『第36回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 初日編

配信日:2月20日

 55年の時を経て―。川崎競輪場で第36回読売新聞社杯「全日本選抜競輪(GI)」が、2月20日に幕を開けた。強風が吹き荒れ選手にとっては厳しいバンクコンディションではあったが、初日は一次予選から見ごたえのレースが展開された。メインの特選3個レースでは、松浦悠士、平原康多、清水裕友のS級S班の3人が勝ち星を挙げて幸先のいいスタートを切った。21日の2日目には、初日特選を勝ち上がった9選手による「スタールビー賞」が行われる。地元からは郡司浩平、内藤秀久がメンバーに名を連ね激戦は必至。シリーズ後半を占う意味でも見逃せない。
 川崎競輪場では緊急事態宣言の期間延長を踏まえ、無観客での開催となりますので、ご理解をお願いいたします。テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

<1R>

桑原大志選手
桑原大志選手
 打鐘の3コーナーで菊地圭尚が切ったところを、河端朋之がタイミングよく仕掛けて主導権。スピードに乗せて風を切る。立ち遅れた寺崎浩平は最終2コーナー手前からまくるが、3番手の長島大介、5番手の菊地は前との車間が空いて7番手からでは前が遠い。直線を迎えても3番手以下は詰め切れず、中国両者のゴール勝負。桑原大志(写真)が差し切った。
 「余裕がなくて、(後続の)影を見るくらいでした。(最終)4コーナーで突風が吹いたので、そういうのもあって(河端を)抜いているだけ。(前回からいろいろ試行錯誤を重ねているけど)自分のなかでは、前回の小倉よりも手応えがあった」
 寺崎浩平を後方に置いて、持ち前のスピードを発揮した河端朋之が2着に逃げ粘った。
 「菊地さんが(仕掛けて)行ってくれたんで、自分はそこまで脚を使わずに出られた。レース的にはいい流れだった。あとは前に出てからは、マイペースでいけば桑原さんも仕事をしてくれると思った」

<2R>

大槻寛徳選手
大槻寛徳選手
 先頭に立った取鳥雄吾もまだペースを上げず、打鐘で仕掛けた高橋晋也が主導権を奪う。3番手に飛び付いた取鳥はキメられ、北日本の3車が出切る。高橋の掛かりが良く、中本匠栄のまくりは届かず、松坂洋平の強襲も3着まで。番手の大槻寛徳(写真)が、逃げ粘る高橋を寸前で交わした。
 「(最終)2コーナーくらいでは(高橋と)決まったかなと思ったけど、正直、抜ける感じはしなかった。余裕がなかった。ただ、1着が取れてるんで、感触はいいと思います」
 「あれは作戦の1つでもあったし作戦通りでした」とは、思惑通りの積極策で、大槻とのゴール勝負に持ち込んだ高橋晋也
 「練習通り落ち着いて仕掛けられたんで良かった。でも、風が強くて先行している時もまっすぐ走れなかった。難しかった。最後もガムシャラに踏むよりも、フォームを固めて踏むことを意識した。やっぱり川崎は相性がいいですね」

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渡邉一成選手
渡邉一成選手
 前受けの渡邉一成(写真)が上昇した柴崎淳を突っ張って先行。渡邉は巻き返してきた坂井洋も完全に合わせ切って力強く押し切る。
 「スタートにこだわりはなくて、前が取れれば、前でと。(柴崎)あっちゃんが来れば、突っ張ろうと思っていた。全部向かい風だったし、重かった。今日(初日)すべての力を使った。自信になっても余力がなければ…。でもGIは勝ち上がってナンボ。競輪祭みたいに出し切れないで終わるのは悔しいから」
 竹内智彦は前の和田圭が車体故障して様子を見ながらも直線で外を伸びた。
 「(最終3コーナーで)和田が車体故障していたので、どうなるかと。バックを踏んでキツかったですね。(渡邉)一成君が突っ張った時もキツかったですね。ここまでは室内トレーニングだけで、どうかと思ったが、最後まで踏み切れているし、調子はいいと思う」

<4R>

山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
 渡邉雄太を押さえた山田庸平がペースを上げずにいると、7番手の山崎芳仁(写真)が最終ホーム手前からカマして風を切る。北日本3車が出切り、4番手以下は離れる。番手の阿部力也を4分の1輪、振り切った山崎が逃げ切りで一次予選をクリアした。
 「(スタートで)前が取れたんでカマシかまくりと思ってた。その通りカマせたんで良かった。本当にビビらなくて良かった。体が動いてくれたことにありがたみを感じている。行けなかったら力不足、仕掛けられれば(成績が悪くても)後々のレースにつながると思ってやってます」
 絶好の展開も2着の阿部力也が、こう振り返る。
 「1着取れるチャンスではあったけど、突風で難しかった。自分は直前にみんなとバンクでモガけたんで、仕上がりはいいと思います」

<5R>

松本貴治選手
松本貴治選手
 前受けの黒沢征治が松川高大を突っ張ってから車を下げ、打鐘過ぎの3コーナーから再度で仕掛けて主導権。関東勢のペースになるが、6番手を確保していた松本貴治(写真)が最終3コーナーからまくり切った。
 「何回か仕掛けたくなるところもあったけど、ためて行けるところから行った方がワンツーが決まると思った。前が風でタレているのもあるけど、思ったより(車が)出たので良かった」
 黒沢征治は力強い先行で2着に粘りGIでもアピールした。
 「前を取れたら取ってということでした。先行は決めていた。突っ張ってから中途半端にしないで、緩んだら無理くり行く感じ。ホームが向かいだったのでキツかったが、冷静に踏めていた。力は残ってなかったけど、後ろの2人が援護してくれた。(状態は)戻ったというか、新しい感覚を見つける。こういう場なので、強い人にアドバイスをもらいたい」

<6R>

島川将貴選手
島川将貴選手
 赤板2コーナーで先頭に立った三谷竜生がペースを握り、一本棒の隊列でレースは流れる。8番手の島川将貴(写真)を警戒しながら5番手の和田真久留が、打鐘の2センターから仕掛けると、三谷も合わせて踏む。三谷をとらえた和田が出切るが、その上を四国コンビが襲い掛かる。直線の入り口で和田に並んだ島川が抜け出して1着。
 「風もあったんでまだ行かなくてもっていうのがあった。いけそうな自信もあったんで、(打鐘の)2センターで和田さんが行かなかったら自分がと思ってました。前回は動きも悪くて期待に応えられなかったんで、その分もと。(今回は)自転車をいままで使っていたヤツに戻しました」
 「前回も一緒だったけど、まったくの別人でした」と、小倉でも島川と連係した渡部哲男が、まくりに流れ込んで2着に入った。
 「和田君が行ってくれたんで、隊列が短くなっていい流れだった。自分は去年もスタートが良かったけど、そこからしり下がりだった。今年はその二の舞にならないように」

<7R>

北津留翼選手
北津留翼選手
 河村雅章、山田久徳が動いたところを、根田空史が一気に踏み込んで主導権を取る。根田のスピードが良く、追走した松谷秀幸と2人で後続を離すが、北津留翼(写真)が圧巻のまくりでのみ込んだ。
 「風よけをしながら行ったのが大きかったですね。自分が根田選手より先にカマしたかったけど、ホームで2人が踏み合って立ち遅れた。吸い込まれるところを狙って行きました。あと3日間、自分らしい競走をしたい」
 地元のGIに備えてきた松谷秀幸が、根田に乗って2着で勝ち上がった。
 「根田君が向かい風の中でいい競走をしてくれた。(最終)バックで後ろが離れているのはわかったので、あとは北津留がくるかなと。止められないスピードでしたね。地元で緊張したけど、勝ち上がれたので楽になるかな。深谷(知広)が南関に来て、(郡司)浩平もSSだし、ここに向けて準備してきましたよ」

<8R>

小川真太郎選手
小川真太郎選手
 打鐘過ぎに勢いよく出た小松崎大地が、そのまま主導権。7番手に置かれた山本伸一が最終ホーム手前から反撃に出ると、4番手をキープした小川真太郎(写真)が山本を張りながら出る。渡辺十夢にキメられた原田研太朗は連結を外して、成田和也のけん制の乗り越えた小川が一人でまくって1着。
 「原田さんがいなくなったのはわからなかった。ゴール前ですごい勢いでのみ込まれると思ってたらいなかった。そしたら最後(原田は)大外にいましたね。最近は練習でも踏めている感じがあるし、GIの舞台で1着が取れたのは自信になりました」
 7番手で態勢を立て直した原田研太朗が、大外をシャープに伸びて2着。終わってみれば徳島ワンツーでの決着だった。
 「(渡辺)十夢さんに締め込まれて、遅れてしまった。そこは反省点ですね。筒井(敦史)さんが入れてくれたので、仕掛けないとって思って踏みました。自分の調子というより、川崎は外が伸びるんでそのおかげかなと」

<9R>

鈴木竜士選手
鈴木竜士選手
 後ろ攻めの鈴木庸之が押さえて出ると、稲毛健太の巻き返しを突っ張り主導権を握る。巻き返してきた太田竜馬は中団に入るまでで、鈴木庸の先行に乗った鈴木竜士(写真)が、車間を空けて計ったように差す。
 「ノブさん(鈴木庸)の踏み方がうまくてバックを踏まなくてもスムーズに車間を空けられた。後ろを見ていないけど、ノブさんが先行態勢に入った時点で、来た選手は全員止めようと思った。状態は非常にいいし、いいスタートが切れた」
 後ろ攻めから押さえ先行の鈴木庸之は、末の粘りも良く調子は良さそうだ。
 「まさか押さえ先行になるとは思わなかった。すぐ来れば、番手とかも考えていたけど、ダラダラくる感じだったので踏んだ。風は強いって言われてたけど、選手紹介の時に4コーナーから1コーナーは向かいだけど、それ以外は流れていた。ホームで合わせて踏んだ方が楽だなと。(鈴木)竜士はいつも止めているのを見ていたので。山梨で練習できてきたのが良かった。ある程度踏めましたね」

<10R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 南関勢を押さえた上を新山響平が打鐘過ぎに飛び出して先行策。北日本勢に続いた松浦悠士(写真)が楽に3番手をキープして、5番手に岩本俊介。逃げる新山の掛かりもいいが、最終2コーナーから松浦がまくって出る。守澤太志は止められず、4コーナーで出切った松浦が人気に応えて1着。
 「坂口(晃輔)さんが時間差で来て、ちょっと挟まれる感じになった。本当は新山君のところに追い上げたかったんですけど、岩本さんが前で待っている状態で新山君のカマシだったら3番手は取れるかなと思った。結果的に良かったかなと。感触は昨日(前検日)がかなりよくて、今日(初日)は昨日ほどではなかったんですけど。昨日が自分の中では一番いいくらいの仕上がりだったので、今日は自信を持って仕掛けようって思っていた。それが良かった」
 松浦マークの小倉竜二は、最終3コーナー過ぎに守澤に張られるも、しっかりと返してさすがのテクニックで2着をキープした。
 「体は思ったよりかは動けてたんですけど、バンクコンディションがキツいんで、どうなのかなって。みんなキツいのかなっていう感じで、自分はちょっと残り1周の時点ではしんどかったです。(最終4コーナーで守澤太志にからまれたが)あそこだけはしのいだというか、脚どうのこうのじゃなしに体重を預ける感じで押し込んだ。(落車明けで)なんとか間に合ったっていう感じです」
 追い込み勝負になった岩本に乗った内藤秀久が、中のコースを踏んで最後に岩本を交わした。
 「岩本君はもうちょっと早く行けるタイミングはあったと思うんですけど、(最終)ホームで引いて新山君に行かれた時点でけっこう脚を使ってたみたい。だから最後、まくり追い込みというよりも、差しのような仕掛けの感じになっちゃいましたよね。だから自分もヤバイ、届かないと思ったんですけど、最後は川崎の走り慣れてるコースっていうのもあって、(3着に)届いて良かった」

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平原康多選手
平原康多選手
 松井宏佑を8番手に置いて、吉田拓矢が迷いなく風を切る。打鐘の4コーナーで松井が巻き返すが、和田健太郎は付け切れない。抜群のスピードで加速する松井が最終3コーナーで出切ると、吉田後位から切り替えた平原康多(写真)が直線で鋭く追い込んで1着。
 「松井が強かったです。(松井を)止められる位置じゃないっていうのがあったんで、あとは(吉田を)入れるべきか踏むべきか、すごく悩む場所でした。感じは悪くなかったんですけど、バンクコンディションは厳しかったと思います」
 諸橋愛が危なげなく流れ込んで2着。
 「(平原が)反応してくれたんで良かったです。僕自身はいいと思います。(風は)強い方が好きだし雨さえ降らなければ」
 結果的に関東勢後位から流れ込む形になった山田英明が3着に入った。
 「みんなのスタートがどうなるかわからなかったし、とりあえず出てから考えようと思ってました。平原君がどういうふうに走るか見てしまって、流れ込みみたいな感じになりました。風が強い中で位置取りもできたし、3着まで来れたんで、まあまあかなと思います」

<12R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 後方から上昇した山崎賢人を制して、5番手の深谷知広が出て赤板2コーナーから風を切る。8番手に戻った山崎が再び反撃に出るが、園田匠は付け切れない。山崎が1人で出切って、番手に飛び付いた深谷は詰める勢いで最終2コーナーからまくる。深谷のまくりに郡司浩平が続いて、鈴木裕と菅田壱道が重なる。郡司にとっては絶好の流れになったが、2センターから外を踏んだ清水裕友(写真)が、鮮やかに突き抜けた。
 「道中はずっと余裕はありましたけど、(最終)バックで(佐藤)慎太郎さんを入れる判断だったりとか、その辺が正しかったことなのかはわからないところもありますね。(最後は)アタマまで届くとは思わなかったです。相当、頭を使いながら練習したので、こうやってGIで結果が出たことはうれしい」
 深谷の余力を計りながら追い込んだ地元の郡司浩平が2着。
 「(深谷と鈴木の)3人で決まるようなレース運びができれば良かった。でも、最後は清水君がいい勢いで来ていたので、3人で決められるような感じではなかった。反省点はあります。(深谷との初連係は)楽しみな部分とドキドキする部分が両方あったんですけど、一走してみて伝わるものがあったので、明日(スタールビー賞)も信頼して付いていきたい」
 静岡所属としてはGIの初陣だった深谷知広は、上々の滑り出しで僅差も3着。2日目は「スタールビー賞」にコマを進めた。
 「どこから先行するかっていう考えだけだった。結果的に(山崎に)出られてしまいましたけど、前々に攻めた結果だと思います。感触は悪くないので、あとは脚の回転と自分のスピードにちょっとギャップがあるので、ペース配分っていうのがまだつかめてないです。そこを修正しながら、他のところにもしっかり目を光らせて頑張らないといけないですね」