『被災地支援競輪第32回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:2月19日
 平成28年熊本地震被災地支援競輪・第32回読売新聞社杯「全日本選抜競輪(G1)」は2月19日、4日間に渡る熱戦に幕を下ろした。激戦を勝ち抜いたベストナインによって争われた決勝戦は平原康多が快勝。今年最初のG1を制した。2着には地元の武田豊樹が続いて関東ワンツーが決まった。

鈴木誠選手トークショー
鈴木誠選手トークショー
ファンを前に意気込みを語るファイナリスト
ファンを前に意気込みを語るファイナリスト
取手交響吹奏楽団ステージ
取手交響吹奏楽団ステージ
片岡安祐美 トークショー
片岡安祐美 トークショー
決勝戦 レース経過
 号砲が鳴ると、武田豊樹が別線の様子を窺いながら誘導員を追っていく。そこに平原康多を迎え入れて、武田後位には諸橋愛―神山拓弥が続き、関東勢が正攻法に構える。以下隊列は新田祐大、浅井康太、三谷竜生―稲垣裕之の近畿勢、和田健太郎の並び。
 三谷が青板の3コーナーから勢いよく上昇。前の平原と併走した後、打鐘前に誘導を降ろして先行策に出る。車を引きかけた平原だったが、そのままイン粘りを敢行。一度、稲垣を大きく張るも、捌き切れず三谷後位はもつれる。近畿勢に続いた和田、浅井はこれを見て車を後方へ。三谷が最終ホームからペースを上げると、9番手の新田もスパート。新田は三谷を2コーナーで捕らえ、そのままグングンと加速。1センターで番手を取り切った平原は新田をけん制するも、上をいかれてしまう。しかし、すぐさま新田を追いかけて、空いた車間を徐々に詰めていく。後位には武田が続く。2コーナーから踏み込んだ浅井も前団に迫る。平原が4コーナーで新田に追いつくと、最後は関東両者で直線勝負。勝敗の行方は平原に軍配が上がった。新田は直線で失速して3着。


ゴール
ゴール
表彰式
表彰式
胴上げ
胴上げ
<1R>
坂本亮馬選手
坂本亮馬選手
 赤板で上昇してきた高橋陽介を松岡貴久が突っ張って先行。これで高橋は7番手に逆戻り。松岡がハイピッチで駆けていく。車間を空けて別線の反撃に備えていた坂本亮馬(写真)が余裕を持って追い込み、最終日を白星で締めた。
 「松岡さんのおかげ。あれだけ頑張ってもらったので、1着を取らないといけない。VTRを観たらみんなきつそうだったし、(松岡を)残せたかもしれない。我慢できなくて踏んでしまった。そこは反省ですね」
 すんなり中団をキープしていた友定祐己は3コーナーからまくるが、車は思うように進まない。その後ろから濱田浩司が2着に突っ込んだ。
 「(友定が)外を仕掛けてくれたし、落ち着いて待ってから突っ込みました。昨日までで外を踏んでもこのバンクは伸びないと感じていたので。我慢して踏めば確定板には入れる感じですね。前回の落車の影響はないし、感触は悪くなかったです」

<2R>
北津留翼選手
北津留翼選手
 佐藤友和が押さえて誘導を下ろしたが、北津留翼(写真)が赤板過ぎに突っ張って主導権。北津留はマイペースで逃げていくと、強風を計算したクレバーな走りで堂々の逃げ切り勝ち。
 「やっと最終日に勝てましたね。中部の先輩2人が付いてくれたので。3日間あんな(不甲斐ない)走りをしてしまっていたのに、しかも他地区なのに付いてくれたので。(佐藤が)もう少し早くきて、赤板で並ばれていれば引いたけんですけど。出てからは3コーナーの手前が「強向かい」なので、そこさえ乗り越えれば何とかなると。前のレースで松岡(貴久)さんが逃げてそこで失敗したので、参考にさせてもらいました。そこ以外は風は気になる感じではなかったので休みながら。今回は初日に失敗してダメだったけど、今日は山口(富生)さんと山内(卓也)さんが付いてくれたおかげで勝てました」
 山口富生は追い上げてきた松浦悠士を退け番手を死守。きっちりと2着を確保した。
 「突っ張るのは作戦の1つだったし、アイツは脚があるんでね。ただ、変な動きをするときがあるんで、それだけはしないようにと。無駄な動きは。でも、あまり言い過ぎると分からなくなってしまうんで、キタツルコンピューターは(笑)。だから、それだけであとは全部任せてました。俺も(番手で)しのげたのでよかった」

<3R>
松岡健介選手
松岡健介選手
 渡邉雄太が打鐘から上昇すると前受けの菅田壱道が4番手に入り、近畿勢、中部勢と隊列は一本棒に。連日動きの良かった菅田が最終バックからまくりで前団を捕らえたが、後ろから松岡健介(写真)が北日本勢を飲み込み、シリーズ2勝目を挙げた。
 「細切れ戦だったので位置取りなど難しかったが、動きの良い菅田君を目がけて踏み切った。まだまだ(自力で)戦える脚もあるのが分かったし、自力を出すレースなら先手を取るレースを心掛けていく」
 4日間を通して積極的な走りをしていた菅田壱道は「別線は僕の動きが良いと思ってくれていたので、それを逆手に取った組み立ても考えていたが、良い位置が取れたし、体が勝手に反応して動いていた。松岡さんを引き出す形になってしまったが、今回の結果は良しとします」と、次の戦いに手応えをつかんだ様子だ。
 人気を背負っていた海老根恵太は「番手から出るのは簡単ですが、それでは(渡邉)雄太が成長しないし、自分も仕事をしようと思っていたので。ファンには迷惑をかけてしまいました」

<4R>
中井俊亮選手
中井俊亮選手
 打鐘から飛び出した杉森輝大に対し、中井俊亮(写真)が最終ホーム手前から一気に巻き返す。抜群のスピードで前団を飲み込んだ中井が後続を引き離して一人旅。2着の小川勇介に7車身差をつける圧勝で、シリーズ2勝目を挙げた。
 「初手は中団がほしいと思っていたので、理想の位置が取れました。順番が来て仕掛けた感じですね。いいタイミングで行けたし、うまくスピードに乗せることができました。今回はやっぱりレースの組み立てがまだまだ甘いと感じました。二次予選は突破したかったです。次に向けて、またしっかり脚をつけて頑張ります」
 杉森後位の池田勇人が最終バックから前に踏み込み、3着に入った。
 「中井君のスピードがよすぎて、ちょっと対応できなかったですね。止めたかったけど、難しかったです。追い込み選手じゃないし、申しわけなかったんですけど、前に踏ませてもらいました」

<5R>
新山響平選手
新山響平選手
 後ろ攻めの川村晃司が早めに押さえると、赤板で松岡篤哉が上昇し、さらに新山響平が打鐘で叩いて主導権を握る。強風のなか力強く逃げる新山に対し、敵陣は手も足も出ない。最後は守澤太志が差し切って2連勝でシリーズを締めくくった。
 「今日は少しでも牽制が入ったら前を取ろうと話してました。新山君は自分が持つ距離から仕掛けてくれたので。後ろを見ても誰もきてませんでしたね。僕は何とか抜けた感じです。新山君がハンパなく強かった。今日は新山君のおかげ。2連勝できて気持ち良く終われました」
 今節は初日に敗退した新山響平(写真)だが、4日間力を出し切り納得の様子。
 「前を取ってラッキーだったというか、自分の展開に持ってこれたので。出切ってからは流して。後ろを見たら荒井(崇博)さんが来てたから踏んだけど、バックでもうきつくて最後はタレてました。守澤さんが残してくれたおかげです。今回は初日でダメだったけど、4日間全部力を出し切れたので。練習してウィナーズカップに向けて仕上げてきます」
 荒井崇博は4番手好位を取ったものの、車は伸びず1車交わしての3着。
 「内から飛びつく感じで行ったし、少し口が空いたからね。後ろに(井上)昌己が付いてるから外を踏んだけど出なかったね」

<6R>
木暮安由選手
木暮安由選手
 赤板で後方から坂本貴史が動き、横山尚則が続いて中団で竹内雄作にフタをしてレースは終盤へ。外併走から横山が仕掛け出るとあっさり北日本を捕らえて、勢いをもらった木暮安由(写真)が鋭く差し切った。
 「すべて横山君のおかげですよ。余裕を持って最後は差し切れました。昨年の後半は落車が多かったが、急ピッチで状態が戻っているし、次の開催では頑張りたい」
 初のG1を地元で経験した横山尚則は「自分がやるべきことは4日間できた。持ち味を出せたと思うし、納得のいく内容で戦えた。今のベストを尽くせました。もっと力をつけて今後も活躍したい」と、次の開催ではさらなるレベルアップを期待したい。
 内に封じ込められ最終バックでは抜け出したが、3着が精一杯だった竹内雄作はガックリと肩を落とす。
 「勝負どころ(打鐘)だったので、簡単に引くことはできなかったが、自分の力不足です。3日間良いレースをしていたとは思うが、最終日で全てをダメにしてしまった」

<7R>
原田研太朗選手
原田研太朗選手
 原田研太朗(写真)がハイパワーで別線を圧倒した。レースは脇本雄太が打鐘前から主導権を握る。合わせて動いた飯野祐太が中団に収まり、前受けから7番手まで下げた原田は打鐘過ぎの4コーナーからスパート。豪快なまくりで前団を飲み込んだ。
 「昨日、失敗したので、行けるところからしっかり仕掛けようと。あのタイミングしかなかったですね。しっかり行けたし、後ろに迷惑をかけなくて良かったです。準決勝は9着だったけど、動いて先頭に立ったし、いつもとは違う9着で僕にとっては意味がある。1カ月後にはウィナーズカップがあるし、次につなげていきたいですね」
 人気の中四国ラインで確定板を独占。2着に続いた岩津裕介は「原田君が強かった。今日は何も言うことがないですね」と原田の強さを称えた。
 ライン3番手の筒井敦史がきっちり3着に流れ込んだ。
 「好マークですよ。あの仕掛けは3番手はきついんです。良く付いていけたし、自画自賛したい。付いていくだけで脚がいっぱい。原田君は本当に強い」

<8R>
深谷知広選手
深谷知広選手
 深谷知広(写真)が最終日に圧巻の逃げ切り勝ちを収めた。古性優作が後ろ攻めから早めに押さえて、誘導の後ろが入れ替わる。赤板を通過し、深谷が中団外併走から叩いて出ると、古性が番手でイン粘りを敢行する。すると、深谷の番手がもつれたところを、早坂秀悟がホームから一気に反撃。早坂は猛スピードで迫り、深谷の横まで並ぶと最終バックを制した。しかし、深谷も負けてはいない。深谷はそこからもう1ギア上げて加速していくと、早坂を突っ張り、勢いそのままゴールを駆け抜けた。
 「古性君が粘るとは思わなかったですね。そこから早坂さんが来るところだと思ったので踏んだけど、『出られた』と思いました。何とか対処できてよかったですね。最終日に先行できてよかったし、次につながるレースができました。今回は久しぶりに実戦を走って、消耗具合が違いました。日に日に感覚がズレていく感じもありましたし。4日間を戦える体力をつけていかないと。このあとは(ウィナーズカップまで)1か月くらい空くので、そこがチャンスだと思ってしっかり仕上げてきます」
 番手を争った2人は離れてしまい、早坂と中村浩士で追う展開に。中村が交わして2着に入り、力勝負を演じた早坂秀悟は3着。早坂は敗れはしたものの、全力を出し切り表情は晴れ晴れ。
 「ドンピシャでしたけどね。でも、逆にドンピシャ過ぎて『イケる』と思って少し見てしまって。その瞬間に行かれてしまいましたね。深谷のコースさえ締めればと思って体重を左にかけたけど。でも、そのあとは中村さんがバックを踏んで入れてくれたおかげで、何とかリカバリーできました」

<9R>
和田真久留選手
和田真久留選手
 赤板で先頭に立った吉田敏洋を吉田拓矢が打鐘前に叩いて主導権を握る。吉田敏は4番手まで下げて、渡邉一成は後方8番手に置かれる。最終2コーナーからまくった吉田敏は不発となったが、さらにその上を和田真久留(写真)が豪快にまくって快勝。2日目からシリーズ3連勝を飾った。
 「ペースが上がってきつかったですね。吉田(拓矢)君が全開で踏んでいるし、吉澤さんが番手まくり。吉田敏洋さんもまくって、その上ですからね。今回は初日に負けてしまって…。組み立ての問題ですね。調子は何とも言えないけど、2日目からは周りも良く見えてました」
 後方8番手からまくった渡邉一成は2着まで。
 「(和田)真久留のところまで内をしゃくれれば楽勝だったと思うけど、ダメでバックを踏んで戻ったのできつかった。ビシッと真久留に合わされてしまった」
 最終3コーナーから番手まくりを放った吉澤純平は3着。
 「吉田(拓矢)君が頑張ってくれたんですけどね。吉田(敏洋)さんは止まったと思ったんですが、張りながら出ていかないともう厳しいかなって。その外をすごいスピードで来られて対応できなかったです。番手戦は難しいですね。この反省を次に生かしたいです」

<10R>
石井秀治選手
石井秀治選手
 前受けは近畿勢で南関、九州、北日本で初周が決まった。赤板で先に動いたのは山田英明で間髪入れずに村上義弘が斬り、根本哲吏が打鐘で叩きに行った。最終ホームから山田がカマシで出切るも、さらにその上を郡司浩平がまくり切る。巧追走した石井秀治(写真)が真後ろにいた村上をけん制しつつ抜け出した。
 「郡司君に全て任せていた。後ろにいた村上さんも見えていたし、余裕もありましたね。良いレベルまで上がってきたので、今後のG1が楽しみ」
 惜しくも白星で最終日を飾れなかった郡司浩平だが「4日間、自分のスタイルで戦えたので自信がついた。ただ甘いところもあるし、初日みたいな力を出し惜しみしないようにしたい」。
 最終ホームからカマして一旦はハナに立った山田英明は「自分の得意パターンだったんですけどね。ベストを尽くした。最終日に思ったところで仕掛けられたのは収穫ですよ」と、振り返った。

<11R>
武田豊樹選手
武田豊樹選手
新田祐大選手
新田祐大選手
 今年最初のG1覇者に輝いたのは平原康多だった。レースは三谷竜生が打鐘で押さえて先行策に出る。前受けの平原はイン粘りを敢行。前団がもつれたところを単騎の新田祐大が一気にまくってしまう。稲垣に競り勝った平原が最終バックで新田の後位にスイッチ。直線で鋭く追い込み、栄冠を手にした。
 「そのときの状況判断ですね。迷ったんですけど、引いて巻き返してもチャンスがないと思ったので引けなかった。稲垣さんとの競りが長引いたぶん、先に新田君に仕掛けられて行かれてしまった。脚を使ったけど、死ぬ気で最後は抜きに行きました。連日、プレッシャーを感じながら精神的に強くなれたと思います。今年はまだ始まったばかり。次のG1に向けて、気持ちを切り替えて、もっともっと強くなれるように頑張ります」
 執念の追い込み勝負で平原に迫った武田豊樹(写真)は準優勝。初の地元G1で4日間、全力で走り抜いた。
 「どんな展開でも2人で決めるのが一番ですから。平原君が勝つ競走をしてくれた方が自分も生きる。脚がたまらなかったですね。もう少しためられれば抜けていたと思います。勝てれば納得できたけど、勝てなかったのは脚力不足です。今回はいい緊張感を持って走れました。仲間が勝ったんで、おめでとうという気持ちです」
 単騎の新田祐大(写真)は圧巻のスピードを披露。3着に敗れたとはいえ、持てる力はすべて出し切った。
 「(平原が)粘ることもあると思っていましたし、レースの中で対応して、しっかり反応できました。力を出し切るレースに持ち込めたけど、平原さんの強さに負けました。余裕を持って抜かれたし、武田さんにも行かれてしまって、自分の力のなさを痛感しました。1カ月後にウィナーズカップがあるので、しっかり調整して頑張りたいです」
 平原に競り負けた稲垣裕之は前を向く。
 「展開なんで粘られたのは仕方ない。もう少し抵抗できれば良かったですね。今後はこういうレースも増えてくると思うし、これを課題にして、プラスに考えて頑張りたいですね」
 果敢に風を切った三谷竜生は「先行するつもりだったけど、結果的に新田さんにまくられていますから。次また頑張ります」と気持ちを切り替えていた。
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