『第26回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 最終日編

配信日:10月9日

 前橋競輪場を舞台に開催された「第26回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月9日に最終日が行われた。決勝は新田祐大、渡邉一成のS級S班の2人に成田和也が加わった福島勢と、深谷知広が先頭を務める愛知トリオの激突に注目が集まった。レースはインを切った浅井康太がそのまま先行策。3番手からまくった新田を渡邉が直線で交わして優勝。8月の地元オールスターに続くGI連覇で、優勝賞金2890万円(副賞含む)を手に入れた。

永野 お笑いライブ
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決勝戦出場選手紹介
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ファンが詰め掛ける前橋競輪
ファンが詰め掛ける前橋競輪
格闘型舞踊 虎舞士のパフォーマンス
格闘型舞踊 虎舞士のパフォーマンス

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると、別線の様子をうかがいながら渡邉一成が誘導員を追いかける。そこに新田祐大を迎え入れ、渡邉後位には成田和也が続く。以下隊列は、単騎の岡村潤、浅井康太-椎木尾拓哉、深谷知広-吉田敏洋-金子貴志の並び。
 レースが動いたのは青板前から。単騎の岡村が深谷の上昇に合わせて前に出ると、押さえにきた愛知勢の番手で粘る。これを見た浅井が、青板の3コーナーで深谷を叩く。浅井を追った新田は、口の空いた3番手に降りて好位を確保。深谷は6番手で打鐘を通過する。ペースを緩めていた浅井だったが、徐々にピッチを上げて先行態勢へ。深谷は打鐘の2センターから巻き返すも、最終ホームで踏み出した新田に合わされて不発に終わる。新田はラインを引き連れて、浅井ラインをひとまくり。番手の渡邉はこの仕掛けにきっちり続くと、余裕を持って新田を差し切った。3着にも成田が入り、福島トリオで上位を独占した。





<1R>

佐藤友和選手
佐藤友和選手
 青板前からレースが動き出し、目まぐるしく隊列が入れ替わる。打鐘過ぎに堀内俊介を叩いた中井俊亮が最終的に主導権。5番手で志村龍己と目標の根本哲吏がからんで、佐藤友和(写真)は後方に下げて様子をうかがう。佐藤は最終1コーナーで自力に転じるまくりで前団をのみ込んだ。
 「(状態は)良くなかったですけど、走る以上は気持ちを入れてと思ってました。2日目、3日目と出し切らずにいたんで、自分の状態がわからなかった。だから、まず踏んでみようかなと。あれで行き切れたのが、今回で唯一の収穫ですね」
 中井に叩かれた堀内俊介は、3番手で立て直してまくり上げる。三谷将太に強烈なブロックをもらったが、逃げる中井をとらえて2着。
 「本当は先行したかったんですけど…。合わせ切れなくて(中井に)出切られちゃった。先行するつもりで踏んでいるから、そのぶんまくりも出ないですよね。あれを合わせ切れるトップスピードがないと」

<2R>

安部貴之選手
安部貴之選手
 内をすくった松岡篤哉が赤板から先行態勢を築くが、山岸佳太も必死に応戦して両者で激しいもがき合いに。中団で冷静に戦局を見ていた永澤剛が2コーナーからまくって前団を捕らえるとゴール前で安部貴之(写真)が差し切った。
 「永澤のおかげです。けっこう落ち着いていましたし、しっかり行ってくれました。外々をまくっていたので、僕も外を回らないとからまれると思い付いていきました。付いていただけですよ」
 混戦を中団からまくった永澤剛が2着に。
 「早い段階から前がやり合っていてキツかったです。車の出は悪いし、自分はいっぱいでした。もう少し早めでもよかった。安部さんならもっと早めに行ってるでしょうね」

<3R>

海老根恵太選手
海老根恵太選手
 川口聖二が青板2コーナー手前から主導権を握ると、戸田康平が中団を確保。最終ホームから仕掛けると、山形一気を飛ばして戸田康後位に切り替えた海老根恵太(写真)が直線抜け出した。
 「考えられないですね。(川口が)あんなに行くとは思わなかったです。キツかった。自分もツキバテで、山形に押してもらったから飛びつけた感じ。情けないけど、1着でよかったです」
 戸田康平は2着で8月豊橋記念初日以来となる連対を果たした。
 「山形さんに言われたとおりに走れました。川口君もだいぶ踏んでたので、坂本さんも来れないなと思った。めちゃくちゃ久しぶりの確定板ですね。やっとバックも取れました」

<4R>

山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
 早坂秀悟が赤板目がけて踏んで、取鳥雄吾から主導権を奪う。山崎芳仁、大槻寛徳まで続いて、北日本3車が出切る。最終ホーム手前から取鳥が巻き返すと山崎がブロックで阻む。稲毛健太はあおりで不発も、今度は嶋津拓弥がまくりで襲い掛かる。ギリギリまで引きつけた山崎芳仁(写真)が追い込んで1着。
 「(早坂)秀悟が行ってくれたんで、あとは残そうと思ったけど。4コーナーからタレてきましたね。自分が思ったより(逃げる早坂に)詰まって来たし、内に来たのもわかった。それに6番(嶋津)も来ていたから踏むしかなかった」
 取鳥、稲毛の仕掛けを待ってから、嶋津拓弥は最終2コーナーからまくり上げる。山崎のけん制はあったものの、踏ん張って2着に入った。
 「1回前に出て誰か飛んで来るようなら、自分はタイミングをみてまくりと。前が叩き合ったとはいえ、踏んで行けたんで悪い時期は脱したかなと思います。ただ、(シリーズを通しては)チャレンジャーなのに消極的だった」

<5R>

松岡健介選手
松岡健介選手
 野原雅也が赤板前に山田義彦を叩いて先行態勢を築く。打鐘手前で新山響平が巻き返すが、松岡健介(写真)のけん制に屈して出切れず。松岡が4コーナーから車を外に持ち出すとそのまま抜け出して白星を挙げた。
 「新山が来ているのは分かっていました。ただ、後ろに2番(山田)もいたのでね、あまり大きな動きはできなかったです。(野原)雅也が頑張ってくれたので、できれば残してあげたかったけど」
 内をすくって近畿勢の後ろを確保した山田義彦だったが松岡をとらえることはできず。
 「体に余裕があったし、まくりに行ける感じはあった。ただ、行く勇気がなかったです。勇気を持って行ってれば1着を取れていましたね」

<6R>

太田竜馬選手
太田竜馬選手
 前受けから下げた太田竜馬は赤板ホームからすかさず始動。河端朋之との踏み合いを制してホームで先頭に立つ。菅田壱道が1センターから好回転で前団に迫ったが、橋本強、園田匠と接触してゴール前で落車。逃げた太田竜馬(写真)が何とか押し切った。
 「あれが理想の形だったけど、河端さんが強かった。出させてくれんかなと思いました。最後はいっぱいでした。差される感じがしたし、3着以内に入れたら思ってました。落車があったけど、1着は嬉しいですね」
 内をすくって四国3番手に付き直した池田憲昭が落車を避けて2着に入った。
 「3番手で前が見えなかった。合わされた感じがしたんで、入れてやらんといかんなと思って下りてたけど、あそこが難しかったですね。内は空いてました。今朝、小倉(竜二)さんにセッティングを見てもらって楽にニュートラルに入るようになりました」

<7R>

武田豊樹選手
武田豊樹選手
 青板前から動き出した杉森輝大が早めに先頭に立って、原田研太朗を警戒しながらレースを支配する。杉森もペース上げるが、赤板の1センターから7番手の原田が巻き返す。逃げる杉森の番手で武田豊樹(写真)は、原田を再三にわたりブロック。原田を不発においやる。神山雄一郎がすくわれ松浦悠士が3番手に入るが、武田は落ち着いて杉森を追い込み1着。
 「(杉森は)いつも引き立ててくれる後輩ですから、僕としては番手から出るのは簡単ですけど。しっかりと体を張って仕事をしようと。まだ体がついてこないですけど。自分にできることがなにかっていうと、レースに出ることだと思う。一戦、一戦、集中してやっていくしかない」
 松浦後位から中のコースを踏んだ柏野智典が2着に伸びた。
 「松浦君が中に行けば、自分は外だし。どっちでもいいと思った。杉森君と武田さんの中を行けばアタマまでいけたかもしれません」
 3着に踏ん張った杉森輝大は、武田の大仕事に感謝して汗をぬぐう。
 「武田さんがすごい仕事をしてくれてるのもわかったし、僕は目いっぱいいくだけだった。体の状態はだいぶ戻ってきたんで、逃げても勝負になるかなと」

<8R>

坂本亮馬選手
坂本亮馬選手
 青板で先頭に立った金子幸央が別線を警戒しながら徐々に加速して先行態勢を築いていく。7番手の脇本雄太が打鐘前から巻き返すが、中団の坂本亮馬(写真)がそれに合わせてホームで踏み上げて脇本を封じると、そのまま前団をとらえて快勝した。
 「みんなも想定していた展開になったのじゃないですか。脇本さんがホームで来てシンプルな形になりましたね。行けるか行けないか半々だけど、何とか行けました。ただ、さすがにキツかったです」
 佐藤悦夫は坂本に切り替えて口が空きながらも何とか2着を確保。
 「(金子が)3周行ってくれましたね。脇本が来るのは警戒していたけど、(坂本)亮馬は止められなかったです。その後は対応できたけど、自分がツキバテていましたね」

<9R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 中団の松川高大が赤板で先に切ったうえを吉田拓矢が叩いて主導権を握る。打鐘過ぎ4コーナーから郡司浩平が巻き返すが、これを番手の木暮安由がブロック。直線で木暮も鋭く迫るが、吉田拓矢(写真)がそのまま押し切った。
 「このメンバーで逃げ切れたのは自信になりますね。あんまり脚を使わず出られたし、そこからペースでいけた。後ろのサポートのおかげです」
 木暮安由は逆転ならず。未勝利で地元GIを終了した。
 「持って行ったら外に差して戻れなくなった。このままじゃ番手まくりになっちゃうし、マズいなと思ってました。(佐藤)慎太郎さんも内に見えたし、これじゃラインで決まらないなと思ってた。差せなかったけど、また頑張ります」
 松川ライン番手からコースを突いた高原仁志が3着に食い込んだ。
 「いい感じにコースが空いた。前が頑張ってくれた分ですね。初日終わったあと体がキツかったけど、前回(松戸記念)終わってからケアして(疲れを)抜いてた分、プラマイゼロになった」

<10R>

中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 先行態勢を取った稲垣裕之に根田空史が襲い掛かると、稲垣もペースを上げて突っ張る。両者の踏み合いは稲垣に軍配も、じっくりと脚を溜めた中川誠一郎(写真)が最終ホーム過ぎに踏み出して鮮やかにまくった。
 「稲垣さんの掛かりが良かったんで結構苦しかった。それでもだいぶいい時の感触に戻ってきたんで(まくり切れた)。あとは仕掛けるタイミングと、仕掛ける気持ちを取り戻せば。(次回の久留米の)地元記念に格好をつけないといけないし、なんとかイケそうですね」
 井上昌己は中川を交わせず2着に苦笑い。
 「交わせなかったのは残念。(中川は7月の)小松島の時と比べたら全然良くなってますね。(まくりも)ベストのタイミングでした」

<11R>

稲川翔選手
稲川翔選手
 阿竹智史の上昇をはばんで中団から竹内雄作が前に出るとそのまま主導権。赤板ホームから天田裕輝が巻き返して来るが、稲川翔(写真)のけん制で力尽きる。中団で立て直した阿竹の巻き返しも伸びを欠き、番手絶好の稲川が直線鋭く抜け出した。
 「自分の中ではやれる事はやったつもりです。ただ、収穫もあったけど、課題も見つかりましたね。(勝ち上がれなかったのは)これが現状の実力です。もう少し頑張ります」
 ゴール前で末を欠いた竹内雄作だが、別線を出させずに見事な先行策を披露した。
 「誰が来てもそこさえ合わせれば平原さんが相手でも何とかなると思いました。残れなかったのは、昨日も今日もあと3歩踏めていないだけです。自分のできる事はやったつもりです」

<12R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 青板ホームから動いた深谷知広に合わせて岡村潤も上昇すると、岡村は吉田敏洋の内で粘る。赤板ホーム手前で浅井康太が前に出ると、すかさず動いた新田祐大は俊敏に3番手を確保。深谷は6番手に車を下げる。深谷は打鐘過ぎから巻き返すが、合わせてホームから新田も踏み上げ、福島3車で前団を飲み込むと新田に続いた渡邉一成がゴール前で抜け出しオールスターに続き、GI連覇を飾った。
 「浅井君がインを切ったところを、しっかり追い上げてくれたし、深谷君のまくりに合わせてタテに踏んでくれた。全て新田君が動いてくれたんで、僕は安心して付いてるだけでした。(3回のGI優勝は)全て新田君の後ろからのレースなので、彼の走りに尽きるのかなと思います。この恩を忘れずに、これからもずっと走っていきたい」
 新田祐大(写真)はオールスターに続いての決勝2着。それでも福島ラインで上位独占したレースを満足そうに振り返る。
 「浅井さんが切りに行ったのですかさず行かなきゃと思った。前まで行くかは悩みましたけど、そのときのスピードと場所で。(中団にライン)3人入ったのが見えたんで、あとは深谷に合わせて出てくだけ。バック過ぎに来てるのが見えたので合わせて出て行けば。浅井さんの踏み返しはあるけど、自分の力を信じて踏めば決まると思ったので」
 3番手の成田和也もきっちりと続いて、今年2度目のGI表彰台にあがった。
 「新田が本当にいいレースをしてくれたおかげで決まりましたね。相手の出方はあるけど、新田の判断に。(岡村のイン粘り)あれでいい形になったんじゃないですか。新田もあそこで構えないでよかった。2人ともいいダッシュで、付いて行けてよかったです」
 新田に合わせられた深谷知広は「(岡村が)想定外。下げてからも仕掛けるタイミングがなかった。失敗です」と言葉を振りしぼった。