『第37回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:2月23日

 取手競輪場を舞台に開催された第37回読売新聞社杯「全日本選抜競輪(GI)」は、2月23日に最終日が行われた。決勝は思いもよらない単調なレースになり、直線でインを強襲した古性優作が松浦悠士をとらえて優勝。昨年8月のオールスターに次いで2度目のGI制覇で優勝賞金3213万円(副賞含む)を獲得した。昨年末のグランプリ王者が22年最初のGIを制して、今年は平塚が舞台の「KEIRINグランプリ2022(GP)」の出場権を真っ先に手にした。

決勝戦 レース経過

 号砲で古性優作と松浦悠士が飛び出したが、大外枠ながら松浦が素早く誘導員の後ろを占めた。太田竜馬-松浦の中四国勢が前を固め、その後ろは古性-浅井康太の中近勢。5番手に新田祐大-佐藤慎太郎-成田和也の福島トリオとなり、単騎の深谷知広、平原康多は8、9番手。この並びのまましばらく静かな周回を重ねる。
 赤板前から徐々に誘導のペースが上がりはじめるが、まだ誰もアクションを起こさず一本棒のままで赤板を通過。2コーナーで正攻法の太田は誘導員と少しずつ車間を空けはじめて後続の仕掛けに備える。打鐘が入って誘導員が退避し、ややペースが緩んだが、それでもまだ後方からの動きはないまま。腹をくくった太田は2センターから猛ダッシュすると、一気にペースが上がり、最終ホームも相変わらず一本棒で通過。最終バックでようやく新田がスパート。新田が好スピードで前団に迫ると、2センターで太田の番手から松浦が番手まくり。松浦は新田を合わせたが、4コーナーで新田をけん制して少し外に振った一瞬の隙を古性は見逃さず松浦の内を突く。ゴール前は内に古性、中に松浦、外に新田で3車が横一線となったが、内から抜け出した古性が松浦を4分の3輪押さえて全日本選抜初Vを飾った。準Vが松浦で、新田は3着。


<2R>

森田優弥選手
森田優弥選手
 門田凌、堀内俊介の順で切って出たところを森田優弥(写真)が、すかさず仕掛ける。森田は打鐘の3コーナーで主導権を握って、リズム良く駆ける。反撃に出た門田を磯田旭が阻んで、森田と磯田のゴール勝負。森田が4分の1輪、磯田を振り切った。
 「作戦的にもすぐに行こうっていう感じでした。後ろの2人のおかげで逃げ切れました。(今シリーズは)初日がすべてだと。負けてしまって気持ちが沈んじゃって、気持ちがだいぶ弱っていた。でも、昨日(3日目)の眞杉(匠)と平原(康多)さんのレースを見てもう1回気持ちを入れられた」
 最終日だけの補充となった磯田旭だが、番手で冷静に別線との間合いを計りけん制。ライン決着で、逃げた森田を労う。
 「森田が強かった。森田が勝手に踏み上げていってくれたんで、助かりました。森田と門田が抜けていたんで、自分もゴール勝負できて良かったです。僕自身は(調子は)普通だと思う。森田の頑張りを評価してあげてください」

<4R>

阿部力也選手
阿部力也選手
 小原佑太は周回中に7番手にポジショニングして、赤板を迎えても動かない。2コーナー手前から踏み込んだ小原は、合わせる大石剣士をスピードの違いで叩いて北日本3車で出切る。後方の稲川翔は、最終ホーム手前で巻き返すが不発。大石のまくりも3番手までで、逃げる小原を阿部力也(写真)が差し切った。
 「正直、(小原が)ものすごいスピードでカマしたんで、しっかり付け切るので脚にきていました。自分はちょっと落車続きでイマイチ調子に乗り切れなかった。でも、練習も元に徐々に戻ってきた。(今回から)フレームを古性(優作)君が昔使ってたヤツを何年か前に借りていて、それを使いました。もうしばらく使ってみようかと。今日(最終日)は、ただただ小原君が強かった」
 小原佑太が持ち前のダッシュを生かした仕掛けで、北日本勢の上位独占。ナショナルチームで磨いたスピードが光った。
 「昨日(3日目)、(渡邉)一成さんと連係して失敗をして、長い距離をいってどのくらいもつのかを確認もしたかった。大石君があんまりダッシュがないのもわかってたので、一撃で決めてと思ってました。(乗っている)ポジションもうまくいってないところがあるので、そこを改善できればもっといいタイムで走れると思います」

<6R>

吉澤純平選手
吉澤純平選手
 伊藤颯馬の上昇に前受けの新山響平はサッと下げて、長島大介が中団に収まる。新山は赤板2コーナーから巻き返すが、伊藤も合わせてペースを上げる。突っ張る伊藤と新山の主導権争い。両者の叩き合いを長島が最終ホーム過ぎからまくる。前団の併走で外を回らされた長島だったが前団をのみ込み、吉澤純平(写真)が追い込んで1着。シリーズ2勝目を挙げて、吉澤が地元のGIを締めくくった。
 「セオリー通り新山君を後方に置いて、そこからはもう長島君に任せていました。結構、外々を踏んだけど、長島君があおりを乗り越えてくれた。それで自分が1着を取れました。(今回は)新車がぶっつけで自力を出した時は、まだ調整が必要だなと。いい面と悪い面がありますね。(久々のGIが地元で)そこまで気負いはなくて、普通開催と変わらない気持ちでした。自力だともっと力をつけないといけなし、もっと上積みをもてるように」
 栃茨ライン3番手の杉森輝大が、長島を交わして2着。
 「3番手で難しかった。前の動きを見ながらうまく脚がたまらなかった。連日、体がうまく動かなかった。調子を落としていて、上がり切らない感じでした。かなり悪い状態なので、次の大きいところがGIIのウィナーズカップなので、そこまでしっかりと上げていきたい」

<7R>

野原雅也選手
野原雅也選手
 前受けの黒沢征治が、原田研太朗を赤板過ぎに突っ張ってペースを握る。周回中から3番手にいた野原雅也(写真)がそのままキープして、黒沢の先行でレースは流れる。最終ホームを一本棒の隊列で通過して、原田は8番手で前が遠い。2コーナー手前から野原がまくって関東勢を仕留めた。
 「中団からがいいかなって思っていました。いろいろと考えていたんですけど、(黒沢が)突っ張ったので。ちょっとタイミングは取れていなかった。でも、坂井君が動く前にと思って仕掛けました。負け戦ですけどいいメンバーだったので。正直、勝てる自信はなかった。まだ課題はいっぱいありますし、メンタル面だったり組み立ての部分だったり、しっかりと考えながら頑張っていきたい」
 黒沢マークの坂井洋は、最終バック手前で切り替えるように前に踏んで稲垣裕之に踏み勝った。
 「誰も押さえにこなかったので(黒沢は)突っ張ってくれたんだと思います。野原さんはサラ脚の3番手でしたし、スピードが違いました。1センターから後ろはちらちら確認してたんですけど。番手での経験もあまりないですし難しかったですね。もう一歩早く出ていければ、良かったかもですね。(稲垣を)さばけるなら、さばいた方がいいのかなと」

<10R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 末木浩二が先行態勢。6番手の郡司浩平(写真)は、打鐘で車間を空けて間合いを取る。2センターから8番手の町田太我が仕掛けて、郡司も合わせるように出る。町田に出られた郡司は、最終1コーナーで番手に飛び付いて小倉竜二に踏み勝つ。町田後位を奪取して一呼吸置いた郡司は、4コーナーで外に持ち出して追い込んだ。
 「イメージ的には昨日の準決と同じ感じでした。後ろの町田君がどこから来るのか。その前に踏み込んでと。それで合わせられればでしたけど、出られたら無理にでもあったところでと思ってました。僕も踏み込んでたんで(中四国の2車を出させて)3番手っていう考えはなかった。小倉さんが強いけど、勝てればチャンスはあるだろうって。昨日に関しては力勝負をして負けているんで、また力をつけ直さないといけないなって感じました」
 郡司の俊敏な立ち回り対応した鈴木裕が2着に流れ込み、人気の2人で決着した。
 「危なかった。小倉さんと諸橋(愛)さんの真ん中だった。(郡司は)あそこの3番手を狙っていくと思って、小倉さんのところにいくとは。呆気にとられたけど、なんとか付いていました。(郡司の)ああいう動きに付いていけたのは収穫です」

<12R>

古性優作選手
古性優作選手
 決勝は予想外の単調なレースとなった。大外枠から松浦悠士が飛び出して、太田竜馬との中四国コンビが前受けとなり、3、4番手に中近勢、5番手以下を福島勢が占め、単騎の2人がそれぞれ8、9番手になって周回。レースはそのまま全く動かず、打鐘で誘導員が退避して押し出される格好で太田が主導権を握る。これで腹をくくった太田がペースを上げて先行態勢に入った。最終ホームでも隊列は変わらず、新田が仕掛けたのはバックから。さすがのスピードで上がってきた新田に合わせて3コーナーから松浦が前に踏み込む。迫る新田と松浦の踏み比べで直線に入り、新田と被って外に踏むコースがなかった古性優作(写真)が松浦が空けた最内のコースに飛び込む。松浦、新田、古性でほぼ横一線のゴールとなったが、古性が松浦をギリギリ交わしていてGPチャンプの面目を施した。
 「新田さんが太田君のどっちがスタートを取るか分からなかったですけど、太田君が取ったので新田さんんから動いてレースが回るかなって思ったんですけど、自分でも想定外の展開でって感じでしたね。本当に1センターぐらいで仕掛けてたら理想でしたけど、太田君の出脚が凄すぎて、ちょっと口空いた状態で脚がたまらなかったですね。あのカカリで新田さんがくると思わなかったので、強すぎてビックリしたのと、松浦さんは余裕あったのでどんだけ強いねんって思いました。本当にとっさの判断だったんですけど、あそこしかなかったかなって思います」
 太田のすんなり先行で絶好の勝機かとも思われた松浦悠士だったが意外と難しい判断を迫られるレースだったようだ。
 「動きがあると思ったんですけど何もなくて。(最終3コーナーで)外に選手もきていましたし、太田君も目イチで駆けてくれていたので、バックでタレてきていましたし出る形になってしまいましたね。2コーナーで詰める勢いで出ていっても後ろにサラ脚の古性君もいましたしやられていたかなって。難しかったですね。最後に一瞬空けてしまったところで行かれてしまいましたね。太田君は頑張ってくれたのに申し訳ないですね。でも2着ですけどグランプリは近づいたと思うので。悔しいですけどまた頑張ります」
 赤板でも、打鐘でも、最終ホームを迎えても中団でどっしり構えたままだった新田祐大。バックからの一撃に賭けたものの届かなかった。
 「深谷君の動きも気になったんですけど、太田君も強かったですし、2コーナー過ぎ、バックでいったんですけど、自分が思っているスピード域に達するまでに時間がかかってしまいましたね。そこからの伸びと松浦君が踏み込んだ感じと、ちょっと難しかったですね。ジャンでも少し迷いましたし、バックで仕掛けたところも迷いがありましたね。松浦君だけは交わせるかなって思ったんですけどね。古性君の伸びは凄かったので、自分の失速していく感じもありましたし」

次回のグレードレースは、「施設整備等協賛競輪 土佐水木賞」が2月26日~3月1日の日程で高知競輪場において開催されます。本開催は、全日本選抜競輪後でS級S班は不在であるものの、若手の自力選手がそろっています。
地元高知県からは、佐々木則幸、宗崎世連、田尾俊介の3名が出走予定。ベテランの神山雄一郎や四国の自力型島川将貴・佐々木豪の両名に朝倉智仁や菊池岳仁など力のある選手が多数参戦予定で大混戦の4日間となるでしょう。

2月15日時点の出場予定選手データを分析した、「施設整備等協賛競輪 土佐水木賞」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

プロスポーツ号外版(表)は"こちら"
プロスポーツ号外版(裏)は"こちら"