してきた北日本と、ついに北日本に待ったをかけた小嶋敬二とのパワー対決が見どころだが、勢いを取り戻してきた九州や地元での巻き返しを狙う関東の動向からも目が離せない。
 
高速バンクで怪物パワーが爆発!
年齢の壁を超えてますます強くなる小嶋敬二
 
 高松宮記念杯でまさに怪物パワーと呼ぶしかない強さを見せつけた小嶋敬二。決勝戦では佐藤友和-山崎芳仁の強力無比の2段駆けラインを難なく捲り切ったが、落車した北津留翼と接触して後輪が破損していたというのだから恐れ入る。
今回も小嶋と北日本ラインのパワー対決を中心に大会は動いていくだろうが、高松宮記念杯から1カ月足らずでの開催となるので、今回も小嶋が優勢と見ていいだろう。
高松宮記念杯では2日目優秀でも佐藤-山崎の北日本ラインを捲り切っているし、準決勝では荒井崇博の先行をホーム発進の捲りで捕らえて圧勝と、確かな脚力に裏打ちされた積極性も申し分ない。昨年の寛仁親王牌では準決勝で打鐘から先頭に立って流したところを渡部哲男にカマされて4着に敗れているが、今の小嶋なら小回りバンクの前橋で若手相手のレースであっても、遅れをとる心配はまずなさそうだ。
小嶋敬二
小嶋敬二(石川・74期)
   
 高松宮記念杯での山崎芳仁は初日青龍賞、2日目優秀、決勝戦と3日間佐藤友和の番手回りだった。自力勝負は準決勝のみだったが、話題のギア倍数も初日、2日目の3・71から4・00に上げ、平原康多、海老根恵太、村上義弘らの反撃をまったく許さない力強い先行で2着に粘っており、調子は変わらずにいい。
決勝戦も佐藤友和の番手回りだったが、競りなしを想定しての4・00の大ギアで、友和のダッシュについていけないのではないかと一部で不安視されていた。
しかし、山崎は佐藤の先行をぴったり追走して小嶋に2分の1輪差まで詰め寄っており、大ギアをしっかり踏み切れていることを証明してみせた。高松宮記念杯では完敗だったが、今の小嶋に真っ向から立ち向かえるのはやはり山崎ぐらいしかおらず、今回も怪物パワーと大ギアパワーの対決が一番の見どころになるだろう。
山崎芳仁
山崎芳仁(福島・88期)
   
 
武田豊樹がGⅠ競輪初制覇を目指す!
勢いに乗る九州がまたもや旋風を巻き起こす
 
 九州は北日本や関東と比べると選手層の面で決して恵まれた状況にあるとはいえないが、昨年は3人の選手がタイトルを獲得している。暮れには吉岡稔真の引退があったが、昨年からの勢いは途切れておらず、高松宮記念杯では3人が優出を果たしている。  
準決勝で揃ってギア倍数を上げてワンツーを決めた北津留翼と合志正臣も見事だったが、完璧な仕上がりぶりを見せつけていたのが荒井崇博だ。
決勝戦は目標の北津留翼が落車するアクシデントがあって4着に終わったが、一次予選は逃げ切りで大塚健一郎とワンツー、二次予選は捲りの1着で合志正臣とワンツー、準決勝も小嶋敬二相手に逃げて2着に粘っている。今回も九州勢を引き連れて旋風を巻き起こしてくれそうだ。
荒井崇博
荒井崇博(佐賀・82期)
   
 武田豊樹も高松宮記念杯では優出こそならなかったが、荒井崇博と同様に調子は万全の状態だった。一次予選、二次予選ともに捲りの1着ではあったものの、準決勝では勝負どころで前団の動きを見すぎて、仕掛けが遅れてしまっている。
競輪は一番強い選手、一番調子のいい選手が必ず勝てるとは限らないのが面白いところで、準決勝終了後に武田も、「調子が良いだけでは駄目なんですね」と首をひねっていたが、高松宮記念杯での失敗を反省材料にして今度こその積極的な仕掛けを心がければ、悲願のGⅠ競輪初制覇も期待できるだろう。脚力的にも体調的にも、小嶋敬二や山崎芳仁に十分に対抗できる状態にあるのだから。
武田豊樹
武田豊樹(茨城・88期)
   
 昨年の大会では手島慶介―後閑信一の地元コンビが見事な捲りを決め、後閑が2個目のタイトルを獲得している。関東は機動力の面でも選手層の面でも北日本や九州に引けを取らないほど充実しているはずなのだが、今年はまだビッグレースでの関東の選手の優勝がないし、高松宮記念杯での優出はゼロだった。
このままでは勢いを取り戻してきた中部や九州に飲み込まれてジリ貧状態になるのは明らかなので、地元開催の今大会では総力戦で必ずや巻き返しを狙ってくるだろう。とりわけ常に一発の魅力を秘めている手島慶介と後閑信一の動向には注目してみたい。
手島は高松宮記念杯では準決勝で落車に泣かされたが、4月の西武園記念で今年2度目の記念優勝を飾っており、得意の自在戦のキレ味は健在だ。後閑も高松宮記念杯では二次予選で敗れているが、5月の宇都宮記念では武田豊樹―神山雄一郎の3番手から伸びて優勝と調子はいい。
後閑信一
後閑信一(群馬・65期)
   
 南関東では海老根恵太がだいぶ調子を取り戻してきた。昨年暮れから今年3月まで負傷欠場していたが、5月の平塚記念で優出して自信を取り戻した。高松宮記念杯でもトップスピードの持続距離にまだ物足りないものがあるが、二次予選を捲りの1着で通過して準決まで勝ち上がっており、今回はさらなる調子の上積みと活躍が期待できる。
海老根恵太
海老根恵太(千葉・86期)
   
 
勝率6割と絶好調の永井清史が逃げ切りを狙う
新しいフレームで末の粘りがついてきた稲垣裕之
 
 30歳の大台を目前に控えて稲垣裕之が本格化してきている。稲垣の徹底先行ぶりには以前から定評があったが、末の粘りに物足りないものがあり成績は伸び悩んでいた。
 しかし、3月の日本選手権から自転車を新しいメーカーのものに変え、ギア倍数も3・57から3・67に上げたことで粘りのある走りができるようになり、成績も上昇してきている。
高松宮記念杯では準決勝で敗れているが、一次予選は逃げ切りで前田拓也とワンツー、二次予選も新田康仁に番手に飛びつかれながらも3着に粘り込み、4日目特別優秀では武田豊樹の先行を6番手から捲り切って2勝目を挙げ、再度前田拓也とワンツーを決めている。
稲垣は捲りも強く、捲りに回されたとしても先行と同じくらいに巻き返しが早いので、小回りバンクの前橋でも活躍が期待できる。
稲垣裕之
稲垣裕之(京都・86期)
   
 また、永井清史が絶好調だ。昨年は高松宮記念杯で落車してからリズムを崩してしまい、逃げて粘れず、捲って不発の低調なレースが続いていたが、今年に入ってから本来の天才スプリンターとしての強さを取り戻した。
 FⅠ戦が中心とはいえ、今年は5月までに29走して1着が17回で勝率が6割近い。しかもすべてが逃げ切りである。5月の大垣記念でも二次予選Aと準決勝Aを逃げ切り、決勝戦も逃げて3着に粘っている。高松宮記念杯では一次予選で敗れ、4日間未勝利に終わってしまったが、4日間とも先手を取っており、今回もまちがいなく連日の主導権取りを狙ってくるだろう。
永井清史
永井清史(岐阜・88期)
   
  新人の注目選手は90期・茨城の松田優一だ。全プロの1㎞タイムトライアルで3位となり、GⅠ初出場で特別選抜予選のスタートとなった。
松田は直近4か月のバック回数が20回と徹底先行で頑張っており、S級での優勝はまだないが、FⅠ戦ではほとんど優出を逃していない。5月の前橋FⅠでは準決勝で7着と敗れているが、初日特選と3日目選抜は逃げ切っており、今回も連日の大駆けが期待できる。
 
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43歳の松本整が10年ぶり 2度目のGⅠ競輪制覇
 松本整は92年の名古屋オールスターでGⅠ競輪初制覇を果たしているが、その時は井上茂徳の1着失格による繰り上がり優勝だった。それから10年、43歳になっていた松本は、後輩の村上義弘の先行を目標に文句なしの優勝を飾り、GⅠ競輪制覇の最年長記録(当時)を樹立した。並びは山田裕仁―會田正一、小野俊之―細川洋、齋藤登志信―小橋正義、村上義弘―松本整―伊藤保文で周回。青板ホームで齋藤が上昇して山田の前に入ると、小野も踏み上げて中団で山田と並走。赤板で村上が上昇すると齋藤が突っ張るが、打鐘で村上が出切って主導権を奪い、齋藤は3番手のインで粘り伊藤に競り勝つ。内に詰まっていた山田はバックで小野をどかして捲りを放つが、齋藤に牽制されて失速、絶好の展開になった松本が直線で抜け出して優勝、松本と村上の中を割った小橋が2着、細川が3着だった。


日本一きついカントを有する高速バンク
基本は先手有利だが、捲りもよく決まっている

 前橋は日本一きついカントを有する小回りバンクで先手ラインが断然有利とされるが、GⅠ競輪の寛仁親王牌では必ずしも先手ライン有利とはいえない結果となっている。
 昨年の大会では全47レースのうち先手ラインの選手が1着になったのは19回で、全体の4割にすぎない。さすがに一流選手が集うGⅠ競輪だけに捲りもよく決まっているし、中団からの直線強襲も決して少なくない。小橋正義は前橋で開催された寛仁親王牌を3回優勝しているが、04年の大会の決勝戦は最終4角で4番手の展開から直戦鋭く伸びて1着に突き抜けている。
 屋内バンクでは風の影響を受けないので選手は持てる力を存分に発揮できるが、反面ごまかしがきかず、追い風によるアシストも期待できないので、先行選手にとっては必ずしも好条件ばかりとはいえないのである。
 昨年の1着、2着の決まり手を見てみると、1着は逃げが7回、捲りが17回、差しが23回、2着は逃げが14回、捲りが9回、差しが6回、マークが18回となっている。
さらに詳しく見てみると、初日と最終日には逃げ粘りの2着が多く、2日目と3日目は捲りがよく決まっている。

昨年のゴール

なによりも積極性が求められる

周長は335m、最大カントは36度、見なし直線距離は46.7m。90年12月に日本初の全天候型屋内バンクとしてオープン。小回りの高速バンクなので先行も捲りも積極性がなによりも大切となり、先行なら赤板から、捲りでも打鐘から仕掛けていく覚悟がないと不発の恐れがある。ただ36度のカントを使って山おろしをかけると直線で外が伸びるので、追い込みなら中団で脚をためることができる。

前橋バンク


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