『第34回読売新聞社杯全日本選抜競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:2月11日

 19年のGIは九州から。別府競輪場で開催された今年最初のGI「第34回読売新聞社杯・全日本選抜競輪(GI)」は、2月11日に最終日が行われた。弟子の吉澤純平とタッグを組んだS級S班の武田豊樹に佐藤慎太郎が付けた東日本勢、3車で結束した中四国勢にラインができた決勝は、単騎の中川誠一郎が逃げ切りV。優勝賞金2990万円(副賞含む)を獲得し、年末の「KEIRINグランプリ2019(GP)」の出場権を誰よりも先に手に入れた。

決勝レース出場選手特別紹介
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柔道家 篠原信一氏トークショー
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スピーチーズライブ
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富生氏 ジャグリングパフォーマンス
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レース展望会&トークショー
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決勝戦 レース経過

 号砲で武田豊樹が勢いよく出て、吉澤純平を迎え入れる。隊列は吉澤-武田-佐藤慎太郎、中川誠一郎、松浦悠士-香川雄介-小倉竜二、和田真久留、吉田敏洋の並びで落ち着き、周回を重ねる。
 青板周回の2センターから上昇した松浦は赤板で誘導員の後位に収まる。松浦とほぼ同時に最後方から踏み上げた単騎の吉田は1コーナーで誘導員を下ろして前に出る。単騎の和田が2コーナーから踏み上げると、これを追う形から吉澤が仕掛けて打鐘で先頭に立つ。吉澤ラインを追いかけた中川は和田との4番手外併走を嫌って、4コーナーからカマシを打つ。吉澤も合わせて踏み込むが、中川が1コーナーで出切って快調に飛ばす。車間の空いた2番手で吉澤が前を懸命に追いかける。6番手となった松浦は2コーナー過ぎからまくり上げるが、車は思うように進まない。最後まで力強く踏み切った中川が逃げ切りで2度目のGI制覇を果たした。関東コンビ追走から最終2センターで内を突いた佐藤が直線で中川と吉澤の中を割って2着に。中川を追いかけた吉澤は3着。





<1R>

濱田浩司選手
濱田浩司選手
 野原雅也ラインの3車が出切って打鐘で主導権。単騎の伊勢崎彰大が切り替える。小川勇介と絡みながらも飯野祐太がまくりを打つと、最終2センターから伊勢崎も踏み込む。しかしながら、その前にいた野原ライン3番手の濱田浩司(写真)が、外を踏んで突き抜けた。2位入線の池田良が失格だけに、濱田は複雑な表情。
 「自分でしっかりと出し切りたいっていうのがあったんですけど。少し踏み込むのが早かったですかね。うーん…」
 5番手から仕掛けられずの坂本健太郎は、直線で中のコースを伸びた。
 「濱田さんが前で態勢を整えている感じもあった。(自分が仕掛けたら)合わされて、スライスするんじゃないかと。それで仕掛けられなかった」

<2R>

松岡健介選手
松岡健介選手
 赤板前から動いて誘導後位に入った松岡健介(写真)は取鳥雄吾の上昇を受けて3番手を確保。最終ホーム手前からまくって来る坂本貴史に合わせて2コーナーから仕掛けると最終日を白星で締めた。
 「三谷(将太)君の言うとおりに走りました。(逃げる取鳥が)あのスピードなら早めに来るなと思ってたし、その前に動けたんで良かったです。(怪我から復帰2戦目)2日目はちょっといい感じだったけど、その日以外は復調の兆しもない。最終日は早めに動けたんで、これで良くなってくれれば」
 松岡に合わされた坂本貴史は6着に敗れた。
 「取鳥君はいつもならもっと早く駆ける選手。(打鐘過ぎ4コーナーで仕掛けを迷ったのは)ちょっとビビッてしまった。(赤板の1センターで)取鳥君をドカしてインを切れれば、もっと楽だったし、そういうとこですね。脚を使わず自転車を進めるとか体の使い方とかも。もったいなかったです」

<3R>

藤木裕選手
藤木裕選手
 池田勇人の上昇に対し、藤木裕(写真)が誘導員を残して車を下げると、そこを打鐘から吉本卓仁が叩いて出る。藤木はこの動きに切り替えると、すかさず4コーナーからのカマシ。番手の山内卓也が離れて、第二先行となった吉本も追いつかず。2着以下に8車身の差をつけて押し切った。
 「風は爆風だったけど、気にならなかった。3日目はいきなり(補充で)入って中団外併走でキツかったし、不甲斐なかったので、今日はしっかり力を出し切って。若手に見せるようなレースをしようと。GIでの1勝は2、3年ぶり。大きいですね。今度は正規斡旋で出て勝ち上がれるように頑張りたい」
 藤木のカマシで7番手に置かれた池田勇人は、バックまくりで九州勢を飲み込むのが精いっぱいだった。
 「本当は先行したかったんですけどね。最近、芦澤(大輔)さんと連係して先行できていないし、渡邉(晴智)さんもいたので。初手の位置取りで後ろ攻めになったのが失敗。GIは隙がないですね。まだ組み立てが甘いなって思った。ダービーは出られそうなのでそこに向けて頑張ります」

<4R>

園田匠選手
園田匠選手
 打鐘の3コーナーで金子幸央を押さえて出た稲毛健太が、ペースを握って駆ける。田中晴基が4番手に続いて、金子が5番手。渡邉一成は後方に置かれる。渡邉、田中のまくりは3番手までで、逃げる稲毛の番手の園田匠(写真)にとっては絶好の展開。直線で園田がきっちり抜け出した。
 「稲毛君がいいペースだった。ラインのおかげですね。(4日間を通して)自分の脚は全然、問題なかった。だからこそ、悔しい思いもある。(最終日1着で)とりあえず最低限ですね」
 別線を完封する先行策を披露した稲毛健太は、3着に踏ん張って納得の顔。
 「自分の得意パターンになったし、ラインで決まって良かった。(先頭に立ってから)1周半(ペースを)落とさずに行こうかなと。3日間、何もできてなかったんで、最終日でいいイメージつけて帰ろうと。最後まで踏めてるし、感じが悪いことはなかったです」

<5R>

山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
 赤板前から上昇した吉田拓矢が打鐘で誘導員を下ろすと、4番手は内に山崎芳仁、外に桐山敬太郎で併走に。吉田がペースを上げないと見るや、最終ホームから桐山が仕掛けて吉田を叩き切ると、そこを目がけてバックから仕掛けた山崎芳仁(写真)が外を突き抜けた。
 「中団はこだわんなくちゃと思った。そしたら吉田も流してたところをキリ(桐山)が仕掛けたんで。キリは牛山(貴広)のところで下りるかなと思ったら出切ったから、行かなきゃと思った。重いっすね。この風はどこで踏んでも重い。人気だったので1着取れて良かった」
 桐山の番手を回った岡村潤が2着に食い込んだ。
 「すごいっすね。吉田拓矢が駆けてるあそこを中団外併走から叩けるのはなかなかないんで。風も強いし、中団から先に切るのかなと思ったら、まさかあんな展開とは。残せればと思ったけど、外(に山崎が)見えてたんで厳しいなと思った。せっかくあそこまで行ってくれたのでアタマ取りたかった」

<6R>

柏野智典選手
柏野智典選手
 赤板前で佐藤博紀が先頭に立つが、後続の動きはない。佐藤が腹をくくって最終ホームからピッチを上げると、前受けからすんなり中団を取っていた井上昌己がバックまくり。続いた柏野智典(写真)がゴール寸前でとらえた。
 「何も作戦はなかったですよ。緩んだら行こうって感じでしたね。昌己が一番強いから本線だと思って走ってたし、安心感もありました。毎年冬場は成績が良くないので、工夫して練習していつもよりは自分の中での感覚は落ちていなかった。また次に向けて頑張ります」
 まくった井上昌己が2着でラインでワンツーが決まった。
 「風があってけっこう重たかったですね。まくりが決まりやすいコンディションではなかったので、なんとか凌いだって感じです。状態は悪いわけではないが、人の後ろなら楽だけど、自力を出すとイメージ通りの感じで車が進まないので、そこが課題ですね」

<7R>

大塚健一郎選手
大塚健一郎選手
 竹内雄作が、赤板の1センターで押さえて出て先行態勢。古性優作が3番手に入っているのを確認した竹内だが、持ち前のケレン味のなさで迷わず駆ける。打鐘の4コーナーから巻き返した近藤隆司は不発。絶好の3番手をキープした古性が最終2コーナーでまくりを打つが、1車しか出ず金子貴志の横まで。古性マークの大塚健一郎(写真)は、2人の併走を見極めて外に持ち出す。直線でじわじわと差し脚を伸ばした大塚が、ハンドル投げで前をとらえて地元シリーズ初白星を挙げた。
 「(古性を)信頼していたし、あんなに早く仕掛けてくれるとは。(全日本選抜の)選考期間から重圧がありました。別府で日本一決定戦(GI)が行われるなんで思ってもなかった。(それが終わって)第一の競輪人生は、ここから折り返しという気持ちです。マーク屋として日本一になるってこだわってきたスタイルは変えないでいきます」
 絶妙なペースで風を切った竹内雄作が、内容の濃い走りで2着に粘り込んだ。
 「古性君が3番手にいるのもわかってました。近藤さんもいつくるかわからないから、踏み上げておきたかった。思ったより風も感じなかった。ただ、もっとスピードを上げられれば、金子さんもいきたと思う」

<8R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 後ろ攻めから動いて小松崎大地を受けた郡司浩平(写真)は4番手を確保。目の前で仕掛けた芦澤辰弘が永澤剛のけん制を受けると、バックで大きく外を回されたが、この波を乗り越えると力強く押し切った。
 「行こうと思ったら(芦澤が)行ったんで。あとは勢いそのままに行こうと思った。(あおりの)外でかなり遠かったけど、後ろもついてたし避けながら行くしかないなと。準決勝は悔しい思いをしたけど、最終日はしっかり自力を出せた。それは良かったです」
 あおりを見た和田健太郎が口が空きながら郡司を追いかけたが、バックから仕掛けた柴崎淳が2着に強襲した。
 「このレースはあれで正解。前がどうなってるかわからなかったけど、郡司がすげえ外行ってるのは見えた。バックが重たいし、寒いしだけど、もうちょっと出て欲しかった」

<9R>

山田英明選手
山田英明選手
 前受けの山崎賢人に山田久徳がフタをする。その上を打鐘前から山賀雅仁が切ると、そこを原田研太朗が叩いて先頭に立つ。下げて7番手の山崎は4コーナーから巻き返すと、3コーナーで原田をとらえて先頭に。1コーナーで山田久にけん制されて山崎と口が空いてしまった山田英明(写真)だったが、何とか追いつくとゴール前で山崎をとらえた。
 「(あおりで)賢人が止まるかなって思ったけど、そのままいきましたね。あおりで僕もキツかったので、後ろにいる荒井(崇博)さんはもっとキツかったと思う。しっかり賢人の後ろを固めるのが僕の仕事なので、ここは嫌な位置だなって思わせないといけないですね。賢人は使いこなせたら強力な武器になるので、何回も走って信頼関係を作っていきたい」
 山田には差されたが山崎賢人も力強いまくりで見せ場を作った。
 「風はあったけど、気にならなかったし、焦ることなく後方に下げて仕掛けていきました。前回から佐世保記念で落車して修正に出していたフレームを使っているけど、セッティングはもう少しですね。レースでムダ脚を使っているし、ムラも多いので、そういうところを直していかないといけない。上のレベルの人たちはムダなく力を出し切っているので。それ以上にまずは脚力を付けるのが大前提ですけど」

<10R>

太田竜馬選手
太田竜馬選手
 赤板の2コーナーで押さえて出た鈴木庸之が先行態勢。南潤が反撃に出るが、鈴木が自ら張って南を阻む。インを進出した太田竜馬(写真)が逃げる鈴木の番手に入って、3番手に村上義弘で最終ホームを通過する。太田が2コーナー過ぎに番手からまくりを打って、そのまま押し切った。
 「(前に)誰もいなかったんで踏んでおかないとって思ったら(番手に入った)。あとは内を締めて自分のもつ距離で(仕掛けて)行こうと。(村上は後ろにいるのは)わかっていた。圧があるし、ちょっとでも空けたら(村上が)ボスってくるかなと。作戦通りじゃなかったけど良かったです」
 南は外に張られて太田後位に入った村上義弘が、結果的に流れ込みの2着。
 「太田の前に自分で(仕掛けて)行くのか、ちょっと迷いました。それで(南)潤が仕掛けて来たら、合わせる形になるし…。いろんなケースを考えてしまった。レースとしては、いい3番手だったけど、リズムを崩してしまった」

<11R>

平原康多選手
平原康多選手
 赤板過ぎからインの切り合いになったところを打鐘過ぎから新山響平が叩いて主導権を握る。ホームから巻き返した小川真太郎は4番手の外でいっぱい。渡邉雄太のバックまくりも大槻寛徳のけん制で止まると、2センター、5番手から持ち出した平原康多(写真)が直線外を突き抜けた。
 「ジャンのところであんなに踏むとは思わなくて踏み遅れちゃった。1コーナーぐらいからはいつでも行ける準備はできてたけど、外に(小川が)いたので。あそこで行けば木暮(安由)と決まってましたね。脚は全然、最終日が良かった。3日間フワフワしてたけど、朝セッティングをイジって、それがいい方向に向いた」
 新山マークで絶好の大槻寛徳だったが、惜しくも2着に。
 「強い、響平が。ヤバかったですね。全然タレてなかった。1着かと思ったけどね。一人だけスピードが違って、俺らがスローモーションになってた」
 逃げた新山響平は3着に粘った。
 「今回は初日で台無しにした。あれで流れを悪くしてしまって、もったいない。でも最終日は自信になったかな。あとは脚力を強化して、平原さんにまくられないように」

<12R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 松浦悠士の動きに乗った単騎の吉田敏洋、さらに和田真久留が切ったところを打鐘から吉澤純平が叩いて先行態勢に入る。4番手外併走になった中川誠一郎はホーム手前から単騎ガマシ。懸命に追いかける吉澤らを振り切って、2016年のダービー以来となる2つ目のタイトルを制し、グランプリ一番乗りを決めた。
 「苦しかったですね。(組み立ては)関東勢が主導権を取りそうだったので、そこに付いていきたいなって思ってました。もっと吉澤君が誰にも主導権を渡さないように踏むかと思っていたけど、ペースに入れていて、自分も和田君と併走になったのでそこで腹をくくりました。準決勝も1周行っていたので、準決勝よりも楽に踏めていた。2つタイトルを獲って一人前と言われていたので、これで一人前になれたと思う(笑)。本当にうれしいですね」
 吉澤ライン3番手の佐藤慎太郎(写真)は直線で内に切り込むと、ゴール前で中川、吉澤の中を割って2着に突っ込んだ。
 「吉澤がまだ空けてなかったから、空くまで待ってその間だった。だからタイミングがちょっと遅れましたね。当たって空けたら失格。空くまで待たなきゃいけないんで、しょうがない。悔しいけど、(GIで)優勝することはできるって手ごたえは感じてます」
 単騎でカマした中川を抜ければ優勝だった吉澤純平だったが、もはやその力は残っていなかった。
 「中川さんの力が一枚も二枚も上だった。バックでケツ上げて何とか追っかけたけど、全然でした。まったく余裕がなかった。(GIの)決勝でいいレースできてなかったので、自分の形を作っていきたかった。やることはやったけど、力負けですね」
 松浦悠士にとって中川の単騎ガマシはまったくの想定外。中川のかかりで6番手に置かれてしまっては巻き返しも叶わず。
 「前だと単騎の選手が先に来て、そのあと吉澤さんが来る。自分でレースを動かさないとと思ってました。4番手併走を期待してたけど、カマシは想定外でしたね。今回は何もできてない。今度は何かできるようにしっかり準備したい」

次回のグレードレースは2月16日~19日まで奈良競輪場で開催予定の開設68周年記念「春日賞争覇戦(GIII)」となります。
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