『第7回東西王座戦(GII)レポート』 最終日編
 
配信日:2月24日


 大分県・別府競輪場で行われた第7回東西王座戦は2月24日最終日を終え、全日程を終了した。S級の精鋭の中から勝ち上がった各9人により争われた決勝戦では東王座を山崎芳仁の先行を利した佐藤友和が、西王座は豪快にまくりを決めた小嶋敬二が奪取。奇しくも、東西共に昨年のチャンピオンが連覇を達成した。

東王座決定戦 レース経過

 号砲が鳴ると、渡邉晴智が勢い良く飛び出して誘導員の直後に付く。渡邉はすかさず新田康仁を迎え入れ、新田-渡邉-山崎芳仁-佐藤友和-岡部芳幸-武田豊樹-神山雄一郎-平原康多-後閑信一で並びは落ち着いた。
  一本棒の態勢から赤板ホームの入り口で平原-後閑が上昇を開始。平原が新田に並び掛けると、この埼京勢の後ろに武田-神山も切り替え。誘導員の後位は二列併走となるが、二角立ち直りで新田は車を下げ、正攻法の位置に平原へと態勢は変わる。これを打鐘で武田が押さえ、さらにこの上を北日本勢が三角で叩いて出る。しかし、中バンクを走行する北日本勢に、空いたインコースを突いて新田-渡邉が襲い掛かる。新田は内の武田を押さえ込みながら車を上げて内から山崎に並び掛けるが、山崎は慌てずホームからスパート。新田も踏み込むが、北勢三番手の岡部が離れたのを見て、新田-渡邉は三、四番手に入る。一方、後方に置かれた平原もホームから踏み上げてまくりに行くが、五番手から合わせて出ようとする武田と絡んだりして思うように車が伸びない。結局、平原は三角で渡邉のブロックを受けたところで不発に。直線には山崎-佐藤-新田…の態勢のまま戻って来て、懸命に逃げ粘る山崎をギリギリで交わした佐藤が東王座連覇を果たした。

ゴール
ゴール
表彰式
胴上げ
表彰式
胴上げ

西王座決定戦 レース経過

 号砲で、北津留翼と小倉竜二が並んで出て行くが、北津留が制して正攻法の位置を確保。北津留-西川親幸-小嶋敬二-小倉-香川雄介-石丸寛之-三宅伸-永井清史-濱口高彰で態勢は落ち着いた。
  青板バックで永井が上昇を開始。永井は赤板で前団に並び掛け、この岐阜勢には岡山勢も切り替えて続く。二列併走から二角で北津留が下げて、正攻法の位置に永井で、三、四番手がアウト石丸-三宅、イン北津留-西川で取り合う形に。この後は動きなく打鐘を過ぎ、最終ホーム入り口から、誘導を外した永井がそのままスパートして先行態勢に入る。ところが、濱口は永井のダッシュに付け切れず車間が空く。すると、永井とほぼ同時に踏み込んだ石丸が追い上げる形で永井の番手にすっぽり。三番手も内で踏み遅れた濱口をキメた三宅が取り切る。一方、中団の外に位置した小嶋は二角からまくり発進。これに合わせて石丸もバックで番手からまくって出る。小嶋は外に浮く態勢となり、三角では三宅のブロックも受ける。しかし、小嶋はこれを問題にせず、四角では力でねじ伏せるように石丸をまくり切って、先頭に踊り出る。このまま直線に入り、小嶋は後続の追撃を許すことなく、西王座戦連覇を達成した。2着には石丸後位から小倉を飛ばして伸びた三宅。

ゴール
ゴール
表彰式
胴上げ
表彰式
胴上げ

<5R>
内田慶選手
内田慶選手
   前半戦のメインは5レースのS級決勝。単騎の安東宏高が動けば細切れ戦となり、激戦が予想されたが、打鐘前から大カマシを打った藤田竜矢に乗った内田慶(写真)が準決同様に差し切って久々の優勝を決めた。
  「ほんと藤田サマサマですよ(笑)。しかし、この強風なのに付いてる僕が苦しくなるようなかかりでした。コーナーにかかってたから安東(宏高)君を止められたけど、バックじゃ止める余裕なかった。もっともまくられるスピードじゃなかったけどね。今年に入り落車続きだったけど、身体は問題なかったので、この優勝で良い流れに乗りたい」
  前受けから中団キープの松尾淳は切り替えた安東宏高の動きに戸惑い、仕掛けが遅れた。
  「安東君が行きそうで見過ぎてしまった。前を気にせず自分のタイミングで仕掛けるべきでした」
  南関勢の先頭を務めた五十嵐力も七番手からまくるも3着まで。自分の状態よりも藤田の強さを強調する。
  「藤田君も一気にカマしたから中団に切り替えられませんでしたね。中団取れなかった事より藤田君のかかりが良かった。力負けですね」


<6R>
渡邉一成選手
渡邉一成選手
   6レースは先行一車に近い組み合わせ。渡邉一成(写真)が突っ張るかに、一旦引いてからのカマシを決めて押し切り、シリーズ最終戦を白星で締めた。
  「何とか1勝できましたね。突っ張る気もあったが、この時期は危ないレースはできないしね。ナショナルでの遠征や合宿の合間なので、競輪に対するモチベーションを上げるのは正直難しいです。でもオリンピックに向けての時期だし、リスクがあるのは仕方ない。これでしばらく競輪用の自転車は乗らないので、綺麗に磨いてしまっておきます(笑)」


<7R>
池尻浩一選手
池尻浩一選手
   7レースは師弟愛のレース。池尻浩一(写真)のメモリアルとなる300勝を梶山裕次郎がプレゼント。
  「記憶にも記録にも残るメモリアルを弟子が行ってくれて決められるなんて最高ですね。あれで万が一にも2着じゃシャレにならんから、絶対勝つ気で踏み込んだ。今まで連係失敗が多かったけど、これで梶山君も安心したんじゃない(笑)」
  一方の梶山裕次郎は強風の中の先行でヘトヘト。それでも師匠の300勝に貢献できて満足そうだ。
  「キツかったぁ(苦笑)。池尻さんの区切りの300勝に貢献できて良かった。あの風の中逃げて、僕が残るのはちょっと厳しい(苦笑)」
  中団、中団からの組み立てとなった富永益生は奇襲の先行策も考えていたようだが、「稲村(成浩)君が誘導を斬ってたら、叩いて行くつもりだったけど、誘導が残っててペースが落ちないし、仕掛けるのは無理でしたね」。


<8R>
手島慶介選手
手島慶介選手
   8レースは金子貴志の先行一車。番手争いが激化するかと思われたが、手島慶介(写真)が意表を突く。なんとホーム線から飛び出すとまんまと逃げ切ってしまった。引き揚げてくると、他の選手から冷やかされ苦笑い。
  「僕がバック取ったの見た事ないでしょ?(笑)。追い上げて、金子を出させて番手に降りようと思ったら、金子が引いちゃうから、え~!って思いましたよ。今日のは本当たまたまです」
  しかし、手島追走の鈴木誠はトリッキーな動きに対応が遅れ、付け切れなかった。
  「いや、あれは追えないよ。手島君が仕掛けた時に僕の外にも選手がいたから、あれは厳しい。手島君ならではのトリッキーさにやられました」
  北日本コンビは斎藤登志信が前を回ったが、まくり上げるも、車の出が悪かった。レース後は、並んで自転車をバラしていていた有坂直樹は「登志信まくれ~、って思ったら、全然車が出て行かないんでどうしようもないでしょ」。


<9R>
大塚健一郎選手
大塚健一郎選手
   9レースも渡部哲男の先行一車。最終ホーム手前から仕掛けた渡部だったが、兵藤一也のまくりに屈して悔しそう。
  「面白くないなぁ。打鐘で後ろがギュギュッと音したし、仕掛けた時に後ろがいないのでケンさん(室井健一)が落ちたのかと…。成田(和也)さんも結構踏んでて脚を使ったかな。バックで流したのも失敗かも…」
  地元戦で嬉しい白星は兵藤のまくりを差し切った大塚健一郎(写真)。兵藤とは地区は違うが同期の絆があった。
  「兵藤が気合でまくってくれました。成田は飛び付きだと思ったし、番手に入り込んだところで、ドンピシャで兵藤が行ってくれました。地元で声援も多かったし、勝ててほんとに良かったです」


<10R>
山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
新田康仁選手
新田康仁選手
   10レースは東王座戦の決勝。ベストメンバーと言える四分戦を制して逃げたのは山崎芳仁。終始番手をキープした佐藤友和が、余裕を持って差し切り、昨年に続き東王座の栄冠を手にした。
  「今日はほんとに山崎さんのおかげ。もう少し遅い仕掛けになるかと思ったが、気を使ってくれたのか早めに行ってくれましたね。山崎さんの強さは知ってるから、差すまで勝てるか分からなかった。番手を回って勝てたという事は勉強になった。これからも回りはケースバイケースにはなるが、G1を獲れるようにみんなで盛り上げていきたい」
  山崎芳仁(写真)も小細工なしの先行策で王者のプライドを見せた。2着とはいえ、内容の濃いレースに納得の表情を浮かべながら記者団に答える。
  「友和が獲ってくれて良かったね。決勝が一番軽かったし、最終日に合わせた調整をしてきた。平原(康多)君が押さえたけど、2車だし、先行はないかなと思いました」
  レースを撹乱した新田康仁(写真)は北日本分断は作戦ではなく、一瞬の迷いで立ち遅れたと言う。
  「北日本がスンナリ駆ける展開になるとはね…。平原君なり、武田(豊樹)君がもう少し抵抗するかと思ったが。分断は考えてなかった分、立ち遅れたが、あれなら飛び付いて番手狙いのほうが良かったかも」
  武田豊樹、平原康多は共に悔しそうだが、一度は動いてレースを動かした。まずは武田豊樹から
  「組み立ては間違ってなかったと思うが、新田君の動きで戸惑いましたね。仕掛けようと思った時には、平原君が外に来ててどうにもならず…。でも最後に晴智君の内から当たってファイト見せたでしょ(苦笑)」
  平原康多もまくり上げたものの、最終的には力尽きた。
  「みんなスタート早いし、一番後ろになるのは分かってたけど、厳しいですよね。その中でやる事はやったつもり。武田さんと当たったのもあるけど、乗り切れなかったですね」


<11R>
石丸寛之選手
石丸寛之選手
三宅伸選手
三宅伸選手
   11レースの西王座戦も昨年同様に小嶋敬二が連覇を達成。中部同士の永井清史とは別線と割り切って、豪快なまくりを決め、ケガから復帰後、初優勝となった。
  「ホッとしたのが一番ですね。SS班は僕一人だったし負けられない気持ちでした。風も強いし、動いて脚を使うよりは、一発狙うつもりだった。三宅(伸)君のブロックは効いたけど、乗り越えられてイケたかなと。友和(佐藤)が連覇して僕にできないわけはないという気持ちで走った。昨年もこの大会から結果が伴うようになったし、これからのG1を勝ち倒したい」
  小嶋マークを宣言して好追走を見せた小倉竜二だったが、3着ゴールがやっと。ワンツーを決められなかった事に悔いが残ったようだ。
  「2センター過ぎに小嶋さんの内に差し込んでバック踏んだのが痛かったな…。あれがなくても優勝はないが、2着には行けたと思う。支持されてただけに申し訳ない…」
  永井清史の番手にはまり、小嶋に合わせて番手まくりの石丸寛之(写真)は岡山勢から『獲れるぞ』と歓声が上がるも小嶋に屈した。
  「出切るつもりで踏んだら、番手に入った感じですね。まくった時はイケルと思ったけど、その外を行っちゃう小嶋さんは強過ぎ。力は出し切ったので悔いはないですよ」
  石丸後位の三宅伸(写真)にもチャンスがあったように見えたが、本人は首を横に振る。
  「ワシはハマちゃん(濱口高彰)にからまれた時点で脚を使ったし終了じゃわ(苦笑)。形的には石丸が獲ったと思ったけどな…」
  逃げた永井清史は番手まくりを打たれてガックリ。早々に帰り支度。
  「後ろが濱口さんじゃないのに気が付かず…。番手まくりじゃどうしようもないですよ(苦笑)」

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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
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