『第38回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:2月26日

 高知競輪場で開催された第38回読売新聞社杯「全日本選抜競輪(GI)」は、2月26日に最終日が行われた。今年最初のGIの決勝は、脇本雄太が先頭を務める近畿ラインが主導権。飛び付いた新田祐大を制して番手を守り切った古性優作が追い込んで優勝。昨年6月の高松宮記念杯以来、4度目GI制覇で優勝賞金3642万円(副賞含む)を獲得。全日本選抜を連覇して、「KEIRINグランプリ2023(GP)」の出場権を真っ先に手に入れた。

『決勝出場選手がバンクで意気込みを語る』
『決勝出場選手がバンクで意気込みを語る』

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると新田祐大が誘導員の後ろを占め、新田-守澤太志-成田和也の北日本勢が前を固める。単騎の浅井康太、吉澤純平-香川雄介の即席ラインの順で続いて中団。脇本雄太-古性優作-三谷竜生の近畿勢が後攻めとなった。初周で並びが整い、しばらく静かな周回を重ねる。
 赤板を迎えても誰も動かず、初手の態勢のままでジャンが入った。前とやや車間を空けていた脇本は2センターからスパート。これに気付いた新田も誘導員を交わして懸命に踏み込むが、4コーナーを立ち直ったところで脇本が先頭に躍り出た。新田は番手に飛びつけず3番手まで下がりかけたが、前輪が古性の後輪にかかっていて、脇本の番手まで盛り返した。脇本の後ろはイン新田、アウト古性で激しい取り合いとなったが、2コーナーを立ち直ったところで古性が競り勝つ。脇本-古性-三谷の近畿勢が主導権を握って最終バックを通過する。浅井がまくり上げるも脇本のかかりがいい。なかなか前団に迫れず、三谷の後ろあたりまでが精いっぱい。2センターで守澤が近畿勢の後ろにスイッチして最後の直線へ。ゴール前で脇本を楽に交わした古性が昨年に続き大会連覇を達成した。古性と三谷の間に進路を取り、鋭く伸びた守澤が2着に入り、3着は三谷。


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橋本優己選手
橋本優己選手
 打鐘過ぎに出た橋本優己(写真)が、北日本ラインを受けて4番手を確保する。菊池岳仁は一本棒の8番手に置かれて、高橋晋也の先行で最終周回。橋本が2コーナー手前からまくりを打つ。6番手の岩本俊介は、1センター過ぎから巻き返していた菊池にかぶって動けない。じわじわと前団に迫った橋本は、直線の入口で逃げる高橋をとらえて1着。
 「連日、前を取って失敗していたから、今日(最終日)は考えて後ろから攻めた。切ってから踏んで、高橋晋也さんを出させたので、これで菊池君が来るようならモガき合いになるんじゃないかと。失敗していたんで、なんとなくどれくらいのスピードで踏めばいいのかわかった。結果、(ラインで)ワンツーだったんで思ったよりも走れた。とにかく内に詰まらないように、先に仕掛けようと思ってた」
 地元の山中貴雄は、橋本とのタッグ。最終2センターで菊池を外に振って直線勝負に持ち込んだが4分の1輪及ばすの2着。
 「(橋本がまくって)ちょっと後ろから(別線が)来そうな感じもあったんで、その勢いを止めてからじゃないとって思ってました。そしたら(橋本が)強かった。初日にとくに声援がすごくて、それで逆にリラックスできた。4日間、状態は思っている以上に良かった。最終日は外を踏める展開になったし、(橋本を)抜きたかったですね」

<6R>

三谷将太選手
三谷将太選手
 菅田壱道が切った上を谷口遼平が押さえて出てペースを握る。7番手の根田空史を確認するように谷口が踏み込んで、根田は打鐘4コーナーから反撃に出る。根田が好スピードで迫るが、三谷将太(写真)のけん制で2コーナーでいっぱい。谷口が主導権をキープする。根田が後退して、3番手で高原仁志と和田真久留の併走。逃げる谷口の余力を確かめながら、落ち着いて追い込んだ三谷が1着。
 「(谷口が)強かった。初手の並びが最高でしたね。高原さんにも付いてもらって、ラインの力です。自分は(最終)バックからは余裕がありました。(前回の)奈良が終わって左鎖骨のプレートが曲がってたんで、そこの手術をしました。そのあと石垣島に行って距離乗りすぎて、(今シリーズは)シャキッとしなかったところもあります。でも、いい形で弟(竜生)につなげられました」
 連日積極的な走りが光っていた谷口遼平は、最終日も迷いなく風を切って出る。ラインでの上位独占をメイクして、自身も2着に粘り込んだ。
 「(先頭に立ったら根田が)いつ来ても突っ張ろうと思ってました。突風が吹いてるんですけど、1回我慢すれば流れる。(ラインの)3人で決まったっことがなによりです。GIで4日間、先行をしたのも初めてなんで、多少なりとも自信になりました」

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犬伏湧也選手
犬伏湧也選手
 打鐘から上昇を始めた犬伏湧也(写真)は、合わせて出た山田庸平を押さえて打鐘4コーナーで主導権を握る。徳島コンビに単騎の村田雅一が続いて、山田庸平は4番手。深谷知広が8番手の一本棒で最終ホームを通過する。徐々にペースを上げながら駆けた犬伏に別線は動けない。バックでも隊列は一本棒のままで、深谷は前が遠い。4番手の山田が外を追い込むが、犬伏が後続を完封して逃げ切った。
 「(周回中は)後ろ中団が欲しかったんで、そこが取れた。深谷さんが絶対にカマシかまくりに来ると思ってた。自分はしっかりと先頭に立って先行と。深谷さんを後方に置くのが一番、先行して残るかなと。作戦通りになったんで、(最終)ホームからバックにかけてすごくスピードを上げていくイメージで駆けました。それでまくりに来られないようにと。昨日(準決)の先行が、今日に生きたと思います」
 4番手を確保した山田庸平は、最終3コーナー過ぎから踏み込んで外を伸びるも2着まで。
 「(4番手に入って)余裕はあったんですけど、(犬伏に)追い風を使われてうまくかけられてしまった。自分の脚力もなかった。普通の400バンクなら(最終2コーナーで)仕掛けるんですけど、一番苦手なバンクなんで…。踏み出しが悪くて3番手の村田さんと合って、4コーナーを回って少し伸びました」

<10R>

松井宏佑選手
松井宏佑選手
 打鐘3コーナーで松井宏佑(写真)がじわりと先行に立って、神奈川勢に南修二が切り替える。前受けの松浦悠士は5番手に下げて、吉田拓矢は8番手。松井がペースで駆けるが、最終ホームを過ぎて吉田が仕掛ける。吉田のスピードも良く、バックでは逃げる松井に並びかける。が、松井は出させない。隊列が詰まったところをまくった松浦は一息。直線に入り、残る力を振り絞った松井が先頭でゴール。
 「1回切ってから考えようと思ってた。切ってから確認したら、吉田君が後ろで脚をためている感じだったので、自分が徐々に駆ければなんとかなるかなと。(吉田は)僕の横まで来ないかなと思ってたけど、(来たんで)脚が残ってたんで踏み直した。(シリーズの4走は)初日は悔いが残るけど、初日以外は自分の力を出し切れたかなと。次は地元のFI(平塚)があるし、ウィナーズカップまでに上積みをできるように」
 吉田に託した平原康多は、外のコースが塞がれて踏み場がない。内で我慢して直線では、神奈川勢の間を割って2着に伸びた。
 「中団を取りにいく選手が多かったし、自分たちにとっては難しい感じのメンバーだった。(吉田が仕掛けたあとは)自分がどうするかっていう前に、もう松浦が横にいた。それでまだ(吉田)拓矢もいたんで、かぶってコースもなかった。自転車を新しくして、準決からかなりセッティングが出てフィーリングが合った。それだけにかなり悔しい負けでした」

<11R>

岩津裕介選手
岩津裕介選手
 清水裕友、荒井崇博の順番で出る。荒井も踏み込むが、そこを郡司浩平が叩いて最終ホームから駆ける。荒井が3番手で立て直し、5番手の清水は2コーナー手前から素早くまくって出る。清水の加速が良く、逃げる郡司を清水がバックでとらえる。中国コンビが出切って、両者の直線勝負は岩津裕介(写真)がわずかに交わした。
 「荒井さんが積極的に動いて、荒井さんが強い分、郡司君も楽には出られなかったと思う。トップスピードもかなり上がっていましたし、(清水)裕友の得意な展開になりましたね。すごい強かった。夏場みたいなスピードでした。4コーナーの風が強いので、最後は裕友も売り切れている感じでしたけど。ゴール線は見えていたので、(2人で)決まったかなっていうのはありました。自分自身の調子もだいぶ上がってきました」
 先行の郡司がひと呼吸いれたくなるところで、清水裕友が俊敏な立ち回りからまくり一撃。人気のラインを沈めた。
 「(最終)ホームが向かい風で郡司さんも出切って一息ついたところで、すかさずいけたのが良かったですね。自転車の出もすごく良かったです。(前回の静岡から新車に乗り換えたが)今回は4日間を通して自転車(のセッティングは)いじらずって感じでした。せっかく調子がいいので決勝には乗りたかったですけど、また頑張ります」

<12R>

古性優作選手
古性優作選手
 別線も動きがないまま、脇本雄太が周回中と同じポジション、7番手で打鐘を通過する。新田祐大も当然ながら警戒するが、2センター付近から脇本が仕掛ける。脇本が先頭に立ち主導権。古性優作(写真)まで出切ったかに見えたが、新田が内から盛り返して併走になる。新田が外にもっていくが、古性がこらえて最終2コーナーで番手をキープする。3番手も三谷竜生が続く。単騎でまくった浅井康太は、三谷の横まではいけない。逃げる脇本を直線半ば交わした古性が優勝。全日本選抜連覇で、今年もグランプリ一番乗りを決めた。
 「(脇本の)後輪だけに集中していたけど、あんだけ長い距離をいくと思ってなくてビックリした。(番手で粘られて)新田さんも脚があるし、高知は外がキツいんで、なんとかっていう感じでした。(番手を守り切ったあとは)後ろからいっぱい来ていたのがわかった。できるだけ待って、最後は思い切り踏ませてもらいました。(全日本選抜の優勝がない)脇本さんはグランドスラムがかかっている大会だけど、僕にもチャンスをある走りをしてくれた」
 古性に踏み負けた新田が後退すると、守澤太志は最終3コーナーで三谷後位に切り替える。浅井が外にいてコースはなく、直線で古性と三谷の間を強襲した。
 「(脇本が)もうちょっと遅く来ると思ったんですけどね。新田君も気づくのが遅れていました。僕が三谷君をさばいていれば、結果は違ったのかなって思う。新田君も下がってきていていましたし、やっぱりその前にさばいておくべきでした。成田(和也)さんにチャンスがなくなってしまった」
 番手以上に困難にも思える脇本ライン3番手だが、踏み出しにも対応した三谷竜生が古性に続く。古性との直線勝負かに思われたが、守澤に弾かれて3着。
 「(脇本の3番手で)先踏みすると離れますよね。自分はもう古性君だけを見ていた。古性君が踏んだら踏もうと思っていました。結構、併走が長かったのでキツかったですけど、それでも耐えられたので良かったです。もう(古性と)ゴール勝負かなって思っていたんですけどね。守澤さんはもう来られないと思っていましたし、油断してしまいました。あの展開ならしっかり2着に入らないと」

次回のグレードレースは、大垣競輪場開設70周年記念「水都大垣杯」が3月4日~7日の日程で開催されます。
全日本選抜競輪から中5日の今シリーズだが、古性優作、平原康多、新山響平のSS班3名をはじめとして、吉田有希、犬伏湧也らの自力型が参戦し優勝争いを盛り上げます。
地元勢はエースの山口拳矢が記念初Vに邁進します。目が離せない4日間です。

2月23日時点の出場予定選手データを分析した、大垣競輪「水都大垣杯」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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