『第30回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:2月15日
 静岡競輪場を舞台に開催された第30回読売新聞社杯「全日本選抜競輪(G1)」は、15日に最終日を終え今年最初のG1シリーズの幕を下ろした。グランプリを制して昨年の最優秀選手賞に輝いた武田豊樹らSS班3人をはじめ、激戦を勝ち抜いたベストナインによって行われた決勝は熾烈を極めた。レースの主導権を握った関東勢に次から次へとまくりが襲い掛かり、最後に8番手からまくり追い込んだ山崎芳仁が優勝。12年9月のオールスター以来、9度目のG1制覇を遂げた。
中村アン トークショー
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はんにゃも挑戦 スピードコンテスト
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トータルテンボス&はんにゃ お笑いライブ
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意気込みを語る選手
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大勢のファンが詰めかける静岡競輪
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決勝戦 レース経過
 号砲で最内の武田豊樹が飛び出すと、平原康多を迎え入れ関東トリオが前受けに。平原―武田―岡田征陽―稲垣裕之―大塚健一郎―浅井康太―山崎芳仁―菊地圭尚―桐山敬太郎の並びで周回を重ねる。  赤板前の4コーナーから山崎がレースを動かす。誘導との車間を切っていた平原の前に入ると、そこを単騎の桐山が斬る。桐山後位で山崎にフタをした稲垣は打鐘で叩いた平原の動きに合わせて中団を確保。引けないと判断した桐山は稲垣の番手で粘る。後続の仕掛けに備えて1コーナー過ぎから武田が車間を切ると、そこをすかさず1センターから稲垣が巻き返し。番手は大塚が死守すると、その後ろから浅井もまくって出る。番手から出た武田は何とか稲垣を合わせたが、その外を浅井が伸びて武田を逆転する。バック8番手の山崎だったが、前は団子状態。3コーナーから大外を踏み込むと、前を行く浅井をとらえて今年のG1開幕戦を制す。山崎の内にコースを選んだ菊地も伸びはよかったが、わずかに山崎には及ばなかった。


<1R>
友定祐己選手
友定祐己選手
 若い機動型3人による主導権取りの行方は、思いのほかすんなり。郡司浩平を押さえてペースを上げた原田研太朗が先行策。最終ホームから巻き返した山田久徳を友定祐己(写真)がけん制して阻むとあとは原田ライン3車の勝負。番手の友定がチャンスをモノにして区切りの300勝を達成した。
 「いままでほとんど原田君を抜いたことがなかった。今日もたぶんまた抜けないんじゃないかってね。走る前はそう思ってましたよ。でも珍しく原田(研太朗)君が最終バックくらいでタレてきたんで。200勝を達成する時はあと1勝するまでに時間がかかったから、ひと場所で決められてよかった」
 浦川尊明の中割りをこらえて、逃げた原田研太朗が2着に粘って中四国ワンツー。
 「郡司君が早めに押さえてきたから、中団取りだろうと。自分を出させてくれると思って踏みました。山田さんの動きも見えていたし、冷静に踏めた。でもやっぱり風が強くて最後はタレてしまった感じですね」

<2R>
三谷将太選手
三谷将太選手
 打鐘で先頭に立った後閑信一が後続の動きを確認しながら、最終ホーム手前では先行の腹を固めて風を切る。赤板で阿竹智史を押さえたかに見えた高久保雄介だったが、阿竹に再度インから盛り返されて中団併走。苦しい展開に陥ったがまくりで後閑をとらえ、番手の三谷将太(写真)が直線で抜け出した。
 「高久保はちゃんと(阿竹を)押さえなきゃダメですね。高久保は初日も昨日もレースができてない。いいレースができたのは志智(俊夫)さんと一緒の2日目だけでしょ。先行屋としての経験がまだまだ。いままでは逃がされていただけですからね」
 3着で今シリーズ初めて確定板に入った高久保雄介だが、肩を落として引き揚げて来て口をついて出るのは反省ばかり。
 「情けない4日間でした。こんなレースしていたら、この先、上にはいけない。近畿で認められる先行屋になるにはまだまだ遠い。へこみますわ…。ラインの人が1着取れたのは良かったけど、僕の内容はいいものじゃない。わかってはいるけど、気持ちの甘さが出ている」

<3R>
吉本卓仁選手
吉本卓仁選手
 号砲が鳴ると小倉竜二が飛び出し、ライン充実の吉本卓仁(写真)は前受けからの組み立て。いったんは吉本に突っ張られた伏見俊昭だが、打鐘で切ってイン待ちの態勢に。海老根恵太は動けず、吉本卓仁が3番手から一気にスパート。2日目に差された坂本亮馬を今度は振り切って逃げ切り勝ち。
 「実質先行一車みたいなメンバーだったし、小倉さんのこともあって前受けの作戦でした。(坂本に)差されたと思ったけど意外に最後まで踏めましたね。F1でも逃げないのに(2日目から)3日間先行することなんてまずない。でもこういうところで逃げて結果が出せたのは自信になりますね。次につなげたい」
 前団を一気に飲み込むかに思われた海老根恵太のまくりだったが、坂本のヨコまで。最終2センターで力尽きた。
 「3日目からギアを47×12から51×13に換えた。そしたら踏み出しは軽くなったけど、伸びが足りない感じですね。力不足もあるけどギア選択は難しいですね」

<4R>
根田空史選手
根田空史選手
 後ろ攻めの根田空史(写真)が赤板から動いて先頭に立ち、そのままペースに持ち込んで主導権を握る。番手で競り合った池田良が最終ホームで落車すると、松坂英司も脚がいっぱいになりちぎれていく。根田は後ろを引き離していくと、最後は後方からの反撃を凌いでシリーズを2勝で締めくくった。
 「(1レースで)師匠(中村浩士)が失格してしまったんで、そのぶんもと思ってました。ホームで落車があったし、そのあとも後ろが離れている雰囲気がしたのでペースだと思って。なんとか逃げ切れてよかったですね。今日みたいなレースを2日目、3日目にやればよかったですね。今日は前が51枚の(3.)92のギアを使って感触が良かったし、今日が一番楽でした」
 松岡貴久のまくりに乗り、池田憲昭が追い込んで2着。
 「危なかったけど、松岡君が立て直して良いスピードで行ってくれたおかげ」
 その松岡貴久は目の前の落車を間一髪避け、最後は根田に詰め寄ったが惜しくも3着。
 「ちょうどカマそうとした瞬間に落車があったんで危なかったけど、なんとか立て直して、タイミングを取っていきました。最後は脚がいっぱいでした」

<5R>
山田英明選手
山田英明選手
 山田英明(写真)が、力ずくで1勝をもぎ取った。中村一将がすんなり先行態勢に入ると思われたが、中村がゆるめた一瞬の隙を逃さず山田は最終ホームから一気のスパート。東口善朋のブロックにも耐えて最後までしぶとく踏んで1着。ロングまくりの山田は肩で息をしながら検車場に引き揚げて来た。
 「今シリーズは全然アピールできていなかったので。最後こそはと思ってゆるんだところをいけたのが勝因ですね。まだまだ今のギアに不安があって気持ちに余裕がない。もう少しセッティングに当たりが出れば、初日から自信を持って仕掛けられたと思う。来月のダービーへ向けて、試行錯誤しながらもっといい状態で戦えるように練習してきます」 
 逃げて2着に粘り込んだ中村一将が、存在感を示した。
 「ギアに関してはまだなんとも言えないけど、(自分の)型にはまればってところですかね。ラインがしっかりしていれば逃げたほうが、今のギアはいい結果が出そうです」

<6R>
牛山貴広選手
牛山貴広選手
 赤板過ぎに出た小松崎大地が先行態勢を取ると3番手に牛山貴広(写真)、5番手に松川高大とすんなり隊列は決まって、川村晃司が後方まで下げる。小松崎のペースで運ぶかに思われたが、打鐘の4コーナーから松川がカマシ気味に叩きに出て両者の踏み合い。牛山は後方から巻き返した川村をけん制しながら、合わせてまくって芦澤大輔とワンツー。
 「みんなが踏み合っているところだったし、そこを自分だけ脚を使ってなかった。あのままの隊列なら先まくりを考えていたけど、(松川が)早くきましたね。川村さんに行かれる前に出て行けたのが良かった。内容とかのこともあるけど、(芦澤と)今回は、2回ワンツーだったのが一番うれしい」
 牛山同様に芦澤大輔も茨城ワンツーに顔がほころぶ。そして盟友、牛山の動きを絶賛する。
 「牛山さんの判断が良かった。自分は牛山さんの反応が良すぎて、終始遅れ気味だった。僕はもう牛山さんが納得するレースをしてくれればと思っていたんで。今年に入って(牛山と)相性がいいですね」

<7R>
新田祐大選手
新田祐大選手
 新田祐大(写真)が豪快なまくりで、シリーズ3勝目を挙げた。竹内雄作の先行。打鐘の4コーナーで7番手から1車上げて連結を外した山内卓也の前に入った新田は、最終ホームから始動。別線をねじ伏せた。
 「竹内君の動きは予定通り。池田(勇人)君が突っ張るのか、飛び付くのかを見ながら冷静に回していました。中部のラインは番手まくりもあると思ったんで、早めに仕掛けようと思っていました。後ろの状況はわからなかったし、ラインでは決まらなかったけど。いい感じに、自分の持ち味を生かせるまくりを打てたと思います」
 新田マークの飯野が菅原晃のけん制で外に振られると、岩津裕介がインから俊敏な立ち回りで新田後位を追走して2着。
 「北日本が後ろ攻めだったから、まずはそこからと思っていた。飯野君は付いていけないかなって想定していたので、うまく対処できたと思う。グランプリで落車してから、ずっと競走続きでまとまった練習ができていないから感覚だけで走っている感じですね。この後は地元記念にダービーと続くから、しっかりと乗り込んでシリーズを通して戦える体力をつけたい」

<8R>
石井秀治選手
石井秀治選手
 稲毛健太が先に斬ったところを、後ろ攻めの早坂秀悟が打鐘で押さえて主導権を握る。早坂が軽快に逃げるなか、稲毛健太が中団から先まくりを放ったが車はいまひとつ伸びない。すると、その上を石井秀治(写真)がスピード良く、力でねじ伏せ快勝。好メンバーを相手に勝利し、うれしさのあまりガッツポーズが飛び出した。
 「今日は深谷(知広)君が受けて立ってくれたので。今回は前検日から体調が良くなかったけど、日に日に良くなってきたので最終日に勝ててよかった。千葉競輪場がこんな状況(廃止予定)なので、なんとかして頑張ってアピールしたかった」
 林雄一は完璧マークを決め、手堅く2着を確保した。
 「石井君のスピードが良かったし、最後もタレないね。強かったし、ガッツポーズもすごかった(笑)。僕ももう少し差し込めれば。その辺がまだまだ課題ですね」

<9R>
中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 吉田敏洋のカマシに離れ気味の志智俊夫が最終1コーナーでさばかれて、天田裕輝が番手から吉田を追いかける。中川誠一郎(写真)にとっては苦しい展開だったが、いざ踏み出せばそれも杞憂に。次元の違いで2着の天田を6車身ちぎった。
 「今日は風もそこまで強くなくて、(バンク)コンディションが良かったから。脚を使って後ろになっても、まくれる自信はあった。でも天田君が番手に入ったのがわったんで、早めにタイミングを取っていこうと思った。(外に浮いていた)佐々木(則幸)さんの内を判断良く踏めた。準決もあれができていれば、決勝に乗れていたと思う。その反省を生かせました」
 踏み出しで遅れながらも合志正臣は、踏ん張って何とか3着は死守。中川の急成長を肌で感じる。
 「(中川は)佐々木君のところは待ってから外を踏むと思ったけど、終わって話を聞いたら外では間に合わないと思って内に行ったみたいですね。もちろん前から強かったけど、レースの中でその辺の判断みたいなものが前よりも良くなっていますね。自分は(中川の動きを)読み違えたのもあるけど、内をすくってから昇って仕掛けられるのはきつかった。その辺の対応力がまだまだです」

<10R>
村上義弘選手
村上義弘選手
 2コーナーからの山降ろしで三谷竜生が、打鐘を目がけて勢い良く飛び出す。村上義弘(写真)を連れて、迷いなき主導権取りで三谷が吹かす。追い上げた神山拓弥は最終ホーム手前で井上昌己をキメて3番手を奪取。三谷との車間を空けた村上は、野田源一のまくりに合わせて番手発進。続いた関東勢の追撃を振り切り、最終日にしてシリーズ初白星を挙げた。
 「三谷君とはこれまでなかなか連係が決まってなかったんですけど、任せていました。あとはどうなっても展開の中で対応していくだけだと思った。今回は自分が思っていた以上に良くなかった。気持ちは入っていたと思うけど、なかなかかみ合っていかなかった。ひとまずは戦える状態に戻すことですね」
 村上に続いた神山拓弥は、「あの位置を取り切っていっぱいでした」と、流れ込みの2着。
 「今日も冷静に走ることができたと思う。今回は人の後ろを回ったり、自力だったりしたけど。やれることができている。欲を言えば、1着を1回は取りたかった」
 中割りを目論んでいた諸橋愛だったが、コースが塞がれて3着流れ込み。
 「三谷君の動きでコースがなくて。あれがなかったら、内に行って勝負できたと思う。調子は悪くなかったんで、なにかしたかった」

<11R>
浅井康太選手
浅井康太選手
菊地圭尚選手
菊地圭尚選手
 3車の関東勢が出切った打鐘の2センターで武田豊樹に絶好の展開が巡って来たが、最初にまくった稲垣裕之の対処に負われて4着がいっぱい。その上を単騎の浅井康太がまくって、さらに8番手からまくり追い込んだ山崎芳仁が大外を突き抜けて優勝。山崎マークの菊地圭尚(写真)は半車輪及ばずの準V。
 「これが今の自分の限界。最後、みんなを見ながらのレースだったし、周りもうまいからなかなかコースがなくて。迷ってしまった。どっちに斬り込んでいくか最初の判断が難しかった。でも最後は腹をくくって踏めた。山崎さんがすごかったし、ワンツーが決まったんでよかった」
 単騎の浅井康太(写真)は武田、稲垣のつばぜり合いのさらに外をまくって惜敗3着。納得の顔で振り返る。
 「武田さんの番手まくり、稲垣さんのすんなりの中団まくりの上を行けたので。それで勝てなかったのは力不足。仕方ない。自分からしっかりまくりに行って負けたんだから悔いはないです」
 稲垣裕之は絶好のチャンスをモノにできず、悔し涙を流す。
 「今日は関東との勝負と思ってたし、僕としてもベストの仕掛けだったと思う。でも関東が強かったし、武田さんの壁が高かった。最後、油断はなかったけど武田さんの底力と、平原君の先行力が強力でした。でも、競輪祭のときより僕も力がついていると確認できたし、ちょっとずつだけど一歩ずつ強くなってると。今後も気持ちを強く持って頑張ります」
 桐山敬太郎は、打鐘手前で押さえに来た稲垣の番手で大塚健一郎と勝負。が、アテが外れる結果に。
 「打鐘で来た方の番手勝負と決めてました。稲垣さんを出させないくらいに踏んでおいて、武田さんのところで勝負すればよかったですね。最後2センターでは僕は追い込みでないので、コースを突っ込めなかった」
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