『全日本プロ選手権自転車競技大会記念競輪レポート』 最終日編

配信日:5月30日

 広島競輪場で開催された「全日本プロ選手権自転車競技大会記念競輪」は、5月30日に最終日が行われた。メインの「スーパープロピストレーサー賞」では、地元のS級S班の松浦悠士が、中団外併走からのまくりで昨年の豊橋に続く連覇を果たし、賞金327万円(副賞含む)を獲得した。

スーパープロピストレーサー賞 レース経過

 スタートで鈴木庸之が出て、吉田拓矢-鈴木庸-諸橋愛の関東勢が前受け。以下は松浦悠士-小倉竜二、佐藤慎太郎、古性優作-坂口晃輔、鈴木裕となって周回を重ねる。
 青板2センターで古性が動きだし、赤板1コーナーで前団を押さえ切って先頭に立つ。3番手にはそのまま鈴木裕が続き、切り替えてきた松浦ラインと関東勢で4番手以下が併走に。松浦も吉田も譲らず併走状態が続き、これを見た古性が腹をくくって最終ホーム入り口からスパート。一方、内に詰めて関東勢の動きを封じた松浦は2コーナーからまくる。車間を空けて待ち構えていた坂口のけん制を3コーナーで乗り越えた松浦は、2センターで古性をとらえる。松浦には小倉がぴったりと続き、3番手には佐藤をさばいて坂口が切り替えてくる。ゴール前では小倉が得意のハンドル投げで迫ったが、松浦が押し切ってV。3着には大外強襲の鈴木庸が届いた。







<7R>

村上義弘選手
村上義弘選手
 前受けの山田久徳が、上昇してきた太田竜馬を突っ張って赤板過ぎから主導権を握る。下がった太田は中団で根田空史と併走し、これを見た山田は意を決してスパート。山本伸一が車間を切って後続をけん制した後、バックから番手まくりにいくと、最後は京都ライン3番手を固めた村上義弘(写真)がギリギリで差し切り。
 「(山田)久徳の頑張りですね。根田君と太田君も強いなかで、判断良く走ってくれた。(山本)伸一もけん制しながらで、それを見ながらで脚が削られたけど、なんとか最後は差せて良かった」
 終始、京都勢ペースで、番手絶好かと思われた山本伸一だったが、微差で村上に勝利を譲った。
 「久徳が突っ張って、中団がもつれているのもわかったけど、久徳も赤板から脚を使っていたからキツそうで。ラインでの走りを台無しにしてはいけないと思って、踏ませてもらった。あおりを作って、車間も空けていたからキツくて、最後は村上さんに交された。今日(最終日)は久徳の頑張りに尽きますね」

<8R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 インを進出した単騎の小原太樹に接触した長島大介が落車して、渡邉一成も巻き込まれる。打鐘手前で松川高大が先頭に立つと、小原が番手で粘り、中川誠一郎と併走になる。松川後位が小原、大槻寛徳(イン)と中川、桑原大志で重なり隊列が短くなる。タイミングを取っていた山口拳矢(写真)は、最終2コーナー手前からまくりを打つ。スピードの違いで前団の併走を乗り越えた山口が後続をちぎった。
 「(落車があって)そのあとはどこで行こうか迷いましたけど、前が併走してたんで、(仕掛けて)あとはバックを取るだけだと。(踏み出して)1着にイケると思いました。昨日(初日)もアクシデントがなかったら思うように走れたかなっていうのもある。7車立てで突っ張ったりもしてたりしたんで、それで(9車立ての)感じがわかってきた」
 外併走を我慢した中川誠一郎は、山口のまくりを追うように前に踏んだが離された2着。
 「(渡邉)一成が(落車で)いなくなったのがわかった。あとは併走を耐えてれば、なんとかなるかなと。(山口は)単騎でなにも(脚を)使ってなかったんで、まくられるのはしょうがないですね」

<9R>

志智俊夫選手
志智俊夫選手
 赤板で堀内俊介が切った上を、さらに押さえて皿屋豊が2コーナーから先頭に立つ。後方に下げた寺崎浩平が打鐘から巻き返すと、これに合せて島川将貴も中団からスパート。最終ホーム過ぎには島川の主導権に変わるが、山下一輝は離れて島川後位には中部コンビがハマり込む。立て直してまくった寺崎は3番手の外あたりまでで、島川を先頭に直線へ。最後は志智俊夫(写真)が3番手から中を割って1着。
 「連日、展開がいいね。皿屋君は公務員出身だからデビューした時から誠実でまじめで。レースでもしっかりと走ってくれる。こういう選手に迷惑を掛けないように走っている。今日(最終日)もうまく走ってくれた」
 島川に叩かれた皿屋豊だったが、冷静に番手に入っての直線勝負で志智と上位独占。
 「最善の動きができた。あれで島川君を突っ張って逃げ切る脚はまだないので、出させてからと。突っ張れる脚があれば、もっと上でいい勝負ができるようになる。1着を取りたかったけど、志智さんが強かった。最近は攻め方のバリエーションも増えてきたし、そうなることで、相手も仕掛けが難しくなると思うから自分もより戦いやすくなると思う」

<10R>

野原雅也選手
野原雅也選手
 赤板2コーナー過ぎに野原雅也(写真)が押さえて先頭に立つが、すかさず松本貴治が巻き返す。野原も合わせてペースを上げるが、松本が叩き切って最終ホームを通過する。番手に飛び付いた野原と河端朋之で併走。6番手からまくった平原康多は椎木尾拓哉と接触して失速し、椎木尾は落車。2センターで外の河端が後退して、野原が追い込んだ。
 「(松本か岩本俊介の)どっちが来ても目いっぱい踏んでと思ってた。でも、見えてからじゃ合わせられないですね。結果オーライですけど、ちょっと中途半端には…。脚の感じは悪くないんですけど、要所、要所が踏めてない」
 野原マークの東口善朋が、野原に迫り両者の体が重なったところがゴール。写真判定の末に野原、東口で1着同着になった。
 「このメンバーでどうやって1着を取るんだろうっていうのがあったけど。(野原)雅也がうまく対処してくれて、組み立てとか流れではどうにかなるんだっていうのもわかりました。1着が取れたことは自信になります」

<11R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 北日本勢が切った上をさらに切って清水裕友(写真)が赤板2コーナーで先頭に立つ。そこを稲垣裕之-村上博幸が叩いて先行勝負に出る。京都コンビを出させて3番手確保の清水は、最終2コーナーからまくり発進。3コーナーでまくり切った清水に、ゴール前では激しく香川雄介が詰め寄ったが、こらえた清水が1着。
 「いい位置を取れて良かった。この時期は先行した選手が掛かるから、後方になったらお呼びでなくなる。前の方にいないとチャンスないですからね。初日はギヤとかを試したけど、全然ダメだった。(高松宮記念杯の舞台になる)岸和田も噂によれば、バンク改修で軽くなったらしいので、今回みたいなレースが増えそうですよね」
 香川雄介は4分の1輪差の2着に苦笑い。
 「差したと思って意気揚々と引き揚げてきたら2着と言われてショック。自分の感覚では差した感があった。(清水)裕友がいい位置取って仕掛けてくれて(ラインの)3人まで決まったし、合格は合格やね」

<12R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 松浦悠士(写真)が人気に応えて地元優勝を決めた。古性優作が赤板過ぎに前団を切るが、吉田拓矢と松浦は中団で併走したまま動かない。これを見た古性が先行勝負に出るも、外併走から最終2コーナーで仕掛けた松浦が力強くまくり切ってしまう。最後は小倉竜二とのゴール前勝負も制して、松浦が押し切った。
 「吉田君が前受けなら(古性)優作が切ってで考え通り。あとはまくれるかどうか。外併走でも脚はたまっていたし、鈴木裕さんが締めてくれていたから回りやすかった。優作が先行なら坂口(晃輔)さんか鈴木裕さんが車間を空けるだろうし、そこを乗り越えて優作との勝負だと。昨日(初日)の修正点がわかっていたんで修正ができた。4連続優勝はやりすぎかなと。でも、ここは地元なので、負けられない思いだった。11レースで(清水)裕友が1着でそれが力になった。地元は3割増しなので、結果を出せて良かった」
 初日に続いての差し切りはならなかったが、小倉竜二もしっかり続いて2着を確保。
 「中団、中団で吉田君が下げなければ、外併走からまくるっていう感じだった。(松浦は)吉田君が下げなくてもあの位置からまくる自信があったんやろね。坂口君のけん制を乗り越えてもう一段階、加速して、ゴール前も昨日とまったく違った。さすがやね。(外併走からなのに)出足が普通のまくりでした。自分はもってこられないように外に差し気味に回っていた感じです」
 松浦の好プレーの前に関東勢は沈黙。直線大外を強襲して鈴木庸之が3着に入るのがやっとだった。
 「(吉田)拓矢も(松浦が)叩いてくれると思っていたんだと。もう少し拓矢も抵抗してくれれば…。ラインとしてはまったく機能しなかったですね。自分の感触は切り替えてから3着まで伸びているから、前回の函館よりも踏めていたし良かったですね」

次回のグレードレースは6月5日~8日の日程で、別府競輪場にて開設71周年記念「オランダ王国友好杯」が開催されます。
今回のGIIIシリーズには松浦悠士、郡司浩平、守澤太志、和田健太郎のSS班4名をはじめ、浅井康太、諸橋愛、新山響平、北津留翼ら全国各地からトップレーサーが集結。また、最終日第9レースにおいて「レインボーカップA級ファイナル」が一発勝負で行われる。こちらも目が離せない!
5月24日時点の出場予定選手データを分析した別府GIII「オランダ王国友好杯」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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