『第21回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:7月16日
 弥彦競輪場で行われてる第21回寛仁親王牌・世界選手権トーナメント(G1)は16日に最終日を迎え、熱戦の4日間シリーズに幕を下ろした。午前中から気温も32度に上昇し、真夏を感じさせる太陽がギラギラとバンクを照りつけた。快晴の下、弥彦の杜を舞台に繰り広げられた決勝は、川村晃司が積極策をとって京都勢の主導権。その4番手を取った単騎の佐藤友和が、直線で抜け出し一昨年8月の宇都宮・全日本選抜以来2度目のG1優勝を遂げた。なお、本大会は寛仁親王殿下を追悼する大会として追悼の意を表するため、開催期間中の半旗掲揚、出場選手及び関係者による喪章の着用を行いました。
決勝戦 レース経過
 号砲と同時に脇本雄太が勢い良く飛び出して、正攻法に構える。脇本―市田佳寿浩の福井コンビが前受け、その後ろに深谷知広―長塚智広、単騎の矢口啓一郎が5番手、川村晃司―稲垣裕之―村上博幸の京都勢が続き、佐藤友和が最後方の形で隊列は落ち着く。
 青板周回の2コーナーから川村が早くも上昇を開始。前受けの脇本はすんなり車を下げ、川村が誘導員の後位に入る。4番手に佐藤、5番手に深谷となり、脇本は8番手で赤板を通過する。川村は後続の出方を確認しながら徐々に踏み上げ、打鐘前に誘導員を交わして一気に主導権を奪う。脇本は打鐘過ぎの4コーナーから巻き返すも、佐藤の外で力尽きて後退。最終2コーナーから稲垣が番手発進。村上がしっかり追って、佐藤もこれに続く。直線で稲垣後位から村上が先に抜け出すが、佐藤がその外を鮮やかに突き抜け、2度目のG1制覇を果たした。深谷マークの長塚が村上と佐藤の中を割って2着に強襲した。


ゴール
ゴール
胴上げ
胴上げ
表彰式
表彰式
<1R>
小川祐司選手
小川祐司選手
 今シリーズがG1初出場だった小川祐司(写真)が、最終日に待望のG1初勝利を逃げ切りで飾った。小川は後続から襲い掛かる別線を次々に止めた、網谷竜次とのラインの力を強調する。
 「網谷君が後ろで頑張ってくれたのが大きいですね。自分もしっかり(主導権を取って)行けたけど、あそこで来られるようじゃまだまだ。初日、2日目は後ろに迷惑をかけてしまったし、4日間を考えると40点くらい。また出直してきます。自分の仕事が、大事な勝ち上がりでできないとダメですね」
 網谷竜次は森川大輔のまくりを最終2コーナーで仕留めると、斬り込んできた山口泰生もブロックする大仕事ぶりを披露した。
 「自力で走ってたから余裕はあるんですけど。最後の一発でもういっぱいでした。僕も自分の仕事ができたかと。小倉竜二さんが仕事をして、先行屋の人たちからも信頼されているし。そういうの見てすごいなって思ってます。今日も小川さんとは何回か連係があって、初めてのワンツーだったからよかった」

<2R>
 8番手に置かれた濱田浩司だったが、最終3コーナー過ぎのあおりも何のその。大外をまくり上げ、前団をごっそり飲み込んだ。
 「室井(竜二)さんには迷惑をかけてしまった」と、振り返り濱田がこう続ける。
 「自分はギアも掛かっているし、位置にこだわってって感じじゃないんで。それでも一回は叩けるところがあったかもしれないですね。感触自体は上がってきていると思うし。ギアが掛かっている分、自分が思っているタイミングより、少し早く行った方がいいのかもしれない」
 中団からまくった目標の三谷政史が不発も前田拓也は、逃げた福田知也のインを最終4コーナーで突いて2着。
 「ハコまでは空いていたのが見えたし、それからコースを探していた。一瞬、迷った時に(内が)空いたんで。それでも外の濱田君に食われてますからね。いいとは言えない。まだまだ、練習と実戦での差が激しい。練習ではもっと感じがいいんですけど…」

<3R>
新田康仁選手
新田康仁選手
 竹内雄作の先行を最終バックで松岡孔明が強引にねじ伏せたが、「3コーナーから本当にきつかった、もういっぱいだった」と振り返るように、ゴールまでの脚が残っていなかった。
 松岡の番手で絶好だった園田匠は、ゴール寸前で新田康仁に追い込まれての2着。
 「直線が長かったです。自分的には楽だったんですけど、もっと踏んでおかないと。こういうところでしっかり(1着を)取らないともったいない…」
 九州ラインを追った新田康仁(写真)が、園田のけん制をこらえて外のコースを突き抜けた。
 「昨日、一昨日と展開とか判断ミスがあって、力を出し切れなかった。不完全燃焼だったから、それがなければまだまだ自力ではいけるっていうのがわかった。今日の1着でスッキリしました」

<4R>
菅田壱道選手
菅田壱道選手
 根田空史を相手に先行選手としてのスイッチが入った永井清史が、根田を突っ張り主導権。48歳にしてS級1班を張る大ベテラン萩原操は、永井を利して2着。
 「先行争いをしても他にまくり選手がいるから、(永井は)まくりでもいいと思ってたんですけど。ビックリしました。もう、菅田(壱道)君のまくりが来てたし、自分が出て行くくらいじゃないと合わせられなかったと思う」
 外に浮いた根田から切り替えた諸橋愛と4番手で絡んだ菅田壱道(写真)だったが、踏み出すと一気に加速。鮮やかにまくり切った。
 「根田君がもっと前まで行ってくれれば、先行争いになってくれたんだけど。永井さんは出させる気はなかったみたいですね。予想していた展開よりも厳しかったけど。(まくりが)出ました。脚も悪くないのが確認できたし、次の久留米記念につながると思います」

<5R>
十文字貴信選手
十文字貴信選手
十文字貴信(写真)がG1戦で(2010年6月の高松宮記念杯3日目以来)久々の1着をゲットした。今節は2日目からフレームをチェンジ。昨年の観音寺記念を制したエースフレーム投入がズバリ的中した。
 「牛山(貴広)君が頑張ってくれたお陰ですね。自分はまくりのスピードをもらって突っ込めた感じです。フレームを換えたのも良かったと思うし、次走以降もこのまま行く予定です」
 まくって3着牛山貴広は「いままでは先行基本でやってきましたけど、これからは自在にやっていきたい。押さえて駆けることはないですね。ヨコの動きも取り入れて、まくりかさばきかでいかないと、特別戦線では厳しいですね。武田(豊樹)さんのグループではヨコの練習ができないし、これからは十文字(貴信)さんのところとかに出稽古に行きたいですね」と今節4日間を振り返った。

<6R>
永澤剛選手
永澤剛選手
 永澤剛(写真)は2日目にG1初勝利を挙げると、最終日にも1着ゲットし、今シリーズを終えた。
 「今日は展開が良かったですね。三宅(伸)さんの追い上げが良い目標になったのもあるけど、自分でもまくろうと思っていました。でもG1は緊張するし、精神的にキツイ。自分はF1戦のほうが気楽でいいです」
 阿竹智史は8着に終わったが、全開のダッシュで藤木裕を叩いたレース内容は次走以降にも生きるはずだ。
 「あの展開で藤木君を叩けたのは自信になりますね。結果的にまくられてしまったけど、もっと練習して、まくらせなければ良いだけの話だし、頑張るだけです」

<7R>
伏見俊昭選手
伏見俊昭選手
 北津留翼が山崎芳仁をフタする展開になり、前受けの五十嵐力と、木暮安由が踏み合う意外なレースになった。最終的には山崎芳仁がまくって、伏見俊昭(写真)が抜け出した。5月宇都宮記念の準決勝以来の1着に「素直に嬉しいですね。長かった…。最近は深谷(知広)君と、脇本(雄太)君の力が抜けていますね。どうにかしないと、これからのG1が厳しい。残り2つ(オールスター、競輪祭)何とか頑張りますよ」。
 レースの流れに乗れなかった北津留翼は「フタをしたのは作戦通りだったけど、駆けるタイミングがワンテンポ、ツーテンポ遅かった。レースでの反応が悪すぎますね。4・17のギアを4日間使ったけど、まだ自分の武器に出来ていない。その辺りを修正して、次走の福井記念につなげたいですね」

<8R>
 岡部芳幸は絶好展開を生かせず3着に終わったが「今回(鈴木)誠さんにフレームを見てもらって、ダメだった理由が分かった。この後は福島の家に帰って、違うフレームをこの先は使う予定。ギアを試したり収穫は多かったし、次の京王閣から巻き返したいですね」。
 坂本貴史は理事長杯からスタートし、準決勝まで進んだ今開催を振り返り「宮杯の時に(佐藤)友和さんからアドバイスをもらったり、佐藤朋也さんから大ギアのアドバイスをもらったり、先輩達のアドバイスがG1で活きましたね。決勝に乗ることが目標だったけど、準決まで行けたので良かったです。9月はあっせんが止まってしまうので、オールスターには出られないけど、練習して次にG1を走るときは決勝目指して頑張ります」。

<9R>
井上昌己選手
井上昌己選手
 打鐘から松岡篤哉が主導権を狙ったが、内から村上義弘が突っ張って激しい主導権争い。村上が最終的に主導権を握ったが、流れは九州勢。バックから井上昌己がまくると、番手の大塚健一郎が鋭く抜け出した。
 「今日は前が頑張ってくれました。初日に感じが良かったし、今回はやれるかなと思ってた。セッティングを煮詰めていった成果が出ましたね」
 井上昌己(写真)にとっては見た目ほど楽な展開ではなかった。「打鐘過ぎはキツかったですね。村上さんがすごい。若い子相手に先行なんて…」と検車場で大の字に。

<10R>
飯嶋則之選手
飯嶋則之選手
 金子貴志が荒井崇博のカマシを合わせて主導権。3番手を取った武田豊樹をも合わせる勢いだったが、最後は武田が意地で飲み込む。その外を飯嶋則之(写真)が一気に伸びた。
 「神山さんが中に行ったんで、僕は血迷ったのか外を踏んじゃいました。外から武田さんを差せたのが嬉しいですね」
 まくった武田豊樹は2着に。
 「もうちょっとだったね。シリーズをとおして課題も見つかるし、準決勝は力勝負して負けたんでしょうがない」
 3着には柏野智典が突っ込んだ。
 「前の飯嶋が気になって…。それがなければもっと伸びてましたね。判断が鈍い」

<11R>
稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
脇本雄太選手
脇本雄太選手
 決勝戦は単騎の佐藤友和が直線鋭く伸びて優勝。番手まくりを打ったときには優勝か?と思われた、京都コンビだが佐藤の強襲に屈した。川村晃司の番手を回った稲垣裕之(写真)は「去年の競輪祭(決勝)と全く同じ展開でした。まだ川村さんも踏み上げてたけど、今回は失敗しないように行かせてもらいました。行かれてからじゃ僕も博幸もないし、今日は長い距離を踏む覚悟はしてましたから。力を出し切って、その上を行かれたので、また練習するしかないですね」。3着の村上博幸も「車間を切れなかった。後ろに友和がいるのは想定してたけど、難しいですよね。内を締めてるのもしんどかった」とレースを振り返る。
 前を取らされた脇本雄太(写真)は巻き返し不発に。
 「失敗したなあ…。自分が前になるのは予想してたし、その上で自分の先行意欲がどこまでと思ったけど弱気になった。まくりなんで自分の負け。僕が弱かったです」
 1番人気に推された深谷知広は4着に敗れた。
 「ホームで行こうとしたときに脇本さんも来たのでキツかった。これでG1は4回連続決勝で失敗してますね」
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