『第7回ウィナーズカップ(GII)レポート』 最終日編

配信日:3月21日

 別府競輪場で開催されたオランダ王国友好杯「第7回ウィナーズカップ(GII)」は、3月21日に最終日が行われた。S級S班6人をはじめとした豪華メンバーによる決勝は、落車のアクシデントを避けて俊敏な立ち回りで追い込んだ松浦悠士がV。20年に次ぐ2度目のウィナーズカップ制覇、通算7回目のビッグVで、優勝賞金2581万円(副賞含む)を獲得した。また、「ガールズケイリンコレクション2023別府ステージ」は、競技大会でエジプトから帰国直後の佐藤水菜が逃げ切りで一発勝負を制した。

ガールズケイリンコレクション2023別府ステージ出場選手特別紹介
ガールズケイリンコレクション2023
別府ステージ出場選手特別紹介
決勝競走出場選手特別紹介
決勝競走出場選手特別紹介
全48レース1着選手サイン
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決勝戦 レース経過

 号砲で山田庸平が出て、嘉永泰斗-山田の九州勢が前受け。以下は古性優作-脇本雄太、松浦悠士-福田知也、新山響平-新田祐大-守澤太志で落ち着いて周回を重ねる。
 青板周回を経過して、前受けの嘉永が誘導との車間を切ってけん制を始める。だが、後続の動きはないまま赤板周回へ。後方待機の新山が1センターからスパート。これに反応した嘉永も一気に踏み上げて合わせる構えを見せるが、スピードに優った新山は2センターで嘉永を叩いて先頭に躍り出る。嘉永は飛び付きも叶わず4番手まで下がり、これを見届けるや古性がホームまくりで北勢を襲う。一瞬口が空きかけながら脇本が古性に続き、その後位には松浦。2コーナーで並び掛けてくる古性を新田が再三ブロック。だが、古性は止まらず、スリップしてバランスを崩した新田はバックで落車してしまう。これにひるむことなく古性は新山をねじ伏せに掛かるが、新山も激しく抵抗。直線半ばで古性はようやく新山を交わすが余力はもう残っていなかった。落車があった際に守澤がバックを踏んだ隙を見逃がさずに内に切り込んだ松浦がその勢いのまま外の脇本を制して古性を追っていて、ゴール前一気の伸びで優勝をさらった。2着、3着には脇本、守澤が入る。


ガールズケイリンコレクション レース経過

 号砲で大外枠の尾方真生が出ていって正攻法の位置に入る。以下、小林優香、柳原真緒、児玉碧衣、佐藤水菜の隊形となるが、後方の位置を嫌った太田りゆ、鈴木美教が入れる位置を求めて外で併走。だが、誰も入れずに太田と鈴木は前後を入れ変えながら柳原、児玉の外あたりで併走を続けたまま赤板周回を迎える。
 赤板1センターで最後方にいた佐藤が車を外に持ち出すと、児玉が太田を前に入れて最後方に下がる。3番手は依然として柳原、鈴木で併走を続けていて、その後位まで上げていく佐藤に児玉が切り替えて乗っていく。誘導退避の打鐘で、鈴木が尾方の後位に追い上げて今度は小林と併走。そこを3コーナーで踏み出した佐藤が襲う。4コーナーでは佐藤、児玉で出切って、尾方は引いて3番手、その後ろも小林が守り切って最終周回へ。主導権を奪った佐藤は後続の動きを見ながら大胆に流していき、1センター最後方から巻き返してくる太田の気配を察知にしてから一気にペースを上げる。同時に児玉が2番手まくりに出て力比べ。しかし、佐藤は児玉を出させない。太田のまくりは3番手の外までで、佐藤、児玉での車体を併せての激しいモガき合いも2センターに入ったところで佐藤が児玉に踏み勝つ。直線に入ると、冷静に佐藤の後位に車を上げていた小林が詰め寄ってくるが、それも振り切った佐藤が1着。2着に小林で、児玉も3着に踏み止まった。


<2R>

和田真久留選手
和田真久留選手
 中団から合わせて動いた太田竜馬が切ったところを、松井宏佑が押さえて出る。和田真久留(写真)まで出切るが、太田は3番手で粘り武井大介と併走で打鐘を迎える。2センターで武井をさばいた太田が、3番手を奪取する。松井の先行で最終周回。橋本瑠偉は8番手に置かれて、単騎の伊藤信が7番手からまくりを打つ。伊藤に合わせて太田が外に持ち出して直線へ。太田との伸び比べを制した和田が番手で勝機をモノにした。
 「もう松井君に任せていたんですけど。こういう(雨の)コンディションで視界が悪いなかで、前受けでカマしていく展開よりは後ろから相手の動きを見てっていうのがあったと思います。後ろが(武井と太田で)バッティングしている感じがありましたね。太田君がまくり追い込みで来て、松井君を残して切れなかった。(シリーズを通しては)GI、GIIに来た時は自力でいい成績が残せてない。二次予選でもまくり切れてないし、そういうところで差が出てくる。自力選手として力で対応し切れてない」
 先行態勢を取った松井のスピードを判断して、太田竜馬は南関ライン3番手で粘る。武井をさばいて取り切ると直線で外を伸びた。
 「先切って中団確保と思ってました。ただ、単騎もいるし、スピードが合ったんで(南関勢の3番手で粘った)。どうせ勝負するならっていう感じでした。そのあとは(和田)真久留さんにも見られてたんで、(仕掛けを)見てしまった。まくれる感じがなかったし、あれをまくれれば上でも戦えんですけど」

<6R>

北井佑季選手
北井佑季選手
 小松崎大地が前受けの北井佑季(写真)を押さえて、そこを犬伏湧也が出る。犬伏が先行態勢を取るが、坂井洋も赤板2コーナーから仕掛けて出る。坂井がスピード良く叩くが、武田豊樹は付け切れない。犬伏が番手にハマって最終ホームを迎える。犬伏は早くも1コーナーからスパート。8番手でじっくりと構えた北井は、2コーナーからまくりを打つ。坂井をねじ伏せた犬伏を北井があっさりととらえて、後続をちぎってのゴール。
 「(小松崎が)押さえに来る感じを見てでしたけど、基本は2周行くつもりではいました。突っ張る気ではいたけど、小松崎さんのスピードがいい感じだった。そのあとも犬伏君が切りにいったんで、落ち着いて脚をためた。昨日(3日目)、一昨日と同じようなVTRを見ているようなレースだった。出られたら、自分が踏んでいくスペースがない。行けなかった時に臨機応変にできる賢さも必要だと感じました」
 落ち着いて一度は坂井を受けた犬伏湧也だったが、すぐさま反撃に出て坂井をまくり切る。同期の北井には屈したものの、北井後位が離れて犬伏は2着。
 「(自分が先頭に立って)あのスピードだったら(坂井には)来られないかなっていうのがあった。ただ、自分自身も警戒はされて、すんなり先行をさせてもらえない。だから難しかったけど、武田さんが離れているのがわかったので、すぐに番手に入った。先行態勢に入ったのに出られるのは良くない組み立てなので、無理やりでも(番手から仕掛けて)行った。(前々回の全日本選抜を含めて、ビッグの)決勝は遠いけど、地道に多少なりとも力がついてきている手ごたえはあります」

<8R>

平原康多選手
平原康多選手
 前受けの野口裕史を制して、赤板1コーナー過ぎに町田太我が先頭に立つ。7番手になった森田優弥はインを進出して、2コーナーで3番手から野口が叩きに出る。町田と野口で踏み合いも、町田が突っ張り切る。森田は中団で東龍之介とからんで、最終ホームを通過する。前の森田の動きを見て、平原康多(写真)まくりに転じる。鈴木裕もまくるが、スピードの違いでのみ込んだ平原が1着。
 「いつでもリカバリーできる準備はできていたので、その場面(森田が東とからむ)になった。(渡邉)一成が後ろにいたけど、気にせずに(まくって)思い切りゴールまで踏みました。自転車はじわじわ進んでいく感じでした。昨日(3日目)落車しているので、体調の方は万全ではなかった。でも、森田がいたんで安心感はありました。今回はそれなりに手ごたえがあったけど、準決はアクシデントもあって悔しい思いをしました」
 埼玉勢の後ろにいた渡邉一成は、インを進んだ森田を見て最後方で脚をためる。7番手の平原がまくると、渡邉は追うように最終2コーナーからまくって2着。
 「森田がいいところにいると思ったので、森田、平原さんのところにいようと思ってました。(森田が)まさか内に入っていくとは思わなくて、三谷(将太)も浮いてたんで僕が内に入ってもっていうのがありました。緩んだところを思い切り踏んだら、平原さんが先に踏んでいた。平原さんも東とからんでいたらおもしろかったけど、さすがですね」

<9R>

佐藤水菜選手
佐藤水菜選手
 周回中は最後方のポジション。徐々に進出して打鐘を5番手で迎えた佐藤水菜(写真)が、そのまま踏み込んで2センター過ぎに先頭に立つ。2番手にはすんなりと児玉碧衣が続いて、3番手に尾方真生、小林優香が4番手で最終周回。レースを支配した佐藤は、後続を引きつけながら落ち着き払ったペース配分。7番手の太田りゆのスパート、2番手からの児玉のまくりを引きつけて、佐藤が2コーナーから踏み上げる。児玉と併走で3コーナーに突入も、世界屈指の脚力で合わせ切り、二の足で小林の追い込みを振り切った佐藤がV。
 「いつのタイミングで押さえられるのか、不安もあったけどジャンまで焦ることなく走れて、脚を使わずに前に出られた。誘導が抜けたあと、モガき合うかなと思ったけど、とにかく前に踏んだ。後ろに児玉選手がいて、モガき合いをしました。1周を過ぎて、ホームから1コーナーあたりで踏んで行ってあとは4分の3周を全開で行って後続から逃げた。(自分の優勝は)ゴール線までわからず踏みごこちに不安もあった。ゴール線で自分のハンドルに頭をぶつけたし、それくらい一生懸命でした。(優勝して)素直にうれしかった」
 最終ホームで4番手と悪くないポジショニングだった小林優香は、最終2コーナー手前でインを踏み込んで佐藤後位に取りつく。結果的にそれが2着をもたらしたが、自身は力勝負で優勝争いをしたかったようでこう振り返る。
 「(最終)2コーナーで尾方さんが行ったところで、内に入ってしまった。バックでキツかったとしても、外に行っていれば(前団を)のみ込めていたかもしれない。(内に行った)あの展開だと2着が精いっぱいですね。悔しいけど、楽しみは次にとっておきたい」
 尾方も1車下げて、先頭に立った佐藤の後ろには児玉碧衣が入る。「差し勝負はしたくなかった」というように、最終2コーナーからまくって佐藤に並んだが、まくり切るまでの力は戻ってなかった。昨年のグランプリで落車に見舞われて、鎖骨を粉砕骨折の大怪我。復帰後は苦しみながらも、ようやく手ごたえを得た。
 「もったいなかったです。もうちょっと車間を切っていけば良かった。サトミナ(佐藤)も流していたんで、なかなか車間が空けられなかった。(仕掛けた)一瞬のスピードは良かった。(最終)3コーナーで出切っておかないといけなかったです。(昨年のグランプリの落車の影響もあって)4コーナーで膨らんでしまった。もうちょっと良くなれば、そこは直せるかなと。今年に入って不安ばっかりのレースで気持ちに余裕がなかった」

<10R>

吉田有希選手
吉田有希選手
 飯野祐太、吉田有希(写真)、伊藤颯馬の順番で出て打鐘を通過する。しかしながら、すかさず山口拳矢も仕掛けて、最終ホームで伊藤を叩いて主導権を奪う。6番手でタイミングを計っていた吉田は、車間を詰める勢いで2コーナーから踏み込む。浅井康太のけん制を乗り越えた吉田が、豪快にまくり切った。
 「(打鐘3コーナーで山口)拳矢さんと併走のところはヒヤッとしたけど、拳矢さんが行ってくれたんで良かったです。(前団が)団子になっていたんで、(まくりの)タイミングは取りやすかった。ただ、もうワンテンポ早く行っていればラインで決まったかなっていうのがあります。(まくりは)スピードに乗っている感じがあった。(シリーズを通しては)ちゃんと仕掛けるところで仕掛けられた。でも、昨日(3日目)は納得できてないですね」
 2位入線の浅井が失格。飯野マークから最終バックでは9番手の和田圭が、3コーナー過ぎからコースを探して追い込んだ。
 「どこも突っ込めないと思ったけど、最後はたまたま空いたところに入れた。伸びていたんで、自分なりにはいい感触でした。最近は計画通りに練習ができている。(今シリーズも)全体的にはゴール前で伸びてたんで、まあまあだと思います」

<12R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 嘉永泰斗もペースを上げるが、赤板1センターからカマした新山響平が主導権。北日本3車が出切ったのもつかの間、最終ホーム手前から古性優作が仕掛ける。古性とからんだ新田祐大が、バック手前で落車。中団の外で併走した松浦悠士(写真)は落車を避けて、3コーナーで脇本雄太のインを突く。逃げる新山をまくり切った古性を、直線半ばでとらえた松浦が優勝。
 「位置がどうあれ、しっかりと脚をためようと思ってました。古性君が行って、(北日本勢を)越えられるかなってところで止まった感じがあった。自分がその上を行こうと思ったけど、脇本さんが行く素振りもあった。それで様子を見ながらでした。(2度目の優勝のウィナーズカップは)去年、一昨年と(決勝で)3着、2着。本当に相性のいい大会です。(今年は)苦しい3か月間だったので、ここで優勝できたのはものすごくうれしいですね」
 古性後位で挑んだ決勝の脇本雄太は、不慣れなマークながらも懸命に古性の動きに対応。松浦にすくわれて最終2センターでは外に浮いたが、最後は持ち前の脚力で2着に追い込んだ。
 「古性君は理想的な仕掛けをしてくれたし、それに応えられなかった悔しさが残る。(最終)バックの落車のところも対応しないといけないし反応が遅れた。古性君の後ろは勉強になったし、今後につながる。(今後も)対戦相手などを判断して、どっちの並びがいいかも判断していければ」
 最終バック手前で新田が落車。寸前のところで避けた守澤太志は、立て直してしぶとく伸びた。
 「脇本君を飛ばす感じで待っていたけど、(落車があって)新田君の方に寄っていってしまった。真っすぐ走っていれば、(新山)響平の後ろに入れて、優勝できたと思うし、その判断がまだまだでした」

次回のグレードレースは、玉野競輪場開設72周年記念「瀬戸の王子杯争奪戦」GIIIが3月26日~29日の日程で開催されます。
今シリーズはグランドスラマー・新田祐大をはじめとして佐藤慎太郎、松浦悠士のSS班3名が参戦。他にも山崎賢人、渡邉雄太、三谷竜生、町田太我など強力な機動型がそろっていて、V争いは熾烈を極めます。
地元勢はこの大会3Vの実績を誇る岩津裕介を筆頭に柏野智典、太田海也らが一丸となって他地区の強豪を迎え撃ちます。

3月13日時点の出場予定選手データを分析した、玉野競輪「瀬戸の王子杯争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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