『第26回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 3日目編

配信日:10月8日

 前橋競輪場を舞台に開催されている「第26回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月8日に3日目を迎えた。ファイナルのキップをかけた準決では熾烈な高速バトルが繰り広げられ、渡邉一成、新田祐大、吉田敏洋が、それぞれ1着で優出を遂げた。また、昨年、悲願のタイトルを奪取し、寬仁親王牌の連覇がかかる稲垣裕之は4着で惜しくも決勝進出を逃した。いよいよシリーズも大詰め、9日の最終日に決勝の号砲が鳴らされる。
 本場では9日の最終日も、様々なファンサービスとイベントでお客様をお待ちしています。「永野」のお笑いライブ、武術と舞踊を組み合わせた格闘型舞踊「虎舞士」のパフォーマンス、先着300人にお菓子がプレゼントされる「地元選手お出迎え」、日本競輪選手会群馬支部のイベントとして「チャリティオークション&トークショー」、未確定車券抽選会などが予定されています。ぜひ、前橋競輪場へ足をお運びください。

競輪選手会群馬支部チャリティーオークション&トークショー
競輪選手会群馬支部チャリティーオークション&トークショー
アンガールズ お笑いライブ
アンガールズ お笑いライブ
伊勢崎オートレースの選手によるバイクパフォーマンス
伊勢崎オートレースの選手によるバイクパフォーマンス
中野浩一氏 予想会
中野浩一氏 予想会

<1R>

取鳥雄吾選手
取鳥雄吾選手
 取鳥雄吾(写真)が山岸佳太を叩いて強引に主導権を握ると、からまれた小岩大介、新井秀明が連結を外す。番手には山岸が入り江連和洋が続くが、インを進出した小岩が番手を奪い返す。3番手から鋭く追い込んだ新井が1位入線も、3位入線の小岩とともに内側追い抜きで失格。取鳥が繰り上がった。
 「(同期の)山岸さんとは必要以上にライバル意識を出さずに、お互いに1着を目指そうという感じでした。向こうもそういう意識だと思いますよ。2日目はイン粘りになったし、(3日目は)しっかりと駆けたかった。結果的に後ろの人には迷惑をかけてしまったけど…。後ろは別線が入っていると思っていたので、ペースで踏めず最後はバタバタでした」
 小岩、新井にすくわれて、立て直しを余儀なくされた山岸は不発。2着の江連和洋は、悔しそうに振り返る。
 「あれがなければ、山岸と(自分で)いい勝負ができたんじゃないかと。自分も(内を)空けたつもりはなかった。あれでフワッとしちゃいました。山岸は記念も獲って強くなっちゃったけど、本当に相性がいいんですよ」

<2R>

稲毛健太選手
稲毛健太選手
 別線に主導権を許さず戸田康平が敢然と逃げる。3番手に坂本貴史が入って、5番手を堀内俊介と稲毛健太(写真)の併走で打鐘を迎える。海老根恵太が連結は外して強引に外併走から仕掛けた堀内を目標に、稲毛は最終ホームから踏み上げる。堀内の上をスピードの違いでまくった稲毛が、最後は余裕をもってゴール。
 「細切れだったんで、あんまり作戦は考えてなかった。(レースの組み立ての)動き自体はどうだったんですかね。あそこ(最終ホーム)からは行こうと思っていたし、そうした方がラインも生きると。あとは堀内君がどっちに逃げるかを見てだった。(調子は)そんなに悪くないんで、あとは仕掛けどころだと思います」
 4分の3車輪差で2着に流れ込んだ西村光太は、ホッと胸をなでおろす。
 「稲毛君も僕が後ろならリラックスできて、いい感じで行ってくれるかなと思った。初日、2日目とレースにならなかった。2日間、連係を外していたんで、前にピッタリくっついていけたんでホッとした」

<3R>

齊藤竜也選手
齊藤竜也選手
 川口聖二の上昇に合わせて赤板前から前に出た成松春樹は川口を出させずそのまま主導権。打鐘前からは中井俊亮も来たが、これも合わせるほどの抵抗を見せる。中井はなんとか成松を叩き切ったが、そこで一杯に。ホームから巻き返して来た志村龍己に気づいた松岡健介はバックから自力に転じると、終始近畿勢を追走していた齊藤竜也(写真)がゴール寸前で逆転した。
 「みんなすごい積極的で、(初手の位置は)選べなかった。道中で決めようと思ってました。近畿勢が後ろから2番目だったので、そこが押さえ先行かなと。抜いてるとは思わなかった。ゴール後だと思ってたけどよかったです」
 バックから番手まくりに出た松岡健介は惜しくも2着に。
 「成松君が強かった。(中井は最終)ホームの時点でスピードが落ちてて、流れる感じがなかった。内に山田(庸平)が来たからというよりも、志村(龍己)が見えたので合わせないとと思った。難しかったですね。しんどいレースでした」

<4R>

松岡貴久選手
松岡貴久選手
 青板1コーナーから上昇して前に出た杉森輝大を松川高大が打鐘で一気に叩く。番手の松岡貴久(写真)は大きく車間を切って松川を援護。杉森、東口善朋の巻き返しをけん制すると、ゴール前で松川をとらえて熊本ワンツーを決めた。
 「松川に行ってもらったおかげですよ。(打鐘だったが)出させてくれたんで。永澤(剛)も浮いてたし、誰も来ないと思った。松川もいいペースでしたね。抜き過ぎって怒られるかもしれないな(笑)」
 逃げた松川高大は2着に粘った。
 「(杉森が)赤板で踏んだんで、これは1回流すなと。緩んだとこを一気に行こうと思ってました。後ろはわからなかったけど、バックでビジョン見たら(松岡が)めっちゃ空けてたから。これはもう1回頑張らんといかんと思いました」
 1センターからまくった東口善朋だったが、熊本コンビをとらえることはできず。
 「(タイミングが)1個遅かった。あおりもあったし、外にも2番(守澤太志)がいたので。体が反応すればよかったけど、見てからになったんでそこだけ。その一瞬だけだった。そこがなければ2着まで行けたかも」

<5R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 吉田拓矢の後位は初手から神山雄一郎と三谷将太で競り。吉田が後攻めから押さえて駆けると、前団で待ち構えた松浦悠士、渡辺正光も飛び付き打鐘からは4車併走になる。外から追い上げた神山が吉田の番手を死守したが、バックから徐々に車間が空きはじめる。競り負けて口が空いた三谷、渡辺の後ろから前を追った佐藤悦夫が神山をとらえたが、そこまで。逃げた吉田拓矢(写真)がそのまま押し切った。
 「ある程度考えていたレースだった。後ろが競りなので前受けはせずに押さえ先行をしようと。ライン3人で決まったという点でも良かった」
 4車併走の後ろで神山との連係が外れてしまった佐藤悦夫だが、立て直して2着に突っ込んだ。
 「今日はもつれると思っていたけど、4車で併走ですからね。目の前で見たのは初めてかもしれない(苦笑)」
 飛び付きを狙った松浦悠士だったが打鐘過ぎ2センターでアンコになって後退した。
 「赤板でもっと踏むべきだった。ペースを上げた状態で番手にはまれば、簡単に追い上げられない。最近はポイントで踏まずに様子を見てしまうことがあるので、そこは修正しないといけないですね」

<6R>

和田圭選手
和田圭選手
 前受けの新山響平が山形一気を突っ張るが、山形が再度アタックして番手の山崎芳仁と併走。今度は嶋津拓弥が赤板から巻き返すと、新山は合わせるが山崎が遅れて割り込まれる。新山に嶋津、山賀雅仁となり、山崎は4番手。最終バックで内を狙っていた山崎が詰まり、和田圭(写真)が外を踏み込んで突き抜けた。
 「山崎さんに付いていくことしか考えてなかった。とりあえず3番手の仕事をしようと思ってたんですけど。ゴチャついた時は外を踏もうと。山崎さんが仕掛けなかったんで踏みました。脚はそれなりにいいんで」
 終始、北日本ラインの後ろにいた単騎の河野通孝が、和田に流れ込んでの2着で高配当。
 「(北日本勢が)すんなり下がるようなら、切り替えればいいと思っていた。そしたら突っ張ってくれたんで、自分は余計なことをしないでいた。キツかったけど、付いてるだけだった。堤(洋)さんの気配も感じた。そしたら和田君が踏んでくれた」

<7R>

稲川翔選手
稲川翔選手
 先に動いて野原雅也の上昇を受けた河端朋之は3番手。最終ホームからまくって行くと、稲川翔(写真)のけん制を乗り越えて前に出る。出られた稲川は柏野智典を飛ばして河端にスイッチ。2センターから外に持ち出すと、あっさりと河端をとらえた。
 「止めに行ったけどバタヤン(河端)のスピードがすごかった。雅也も負けんぐらい踏めてたと思うけど。自分ももうちょっと何とかできたかなと思うけど、精一杯やりました。あそこまで行ったら、しっかりと1着を取らないとと思ってました」
 河端ラインに乗って2コーナーから外に持ち出した阿竹智史は稲川の後ろに追い上げる形で2着に続いた。
 「(河端が行くのは)わかってるのに口が空いた。でもピッタリ付いて行ってたらコケてましたね。行くだけ行ったら(稲川の後ろに)はまってラッキーしました」
 阿竹マークの高原仁志が3着に続いた。
 「耐えましたね。このバンクは波ができたら厳しいんで、浮かんようにだけ気を付けてた。内も見てたけど、柏野さんもいたんで外を踏みました」

<8R>

天田裕輝選手
天田裕輝選手
 菅田壱道が動いたうえを赤板ホームで切った天田裕輝(写真)は根田空史の仕掛けを受けて3番手を確保。根田後位でけん制する郡司浩平の内を2センターからすくうと粘る根田をとらえた。
 「展開が向いたというか、大体ああなるかなと思ってた。長島がスタートでいい位置を取ってくれたので。根田は強いですからね。誰もまくれないと思ったら、そのとおりになったし。今日何とか勝てたんで、また明日頑張ります」
 力を出し切った根田空史はレース後に苦悶の表情を浮かべる。
 「痛い。体が痛い。今日は太田(竜馬)を7番手にしたかったので。(出てから)けっこういい感じに流れた。郡司とワンツー決まるなと思ったけどね。アレ?いないから、どうした?と思った。よかったけど、ダメージがヤバいです」
 天田マークの長島大介が3着に。
 「(初手でいい)位置が取れたんでラッキー。天田さんが仕掛けるまで内を空けないと思ってたんで、ずっと下を走っててキツかった」

<9R>

筒井敦史選手
筒井敦史選手
 武田豊樹に任された金子幸央が後ろ攻めから押さえて主導権を握ると、前受けから下げた原田研太朗は7番手。1センターからまくるが合わせて井上昌己も中団から踏み込む。武田が2センターで井上をけん制すると、関東ライン追走からバックで山田義彦の内をすくっていた筒井敦史(写真)が武田の内もすくって粘る金子をとらえた。
 「3連単で49万ですか。終わってからお客さんの3人くらいに『よくやった!』と言ってもらえました(笑)。ようやく練習の成果が出てきた感じですね。セッティングも迷いがなくなったし。山田(義彦)君が締めてきたけど、そこを耐えて良く踏み切れた。失格があるのでS級1班の点数がピンチだったけど、松戸記念の優出と今日の1着で大丈夫だと思います」
 武田のけん制を乗り越えて外を踏んだ井上昌己が2着に。
 「金子君はかかっていました。どんどん伸びていくような感じで。武田さんは想像以上に振ってきたので、避けて堪えながらでした。脚の状態は悪くないですね」

<10R>

渡邉一成選手
渡邉一成選手
 深谷知広が赤板目がけて踏み込むと、先頭で合わせてペースを上げた古性優作が飛び付く。2コーナー手前で浅井康太を押し上げて古性が番手を奪うが、諸橋愛が落車して、南修二は車体故障。もつれをしり目に小気味いいペースで駆けた深谷に古性、浅井で最終ホームを通過する。アクシデントを避けた渡邉一成(写真)は、落ち着いて1センターからまくりを放ち直線で深谷をとらえた。
 「もつれるかなっていう予想もあったし、もつれてくれればっていう思いもあった。先行も考えながらだったけど、古性君が早めに押さえに来たので引くしかなかった。古性君の粘りやすいタイミングになったんで、自分としては良かった。落車があったんで、冷静に避けました。ただ、人の後ろで楽なセッティングになっていたので、溜めが利かなかった。あとは気持ちでカバーしました。気持ち良く踏めたし、自力で勝ち上がれたのはアピールになる。脚力を発揮できたのは大きい。それでもキツくて締め込み気味にいった。力のなさですね。もっと力があれば中村(浩士)さんと決められたんですけど」
 渡邉にはまくられたものの、深谷知広は先行策で浅井康太との優出に納得の表情を浮かべる。
 「先行して、あれで自分が1着なら100点です。岩津(裕介)さんが先に切るかなと思って様子を見ていたら、(仕掛けるのが)遅れた。先行するのは自分だと思ってたんで、あとはどこからするかっていうのだった。持ち味は出せているんで、1着だったら申し分なかった」
 古性に弾かれて大きく外に振られた浅井康太は、3番手からの立て直しを強いられた。最終3コーナーで古性の内が空くと、そこを見逃さずすくって意地の3着。
 「まさか(古性が)来るとは思わなかった。タイミング的にも予想外だったけど、リカバリーはできたかなと。(3番手になって古性が)行けば、その内を行こうと。(渡邉には行かれて)そこから深谷と2、3着と思いました」
 渡邉のまくりに続いた中村浩士だったが、2センターで外に浮いた古性のあおりを受けたところで口が空いてしまった。
 「力不足。(落車した諸橋を)避けてからでも(渡邉に)付けられたので、今後の収穫。最後は自分に何か足りないところがあるから、あそこまでなんでまた出直して。でも、もうちょいでしたね」

<11R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 後ろ攻めの脇本雄太は一気に踏み込んで赤板ホームで先頭に立つと、前受けの坂本亮馬は脇本後位でイン粘り。これで前団の隊列が短くなると、新田祐大(写真)が打鐘からカマして脇本を叩く。坂本後位から外を踏んだ山田英明が4番手に追い上げ、競りをしのいだ稲垣裕之も切り替えたがともに届かず。新田が押し切り、ラインで上位を独占した。
 「先行で、ラインで決められたのがよかった。対戦相手が脇本君だったので、特によかった。ゴチャ付いてるところを行っただけですけど、すごくよかったな」
 新田マークの成田和也が2着。後輩の頑張りを称えながら、いつもどおりの落ち着いた口調でレースを振り返った。
 「タイミング良く新田が行ってくれた。自分は離れないことだけに集中しました。最後ももう1回踏み直してたんで、ワンツーが決まればいいなと。本当に新田が掛かっていた。自分は初日、2日目とバタバタして感触をつかめなかったけど、流れがいい。最後は抜けなかったけど、(3日目は)悪くなかった。新田がいいレースをして、自分はある程度まくりが来たらけん制できる状態だった。新田がああいうレースをした以上は、しっかり仕事をできる態勢を整えていた」
 福島コンビを追走した岡村潤が3着に流れ込み、嬉しいGI初優出を決めた。
 「新田、成田さんがしっかりしてたので、その2人がやってくれただけ。僕は内を締めてただけで何もしてない。単騎も考えたけど、自分の自力ではと思った。(一次予選の)根田(空史)と(二次予選の郡司)浩平がつないでくれた。今日も流れだけですね」
 九州勢の先頭で出方が注目された坂本亮馬は脇本後位で粘った。
 「(残り)3周なら出してた。それより遅かったら合ったところで勝負と思ってました。もう少し戦える体調ならよかったけど、力がないことで(後ろに)迷惑をかけました」

<12R>

吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 三谷竜生にフタをされた竹内雄作は一度車を下げると、赤板前から一気に踏み込んで先頭に立つ。合わせて踏んだ三谷が中団を確保、人気の平原康多は7番手に置かれてしまう。打鐘過ぎ4コーナーから三谷がまくり上げるが車は出ず、平原も2コーナーからまくったが、村上義弘に合わせて出られて不発に。竹内マークの吉田敏洋(写真)にとっては絶好の番手回り。直線鋭く抜け出すと、金子貴志とワンツーを決めた。
 「油断したわけじゃないけど、(竹内の踏み出しに)口が空いた。雄作を残せなかったのは技量不足ですね。最終バックは後ろを確認できたし、村上さんも平原も止まってた。あとは(竹内に)何とか力で残ってくれと思ったけど。怪我で終わったと言われるのが一番悔しいんで、先を見すえてトレーシングをやった成果。決勝もチャンスだと思うので」
 金子貴志は2着で昨年の競輪祭以来となるビッグ優出を決めた。
 「雄作が強かったですね。よく頑張ってくれた。自分の状態もいいです」
 バックから自力に転じた村上後位から鋭く中を割った椎木尾拓哉が3着。GI初の決勝進出を果たした。
 「何て言っていいのかわからないけど、みんなのおかげですね。(GIの決勝に乗るためには準決勝に)何回か乗って、そこで乗れるチャンスがあるかなと思ってたら乗れたんで。最後も必死やったんで、(自分が3着かは)全然わからなかったです」
 平原康多はまくり不発。7着で決勝戦進出はならなかった。
 「前を取らされたから。赤板で竜生に出られたら苦しくなる。悔しいですけどね。(竹内、三谷の)2人に行かれちゃうと前からでは無理だし苦しい。(初日の落車で)体がどうのじゃないですね、今日の場合は」