『第21回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 初日編

配信日:7月13日
 弥彦競輪場で第21回寬仁親王牌・世界選手権トーナメント(G1)の初日が、どんよりとした曇り空の下で行われた。初日のメーン「日本競輪選手会理事長杯」では、深谷知広と浅井康太の中を割った成田和也が、鮮やかに突き抜けた。2日目は理事長杯を勝った成田をはじめとする9選手による「ローズカップ」が、メーンレースとして組まている。9選手すべてが準決権利(失格を除く)を手にしている「ローズカップ」は、シリーズ後半戦を占う意味でも重要な一戦となることは間違いない。なお、本大会は寬仁親王殿下を追悼する大会として追悼の意を表するため、開催期間中の半旗掲揚、出場選手及び関係者による喪章の着用を行います。
 また、本場では2日目も先着プレゼントなどの様々なファンサービスと、公開指定練習見学(悪天候の場合は中止)や予想会などのイベントでお客様をお待ちしています。ぜひ、弥彦競輪場に足をお運びください。

 〈理事長杯レース経過〉
 号砲で武田豊樹がまず出て、正攻法に構える。武田―長塚智広の茨城コンビが前受け、単騎の村上義弘がこれに続いて3番手、中団は深谷知広―浅井康太―山口幸二の中部勢、坂本貴史―伏見俊昭―成田和也の北日本勢が後攻めの形で隊列は落ち着く。
 赤板前から坂本が上昇を始め、中部ラインを封じ込める。坂本は打鐘前から一気に踏み込んで主導権奪取。深谷が中団をうまく確保し、踏み遅れた武田は浅井の内で粘る。2コーナーから深谷が外をまくり上げると、これに合わせて伏見が番手発進。深谷がこれを力でねじ伏せて先頭に躍り出る。浅井が懸命に追走し、成田がこの後ろにスイッチ。直線はこの3人の勝負になるが、3番手から中を割った成田が鮮やかに突き抜けた。番手から追い込んだ浅井が2着。深谷は3着に敗れた。
中野浩一氏と安田大サーカス団長によるトークショー
中野浩一氏と安田大サーカス団長によるトークショー
開会式での黙祷
開会式での黙祷
選手宣誓する地元の諸橋愛選手
選手宣誓する地元の諸橋愛選手
理事長杯ゴール
理事長杯ゴール
理事長杯優勝者
理事長杯優勝者
<1R>
三宅達也選手
三宅達也選手
 第21回を迎えた寬仁親王牌。シリーズ初っ端を飾ったのは思惑通りにレースを運んだ三宅達也(写真)。最終ホームで襲いかかってきた川村晃司の番手に飛び付くと、ゴール寸前できっちり交わした。
「一瞬、抜けてないかと思ったけど。やっぱり1着はうれしいですね。今日は斬って番手で勝負だと思ってました。柏野(智典)君が後ろをどかしてくれて、あれで8割方決まったと思いました。それにしても川村さんの掛かりはいいですね。もう誰も来なかったので、自分のタイミングで踏みました。もうちょっとセッティングとかを2次予選に向けて、修正していかないとっていう感じはあるけど、よかったです」
 オープニングの勝利者インタビューを終えて、三宅が目を細める。
 ラインの援護を失いながらも川村晃司は、先行策から2着に粘りこんだ。
「番手には三宅君が入っているのはわかっていました。それでペースで踏んでいきました。僕にとってはジャンのところとかは、いい展開になりました。それでも最後はいっぱいだった」
 最終1コーナーで柏野智典は川村マークの前田拓也を外に張って、前の三宅を懸命に追走。3着に入線した。
「2番手か、3番手を飛ばしてって思ってました。もっていった分、立ち上がっていく時に遅れたんで、焦ったし、きつかった。ちょうど、川村さんも踏み始めた時だったんで。2着は確保しておきたかった…」

<2R>
東口善朋選手
東口善朋選手
 打鐘で稲毛健太を押さえて出た松岡孔明が先行態勢を取るが、ゆるんだペースを見逃さず最終ホームから新田康仁が叩いて出る。
「内にいた稲毛君をキメて3番手と思ってたんですけど。松岡君が流したんで、先行の腹をくくりました。それでなんとか4着までにって。自分が思っている以上に踏めたし、(まくりを)合わせる余裕もありました」
 目標の稲毛が立ち遅れると、東口善朋(写真)は切り替えてまくりを敢行。久々の白星がG1での勝ち上がりとあって、自然と笑みがこぼれる。
「ここ何カ月か成績が悪かったし、なかなか思うような走りができなかった。勝ち上がりの1着もなかったんで。今回は気持ちも入れてきたし、(自転車も)前に出ました。今日は稲毛君がすんなり駆けてられて、中団争いになるのかと思ったけど。G1だから甘くないですね」
 最終3コーナーから東口に切り替え気味に、外を踏んだ安東宏高が3着。
「松岡君が一回斬って前に出てくれたのが大きかった。それからは松岡君が内に行ったから、切り替える感じで外を踏ませてもらいました」

<3R>
伊藤保文選手
伊藤保文選手
 小川祐司が先行態勢に入ったところをすかさず松岡健介がカマシ。これで勝負は決まった。最後は番手の伊藤保文(写真)が抜け出し、ロンドンでのパラサイクル出場を前に嬉しいG1勝利を飾った。
「ありがとうございます(笑)。今日は安心してついて行ったし、出切ったあとは誰も来させない感じだった。すごかったですね。久々にいいとこ回りましたよ」
 牛山貴広が3番手に降りると、そのまま外を踏んだ飯嶋則之が2着に食い込んだ。
「(牛山が)降りたので、バックを踏めなかった。牛山君の邪魔をしちゃいましたね」
 カマした松岡健介は3着に。引き揚げてくると、その場でへたり込んだ。
「あそこで叩いたら9番(永澤剛)も来れないだろうと思った。小川君もダラダラ踏んでたのできつかった。年を考えんとダメですね。きつかったですわ」

<4R>
 阿竹智史が師匠を引き連れて、打鐘から押さえ先行。後続を一本棒にして逃げて、番手の小倉竜二には絶好の展開。きっちりチャンスをモノにした。
「阿竹君は思い切り行ってくれたんだけど。やっぱり、カマシと押さえて駆けるのではスピードが違うんで。そこら辺が難しいですね。今日は展開が良かったし、調子はわからない。余裕がない気もする。この1着で流れが変わってくれたらいいんですけど。阿竹君には先着したこともなかったし、今回は一緒に走って初めての1着です」
 7番手に置かれた北津留翼は反撃のタイミングを逸して、最終バック過ぎからようやくまくり上げる。
「(最終)ホームから行ければよかったんですけどねぇ…。なんかじわっと(ペースが)上がって行ったんで、見ちゃいました。その後も栗田(雅也)さんが行くと思ってたら、行かなかったんで。これはまずいって思って行きました。ホームで行けなかったんで、調子はあんまり…」と、2着には届いたが北津留は首を傾げる。
 4着で2次予選Bに進んだ望月永悟は、同県の栗田を気遣いながら振り返る。
「(栗田)雅也は3番手の横くらいで止まっちゃった。踏んだ瞬間はよかったんだけど。俺が付いているから、焦って行ってくれた感じですね。自分の状態は最近としてはいいと思います」

<5R>
山田裕仁選手
山田裕仁選手
 赤板から誘導員を下ろして永井清史が先行。これで番手絶好になった山田裕仁(写真)が直線鋭く抜け出した。
「狙われる位置だったけど、山口(貴弘)君の粘りや追い上げはしょうがないから。まだ打鐘前だったし、2車なら出させてもよかったんだけどね。永井ちゃんもいいペースで踏んでたし、来れないなと思った。(最後に永井が失速するのは)分かったうえで走らないといけないけど、残せず残念です」
 山田の内で粘る素振りを見せた山口貴弘は引いて4番手をキープ。そこから外を伸びて2着に食い込んだ。
「ああすれば(永井が)慌てて出ていくだろうから、中団を取るために粘るふりをしました。神山(雄一郎)さんに作戦を立ててもらったんだけど、ビックリするくらいはまりましたね。あれだけ動けてるし、調子もいいと思う」

<6R>
中村一将選手
中村一将選手
 中村一将(写真)は打鐘の2センターで神奈川ラインの間に割って入るトリッキーな動きから、五十嵐力をすくって逃げた山下一輝ラインの3番手をキープ。まくりで別線を沈めて、近畿ラインで上位独占。
「あそこはもう必死だった。それから(南)修二の動きを確認して、(後ろに)付いててくれたのがわかった。最後は先行しているくらいタレてきたけど。修二とワンツーだったからよかった。カマシ先行がダメな時の対処が、うまくなってきたのがあると思う」
 南修二は冷静に中村の番手に付け直すと、計ったように中村を差し切り1着。
「五十嵐さんところが締まってたし、外から中村さんに付け直しました。中村さんはすかさず仕掛けて行ってくれたし、お互いの仕事ができた」
 五十嵐力は5番手から辛くも3着。
「(山下一輝が)どんだけ踏むか半信半疑だった、甘く見てました…。オーバーワークなんですかね、感じもあんまりよくない。中村さんがまくった時に、そのラインにしっかり付いていけば、また違っていたかもしれない」

<7R>
井上昌己選手
井上昌己選手
 7番手に置かれた井上昌己が、根田空史をカマシで置き去り。井上を追走した荒井崇博が、番手から追い込む。
「やっぱり(井上)昌己は強いですね。どうこうより自分はただ付いていっただけなんで」と、練習仲間でもある井上の強さをたたえる。
 先行して2着に粘った井上昌己(写真)は、息を切らしながら引き揚げて来る。
「すんなり駆けたら(根田は)強いんで。追い上げに行って、外併走からって思ってました。体が自然と反応した。1周くらいですかね、自分が駆けたのは。きつかった。荒井さんとは宮杯の初日の事(失敗)があったんでよかったです」
 地元の意地を見せた小橋正義は、薄氷を踏む思いの4着で1次予選をクリア。
「鈴木(誠)さんが3番手に切り替えてくれれば、もっと楽だったかもしれない。それでもなんとか上(2次予選Bのレース)に行けたから、また頑張ります」

<8R>
藤木裕選手
藤木裕選手
「やっぱり緊張はするし。いつも通りにとは、いかないですよ」と、口を開くのは藤木裕(写真)。練習でもともに汗を流し、世話になっている村上博幸と同乗に自然と力は入る。
「最初の位置取りは思ったのとは違ったけど、ラインの3人でしっかり決まっているし。押さえて駆けているんで、その上を行かれないように気をつけながらやりました。それで自分が2着に残れなかったのは、今の自分の力なんでしょうがない。明日もまたいいレースができるように、調整して頑張ります」
 前回、小松島記念の初日に落車。村上博幸はその不安を払しょくする、白星の好発進。
「藤木君が打鐘からかなり吹かして行ったんで、大丈夫かなって思いました。志村(太賀)君が追い上げて来たのもわかっていたし。後は引きつけてと。そういう面では終始、余裕がありました。落車の影響は問題ないと思います」
 京都コンビの3番手から渡辺十夢が、外を踏んであわや突き抜ける勢いでの2着。上々の伸びに自身も納得する。
「僕は余裕がありました。藤木君も早く踏んでくれたし、ゆるむところがなかった。(別線の)邪魔になるようにって、外を踏んだのがよかったのかもしれない」

<9R>
市田佳寿浩選手
市田佳寿浩選手
 打鐘から一気に脇本雄太が主導権を握ると、別線の巻き返しを完封。番手の市田佳寿浩(写真)がこの展開を逃さなかった。
「後ろを1回も見なかったレースなんて、今まで一度もないんじゃないかな。それくらい今日は脇本君が強かった。脇本君が近くにいるってことは、俺がもっと頑張らないといけないってことですからね。でも最後は思い切り踏んで、やっと抜けてる感じです」
 逃げた脇本雄太はやはり強かった。
「自分を潰しにくる人がいるかもしれないし、出切るまでがきつかったです。出切ってからはホームまで流して、あとは1周踏み上げていった。力を出し切って市田さんとワンツーだし、よかった。直前に大垣に合宿に行った成果が出てますね」
 地元の諸橋愛は3着に流れ込み、2次予選Bへの進出を決めた。
「打鐘で(口が空いて)キツかったし、ラスト1周もどんどんかかって行った。調子こいて追い込んだけど、全然出なかったですね。去年(初日に失格)のことがあったので、この1走で肩の荷がおりました。明日からはいい緊張感で走れると思う」

<10R>
金子貴志選手
金子貴志選手
 A級からの昇級初戦がG1の特選となった森川大輔が、敢然と主導権。森川に付けた松岡篤哉がちゅうちょなく番手発進も、直線で後続に飲み込まれ4着。
「(まくりが)来てからじゃ遅いんで。(番手から)行かせてもらいました。慣れないことだったんで、きつかったし難しいですね」
 一日の長、中部3車では経験値が断然の金子貴志(写真)は、岐阜コンビの後ろから追い込んで、後続の猛追を振り切った。
「松岡君は早めに出て行ってくれたけど、僕の後ろに山崎(芳仁)君がいたんで、山崎君がどの辺りから仕掛けて来るのかって。山崎君が最終2センターで外に外したのが見えました。ちょっとダルい感じがしたけど、レースになったら思ったよりスッキリしたし。感じは悪くなかった」
 中団をキープした山崎だがタイミングを誤って、いつもの豪快なまくりは不発。佐藤慎太郎が脚を伸ばして2着に突っ込んだ。
「自分の感覚では3回くらい詰まってましたね。山崎君が伸びていってくれれば、自分も外を踏むんですけど。詰まってたんで、内を思い切って踏ませてもらった。伸びは悪くないけど、自転車をもう少し調整します」

<11R>
佐藤友和選手
佐藤友和選手
 北の先頭を買ってでた大森慶一が、竹内雄作を制して主導権。一度は4番手に収まった竹内が最終ホーム過ぎから反撃を開始すると、番手の佐藤友和(写真)は竹内を一発で仕留めてからまくりを放つ。
「自分がもう少し楽に出られれば、よかったんだけど。余裕がなかった。あの展開ならせめて(岡部芳幸と)ワンツーじゃないと。平原(康多)君に合わせて出るので、精いっぱいだった」
 小松島記念の決勝に続き、佐藤に後塵を拝した平原康多は、2着にも納得のいかない様子で汗をぬぐう。
「頑張った。超苦しかった。小松島記念でも出し切ったんですけど、(佐藤)友和君に負けた。また、友和君に…。無理やり行ったんですけど、友和君が強かった」

<12R>
浅井康太選手
浅井康太選手
 坂本貴史が果敢に主導権を握る。一度は4番手に入った深谷知広が巻き返すと、これに合わせて伏見俊昭も番手発進。しかし、深谷が力で飲み込み浅井康太とワンツーかに、直線鮮やかに中を割った成田和也が理事長杯を制した。
「坂本君が先行で勝負して、あとは伏見さんが深谷君の動きに対してどうするか。深谷君のスピードが良かったので、それを見極めて、僕が1着を取るにはあそこしかなかった。必死だけど、体が勝手に動きました。直前に地元(新潟)の選手と一緒にいい練習ができた。今日はその結果だと思います」
 外併走をしのいで深谷に続いた浅井康太(写真)だが、成田の強襲に屈した。
「きつかったですね。外併走だし、深谷が踏み出したとこで勝負しようと思ってた。何とかしのげたけど、最後はまだまだ未熟でした」
 深谷知広は3着の結果にも「中団に入れたけど、これが決勝とかならやられてたと思う。ちょっと甘いですね」と言葉少なにレースを振り返った。
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