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レース展望

 今年最後のGⅠ・全日本選抜競輪が熊本競輪場で開催される。山崎芳仁が率いる北日本が優勢だが、地元・九州や関東も近況の勢いがよく、日本一直線が長いバンクでの優勝争いは、火の国・熊本にふさわしい熱き戦いとなるだろう。


北日本の優位は揺るがない!
平原康多が捲りでも強さを発揮してパワーアップ
 
 今年のGⅠとGIIのタイトルレースを振り返ってみると、前半戦は怪物・小嶋敬二と機動力豊富な北日本との対決が中心で、小嶋が落車の影響で長期欠場に入った後半戦は、機動力の面では北日本がほぼ独走状態だった。
 タイトルレースでの北日本の優勝は競輪祭とふるさとダービー函館の山崎芳仁、日本選手権の有坂直樹、東王座戦の佐藤友和だったが、常に北日本ラインが中心の位置にいてレースを作っていたことに異論はないだろう。
 
山崎芳仁 福島・88期
山崎芳仁 福島・88期
 大ギアはダッシュが悪い、踏んだり止めたり小技が効かないなどの常識をことごとく覆してきた山崎の脚力は驚異的で、今回も鉄壁の絆と強さを誇る北日本ラインを他地区の選手たちがいかに切り崩していくかが見どころになる。
 
平原康多 埼玉・87期
平原康多 埼玉・87期
 北日本にとって機動力の面で強敵となりそうなのが、平原康多や武田豊樹らの関東だ。
 平原は10月の京王閣記念決勝では打鐘からのスパートで後続を一列棒状にしてしまう力強い逃げを見せて後閑信一と埼京ワンツーを決めている。次場所のふるさとダービー松阪では優出を逃したが、勝ち上がりは連日の捲りで2着、2着と絶好調だった。
 これまでは徹底先行が持ち味で、それが唯一の武器だったが、捲りに回っても力を発揮できるうまさも身についてきて確実に成長してきている。
 
 武田豊樹は今年はまだGⅠでの優出がなく成績が安定しないが、山崎芳仁にも負けないパワーは健在で、調子も決して悪くはない。共同通信社杯の初日優秀では同期の山崎には負けたくないと壮絶なもがき合いを演じており、今回も武田と山崎の対戦があれば好勝負が期待できる。


昨年優勝の合志が地元で奮起!
同期の村上と稲垣のGII連覇で近畿が波に乗る
 
 地元・九州もここへきて急速に勢いをつけてきている。今年はまだ九州からタイトルレースの優勝者は出ていないが、機動力型では荒井崇博や井上昌己が好調で、地元開催のGⅠを迎える準備は万端だろう。
 
荒井崇博 佐賀・82期
荒井崇博 佐賀・82期
 荒井崇博は10月の防府記念、11月のふるさとダービー松阪と連続で失格しているが、調子は間違いなく良い。9月の青森記念は3連勝の勝ち上がりで決勝3着、共同通信社杯では優出こそ逃したが、初日優秀は山崎芳仁や武田豊樹を相手に捲って2着、2日目優秀は捲って1着と白星を重ねており、11月6日現在の勝率が4割2分で、勝率1位の小嶋敬二に次いで堂々の2位につけている。
 
 井上昌己は近況は先行回数が減って捲りに回るケースが増えているが、ダッシュの切れ味とスピードは相変わらず良く、10月の千葉記念決勝では5番手からの捲り追い込みで6月の別府以来の2度目の記念優勝を飾っている。
 
合志正臣 熊本・81期
合志正臣 熊本・81期
 熊本がホームバンクの合志正臣は近況は落車続きで調子がなかなか上がらないが、昨年の全日本選抜の覇者であり、荒井や井上と同乗ならば勝ち上がりのチャンスが大きく膨らむ。
  西川親幸も調子は悪くなく、千葉記念では決勝戦で落車してしまったが、初日特選は井上昌己の捲りを差して1着、準決勝Aは渡部哲男の捲りを差して1着と2勝しており、今回も地元バンクでベテランの味を見せつけてくれるだろう。
 
村上博幸 京都・86期
村上博幸 京都・86期
  共同通信社杯では村上博幸が初優勝、ふるさとダービー松阪では村上と同期・同県の稲垣裕之が初優勝を飾って近畿が盛り上がっている。
  村上博幸はGII連覇を目指したふるさとダービー松阪は準決勝で敗れたが、初日特選では巧みな位置取りから先捲りの佐藤友和のさらに上を捲って快勝しており、GII覇者としての成長ぶりを見せつけていた。今回も捲り一発が狙えるし、稲垣裕之や兄・義弘と連係があればGⅠ制覇も決して夢ではないだろう。
 
 稲垣裕之が同期・村上博幸のGII制覇に刺激を受け、次は自分の番だとの意気込みで臨んだふるさとダービー松阪で見事にGII初優勝を飾った。決勝戦は前日にバンクレコードタイ記録を出した渡邉一成と徹底先行で勝ち上がってきた小林大介が相手で決して楽な組み合わせではなかったが、前へ前へと積極的に動いていたのが功を奏してうまく中団が取れたのが一番の勝因だ。熊本は日本一直線の長い500バンクだが、先行もマイペースに持ち込むことができれば十分に粘れるので、稲垣のさらなる活躍が期待できる。
 
渡部哲男 愛媛・84期
渡部哲男 愛媛・84期
 四国の渡部哲男の一発も侮れない。渡部は落車の影響などで後半戦に入ってから調子を落としてしまい、共同通信社杯も二次予選で敗れて途中欠場しているが、10月末の千葉記念では連日の力強い先行と捲りで勝ち上がり、決勝戦も3着と健闘しており、ようやく本来の積極性とスピードが戻ってきている。


グランプリ出場を賭けた熾烈な賞金争い
渡邉晴智が5年ぶりの出場を目指して力走する
 
 今年最後のGⅠ・全日本選抜はグランプリ出場のラストチャンスだ。現在出場権を持っているのはGⅠ優勝者の山崎芳仁、有坂直樹、小嶋敬二、飯嶋則之の4人。獲得賞金額で伏見俊昭もほぼ当確なので、残るは全日本選抜の優勝者と賞金上位の3人だ。
 11月6日現在の賞金順位では、6位の佐藤友和、7位の兵藤一也、8位の渡邉晴智の3人が当確圏内だが、全日本選抜の結果次第では9位の手島慶介や12位の武田豊樹の逆転出場もありうる。しかも6位の佐藤から8位の渡邉までは百万円の差しかないので、賞金争いは熾烈だ。
 
兵藤一也 群馬・82期
兵藤一也 群馬・82期
 佐藤友和は10月の京王閣記念で落車、その影響か次場所のふるさとダービー松阪は二次予選敗退と本調子を欠いていたが、全日本選抜までにどこまで立て直してくるかが見どころになる。
 兵藤一也は今年のGⅠでの優出は日本選手権のみだが、記念では安定した成績を維持しており、10月の防府記念は決勝3着、千葉記念は決勝4着と調子も悪くない。
 
渡邉晴智 静岡・73期
渡邉晴智 静岡・73期
 渡邉晴智もGⅠの優出は日本選手権のみだが、ふるさとダービー松阪では4日間勝ち星こそなかったが、きっちりと優出を果たしており調子は良い。南関東は新田康仁、五十嵐力、海老根恵太らの自力型も近況好調で、彼らを目標にグランプリ出場を目指しての渡邉の力走が期待できる。


 獲得賞金(11月7日現在)
1位
山崎芳仁
114,569,000円
 
11位
岡部芳幸
52,535,800円
2位
有坂直樹
104,555,400円
12位
武田豊樹
52,381,000円
3位
小嶋敬二
104,213,000円
13位
濱口高彰
50,834,700円
4位
伏見俊昭
82,546,999円
14位
村上博幸
50,788,800円
5位
飯嶋則之
78,690,000円
15位
新田康仁
50,572,800円
6位
佐藤友和
62,465,600円
16位
荒井崇博
49,013,200円
7位
兵藤一也
62,356,000円
17位
稲村成浩
47,277,500円
8位
渡邉晴智
61,418,000円
18位
小野俊之
47,235,000円
9位
手島慶介
54,976,000円
19位
渡部哲男
46,603,111円
10位
山田裕仁
53,407,000円
20位
後閑信一
45,603,000円

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加藤慎平が小嶋敬二の先行を利し80期台初のGⅠ優勝
 すっかりグランプリの最後の椅子を争う開催として定着してきた全日本選抜。岸和田競輪場で行われた05年の21回大会は中部勢が4名優出し、決勝は小嶋敬二、金子貴志が別線勝負となった。レースは誘導以下、小嶋-加藤慎平-前田拓也、金子-山口幸二-合志正臣、海老根恵太-村本大輔-小橋正義で周回を重ねていく。
 レースが動いたのは赤板ホーム前から。まず海老根が上昇を開始し先頭に立つも、引いて4番手の小嶋が打鐘前から巻き返してスパートし、主導権を奪う。
 小嶋の先行で、最終ホーム前では金子が4番手、海老根は7番手となり、海老根3番手の小橋は金子ラインへと切り換える。
 最終3コーナーから金子、海老根がともに捲って出るも、小嶋の番手から加藤が抜け出し優勝。金子マークから山口が2着、海老根が3着。加藤のGⅠ優勝は80期台初の快挙となった。




直線は長いが、先行でも勝負できる
展開不問の、力のある選手同士の決着も多い
 500バンクの熊本は日本一長い直線を持つことで知られている。そのあまりの長さのために「滑走路」と呼ばれており、先行不利、番手より3番手有利というのが常識とされている。最終4角を回ってからの直線勝負では、展開に関係なく、力のある選手同士の決着になりやすいと言われている。
 しかし、実際のところは、必ずしも先行不利とは言い切れない。02年に開催されたオールスターの結果を見てみると、全66レースのうち1着の決まり手は逃げが13回、捲りが10回、差しが43回、2着は逃げが10回、捲りが8回、差しが20回、マークが28回となっており、約3分の1のレースで逃げた選手が連絡みを果たしている。
 逃げも捲りも早めの仕掛けでは後ろから交わされるので、結局は自力型の仕掛けが総じて遅くなってしまい、逃げは自分のペースに持ち込んで粘り込めるケースが多くなる。
 GⅠやGIIのグレードレースの決まり手で捲りよりも逃げの回数のほうが多いというのは非常に珍しく、先行の仕掛けは早くても最終ホームぐらいからになるので、力のある選手なら十分に先行で勝負できる。


昨年の全日本選抜決勝ゴール(2)合志正臣がGⅠ初Vを飾る



69.5mの全国で最も長い直線
 周長は500m、最大カントは29度44分42秒、見なし直線距離は69.5m。全国の競輪場で最も直線が長い。捲りは2角手前から仕掛けるか、捲り追い込みの感じで中団から遅めに仕掛けるのがいい。追い込みは直線で4番手の位置があれば頭に突き抜けることができる。どんな戦法でも、とにかく仕掛けのタイミングが難しいバンクといえる。

熊本バンク



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