『第27回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)レポート』 3日目編

配信日:10月7日

 前橋競輪場を舞台に開催されている「第27回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」は、10月7日に3日目を迎えた。GIファイナルのチケットをかけて争われた準決では、オールスターからのGI連覇のかかる脇本雄太が今年2冠の三谷竜生とワンツーで勝ち上がった。いよいよシリーズも大詰め、8日の最終日にはスピードバトルを勝ち抜いた9選手よる決勝の号砲が鳴らされる。  本場では最終日も、様々なファンサービスとイベントでお客様をお待ちしています。「浅香唯」のスペシャル歌謡ショー、虎舞士パフォーマンス、静岡GPキャラバン応援ソング歌手の「太田克樹」の歌謡ショー、先着300人様にお菓子がプレゼントされる「地元選手お出迎え」、日本競輪選手会群馬支部のイベント「チャリティオークション&トークショー」、ゲストが飛び入り参加!?「前橋女子部ブース」、未確定車券抽選会、地元前橋市物産展などが予定されています。ぜひ、本場へ足をお運びください。

後閑信一氏 トークショー
後閑信一氏 トークショー
VR KEIRIN 選手の視点でレースを体験
VR KEIRIN 選手の視点でレースを体験
U字工事 お笑いライブ
U字工事 お笑いライブ
オートレーサーバイクパフォーマンス
オートレーサーバイクパフォーマンス

<1R>

松岡健介選手
松岡健介選手
 横山尚則後位は牛山貴広と補充の宗景祐樹の競り。打鐘の3コーナーで吉田敏洋を叩いた中井太祐が主導権を握る。松岡健介(写真)に大塚英伸まで出切って、吉田は4番手に入る。まくり迫る吉田、横山をけん制しながら、番手の松岡が直線で余裕をもって抜け出した。
 「中井君が先に前を押さえても、横山君や吉田君はすぐに巻き返すタイプなので結局は後ろになってしまうと思っていた。そういう流れのなかで、ああいう位置取りになったんだと思う。自分はラインのおかげで1着を取らせてもらいましたね」
 横山尚則は、最終1センターで中部ライン3番手の西村光太を弾いてまくるも2着まで。
 「(後ろの競りについては)走る前にはわかっていることだから。後ろがそういう状況なので、組み立ては自分で考えてやりました。でも、うまくいかなかった。まだまだ足りない部分が多い…」

<2R>

神山拓弥選手
神山拓弥選手
 利根正明が赤板で廣田敦士を叩いて先制。前受けから7番手まで下げた雨谷一樹は打鐘の3コーナーから巻き返すと、最終バックで利根の抵抗をねじ伏せて先頭に立つ。続いた神山拓弥(写真)が直線で鋭く追い込んだ。
 「雨谷君がいいレースをしてくれました。落ち着いてしっかり仕掛けてくれた。最後はちょっとタレていたので、勝手に進んでしまった。車間を空けられれば良かったけど、このバンクだと難しい。400(バンク)ならワンツーが決まったと思います。自分の技量不足ですね」
 ライン3番手の志村太賀が神山に続いて2着。好回転でまくった雨谷一樹は末を欠いて3着となったが、関東勢で確定板を独占した。
 「初日、2日目と位置取りを意識しすぎて自分のレースができていなかった。脚をためて一発と思っていたし、しっかり力を出し切ることはできました。先輩たちとラインで決められたのは良かったです。脚の感じ自体はそんなに悪くないです」

<3R>

佐々木豪選手
佐々木豪選手
 神田龍が赤板で一気に飛び出して主導権を握る。これを受けた金子幸央が3番手に収まり、巴直也が佐々木豪(写真)をすくって6番手を取る。8番手になってしまった佐々木は最終ホームから豪快に仕掛けで前団を飲み込み、GI初勝利を飾った。
 「クッパの呪いを回避しましたね(笑)。(クッパの呪いとは?)GIでは9着と8着しか取ったことがないからですよ。初勝利はやっぱり嬉しい。後方になったけど、踏まないでも回せているし、サドルを5ミリ高くしたのが合っている。小倉でブフリのセッティングを見て意識を改めた。オールスターからすると2センチも上げているんですよ。まだ低いからどんどん上げるかもしれない」
 山賀雅仁は目標の巴が内に詰まっていると見るや自力に転じて2着。補充参戦だが、前回の青森記念Vと同様に調子は良さそうだ。
 「巴君が(佐々木を)しゃくってくれたおかげ。あれがなかったら僕の着もないですからね。余裕があって1回(松岡を)張ったら巴が内で詰まっていたから、内はダメだと思って外にいきました。トレーニングの効果が頭打ちではないし、伸びてますね」

<4R>

山田久徳選手
山田久徳選手
 インに包まれていた吉澤純平が、トリッキーに外に持ち出して赤板で主導権を握る。4番手に堀内俊介が入り、6番手の山田久徳(写真)が打鐘の4コーナーから反撃に出る。逃げる吉澤の番手の河野通孝が山田を大きくブロック。イエローラインのさらに外に避けた山田が、再度加速して吉澤をとらえた。
 「流れたんでそのまま行ったけど、(河野のブロックが)結構、来ましたね。僕は当たられなかった、あそこを抜ければ下るだけなんで。いいところでまくりに行けたし。最終的にみんなが脚を使って、僕だけ脚を使ってなかったのもあります」
 「自分の気持ちに余裕がなかったし、(山田を)振るタイミングもワンテンポ早かった」と、2着の河野通孝は反省する。
 河野のけん制で山田マークの稲川翔も外に振られて、中団の堀内俊介が山田を追うように踏んで3着。
 「脚的には初日、2日目よりもいい。でも、内容は良くないですね。本当は先行したかったんですけど…。山田さんが行っちゃったんで、自分のタイミングで行けなかった。それでも(初日、2日目より)余裕があった」

<5R>

中井俊亮選手
中井俊亮選手
 後ろ攻めの佐々木龍が坂本貴史にフタをした後に赤板で出て先行態勢を取る。Sを取った単騎の中井俊亮(写真)がすんなり4番手に入り、阿竹智史が5番手、坂本は7番手となった。打鐘の4コーナーから巻き返した坂本に合わせて中井がまくりを放つ。小原太樹のけん制を乗り越えて最終バックで出切った中井がそのまま後続を突き放してゴールを駆け抜けた。
 「初日に単騎で失敗をしているし、後方にならならようにと思っていたけど、4番手を取れるとは。最終ホームでは後ろからの仕掛けにかぶると厳しいので、あのタイミングで仕掛けた。いい位置が取れたけど、共同通信社杯より脚の状態も良くなっていたから。1着は何よりも励みになりますね」
 2着の小原太樹はレース後に岡村潤と汗を拭きながら反省会。岡村から番手回りの対処方法などをアドバイスされていたようだ。
 「僕の技量がまだまだ足りない。車間の空け方など難しいです。練習で補えない部分が多いので、実戦の経験が大切です」
 小原に授けたアドバイスについて岡村潤に聞くと、「(佐々木)龍の脚力、技量を考えて車間を適度に空けて対応するやり方などですね。その準備をすれば、止めにいくのか、前へ踏むのか、仮に出切られてもその後ろをどかすなど対応ができるので。簡単なことではないし、(3番手を回った)僕にできることもあったと思うので、偉そうなことは言えないんですけど(笑)」。

<6R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 佐藤博紀が赤板で飛び出して先行態勢を取る。前受けから8番手まで下げた永井清史は2コーナーからすかさず反撃。最終ホーム過ぎに佐藤をとらえて先頭に立ったが、中団でためていた郡司浩平(写真)がその外を鮮やかにまくって人気に応えた。
 「(初手は)1番車で好きなところを取れたんですけど、油断して後ろになってしまった。しっかり切って、真ん中以上を取って、仕掛けようと思ってました。永井さんが出切れるか出切れないかわからなかったので、追わずに待って自分で外に持ち出しました。踏み合っていたから自分の出番が来ました。最低限の走りはできたと思います」
 海老根恵太がしぶとく2着に流れ込み、南関ワンツーが決まった。
 「郡司君は強いですね。やっぱりグランプリに出るか出ないかの選手は違います。とにかく離れないで付いていくことに集中してました。すごいスピードでした。抜く抜かないとかのレベルじゃない。ワンツーが決まって良かったです」

<7R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 赤板で先頭に立った長島大介を打鐘で和田真久留が叩いて出るが、その上を単騎の根田空史が叩いて先制。そのままハイピッチで飛ばしていく。単騎で逃げる根田を和田が追いかけ、松浦悠士(写真)が林雄一を外から決めて3番手をキープする。車間を詰める勢いで外に回した和田を松浦が4コーナーで内から飛ばして追い込んだ。
 「2日目の落車で今回使っていた新車はフレームがまがったので、以前から使っていたものを使った。ダッシュに関しては新車よりは鈍いかな。根田さんにスイッチするつもりができなかったけど、そのあとはうまく対処できました。最後は空くと思っていたし、橋本(強)さんのコースも空けて、ワンツーを決めることができました。人気に応えられて良かったです。(落車の影響は)顔は痛いけど、体は問題ないですね」
 単騎の根田空史は3着に逃げ粘り、左手首腱鞘炎の影響も徐々に少なくなってきた様子だ。
 「単騎だったけど、何もしないで終わるよりは見せ場を作って行ける場所があれば行こうと。1周半くらいなら一人で行っても残る自信はありましたからね。ただ2着に粘って(最終日の)特別優秀に乗りたかったですね。やっぱり青森で急に痛くなった左手首の影響はある。でも前2走に比べたら徐々に良くなっていますよ。体は反応しているし、脚は問題ないので」

<8R>

取鳥雄吾選手
取鳥雄吾選手
 合わせて動いた取鳥雄吾(写真)が、北日本コンビを受けて3番手をキープする。7番手に置かれた山本伸一はアクションを起こさず、早坂がそのままペースを上げて逃げる。3番手でタイミングを取った取鳥は、別線が仕掛ける前に最終ホーム手前で発進。岩津裕介は踏み出しで離れて、取鳥がロングまくりで後続をちぎる。地元コンビが猛襲するも、セーフティーリードを生かした取鳥が1着。
 「初手も取れた位置から考えようと思ってた。(早坂より)先にしっかり切ってっていうのは、岩津さんのおかげでできた。ああいうところも自分で判断してやれるようにならないと。(山本が)追い上げて来ると思ったけど、早坂さんが踏んでいった。(岩津が離れたのはわからなかったけど)あそこをメイチで踏んどけばっていうのがあったんで、息をしないで踏みました。なんとか(押し切れて1着だったんで)ラッキーしました」
 5番手にいた天田裕輝が、最終2コーナー手前からまくりで取鳥を追いかける。木暮安由は天田をゴール寸前で交わして2着に上がった。
 「天田君のスピードをもらって踏んだだけなんで、自分はもう天田君のおかげですよ」
 「岩津さんが付いてなかった。それで自分の仕掛けが遅くなっちゃった。もったいないですね」とは、3着の天田裕輝。木暮とそろっての確定板も、仕掛け遅れを反省し汗をぬぐう。

<9R>

飯野祐太選手
飯野祐太選手
 赤板から新山響平が先行態勢。1センターから河端朋之がカマシ返したが、ペースを一気に上げた新山が合わせる。ほぼ1周に渡り激しい攻防を繰り広げたが、最終1センターで河端が力尽きて後退。ホーム8番手から原田研太朗も好スピードでまくったが、新山をとらえることはできず、絶好の番手回りとなった飯野祐太(写真)がチャンスをモノにした。
 「一言で言うと僕は何もしていない(笑)。全て(新山)響平がやってくれた。ホントは僕が河端君の仕掛けを止めなくちゃいけないのに、合わせてくれたから。最後ももっと内側を空けないで短い距離で抜きにいかないと。真後ろが小倉(竜二)さんなどのマーク選手だったら入られていたでしょう。年齢的なこともあるので、そういう技術的な面を高めていきたい」
 丸2周を踏み切った新山響平が2着に逃げ粘った。
 「あんな簡単に差されてはダメだけど、タイムを見るとそこまで悪くないですね。体調面は大丈夫です。青森記念の後はメンタル面も含めていろいろなアドバイスを先輩たちから頂いた。そういう点も含めてさらに強くなっていきたい」

<10R>

浅井康太選手
浅井康太選手
 ここからが準決。赤板前に渡邉雄太が古性優作を押さえてハナに立つ。8番手となった柴崎淳はすかさず反撃。打鐘で渡邉雄を叩いて先行策に出る。最終ホーム、6番手の位置からまくり上げた古性に対し、車間を空けて準備していた浅井康太(写真)が3コーナーでブロック。返す刀で追い込んだ浅井が真っ先にゴールに飛び込んだ。
 「(柴崎と)2人で本当に決めるつもりだった。8番(渡邉雄)も来ないし、古性を外に持っていけば、(渡邉)一成さんの邪魔になると思った。最後は内も来ていたんで踏むしかなかった。余裕はないですね。でも、今開催は仕上がっているので、(決勝は)できることをしっかりやります」
 最終バック8番手から大外をまくり追い込んだ渡邉一成が2着に入った。
 「(初手は)取れた位置からで、後ろ以外なら前でも中団でも良かった。レースの組み立てとしてはほぼ想定通り。終始、落ち着いて走れました。正直、(前まで)遠かったですけど、4コーナーまで慌てず踏んでれば直線は伸びると思ってました。ちょっと前まで番手戦が多かったんですけど、自力の練習はすごくやってますし、いつでも自力で走る準備はできてました」
 渡邉一を懸命に追いかけた佐藤慎太郎が3着。16年2月全日本選抜以来、1年8カ月ぶりのビッグ優出を決めた。
 「ビリビリしました。(渡邉)一成は自信があるんでしょう。あとは俺が付け切れるかどうか。付いていってどこまで差し込めるかだけど、あれだけのスピードじゃ差し込めないですね」
 先行した柴崎淳は直線で失速して7着に敗れた。
 「ペースが上がって厳しかった。(浅井に)仕事もしてもらったし、4コーナーまでは持ったんですけど、悔しいですね。まさかあんな形になるとは思わなかった。これも競輪ですね」

<11R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 脇本雄太(写真)に突っ張られながらも、山崎賢人が赤板の2コーナー手前で出て主導権。脇本をすくった小松崎大地が3番手を確保して、脇本は単騎の香川雄介を最後方に置いた7番手。最終1センターから武田豊樹がまくるとその上を脇本が次元の違うスピードで襲い掛かる。さらに絶好位からまくる小松崎をも脇本がのみ込んで、そのまま押し切った。バンクレコードタイの上がり8秒8を叩き出した脇本が振り返る。
 「(タイムが)全然出てた感じはなかった。ただ、冷静にと。ほぼ前受けからの展開になるだろうし、そこから残り3周でどうなるか。(山崎)賢人君がなかなか押さえに来ないんで、僕が突っ張る形でプレッシャーをかけないとって。それでも強引に来るようだったら、3番手と思ってたけど小松崎さんが内から来るとは思ってなかった。結果、(山崎に)脚を使わせて、自分はまくり追い込めた。僕のなかでまだまだやるこがあるんで、そのなかで精いっぱい、(決勝は)気負わずに頑張ります」
 驚がくのタイムに三谷竜生は、流れ込みの2着まで。
 「(脇本が後方になって)あの展開になったら行けるところからですよね。しっかりと付いていってそのあとですね。バンクレコードタイだしいいスピードでした。脚力は本当にすごい。やっぱりナショナルチーム。付いていくのは最低限。そこからどうするか。(決勝は)自分も狙えるだけの状態なので狙いたい」
 近畿勢には屈したものの、ソツない立ち回りから山崎の逃げをまくった小松崎大地がGI初優出の3着。
 「(渡邉)一成と(佐藤)慎太郎さんが前のレースで(優出を)決めていたので(気合は入った)。2日目の失敗もあったんで…。自力選手だし行けるところまではと、(内に)自然と判断ができた。そのあとに山崎君が来てくれればいいなと思って。とっさに判断して体が動きましたね」

<12R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 南潤が平原康多に併せ込んでフタをすると、清水裕友(写真)が上昇して先に押さえて出る。清水が赤板で和歌山コンビを受けて3番手。追い上げた平原が5番手に入って、南が先行態勢を取る。打鐘を通過して後続を一本棒にして南がレースを支配。ペースは緩んだが別線は動かず、南が最終ホームから再度踏み上げる。3番手確保の清水は、2コーナー手前からまくりを打つ。合わせる南を4コーナーでとらえた清水が、別線の反撃も退けた。
 「しっかり3番手が取れたのがデカかった。あとは平原さんより先にと思っていた。ただ、(南と対戦した)2日目のことがあったんで、合わされるんじゃないかと。それであの仕掛けになった。落ち着きすぎてビビったっす(笑)。頼むから誰も来ないでくれって。3番手だったんで、(まくって行く時の)脚の入り方も良かった」
 「平原を相手にあんなに落ち着いていられるなんてすごいっすね、アイツは」と、柏野智典は肝の据わった清水の立ち回りを絶賛。椎木尾拓哉のけん制を警戒しながら、抜かりなく流れ込んで、14年以来、3度目のGI決勝の舞台にたどり着いた。
 「清水は思った通りに走ってくれた。さすがに平原を相手に外勝負じゃキツいし、内で勝負と思ってたんで(3番手がすんなり取れて)良かった。(清水のまくりは)こんなスピードが上がるんだって思いました。自分は(椎木尾に)飛ばされたら終わりだなと。飛ばされた時点で諸橋(愛)さんとかが入ってきそうですしね。そこだけは集中していました」
 南にフタをされたのが想定外だった平原康多は、5番手まで追い上げて反撃のタイミングをうかがう。しかしながら、緩んだ最終ホームでも反応できず、清水ラインを追っての3着に悔しさをにじませる。
 「南君がなんでずっと俺んところでと思って戸惑った。パニックになりました。最低限の5番手はと思って追い上げた。そのあとも南君が強いイメージがあるし、何回も行くタイミングがあったんですけど仕掛けられなかった。自分だけのレースになって申し訳ない。悔しさしかない」