『第28回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:2月11日
 今年最初のG1、第28回 全日本選抜競輪はいよいよ最終日を迎えた。決勝戦は豪華メンバーが激突。そして戦前の予想どおり、激しいレースとなった。その激戦を制したのは平原康多。昨年はケガに苦しんだが、今年はスタートダッシュに成功。GP出場一番乗りを決めた。
決勝戦 レース経過
 号砲で成田和也が大外から勢い良く飛び出し、目標の鈴木謙太郎を迎え入れる。隊列は鈴木―成田の福島コンビが前団、中団は藤木裕―村上義弘の京都コンビ、武田豊樹―平原康多、単騎の海老根恵太が続き、深谷知広―神山雄一郎が後攻めの形で落ち着く。
 赤板前の4コーナーから深谷が上昇を開始。これを追った武田が打鐘前に仕掛けて先行態勢に入る。単騎の海老根恵太が3番手に続き、その後ろは深谷と藤木で併走。後方まで車を下げた鈴木は2センターから一気の巻き返して前団に襲いかかる。1コーナーで武田を捕らえて先頭に踊り出るが、成田は平原にさばかれて後退。武田が鈴木の番手にはまる。2コーナーで内に降りた成田と藤木が接触して、藤木が落車。神山もこれに乗り上げて落車する。懸命に逃げる鈴木を武田、平原の順で追って、海老根がその後ろを確保。最終4コーナーで3番手から中を割った平原が激しい直線の攻防を制して3年ぶり4度目のG1制覇を果たした。後方6番手で態勢を立て直した深谷がまくり追い込みで2着に強襲。単騎の海老根が武田を交わして3着に食い込んだ。


ゴール
ゴール
ファンとハイタッチ
ファンとハイタッチ
表彰式
表彰式
<1R>
吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 小埜正義が主導権を握って吉田敏洋(写真)は、小川勇介と5番手を併走。中団勝負の腹を固めた吉田は打鐘の4コーナーで小川を弾いて好位を奪取して、まくりで逃げる小埜を沈めた。
 「昨日のこともあるし、同じ失敗はできないと。ズルズル引いていくより、もうここで勝負するしかないって。(小川をどかして)単独になったところであとは、タイミングを取ってどこから行くかだった。ただ、自分の思っている自転車の出がなかった」
 中部ワンツーで山口富生は、吉田に流れ込みの2着。
 「(吉田は)引くのかどうするのかと思って。小川君が前まで出ていってくれれば、その上を行けばよかったけど。でも、もうあの位置を取ってくれれば。(吉田が)まくりになったんで、自分は全然差せなかった」

<2R>
鈴木裕選手
鈴木裕選手
 レースの主導権を握ったのは鈴木裕(写真)。荒井崇博の反撃を合わせ切ると、そのまま力強く押し切った。
 「やっぱり気持ちですね。気持ちが弱いから、人任せのレースになって後手後手に回ってた。それがよくなかったので、また原点に戻って戦った。今日はほんとに気持ちですね」
 続いた栗田雅也が2着。
 「キック(鈴木)が全部やってくれた。僕は付いてただけです。今回は復帰戦で自分で動いたのは2日目だけだったけど、まだ全然ダメ。3月もあっせんが止まるし、徐々になんて言ってられない。ここからは休まず目一杯やりますよ」

<3R>
稲川翔選手
稲川翔選手
 単騎の稲川翔(写真)は4番手を確保すると、最終ホームを過ぎて早めのまくりを敢行。番手発進の濱田浩司に合わされかけたが、小川圭二をキメながら濱田の内をすくってインまくりで抜け出した。
 「単騎の時の方が、(早めに)仕掛けないとって思ってました。かぶってしまって後悔することが多いんで。その後は飯野(祐太)君が来たら、濱田さんは出て行くと思ったんで、ああなった。これがG1では初勝利になるし、これを機にもっと上のレースで走れるようになれれば」
 稲川と濱田の動きを見ながら、最終4コーナーから自転車を外に持ち出した山田裕仁が追い込み2着。
 「前回の静岡記念の落車で自転車もつぶれてしまったし。体の方もまだまだよくないのはわかっていた。その中で今回は着的にはそれなりでしたね。今日はただあの位置でついていっただけです」

<4R>
佐々木則幸選手
佐々木則幸選手
 同期を連れて三宅達也が男気を見せた。上原龍ら別線を出させず主導権を握ると、番手の佐々木則幸(写真)が気持ちに応え1着をゲットした。
 「いい同期を持ちました。達っちゃんは斬って上原君を受けるのかと思ったけど、フタをしたので先行するんだなと。気持ちが嬉しかったです。初日、2日目と悪かったし、流れを変える意味でもこの1着は大きいですね」
 坂本亮馬との連結が外れた菅原晃だが、最後は外を伸びて2着に。
 「最後は亮馬の内でしたね。亮馬はツケマイでまくるイメージだったので。人の後ろは勉強ですね」

<5R>
川村晃司選手
川村晃司選手
 牛山貴広を押さえて川村晃司が主導権を握って出ると、牛山は川村後位で粘って東口善朋と併走。最終ホーム過ぎには巻き返した阿竹智史と3車併走になるシーンもあったが、番手は東口が死守。逃げ切りの川村に流れ込んだ。
 「あそこは守らなきゃいけないんで。(競り勝ってからは)自分の中では2つのラインが残ってるし、まくりを止めなきゃっていう気持ちに切り替えられた。自分の役割はできたと思う」
 快調に飛ばした川村晃司(写真)が、後続のもつれをしり目に逃げ切り。
 「自分は後ろがどうなっているのかはわからなかった。結果、東口君とラインで決まってよかった。今日も行けるところからと思っていたし、展開がよかったと思います。前回の四日市記念からここまで中3日で調整して、備えたつもりだったけど…、あんまり感じの方はよくなかった。」

<6R>
志智俊夫選手
志智俊夫選手
 レースは脇本雄太が先行。そこに新田康仁が襲い掛かって壮絶なモガキ合いに。そこを中川誠一郎がまくり上げると、合わせて志智俊夫(写真)が踏み込んだ。
 「今回は前の頑張りですね。準決勝にも乗れたし、これからに生かすというか。今回で展開が向けば何とかなるかなという感じは持てた。あとは脚を落とさないように、この状態を維持していきたい」
 新田康仁は壮絶なレース、そして今シリーズをこう振り返る。
 「今日は矢口(啓一郎)が中団にこだわっていたし、降りられない感じだったので、内容重視に切り替えました。脇本君を叩き切ったし、周りに与えたインパクトは強かったでしょう。静岡、四日市、松山と連戦で疲れました。来月の大宮まであっせんがしばらく空くのでゆっくりして、立川ダービーに備えたい。立川には今のフレームじゃなく、新しいエースフレームが届く予定なので、もっと楽しみです」

<7R>
桐山敬太郎選手
桐山敬太郎選手
 渡邉一成が先行態勢に入るが、打鐘前の2コーナーから田中晴基が猛然と反撃。渡邉を叩いて、シリーズ4度目の主導権。
 「今日はタイミングが悪かった。もっと早く仕掛けたかったけど。前で柏野(智典)さんにけん制されて…。それで行きづらくなってしまった。それでも出切らないと、意味がないんで」
 稲垣裕之に合わせて桐山敬太郎(写真)が、最終バック手前から番手まくりを打って林雄一と上位を独占。
 「もう(田中)晴基が強かった。後ろで気持ちも感じられたし、頑張ってくれた。できれば残したかったけど、稲垣さんも昨日のことがあるし、修正してくるだろうと。直線で来られてしまったんで、踏ませてもらった」
 桐山に流れ込んだ林雄一も、汗をぬぐいながら田中を絶賛する。
 「前を見たらこれは絶対に行けないと思った。それを田中君は行ってしまうんだから、本当に強いですよ」

<8R>
神山拓弥選手
神山拓弥選手
 後ろ攻めから先行態勢に入った新田祐大の番手で神山拓弥(写真)がイン粘り。中村浩士をさばいて、番手を確保すると最後は内から抜け出した。
 「後ろも競りだったし、引いて浅井(康太)さんと併走になるくらいならと思って粘りました。でも浅井さんのまくりに反応が遅れた。スピードが違ったけど、新田さんが自分で持って行って内が空いたのでそこを行きました。今回は調子が悪くなかったので、2日目がもったいなかったです。そこが課題ですね」
 新田祐大はシリーズをとおして積極的だった。
 「今回は4日間通して最終バックを取れたし、良い着も残せた。内容や収穫はありました。この後はベラルーシで行われる世界選手権に参加。日本に戻ってから3月初めの京王閣F1が良い自力型のそろったシリーズなので、その開催で手応えをつかんで、ダービーに向かいたいですね」

<9R>
長塚智広選手
長塚智広選手
 打鐘過ぎの3コーナーからは先頭の菊地圭尚、3番手の長塚智広も踏んで、小嶋敬二にとっては厳しい流れ。
 「踏まされた…」と、最終ホームで菊地を叩いた小嶋は、息を切らせながら、こう続ける。
 「長塚君だったら、自分を出させてくれるとは思ったけど。(菊地)圭尚君じゃ、どうなんだろうって。疲れましたね。バックは取れたけど、4日間1着がなかったんで」
 小嶋マークの小野俊之は小嶋を交わしたものの、さらに長塚に追い込まれて2着がいっぱい。
 「小嶋さん、長塚君が強かった。後ろには誰がいるかわからなかったけど、長塚君がいるだろうなって。自分はそこまでの余裕がなかった」
 菊地との踏み合いに勝った長塚智広(写真)が、3番手をキープして鮮やかな直線一気。
 「(3番手の)いい位置からですね。それが勝因です」と、端的に振り返った。

<10R>
佐藤友和選手
佐藤友和選手
 木暮安由が主導権を握る。井上昌己のまくりに合わせて芦澤大輔が番手から踏み込むが、佐藤友和(写真)が7番手から大外を一気に駆け抜けた。
 「早めに行くと(芦澤のブロックが)危険だなと思って、ちょっと待ってからにした。昌己さんが行ってくれなければキツかったですね。今回は内容としては悪くなかったので、あとは結果ですね」
 芦澤大輔は木暮の気持ちに応えられず悔しがる。
 「もうちょっとでしたね。木暮君のおかげです。今回は自力も追い込みも出せたし、思った以上によかった。楽しかったです」

<11R>
武田豊樹選手
武田豊樹選手
深谷知広選手
深谷知広選手
 今年最初のG1を制したのは平原康多。立役者となった武田豊樹(写真)は素直に勝者を称えた。
 「平原に任せてもらったし、彼が(松山)オールスターで前で頑張ってくれたことを思い出しながら走りました。打鐘辺りは僕もいいスピードで踏んでたし、頑張れたと思う。自分も何とか2着と思ったけど、もう1回脚を作り直して頑張りますよ。平原は去年ケガで苦しんだし、今年一番最初にGPを決められてよかったと思う。嬉しいですね」
 2コーナーで藤木裕、神山雄一郎が落車。これを何とか避けた深谷知広(写真)は2センターからまくり上げたがわずかに届かず2着。完全優勝はならなかった。
 「このメンバーで作戦を立ててもムリだと思ったので、流れで判断しようと思ってた。落車を避けた勢いで出て行けばね。ちょっと前が遠かったです。あの展開をモノにしないとダメですね。でも落車を察知できたので、そこは収穫です」
 道中関東ライン3番手を回った海老根恵太が3着に食い込んだ。
 「一番力があるかなと思って、武田さんのラインから組み立てました。(鈴木のカマシが)すごいスピードでした。(成田の内を)(成田とからまず)しゃくれればよかったけど、そこで脚を使っちゃった。とっさの判断がないです」
 鈴木謙太郎は2年ぶりのG1決勝という舞台で大いに見せ場を作った。
 「後ろ攻めから1回押さえるより、前からのほうが動きやすいと思った。もったいなかったですね。でも、あそこ(ホーム過ぎ)の武田さんとの踏み合いは楽しかったです。手応えはあったんで、また次から頑張れると思います」
 落車を避けて深谷の後ろに入る形になった村上義弘。深谷に続いて前団に迫ったが、5着に入るのが精一杯だった。
 「(落車した)藤木が横に飛んだから、大きく避ける展開になった。あんだけダッシュしてバック入れたら一杯です。(藤木は)前に前に踏もうとした結果なので、今回は落車したけど必ず結果につながると思う。また京都勢は出直しです」
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