『被災地支援競輪第25回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:10月10日
前橋競輪場を舞台に開催された平成28年熊本地震被災地支援「第25回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(G1)」は、10日に最終日が行われた。大挙5人が決勝にコマを進めた近畿勢は2つのラインに分かれ、主導権を握ったのは京都コンビを率いる脇本雄太だった。絶好の展開が訪れた稲垣裕之が、最終バックから番手まくりを放ち、平原康多の猛追を退け優勝。念願のG1制覇を成し遂げ、優勝賞金2890万円(副賞含む)を手にした。

TEAM Spark チアダンスショー
TEAM Spark チアダンスショー
ジャガーズ お笑いLIVE
ジャガーズ お笑いLIVE
選手会群馬支部 チャリティーオークション
選手会群馬支部 チャリティーオークション
ファイナリストが意気込みを語る
ファイナリストが意気込みを語る
決勝戦 レース経過
 号砲と同時に中部両者が勢いよく飛び出す。正攻法の深谷知広に、浅井康太が付けて前受け、これに単騎の平原康多、園田匠が続き、中団に脇本雄太-稲垣裕之-村上義弘、後方に古性優作-南修二の並びで隊列は落ち着く。
 残り3周半から古性が早くも上昇を開始。青板で誘導員の後位に収まる。脇本はこれを追わず、平原が大阪コンビの後位に入り、園田が続く。後方の7番手で仕掛けのタイミングをうかがっていた脇本は中バンクに上がって3コーナーから一気にスパート。赤板から主導権を握る。これを受けた古性が4番手を確保。単騎の平原、園田が6、7番手、深谷は8番手に置かれる。脇本がそのまま緩めずに軽快に飛ばして、打鐘、最終ホームを一列棒状の態勢で通過。2コーナーから古性がまくると、車間を空けて備えていた稲垣が3コーナーから番手まくりを敢行。バックから内を進出した平原は4コーナーで村上を外に飛ばして執念の追い込み勝負。これを振り切った稲垣が悲願のG1初優勝を飾った。単騎で俊敏な立ち回りを見せた平原はわずかに届かず2着。平原にすくわれた村上が3着に踏ん張った。


ゴール
ゴール
胴上げ
胴上げ
表彰
表彰
<1R>
渡部哲男選手
渡部哲男選手
 7番手から押さえて先頭に立った渡部哲男(写真)は、赤板から巻き返した長島大介ラインに飛び付く。鈴木謙太郎に競り勝った高原仁志が長島に続いてきて、渡部は3番手に収まるが鈴木が意地で追い上げて渡部は飯嶋則之と併走。が、高原が鈴木を大きく張ると、渡部は空いたインを進出して番手を奪取。逃げる長島を追い込んで白星をもぎ取った。
 「自分でレースを作れたし、最終日1着で気持ち良く帰ることができる。(鈴木の追い上げは)想定外だったし、飯嶋さんはどかないから(内が空いて)流れが向いた。(長島を)抜くだけならいいけど、早めにいかないと(池田)憲昭もいるから。いっぱいだったけど、よかったです」
 池田が流れ込んで2着。主導権を握った長島大介は、3着に沈んで汗をぬぐう。
 「(鈴木)謙太郎さんのダッシュだったら、あのタイミングで行って(ラインの)4人で出切れるかと思った。後ろがどうなっているかわからなかったんで、あとは謙太郎さんに残してもらおうと思っていたんです」

<2R>
神山拓弥選手
神山拓弥選手
 中団から先に動いた野田源一を金子幸央が叩く。巻き返しを合された桐山敬太郎は小林潤二をキメて3番手に入るが伸びきれず。番手絶好の神山拓弥(写真)がゴール寸前で金子をとらえた。
 「後輩の頑張りに尽きますね。バックで後ろに5番(桐山)が見えたんで、内をあけないようにと思ってました。あとは野田さんが仕掛けてくるだろうから、そこだけ。冷静に走れたし、(金子を)残せてよかったです」
 G1初出場だった金子幸央は後半戦を3着2着で締めくくった。
 「力を出し切れたんでよかったです。今日はしっかり踏み切れてたし、ワンツーが決まったんでよかった。最初の2日間は展開に戸惑ったけど、後半は自分らしいレースができました」

<3R>
橋本強選手
橋本強選手
 松岡健介が赤板で叩いて出るが、ペースが緩んだところをすかさず阿竹智史が叩く。飯野祐太が追い上げて松岡と3番手が併走に。そのまま阿竹がペースに持ち込むと、番手の橋本強(写真)がゴール前で差し切った。
 「(阿竹が)いいタイミングで仕掛けてくれた。僕も仕事ができてよかったです。脚にも余裕があった」
 ちゅうちょせず仕掛けた阿竹智史がレースを支配。「(赤板過ぎ2センター)ペースが緩んで飯野に行かれたらケツになってしまうので、あそこで行くしかないと思った」と好判断が光った。
 冷静にコースを突いた大槻寛徳がゴール前突っ込んで3着に。
 「飯野君が前々に攻めてくれた。5番手でいいのに、3番手まで行って前々に。外併走がキツいバンクで(高橋)陽介もキツかったと思う。最後はたまたま(コースが)空いてくれた。前のおかげです」

<4R>
荒井崇博選手
荒井崇博選手
 坂本貴史に突っ張られた雨谷一樹は、赤板で巻き返して主導権を奪取。が、磯田旭が内に閉じ込められ連結を外して、番手には坂本がはまる。打鐘過ぎに磯田と絡んだ齋藤登志信が落車。アクシデントを避けた荒井崇博(写真)は、最終ホームから踏んでロングまくりで前団を仕留めた。
 「恵まれました。俺ひとりがサラ脚だった。冷静に見られましたね。(雨谷の)番手は磯田だと思ってた。あれが坂本っていう情報が入ってたら、合わされてしまってたかもしれないんでよかった。磯田なら越えられると思ったんで」
 荒井の踏み出しに小岩大介が遅れ気味。単騎の松浦悠士が、荒井を追いかけて2着に流れ込んだ。
 「荒井さんより先に仕掛けられればっていう気持ちだった。(山内)卓也さんが、(後ろに)いてくれればよかったんですけど。内に見えたし、(落車を避けて)自分もバックを踏んじゃった。なんとか荒井さんに反応できた、スイッチしてリカバリーできた」

<5R>
岩津裕介選手
岩津裕介選手
 根田空史が赤板ホームから主導権を握ると、周回中からこのラインを追走していた岩津裕介(写真)が2コーナーまくり。神山雄一郎のブロックも乗り越えると、友定祐己と岡山ワンツーを決めた。
 「そこまで考えてなかったけど、小松崎(大地)君が後ろ攻めかと思ったら前を取ったんで(頭を)切り替えた。友定さんもついてるし、どっかで仕掛けようとは思ってました。ワンツーでよかったです」
 友定祐己は岩津とワンツーの結果にホッとした表情を浮かべる。
 「岩津が1着いけるように走ればと言ってた。いつも頑張ってくれるし、好きに走ってくれれば。(まくりは)流れでとは言ってたけど、余裕があるね。神山さんのブロックは俺のところだろうと思って、飛ばされんように気を付けてたら4コーナーで一杯でしたよ」
 小松崎大地にからまれながらも5番手を確保した単騎の伊藤裕貴が3着に続いた。
 「本当は前のほうを取りたかったけど、入れなかったので後ろからどうしようと思ってた。先に動いても3番手で岩津さんとバッティングするし、岩津さんはあそこと決めてる感じだったので。4コーナーで小松崎さんに一発もらったし、2センターで踏みだしとけばよかったですね。その辺の脚がないのと仕掛けられるスピードじゃなかったです」

<6R>
佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 打鐘前で早坂秀悟が叩いて先制。緩急踏み分けて自らのペースを作る。最終2コーナーから地元の小林大介がまくって出るが、中団の松岡貴久に合わされて万事休す。松岡の車の出も一息で、4コーナーを絶好の展開で回ってきた佐藤慎太郎(写真)がゴール前で抜け出した。
 「秀悟が頑張ってくれたのに俺に余裕がなかった。仕事をして残してあげたかったけど、自分の力不足です」
 先行してペースを握った早坂秀悟だがゴール前で末を欠いた。
 「(赤板過ぎ)1コーナーから踏み上がっていって、打鐘手前で叩いていった。出切ってからはずっと回していた。できれば残りたかったけど、脚力不足です。それでも慎太郎さんが勝ってくれたし、昨日のレースよりかはよかったんじゃないですか」

<7R>
渡邉一成選手
渡邉一成選手
 竹内雄作、渡邉雄太を制して、菅田壱道が主導権。渡邉雄は一本棒の7番手に置かれて、中団を手に入れた竹内が赤板の2コーナーから襲い掛かる。北野武史が踏み出しで遅れると、渡邉一成(写真)が竹内の後ろにスイッチ。逃げた竹内との間合いを図って、冷静に追い込んだ渡邉一がシリーズ2勝目を挙げた。
 「(菅田は)あんなに行くとは思わなかった。でも、前を回りたいって言ってたんで、そういう気持ちだったんですね。本当に頑張ってくれました。ああなったら1着取るのが責任ですから。(竹内を)止められたのか、スイッチだったのかはあとでVTRを見てみないと。ただ、(スイッチして)ああなったのは自分の技術不足です」
 離れた北野は渡邉一の後ろでいっぱい。果敢に攻めた竹内雄作が2着に粘り込んだ。
 「自分が行かないと、(渡邉)一成さんが出ていっちゃったらどうしようもないんで。ああいう展開が課題ですね。今回は練習不足でした。一成さんが相手と言っても、逃げ切れてないんで」
 離れながらも北野武史は、伏見俊昭をキメて懸命に3番手確保から流れ込み。4日間をオール3着で終えた。
 「やった方でしょう。(竹内は)本当にマーク屋泣かせで、(仕掛けて)行かないでくれっていう気持ちでした(笑)。(渡邉一の後ろで)余裕はゼロだったけど、(3着で)なんとかなったかなと」

<8R>
新田祐大選手
新田祐大選手
 逃げる吉田拓矢に対し、新田祐大(写真)は稲毛健太と中団外併走。打鐘過ぎに稲毛が遅れて、新田が中団を確保すると2コーナーまくりで豪快に前団を飲み込んだ。
 「今日はあそこ(中団)を取って、あの位置から勝負しようと思ってた。仕掛けるタイミングが来て、行こうかなというところで稲毛が引いたんで。やっぱり早い段階で位置を確保しないと上で戦えない。最終日に敗者戦を走ることになったけど、それはしょうがない。最終日1着だけど、今回はいいとこなかったです」
 吉田マークから2着に入った岡村潤は新田のスピードにお手上げといった感じ。
 「要所要所でしか後ろは見てなくて、バックでは来ても止まるだろうと思ってた。あれはちょっとビックリしましたね。吉田もかかってたけど、いいとこからああいうの打たれると何もできなかった」
 稲毛健太は「新田が外したときに持って行ってやろうと思ってたけど、新田を見すぎて遅れた」と打鐘過ぎの動きを説明した。

<9R>
吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 赤板で柴崎淳が先制。追い上げて山田久徳をキメて4番手を確保した郡司浩平が最終ホームから単騎でカマす。すると吉田敏洋(写真)が俊敏に切り替えて郡司を追いかける。2センターで外を踏み込むと鋭い伸びを見せて今シリーズ3勝目を挙げた。
 「淳には今まで何回も1着を取らせてもらっているし信頼していた。(このメンバーで)早くから先行争いはないから、全て任せて『頑張れ』とだけ伝えておいた。抜群のところで仕掛けてくれたし、淳がよく頑張ってくれたおかげ」
 吉田を懸命に追走した近藤龍徳が2着。
 「男気ある敏洋さんのおかげです。(郡司に)届くと分かったので、最低でも2着は確保しないといけないと思った。もつれながらも付いていけたし、要所で体も反応していた」
 単騎ながら果敢に攻めた郡司浩平だがゴール前で末を欠いた。
 「昨日の事もあったので、位置取りは考えていた。(位置)取るのに脚を使ったと思うけど、あそこで待ってしまうと自分の脚にきてしまうので休まずに仕掛けていきました」

<10R>
金子貴志選手
金子貴志選手
 青板ホーム過ぎに原田研太朗が誘導員を下すと、そこをバックで三谷竜生が叩く。そこから別線の動きがなく、三谷は徐々にペースアップ。新山響平、中川誠一郎の巻き返しも届かず、番手の金子貴志(写真)が好展開をモノにした。
 「(三谷は)強いっすね。すごいっす。どんどんかかっていきました。練習でも強いのは知ってるけど、競走のほうがもっと強い。豊橋記念のときはまくりでどこまで行っても抜けない感じだったし、すごいです」
 2周半風を切った三谷竜生も2着に粘った。
 「何とかですね。(青板バックで斬ってから)来ても新山かなと思ってたし、来たらモガき合うつもりでした。来なかったので自分で駆けた感じです」
 大外を巻き返した中川誠一郎だったが、届かず3着まで。
 「新山が浮いたと思って一瞬見ちゃった。感覚的には届くかなと思ったんですけどね。新山が叩くと思って人任せにしちゃったし、組み立てが思うようにいかなかった。そこはミスですね」

<11R>
平原康多選手
平原康多選手
村上義弘選手
村上義弘選手
 逃げる脇本雄太の番手を回った稲垣裕之がようやくタイトルを手に入れる。単騎の平原康多(写真)は4番手の古性優作がバックまくりに出ると、空いたインコースを鋭く突いて直線で村上義弘を飛ばす。そのまま稲垣に迫ったが、わずかに届かなかった。
 「単騎でやれることは限られていると思ったんだけど、やれるだけやりました。脇本のかかりがすごかった。どうしようもなかったし、深谷も行けないだろうと思いました。自分は外踏むのは無理だと思って、集中して踏めるコースをと思って踏んだんですけどね。また頑張ります」
 京都ワンツーはならなかった村上義弘(写真)だが、目の前で稲垣は優勝。感慨深げにレースを振り返った。
 「この場所で松本(整)さん、市田(佳寿浩)に続いて、頑張ってる人たちの最高の場面に一緒にいられたのが。すごいスピードで平原が来たのはわかったんで、車を内に寝かせたけど平原のパワーが上でした。今回(稲垣が)不甲斐ないレースをすることがあれば、周りも納得しないでしょうし、いい結果を出せて心から稲垣を祝福したい。これで他の近畿の選手も心置きなく戦えるんじゃないですか(笑)。僕もつきものが落ちました」
 もちろん稲垣優勝の最大の立役者は脇本雄太だ。赤板前から一気に仕掛けると、別線の反撃を許さなかった。
 「4コーナーまで勝負するのを前提に、最後まで踏み切れるところから行きます、と。(京都の2人は)言葉をかけずに『任せた』。それだけ信頼してくれてるし、その分使命感があった。だから自分が踏もうと思ったところは、あそこでした。今後はいかに優勝できる駆け方ができるかですね。今度はもっとゴールまで勝負できるように頑張ります」
 一方、8番手に置かれてしまった深谷知広はまくり不発の8着に。レース後は「(最終)ホームが…。見ちゃったなあ。気持ちで負けました。(脇本が)すごいかかりだった」と悔しさをにじませた。
↑ページTOPへ