『第33回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:2月12日

 四日市競輪場を舞台に開催された第33回読売新聞社杯「全日本選抜競輪(GI)」は、2月12日に最終日を迎えた。S級S班の2人をはじめ激戦を勝ち抜いた9人で争われた今年最初のGIの決勝は、4車そろった近畿勢がレースを支配。単騎の新田祐大は8番手に置かれたが、圧巻のまくりで通算6度目(4日制以上)のGI制覇を遂げた。優勝賞金2990万円(副賞含む)を獲得し、年末の「KEIRINグランプリ(GP)2018」の出場権を誰よりも早く手に入れた。

チアドラゴンズ2017 パフォーマンスショー
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キッズダンスショー
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浜口親子トークショー
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決勝競走特別紹介
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決勝戦 レース経過

 やや見合ったスタートから原田研太朗、新田祐大と単騎の2人が誘導員を追う。周回は原田―新田―吉澤純平―平原康多―山田英明―古性優作―村上義弘―村上博幸―椎木尾拓哉の並びで進む。
 青板1センターから動いた古性はサッと新田の外まで車を上げると、吉澤にフタ。フタをされた吉澤は7番手に下げる。3番手に入った古性は前との車間を切って中バンクまで上がると吉澤に仕掛けるタイミングを与えない。このまま最後方になるのを嫌った山田が1コーナーから内に切り込むと、2コーナーから古性が踏み上げ打鐘から主導権を握る。5番手は内に原田、外に吉澤で併走。吉澤が1コーナーから再度巻き返すと、村上義が合わせて番手まくりに出る。兄の後ろを回る村上博はバックで吉澤をけん制すると、その外を回して来た平原を2センターでブロック。これで平原のスピードは鈍ってしまう。村上兄弟がワンツー態勢を築いて4コーナーを立ち直ってきたが、ここに襲いかかったのは新田だった。バックで外に持ち出すと、村上博にけん制された平原のあおりも耐えてイエローライン付近を伸びると、今年最初のGIを制した。






<1R>

三宅達也選手
三宅達也選手
 打鐘手前で主導権を握った中近ラインに、単騎の三宅達也(写真)が切り替える。飯野祐太のまくりに長島大介も中団から合わせてまくると、逃げる野原雅也の番手から澤田義和が最終3コーナー過ぎに張り気味に出る。山口富生が内を突いて、脚を溜めた三宅は飯野を弾いて外のコースを突き抜けた。
 「先手、先手からいこうと思っていた。あれでまくれればいいんですけど、(まくりに行くのは)やめました。澤田さんも出ていったし、(外のコースが)空いたんでよかった。調子自体はいいんで、あとはコースですね。練習でもまくりは出ないから(笑)」
 野原の逃げを利した澤田義和は、外を張りながら追い込み2着。
 「あれじゃあダメですね。自分では(番手から)もう出なきゃいけないと思って…」

<2R>

松岡健介選手
松岡健介選手
 阿部大樹、杉森輝大の順で切って、打鐘から踏み込んだ松岡健介(写真)が主導権を取る。近畿ライン3車で出切るが、最終ホームで前田拓也と接触した杉森輝大は車体故障で後退する。絶妙のペースで駆けた松岡がそのまま力強く押し切った。
 「スタートもいい位置が取れたし、順番が来て、この風の中でもしっかり仕掛けることができました。初日から感じは良かったので、しっかりレースを作ればいい勝負ができると思ってました。良かったです」
 番手絶好となった三谷政史は直線で松岡に詰め寄ったが、交わせなかった。
 「松岡さんがいいレースをしてくれました。恵まれました。あれで抜ければ最高でしたけどね。強かったです」

<3R>

竹内雄作選手
竹内雄作選手
 竹内雄作(写真)の番手は初手から近藤龍徳と武井大介で競り合い。打鐘で中部勢が息の合った連係プレーで武井を外へ浮かすと竹内はグングンと加速。競り負けた武井は遅れて車間が空き、後続の仕掛けは届かない。マイペースで駆けた竹内が力強く押し切り一矢を報いる1勝。
 「後ろが競りになったけど、信頼できる2人なので僕は自分の仕事に専念しようと。逃げ切りで勝てたのでとりあえず良かった。(山内)卓也さんからもいろいろとアドバイスをもらいました。でも、今シリーズは自分に足りない面もあり、お客さんにも迷惑をかけた。信用を取り戻せるように練習して次回から頑張りたい」
 番手を死守した近藤龍徳は安堵の表情を浮かべる。
 「競りになったので、もちろん気合は入った。当然ですが譲れない位置なので守れて良かった。前後がしっかりとしていたので、3人で決まったと思う。今シリーズを通しては全然ダメだったかな…。最終日のような気持ちで毎レース走りたい」

<4R>

小川真太郎選手
小川真太郎選手
 合わせて踏んだ小川真太郎(写真)を押さえ込んで郡司浩平が、先行策に出る。小川はソツなく4番手をキープして前団との車間を空ける。詰める勢いで最終2コーナー過ぎからまくった小川は、桐山敬太郎が外に振るとそのインを抜け出して先頭でゴールを駆け抜けた。GI初勝利に笑みを浮かべる。
 「よかった、(GI初勝利は)うれしいですね。最終日なんで1着を狙って思い切ってやろうと思っていた。車間が空きすぎちゃって、(まくりが)あんまり出なかった。桐山さんも自力があるから、空けながら来るかなと思った。自分が選んだところ(コース)を行ったんで、コケてもしょうがないと。ああいうのは、小倉(竜二)さんとかがすごいお手本になってます。今回は補充で3、1着なら二重丸です」
 8番手に置かれた北津留翼は、最終3コーナーからまくり追い込んで外を強襲するも3着がやっと。
 「前受けだったけど、一番後ろかその次からが正解でしたね。小川君は強いんで、小川君より前にいないとダメでした。(打鐘の)2センターからホームでカマせれば良かった。でも、行っても桐山さんに止められてましたかね…」

<5R>

太田竜馬選手
太田竜馬選手
 赤板の2コーナーで切った高橋和也を渡邉雄太が押さえて先行策を取る。すかさず反撃に出た坂本は渡邉に合わされて後退。3番手を確保していた高橋が最終バック前からまくり上げるが、その上を太田竜馬(写真)が抜群のスピードで抜き去った。
 「前受けして、あとは流れで。結果的に4番(坂本)をめがけて行ければ良かったですね。3日目よりもバンクは軽かったです。セッティングを換えて、気持ち的にも落ち着いていこうと思ってました。今回はレース運びとか反省ばかりですね。いつもできることができなかった。また出直します」
 先まくりの高橋に乗って追い込んだ笠松信幸が2着に入った。
 「高橋君がいい位置を取って、仕掛けてくれました。外から(太田の)スピードがちょっと違いました。ハンドルを戻して感じは良くなりました。しばらくこれでいこうと思います」
 太田の踏み出しに離れた松浦悠士は諦めずに踏み続けて笠松と僅差の3着。
 「(太田が)すごいスピードでした。強いですね。ダッシュがいいからタイミングを取らないといけない。行くと思った時に行かなくて…。難しいですね」

<6R>

天田裕輝選手
天田裕輝選手
 インの切り合いから打鐘の3コーナーで飛び出した阿竹智史が主導権を握る。3番手に畑段嵐士が入り、後方から巻き返した横山尚則は最終ホームの中団でいったんは様子を見るが、1コーナーから再び加速。阿竹が懸命に合わせるも、力ずくでまくり切る。続いた天田裕輝(写真)が直線で鋭く追い込んだ。
 「(自分のラインの)車番が悪かったけど、前を取れたので『何とかなるかな』って。横山君は出切れないと思い、自力を出す準備をしたけど、そのまま車が伸びていって(阿竹を)まくり切ったのだから強いですよね。そこまで連れていってくれたから勝てました」
 2着にはバックまくりを打った和田真久留に乗った松谷秀幸が外を強襲した。
 「和田君が仕掛けてくれているおかげ。自分としては納得のいくシリーズではなかった。もっと集中力を高めないといけない。前を任せた選手が不発になった場合の対応など課題もいくつかみつかった」
 3着の和田真久留は浮かない表情で汗を拭う。
 「スタートを失敗して後ろ攻めになってしまった。今回は風が強いので、みんな前の方を欲しがるのに…。調子がそこまで良くなかったので、ラインに迷惑をかけないように仕掛けようと心がけた4日間でした」

<7R>

金子貴志選手
金子貴志選手
 勢いよく押さえに来た清水裕友を赤板手前から新山響平がダッシュを利かせて突っ張る。清水も引かず壮絶な主導権争いは、新山に軍配が上がったが両ラインは脚力をロス。最終ホームではかぶっていた金子貴志(写真)に視界が開けると、4番手から2コーナーまくりで前団をのみ込んだ。
 「変なタイミングでまくっていってしまった。全然、出なくて…、キツかったです。展開が良かったけど、なんとかですね」
 最終1センターで清水が外に浮くと、桑原大志は金子のまくりに切り替えて流れ込みの2着。
 「余裕がなかったです。金子君を(かぶせて)出さないようにして回ればチャンスがあると思った。でも、それどころではなかった。それで金子君が行ったから付いていった。(ブロックで)飛ばされるような感じだったけど、みんなキツかったみたいですね」

<8R>

稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
 赤板過ぎに切った山田久徳を早坂秀悟が押さえて前に出る。打鐘で3番手に収まった山田は4コーナーから一気に仕掛けて最終主導権。最終2コーナーから好回転でまくり上げた山中秀将を稲垣裕之(写真)が張りながら鋭く追い込んだ。
 「(山田は)落ち着いてまくりでも良かったのに、気持ちがうれしかったです。(山中が)いいスピードで来てましたからね。ギリギリまで待ってから踏みました。勝ち上がりには失敗したんですけど、徐々に良くはなってます。準決勝はうまく走ればチャンスはあったと思います。また課題が見つかりましたし、細かい修正点はありますね。次のGIまでに突き詰めていきたいです」
 後方8番手となった坂本亮馬が大外から2着に突っ込んだ。
 「伸びたでしょう。初日の脚ならホームで離れていたと思う。初日、2日目は弱かったけど、3日目にようやく体調が戻った感じ。あまり良くない中で成績はまとめられたと思います」

<9R>

中川誠一郎選手
中川誠一郎選手
 後攻めの小松崎大地が中団の吉田拓矢にフタをした後に前団を叩いて先制攻撃。打鐘過ぎから吉田が猛然と巻き返すも、守澤太志の強烈なブロックでいったんは失速したが、鈴木庸之が迎え入れて再び仕掛ける。小松崎と吉田で踏み合い、その後位も激しくもつれる展開となれば、後方で脚をためていた松岡貴久には絶好のまくり頃。2コーナーから豪快にまくり、追走の中川誠一郎(写真)がゴール前でしっかりとらえた。シリーズ2勝目を挙げた中川は、熊本ワンツーの結果に笑顔が弾ける。
 「今回は抜けないんじゃないかと思うくらい(松岡)貴久は強かった。前々に攻めるか構えてまくるかは流れ次第なので任せていた。今回は最近の中では最もいい状態だったので、今をベースに上乗せできればある程度上のクラスでも戦えるんじゃなかな。でも、寒さのせいかまだまだ体が硬い感じ。暖かくなればさらに良くなると思う」
 流れが向いたとはいえ、松岡貴久のまくりは強烈だった。
 「まくれた一番の要因は踏み合いになってもつれたから。自力選手としてさらに上を望めば最終ホームで仕掛けるべきでしょうね。今回こそ(中川)誠一郎さんを振り切れるかと思ったけど、楽に交わされてしまいました(苦笑)」

<10R>

武田豊樹選手
武田豊樹選手
 赤板の2コーナーから踏み込んだ稲毛健太を阻むように、岩津裕介が突っ張り気味にペースを上げる。稲毛も踏みやめず最終ホームで重なった前団のインが空くと、木暮安由がそこを突いて進出。2コーナー手前で木暮が岩津をまくりでとらえるが、武田豊樹(写真)は小倉竜二にからまれて立ち遅れる。それでも懸命に木暮を追った武田が、最後はきっちり交わして1着。
 「苦しかったし、危なかったですね。それでも(木暮との)マークを外しちゃ…。僕も勉強です。骨盤骨折から半年がたって全日本選抜で勝負したいと思って来たんですけど、(決勝に乗れなくて)残念でした。準決は9番手からいいところまで伸びた。ただ、チャンスあるコースがあったのに、そこを突けなかった」
 冷静な立ち回りからまくりを放った木暮安由が、関東ワンツーをメイクした。
 「ごちゃごちゃになって、なにがなんだか…。岩津さんが先行態勢を取ってたし、あとは内から行って。(新車は)もうちょっと煮詰めます。初日より2日目、2日目より3日目だったんで、もう少しですね」

<11R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 赤板過ぎに脇本雄太(写真)が上昇を開始すると、中団から岡村潤も合わせて踏み込み先頭に立つ。打鐘前からペースを上げると、中団に山崎芳仁が入り脇本は6番手へ逆戻り。最終ホームは一本棒となったが、態勢を立て直した脇本が1コーナーから巻き返す。ワンランク違うスピードで前団をのみ込み1着ゴール。3日目に続く連勝となったが、本人の口からは反省の弁ばかりだった。
 「(岡村にペースを上げられて)あそこの上を仕掛けないと。頭ではわかっているが構えてしまった。普段は自力でやっていない人のほうが走りにくい。余計にいろいろ考えてしまうので」
 2着は脇本マークの三谷竜生。圧倒的な人気を集めたが、差し切りまでは叶わなかった。
 「組み立てに関しては(脇本に)任せていたので何もありません。(普段は逃げていない)岡村さんが駆けているなら(脇本は)まくれるでしょう。最後に差せなかったのは僕の力不足です」
 追い込みの岡村潤だが、千葉両者に任されて最終日は思い切った先行策に出た。
 「脇本君が普通に押さえてくれば(インで)粘るけど、そうさせないように一気に来ると思ったので。そこに対処するにはペースを上げておかないと。踏み遅れてラインに迷惑をかけたくなかったのでペースを上げたら先行になりました」

<12R>

村上義弘選手
村上義弘選手
古性優作選手
古性優作選手
 今年最初のGI覇者に輝いたのは新田祐大だった。吉澤純平を警戒しながら古性優作が打鐘前から全開で駆ける。ライン4車でしっかり出切って近畿勢のペース。中団外併走から吉澤が仕掛けると、村上義弘が番手まくりを放つ。バック前から踏み込んだ新田が大外を圧巻のスピードで駆け抜けた。
 「流れの中で動いて、一番後ろだけにはならないようにと思ってました。理想通りというか最高の展開になりました。準決勝の失敗もあるので、出し惜しみせずに力を出そうと思って、ゴールまでしっかり踏みました。一走一走、しっかり走ろうと考えていましたが、(優勝できて)本当にホッとしています」
 4車で結束した近畿勢は絆の強さを示したが、優勝に手が届かなかった。2着に敗れた村上義弘(写真)は悔しさを隠せない。
 「(古性)優作が近畿を背負って走ってくれて、自分もつなげないといけない。自分もあれ以上のことはできないし、優作も(村上)博幸もそうだと思う。4人が自分の位置でお互いのことを思いながら走って、それを力で(新田に優勝を)持っていかれたわけだから自分自身の大きな課題です。現状の自分たちと新田との差。個々の力をもっとレベルアップしないといけない。この2着は本当に悔しいし、悔しいのひと言では片づけられない」
 近畿ライン3番手の村上博幸は兄の後ろで持てる技と力のすべてを出し尽くした。
 「緊張感を持って走れました。内外を気にしながら外に2回持っていって脚が残ってなかった。やってきたことは出せたと思うけど、このレベルではまだ力が足りない」
 古性優作(写真)はラインの先頭で果敢に主導権を奪った。
 「いつも通り冷静に走れました。それは大きいですね。ラインが生きるようにと思っていたけど、自分の力不足です。もうちょっと長い距離をモガければいいんですけど。3角ぐらいまで持てば全く違う展開になったと思います」
 吉澤純平は2段駆けの近畿勢を乗り越えられなかった。
 「もがき合っても厳しいですからね。古性君がタレてきて、2コーナーから仕掛けたんですけど、すかさず村上さんに出られて乗り越えられなかったです。もっと力を上げていきたいですね」

次回のグレードレースは、2月17~20日まで静岡競輪開設65周年記念「たちあおい賞争奪戦(GIII)」が開催となります。
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