『第18回寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編
 
配信日:7月7日


 いよいよ最終日を迎えた青森競輪場。4日間に渡って激しい戦いを繰り広げてきたシリーズのクライマックス・決勝戦が初夏の日差しの下、激戦を勝ち抜いた9人によって争われた。レースは平原康多率いる関東勢がグングンとピッチを上げて主導権を握る。バックでは武田豊樹が前に踏み、神山雄一郎とのマッチレースかと思われたが、このラインに付けていた海老根恵太が鋭く伸びて初のタイトル獲得。師匠の森下太志選手、そして天国の故東出剛さんに捧げるVを成し遂げた。


決勝戦・レース経過
 ゆっくりとしたスタートから平原康多が誘導員を追い、周回は平原-武田豊樹-神山雄一郎-永井清史-山口富生-井上昌己-大塚健一郎-海老根恵太-伏見俊昭の並び。
  後ろ攻めになった海老根は青板の2コーナーから早々と上昇を開始するが、正攻法の平原が波を作って海老根の上昇を許さない。阻まれた海老根が中団狙いに切り替えると永井は車を下げて六番手に。平原はホーム過ぎから誘導との車間を空けると、2コーナーから一気にペースを上げる。引いた永井はホームから懸命に巻き返すが、武田が波を作りながらけん制。そして2コーナーから番手まくりに出る。外々を踏まされた永井はバック過ぎに力尽き、八番手から内にコースを選んだ井上もコースを失い圏外に。優勝争いは前の四車に絞られた。4コーナーを立ち直ると神山が外に車を持ち出し、さらに外を海老根、その間を伏見が狙う。この三車による伸び比べを制した海老根が嬉しいビッグ初制覇、絶好態勢の神山は惜しくも2着で涙を飲んだ。
表彰式
胴上げ
表彰式
胴上げ
ゴール
ゴール



<3R>
内藤宣彦選手
内藤宣彦選手
   倉野隆太郎と佐藤朋也のけん制を尻目に、前受けの佐々木則幸が突っ張って主導権を奪うと、三番手に切り替えた内藤宣彦(写真)が直線で突き抜けた。
  「倉野君は叩いてくれれば良かったけど、なかなか前を叩かないんで落ち着いて待った方がいいと思った。佐藤君は行ってくれたけど、佐々木君がもう踏み込んでいたんで出切れないかなと。あとは内に下りるしかなかった。巧く三番手に入れたけど、佐々木君は掛かっていたんできつかったですよ。佐々木君は調子が悪いと言っても格上の選手なんでね。強かったですよ」
  佐々木則幸は最終日に2度目の確定板入り。
  「一旦突っ張って、また来たら中団に入ろうと思ってたけど、全然押さえにきてくれないし。そうしたらホームまできてしまったし、もうあそこで引いたら七番手になってしまうからね。6着くらいになってしまうかと思ったけど、なんとか3着に残れましたね。長い距離を踏んだからきつかったですよ。今回は悪い状態なりにも手応えがつかめたんで、少しずつ調子を戻していきたい」
  佐藤朋也は「ホームで行きやすい展開になったんですけどね。倉野君がけん制してくることも想定していたし、あれで出切れないってことは自分に力がないってこと。帰ってまた練習してきます」と潔く力負けを認める。


<4R>
矢口啓一郎選手
矢口啓一郎選手
   4レースは、先行した矢口啓一郎(写真)が別線を封じて1着をゲット。最終日にしてようやく1勝を挙げた。
  「自分が駆ける展開だったし、もう腹は括っていました。最終日にどうにか自分らしい競走ができたけど、4日間ずっと重かった。次までに立て直してきます」


<5R>
村本大輔選手
村本大輔選手
   5レースは松田優一-後閑信一の関東コンビが主導権をにぎると、バック手前から後閑が番手まくりを敢行。その後位に切り替えた村本大輔(写真)が直線を強襲して1着をさらった。
  「松田君がホームで相当脚を使っていたし、後閑さんの動きもあると思った。だから後位にいきました。2センターで誰かが来たのが分かったし、中を割られないようにとそこだけ気をつけていました」
  後閑信一は「松田は駆ければ強いね。いいレースをしてくれた」と振り返った。


<6R>
遠澤健二選手
遠澤健二選手
   6レースは稲垣裕之の巻き返しを突っ張って抵抗した鈴木謙太郎が主導権をにぎり、3着に逃げ粘った。
  「稲垣さんが相手だし、生半可な気持ちじゃいけないと気合が入っていました。今日はカマシよりも突っ張りの方が自分のダッシュが生かせると思いそうしようと。有坂さんの援護もあって3着に入れましたが、バック辺りでは9着でも仕方がないと覚悟していました」 
  北日本勢を追走した遠澤健二(写真)は2着入線にも、「稲垣が俺のところに降りてくると思ってヒヤヒヤだったよ(苦笑)。何とかしのいだけど、有坂(直樹)が車間を空けて踏んでいたから、思い切り抜きに行ったけど、最後は抜けなかった」と苦笑い。


<7R>
渡邉晴智選手
渡邉晴智選手
   新田祐大が村上義弘のお株を奪う「魂の先行策」に出た。村上を執拗に警戒し、強引に突っ張って主導権を奪うと、最後は渡邉晴智(写真)-海野敦男が抜け出した。
  「今日は新田君が頑張ってくれたし、気迫を感じましたよ。気持ち良いレースができた。(村本)大輔にセッティングを見てもらったら今日は車が出ましたね。今回は準決で負けたけど、気持ちを切らさずに次も頑張りたい」
  逃げた新田祐大は別線を完封し、3着に粘り込んだ。
  「村上さんを出させてしまうと巻き返しは厳しいし、今日は主導権を取ることしか考えていなかった。ジャンで坂本(亮馬)君が内をすくってきたので、すぐに下りて閉めこみました。番手の晴智さんなら(坂本に)競り勝つだろうし、あとは村上さんだけを警戒して駆けました。今日はギアを下げて感じが良かったし、力を出し切るレースができてよかった」
  坂本亮馬は中団四番手からまくり上げたものの、伸びを欠いて6着に敗れた。
  「巧く閉められましたね。中団を取れたけど、入った時点で脚は一杯だったし、出てからも車が進まなかった」


<8R>
伊藤保文選手
伊藤保文選手
   小嶋敬二が意地の先行策でレースの主導権を握った。北津留翼は後方のまま。結局、番手から伸びた伊藤保文(写真)が1着。
  「(小嶋が)もう行かないだろうと思ったら踏んだので慌てましたよ。直線ではこれでワンツーだと思ったけど、うしろから長塚君がいい勢いで来たのが見えて…」
  小嶋敬二は疲労困憊といった様子で帰り支度。
  「とにかく今開催は疲れました。三連勝はできなかったね。小林君が追い上げだと思って見てたら、そのまま出切ってしまうような感じだったので、慌てて踏んだ。バックで長塚君が三番手に来ているのが見えたので、これは抜かれちゃうと思いました」


<9R>
石丸寛之選手
石丸寛之選手
   9レースは石丸寛之(写真)がまくって快勝。最終日にようやく1勝を挙げ、勝利で締めくくった。
  「昨日が行けずに終わってしまったんで、今日はたとえ強引でも出ようと思っていました。1センターで前がゴチャ付いたけど、山田(裕仁)さんは自力を出すだろうから、それに付いて行こうと思っていた。でも、浅井君の所に追い上げただけだったから、自分で仕掛けました。今日は調子が良かったし、ここは外が伸びるのでうまくいきました」
  2着は浅井康太が入った。菅田壱道に叩かれたものの、持ち味の地脚を発揮し伸びてきた。
  「菅田君を突っ張ろうと思ってたんですけどね。普通なら3コーナーくらいから駆けるんだけど、(競りで離れた)山田さんを待ってたので仕掛けがワンテンポ遅れて行かれてしまった。でも、今回は仕上がっていたし、そこから巻き返せました」
  菅田壱道は直線で失速して7着に終わる。
  「作戦通り、前受けからすぐに引いてカマしたんですけどね。出切った時点で脚は一杯でした」


<10R>
山口幸二選手
山口幸二選手
   中部勢が完璧なレース運びで他のラインを完封。番手有利に抜け出した山口幸二(写真)が1着でシリーズを締めた。
  「正直、最終日に勝てたけどスッキリしない感じですね。昨日の負け方がちょっとショックだった。これから力を上げていく年齢でもないし、ギアとかも含めてこの脚を維持していくようなことを考えなくちゃいけないのかな」
  金子貴志は力を出し切った競走に「いい形になりましたね。今日は松岡君が斬ったら、その上を叩くというシンプルな作戦でした。山崎が内に潜っているのを見て、楽になった。うまくペースで駆けられたけど、この展開なら2着に残りたかったですね」


<11R>
神山雄一郎選手
神山雄一郎選手
井上昌己選手
井上昌己選手
   海老根恵太のVで幕を閉じた決勝戦。2着の神山雄一郎(写真)は、さすがに悔しさを隠せない。
  「悔しいですね。これは本当の気持ちです。日本を代表する先行選手の前の二人が頑張ってくれたし、僕もその気持ちに応えようと精一杯頑張ったけど、あと何十センチを踏み切る力が足りなかった。この、あと1mのために365日、努力していこうと思います。今日は海老根君が強かった」
  伏見俊昭はサバサバと振り返る。
  「空いていれば中を突っ込めたんだろうけど、前の選手に当たってたらスピードが死んじゃうでしょう。どっちが良かったかは分かりませんね」
  井上昌己(写真)は「今日はとにかく判断ミス。あの展開は考えていた中での理想的なものなんだけど、しっかり平原のラインに付いていくべきだった。不完全燃焼です」
  武田豊樹も悔しさをにじませながら取り囲んだ記者団に応える。
  「永井が外に浮いたのが見えたんだけど、彼も力のある選手だから、早めに踏みました。かぶっちゃったら終わりですから。今日は海老根君に展開が向いた。あの位置は楽ですよね(苦笑)。また全日本選抜で決勝戦に乗って勝負したい」
  永井清史はなす術なく終わってしまう。
  「僕が平原のパターンのレースをするべきでした。勝負所で引いたのは本当に反省です。先行して9着の方が気分は良かった。全日本選抜ではしっかりバックを取って結果を出せるよう頑張ります」

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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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