毘沙門天賞 レース経過 |
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号砲が鳴るとけん制から単騎の竹内雄作が誘導を追いかけるが、渡邉一成-新田祐大が押し上げて誘導後位に収まる。竹内が3番手で、吉田拓矢-平原康多、山田庸平、原田研太朗-河端朋之-岩津裕介で周回を重ねる。
青板のバック手前で7番手から原田が上昇を始める。原田ライン3車が出ると、赤板で吉田が動いてその上を押さえて出る。吉田に平原、単騎の山田、竹内まで続いて出切る。渡邉が5番手まで追い上げて打鐘を通過。原田は結局、一本棒の7番手に下げる。最終ホーム手前で4番手の竹内が逃げる吉田に襲い掛かるが、番手の平原がけん制して反撃を阻む。今度は渡邉が2コーナーからまくりを打つも、バック過ぎに平原のけん制で不発。後方の原田は前が遠く出番がない。一度は平原後位を竹内に割り込まれた山田が、内をすくって直線へ。逃げる吉田の番手から平原が、余裕をもって抜け出し1着。山田が2着に流れ込む。3コーナーで山田にすくわれながらも、立て直した竹内が3着に追い込む。
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中井俊亮選手 |
打鐘で押さえた飯野祐太を岩本俊介が叩いてマイペースに入れるも、ホームから早めに巻き返した中井俊亮(写真)が抜群のスピードで一瞬にして前団を捕らえた。橋本強が離れて援軍を失ったものの、中井は後続を大きく引き離し、悠々と1着でゴールした。 「初手の位置にこだわりはなかったので、仕掛けるタイミングだけ逃さないように。脚の状態は良いので組み立てを間違えないように心がけました。一次予選の逃げも悪くなかったけど、山中(秀将)さんが強すぎました」 土屋壮登は後方に置かれたものの、団子状態になった外をまくって2着に入る。 「このメンバーで先行しても苦しいので、無理駆けは避けました。前を取って引いたので、仕掛けるタイミングの順番が最後になった感じですね」 中井のまくりに千切れた橋本強はバツが悪そうに苦笑い。 「最終ホームでからまれて、いろいろなことを確認しているときに踏まれた感じだった。離れてはいけないので修正しないとですね」 |
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永澤剛選手 |
畑段嵐士が赤板で押さえて誘導の後ろが入れ替わると、池田勇人、さらに坂本貴史が叩いて打鐘を迎える。先頭の坂本が流すと、池田がイン粘り敢行して番手がもつれる。最終ホームで畑段がカマしてくると、坂本は持ち前のダッシュ力でこれを突っ張った。さらに、筒井裕哉が自力に転じてまくってきたが、坂本はこれも合わせて踏み勝った。一方、番手の争いは永澤剛(写真)が守り切り、北日本で大勢は決する。最後は永澤がゴール寸前で差し切って1着を手にした。 「打鐘で粘ってくるなと思ったんで覚悟を決めました。でも、後ろの山田(敦也)さんには『落車したらすみません』って思ってました。とにかくきつかったですね。もうお腹いっぱいです」 坂本貴史は交わされたものの、今日は完璧に近いレースぶりで強さを見せつけた。 「近畿が8割方、二段駆けしてくるかなと思ってたので、池田さんを駆けさせようと思ってました。早めに誘導を残して引いたつもりだったけど、池田さんが早めに前に行ったのでヤバい展開になるかと。慌ててバックを踏んで(車を引いてから)行ったけど粘られました。でも、永澤さんと初めてワンツーが決まったので良かったです」 |
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東龍之介選手 |
後ろ攻めから上昇した渡邉雄太が打鐘前に先頭に立つと、片折亮太の巻き返しを許さずにそのまま主導権を握る。人気を背負っていた吉田敏洋は、片折と中団を取り合う形となり、内に包まれ踏み場なく終わる。これで形勢は南関勢に。バックから後閑信一が自力に転じたが、東龍之介(写真)は外に振って封じると、ゴール寸前で渡邉を交わして1着を手にした。 「道中で余裕もありましたけど、渡邉君がうまくて強かった。まったく失速しないし、ジワジワかかっていく感じで仕事もしやすかったですね。バックで後閑さんが来るかなって思っていたし、その辺も見えてました」 渡邉雄太は全力を出し切って別線を完封。息を切らし、検車場へ引き上げてくるなり倒れ込む。 「きつかったですね。そこまで重さはなかったけど、片折さんが併走しているのか、来ているのかが分からなくて結構踏みました。しっかりと駆けられたし、感触は良いと思います」 3番手でしっかりと内を締め、齊藤竜也が続いて3着に入り、南関で上位を独占した。 「渡邉君が良い形で駆けてくれたおかげですね。カマシとかだったら正直怖いなって不安もあったので。あの形なら内だけ締めて2人の間を踏むだけだったので余裕もありましたね」 |
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脇本雄太選手 |
後攻めの金子哲大が5番手の脇本雄太(写真)にしばらくフタをしてから、打鐘前に踏み上げる。合わせて3番手から動いた箱田優樹を制して金子が主導権を握るが、隊列が短くなったところを逃さずに脇本がスパート。好回転で金子を抜き去った脇本が番手の山田久徳の追撃を振り切り、今年初勝利を挙げた。 「踏み出したのはジャン3(コーナー)で、出切ったのは1コーナー。出切るまでに時間はかかりました。これが今年初勝利。1着は去年11月の福井以来だから本当に久しぶり。長かったです。内容はどうあれ、勝ててホッとしています。ケガだったら治せばいいけど、何が悪いのか自分でも分かっていない。体が悪いのか、自転車への力の伝え方か、セッティングか。競技の方はしっくりしているんですけどね。何とかしたい気持ちはあるけど、ちょっとずつ対応していくしかない」 まくられた金子が近畿コンビを追いかける。その後ろから追い込んだ河村雅章が3着に入った。 「金子君が頑張ってくれたけど、スピードが違いました。前まで遠すぎました。追いつかないかなって。金子君も詰める勢いで踏んでるから自分も苦しかったです。しょうがないですね」 |
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小嶋敬二選手 |
初日は後手を踏んだ神田龍だったが、2日目は積極的なレースを展開した。中団の長島大介に警戒されたが、神田は打鐘を目がけてカマしていくと、ハイペースを保ってそのまま主導権。小嶋敬二(写真)は踏み出しで車間が空いたが、追い付いてライン3車で出切ると中団以下を引き離していく。最終ホームを通過し、2コーナーを出ると小嶋は躊躇なく番手まくりを敢行。最後は後方から各車が迫ってきたが、力強く押し切って701勝目を手にした。 「こんな絶好の展開なのにきつかった。俺も歳を取ったな(笑)。神田君は自信がない感じで動くから『大丈夫かなぁ』と思ったけど。もっと自信を持てばいいと思う。まぁ勝てて良かった」 同県の嶋津拓弥に勢いをもらい、小原太樹が直線外を伸びて2着に入る。 「嶋津さんが中団を取ってくれて、仕掛けてくれたおかげ。僕は突っ込むことに集中できました。脚の状態は問題ないので、3日目以降も頑張ります」 7番手で不発に終わった長島大介は反省しきり。 「完全に失敗しました。仕掛けられるタイミングもあったのに見てしまって…。今日は反省しかありません」 |
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東口善朋選手 |
ここからが二次予選。古性優作が押さえて先頭に出たあと、取鳥雄吾が打鐘過ぎに叩いて主導権を握る。取鳥が懸命に逃げるなか、最終ホームから郡司浩平が反撃し、さらに中団の古性が2コーナーから合わせて出て各車で力勝負となったが、近畿3番手を回った東口善朋(写真)が直線で鋭く突き抜けた。 「前回落車してるから不安でいっぱいでした。自転車も前回とは違うので、乗った感じが全く違う。1から手探り状態なので。良い方に向かってくれればいいけど、1着が取れたのは良かったですね」 自力同士の力比べは、郡司浩平に軍配。古性の外を力でねじ伏せると、必死に抵抗する取鳥も下して2着に入る。 「古性君にかぶって合わされたからきつかったですね。前を取って誘導が退避するのが自分のイメージしたのより遅かったから、車輪を差したけど古性君を合わせ切れずに、引いた形になってしまいました。最低中団は取りたかったし、昨日みたいに先行できればよかったけど。今日は勝ちパターンではなかったし、たまたま行けただけ。ラインで決めないと。ただ、昨日よりは走る時間が遅かったから、脚は良い感じでした」 取鳥追走から、小倉竜二が郡司の後ろに切り替えて3着に入る。 「古性君は合わせたけどね。その外に郡司君が見えたけど、持って行くと危ないから。郡司君に行かれたけど、コースが開いたからスイッチできたね。車の出は悪いけど、展開に恵まれました」 |
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金子貴志選手 |
後ろ攻めとなった深谷知広が上昇を試みるも、中団にいた石井秀治の執ようにけん制されて7番手から動けない。正攻法に構えていた北津留翼が打鐘前の2コーナーで誘導員を降ろして先行態勢に入る。7番手に置かれた深谷が苦肉の策で中団の内へともぐり込むと、2センターでさらに前へと踏み込み、中川誠一郎をさばいて番手を奪取。車間を詰める勢いで最終2コーナー手前から一気にまくり上げる。追走した金子貴志(写真)が車間を空けながら援護してゴール寸前で捕らえた。 「(深谷が内へもぐり込む動きに)びっくりしました。まさかと思って。北津留君も踏んでたし、かかっていたのにすごい。踏み出しがすごくて離れそうになりました。(深谷は)相当仕上がってますね。自分も久々に差せたし、昨日よりも全然良いですね」 意外性のある動きで窮地を脱した深谷知広は肉体改造により体も動きもシャープになった印象だ。 「力勝負をしたかったけど、けん制されていたのでどうしようもなかったですね。行けるところまで行こうと思って内へいきました。緩んでいるとかはなかったけど、力勝負がしたかったので仕掛けました。それでも差した金子さんはさすがですね」 3着に入線したのは中川の後位から金子の後ろへと切り替えた筒井敦史。 「深谷君の動きが予想外で対応できなかった。でもその後はなんとか立て直して3着に突っ込めたし、悪くないでしょう。石井君も強いから最後は必死にハンドルを投げました」 |
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稲川翔選手 |
打鐘で切った稲川翔(写真)を山中秀将が押さえて前に出る。今度は松岡貴久が叩いて最終ホーム前から先行策。このラインを追った新山響平は中途半端な仕掛けで不発。最終2コーナーからまくった稲川が前団の混戦を豪快に飲み込んだ。 「相手が強いし、好調な選手ばかりなので、力を出し切ってダメなら仕方ないと思ってました。伊藤(信)さんに任せてもらえたし、どこかでチャンスはあると思って。いいレースかどうかは分からないけど、何とか役目は果たせました」 伊藤信が懸命に続いて2着。近畿ワンツー決着となった。 「イナショウ(稲川)のおかげです。僕が前でやるよりも判断は正しいですね。強かったです。自分は何もしてません。何もしてないので、感触は分からないですね」 新山が不発の展開から内に斬り込んだ木暮安由は井上昌己の内をすくって3着に食い込んだ。 「新山君が行ってくれると思ったんですけどね。2コーナーからバックでもう少し頑張ってくれれば違ったかな。何とかしのいだ感じです。状態はいいと思います」 |
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山田英明選手 |
後ろ攻めの鈴木竜士が中部勢にいったんフタをして、打鐘から先行態勢に入る。前受けの山田英明(写真)が3番手まで引くと、後方になった松岡篤哉は浅井康太、坂口晃輔を連れて猛然と反撃開始。最終ホームで山田が松岡をブロックすると、松岡の勢いは失速して、浅井は九州勢の後ろにスイッチ。ハイペースで逃げた鈴木を杉森輝大が2コーナーから番手まくりを放つ。これを追いかけた山田が粘る杉森を鋭く差し切った。 「流れに応じて体は反応している。自分の戦法を考えれば、今日の展開で位置取りを失敗してはいけない。荒井(崇博)さんには僕の戦い方を承知した上で付いてもらいました。鈴木君の駆け方から杉森さんは番手から出ると思ったので、そのあたりも落ち着いて対処できたと思います」 後輩の頑張りで準決勝行きを決めた杉森輝大は鈴木の健闘を称える。 「鈴木君が頑張ってくれた。初手は中部勢よりも後ろの位置から組み立てようと。全開で駆けてくれたし、後ろに山田君がいるのも分かっていたので前へ踏むしかなかったですね」 |
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稲垣裕之選手 |
金子幸央が中団の三谷竜生にフタをしたのち、打鐘で押さえて先頭に躍り出た。すると、続いてきた三谷が、中団外併走から反撃を開始。三谷はあっさりと金子を抜き去ると、稲垣裕之(写真)がきっちり続いて両者で安全圏へ。最後は稲垣が余裕を持って差し切った。 「三谷君にはレース前に何も言ってません。もう三谷君が行けるタイミングで任せてました。でも、ちょっと無理矢理行ってくれた感じもありましたね。金子君は前回、大垣で良い先行をしてたのもあったから。出切ってからは後ろに松浦君の気配があったから、そこだけ気をつけていきました」 三谷竜生は実力の差を見せつけ、近畿ワンツーを決めた。 「今日は(金子か自分の)どちらかが先行する感じかと。叩いたところで自分が行く作戦でした。思ったよりも車が進まなかったからきつかったけど、残れてるんで脚は悪くないと思います」 村上博幸はさばかれ、松浦悠士が稲垣に続いて3着を確保した。 「金子君が踏んでくれて、三谷君と3番手併走になったけど、当たれば行けるかなと。3番手を確保してまくるなり。そしたら三谷君は強いから、そのまま行ってしまいましたね。三宅(達也)さんが(村上を)やってくれたのでそこにスイッチした感じで。今の状態では、あそこからもう1回行く脚はないです。正直、付いてくだけでいっぱいでした。後ろ2人に迷惑をかけてしまいましたね。内容もゼロでした」 |
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中村浩士選手 |
人気を背負った関東ラインが正攻法に構え、中団に近畿ライン、南関ラインが後ろ攻めとなって隊列は落ち着く。中団の川村晃司が赤板前に誘導員を降ろして先頭に立つと、その上を根田空史が押さえて先行態勢に。後ろを警戒しながらいったんペースを落とした根田であったが、川村が打鐘過ぎに仕掛ける素振りを見せるとそこから一気にスパート。最終ホーム7番手から吉澤純平が巻き返すも、車の進みはイマイチで、根田をリードした中村浩士(写真)が車間を空けて援護しながら直線で抜け出した。 「本当に良かったです。根田君の自信満々の先行にしっかり付いていって。あとはそこからどうするかでしたけど、吉澤君が止まったのが見えて。でもその外を武田(豊樹)さんが来るだろうと思ってました。最後は根田君が残っているかいないかわからなかったけど、ワンツーで何よりですね」 強敵を封じて二次予選を突破した根田空史は満足そうにレースを振り返る。 「うまく駆けられました。やっぱり出てしまえば流れますね。けっこういいペースで流していても、自転車の特性で流れてくれる。この感じで2着だから悪いわけがないですね。(中村と)なかなか決められなかったけど、こういう大舞台で、しかも自分が先行して決められて本当にうれしい」 吉澤が不発の窮地に自ら外を踏んだ武田豊樹が3着で辛くも準決勝進出を決めた。 「吉澤君は落車が続いていて残念ですね。最後は自分で踏んでいって勝ち上がれたし、明日につながる」 |
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山田庸平選手 |
「毘沙門天賞パンサー杯」を制したのは平原康多だった。レースは赤板前に切った原田研太朗を吉田拓矢が押さえて先制。打鐘からペースを上げていく。単騎の山田庸平が3番手に続き、4番手となった竹内雄作はホームから反撃。好ブロックで竹内を止めた平原康多はさらにまくってきた渡邉一成もけん制して、番手絶好のチャンスをきっちりものにした。 「(吉田)拓矢がすごい強かったですね。成長してるなって感じました。拓矢を生かすも殺すも後ろの選手次第ですから。自分たちがしっかり育てていきたいと思ってます。(渡邉)一成がまくってきたのは見えてました。持っていったら内に入られるのも分かっていたし、それにも対応しないといけないから難しかった。それがライン2車の弱みですね」 初手から関東コンビを追走していた山田庸平(写真)が平原に続く形で2着に。 「今日はしっかりいい位置を取って、外を仕掛けるつもりでした。ホーム線を取るぐらいの感じで行ければ良かったけど、それだと持たないと思って。自分の持つ距離からと考えていたら行けなくなってしまって、それが反省点ですね。2着でも内容は良くなかった。でも、今回は状態も良くて、冷静に踏めています」 吉田拓矢はライン2車でも迷わず攻めて、見せ場を演出した。 「あまり考えすぎても結果は伴わないので、自分のレーススタイルで力を出し切ろうと思ってました。いい感じで踏めたけど、これで残れるようにならないと。疲れはあるんですが、走ってしまえば気にならないですね」 後方に置かれて凡走の原田研太朗は「作戦ミスですね。ダッシュにも遅れてしまったので修正したい」と勝負の準決勝へ気持ちを切り替えた。 |
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