『全日本プロ選手権自転車競技大会記念競輪レポート』 最終日編

配信日:5月29日
 佐世保競輪場で開催された2日間の短期シリーズ、「全日本プロ選手権自転車競技大会記念競輪」は、5月29日に最終日が行われた。メインの「スーパープロピストレーサー賞」は、逃げた新山響平の番手から追い込んだ守澤太志が制して、賞金360万円(副賞含む)を獲得した。

スーパープロピストレーサー賞 レース経過

 号砲が鳴ると松浦悠士が勢いよく飛び出し、外枠ながら誘導員の後ろを占めた。太田竜馬-松浦の中四国勢が前を固める。これに吉田拓矢-諸橋愛の関東勢、更に古性優作-荒井崇博の即席ラインが続く。新山響平-守澤太志-成田和也の北日本勢が後攻めで初手の態勢が決まった。
 青板周回のバックあたりから正攻法の太田はペースを落とし、徐々に誘導員との車間を空け始める。スローペースの中、吉田-諸橋が太田の前に出ると、古性-荒井、新山-守澤-成田も踏み上げる。赤板過ぎに新山率いる北日本勢3車がそっくり前に出ると、4番手は古性、6番手が吉田となり、太田は8番手に置かれた。ジャンが入ると先行態勢に入っていた新山は一段とペースを上げる。太田は最終ホーム手前の4コーナーから反撃を開始。太田は徐々に番手を上げていくが、2コーナーで古性が合わせるようにスパート。太田は不発に終わり、松浦は古性-荒井の後ろにスイッチした。逃げた新山のかかりが良く、古性は3コーナーで守澤に並びかけるまでが精いっぱいで、4コーナーで守澤にさばかれて力尽きた。絶好の番手周りとなった守澤が、直線でイエローラインあたりを鋭く伸びてきた松浦の強襲をしのいで優勝。松浦は4分の1輪差の2着で、惜しくもスーパープロピスト賞3連覇を逃がした。3着は直線大外を伸びた荒井が入った。

<7R>

内藤宣彦選手
内藤宣彦選手
 吉田有希が誘導を残したまま下げて、誘導後位には近藤隆司が入る。4番手にいた渡邉一成は、打鐘手前から踏み込んで先行策に出る。近藤が3番手に飛び付いて、車間が空いた6番手に島川将貴。吉田有希は8番手で最終ホームを通過する。1センターからまくった島川、2コーナーで踏んだ近藤はともに不発。逃げる渡邉を番手の内藤宣彦(写真)がゴール前で交わして1着。91年のデビューから30年以上をかけて、通算400勝のメモリアルを遂げた。
 「(渡邉が)カマシなら離れるかもって思っていたんですけど。おいしい位置(4番手)だったんですけど、もしかしたら行くかもしれないと。いつまくりが飛んでくるのか、ヒヤヒヤしていた。余裕はなくて必死でした。ゴールしたあとに1着だなって感じでしたね」
 20代の機動型をまくりにまわして、果敢に逃げた渡邉一成が坂井洋と同着の2着。
 「スタートは吉田君が後ろを嫌えば、前を取りに来るかなって思った。脚を使って前に出るより、使わずに出たかった。いつ後ろからカマしてきてもおかしくない展開だったので、ペースに入れながら来たら合わせられるようにって感じで踏んでいきました」
 目標の吉田の反応がいまひとつで、坂井洋は9番手から自力に転じてまくり追い込んだ。
 「吉田君は(渡邉)一成さんのところで止まると思ったんですけど、下げてきた。あそこでこだわれば、一成さんが叩きに行って、その上を行けるかなって思っていた。でも、任せていたので仕方ないですね。もうちょっと早く自分でもいけましたけど…。結果的に待ってギリギリ届かなかった」

<8R>

村田雅一選手
村田雅一選手
 赤板2コーナー手前で上田尭弥が出て、九州勢の主導権。菊池岳仁も巻き返すが、上田が突っ張る。中団で浮いた菊池は、最終ホーム手前から再度仕掛けるが不発。中団確保の山田久徳のまくりは中本匠栄が阻む。空いたインを村田雅一(写真)が突く。九州3番手の田中誠も一緒に入るが、村田が田中を制して直線で追い込んだ。
 「(山田)久徳が全部仕掛けてくれたおかげです。(外に浮いていた)菊池君の動きで、久徳はタイミングで行けなかったと思う。(中本)匠栄も思ってたより(ブロックに)いってたし、自分もあそこを狙ってたわけではない。まずは久徳にしっかりと付いていこうと。状態は今日(最終日)の方が良くなかった。(初日より)重かったです」
 初日に続いて先行策の上田尭弥は、中本の援護にも助けられて2着に粘り込んだ。
 「(周回中の)位置取りも思った通りだったし、山田さんが切ったところを思ってました。あとは菊池君が仕掛けてきたのもわかったんで、突っ張っていきました。昨日(初日)よりもペースに入ったし、匠栄さんがもっていってくれたのもわかった。今開催は今年に入って一番いいレースだった」

<9R>

吉澤純平選手
吉澤純平選手
 眞杉匠は前受けから赤板過ぎに石原颯を突っ張って主導権をキープする。稲垣裕之が4番手を確保して、単騎の皿屋豊が6番手に切り替える。7番手で立て直した石原は、打鐘の3コーナーから再度仕掛ける。石原の加速に香川雄介が遅れて、吉澤純平(写真)にさばかれる。眞杉も上げ切れず、最終1コーナーで石原が出切り番手には眞杉が入る。2コーナーで永澤剛とからんだ香川が落車して、稲垣も乗り上げる。バック手前から眞杉が番手から出て、危なげなく続いた吉澤が差し切った。
 「眞杉君が結構、いいペースで踏んでいたので、(別線は)来ないと思っていたら来てしまった。石原君を止められれば良かったんですけど、たまたま遅れてた香川さんのところになりましたね。強い眞杉君を抜けているので悪くないですね」
 石原に出られた眞杉匠だったが、ラインの援護もあり、番手まくりでラインを上位独占に導いた。
 「最近は突っ張り先行をしていなかったので前になったら突っ張ろうと思っていました。(石原が)来ていたのに気づかなかった。行かれてしまったんですけど、追いつきざまに行けた。1回待つと後ろがキツいと思った。前々に攻めていった結果なので、まくりですけど内容的には悪くなかったと思う」

<10R>

浅井康太選手
浅井康太選手
 赤板2コーナーで郡司浩平が、清水裕友を押さえて先行態勢を取る。浅井康太(写真)は神奈川コンビに続くも、3番手に飛び付いた清水と併走になり、野原雅也も踏み込む。野原を突っ張り切った郡司が駆けて最終周回。3番手に東口善朋が切り替えて、4番手に入った浅井は2コーナーからまくりを打って、直線で抜け出した。
 「ジャン前くらいに清水君と位置取りでからんだ形になってムダ脚を使ってしまいました。郡司君が突っ張り切ったなかで、展開が僕に向きました。昨日(初日)の古性(優作)君もそうですけど、最近の古性君の走りを参考にさせてもらってます。前々に踏んで3着までに入るっていう走りができたと思います」
 園田匠は最終バックで8番手。清水の余力、小倉竜二のコースを見極めて、大外を追い込んで2着。
 「(清水が)踏み合ってくれたおかげですね。別線なら早めに仕掛けていたけど、3番手を固めていたんで清水君がキツそうなのと小倉(竜二)さんが内に行くのを見てから踏んだ。前回の最終日くらいから進んでるし、タテ脚は問題ない。だいぶ手ごたえが戻ってきた」

<11R>

山田庸平選手
山田庸平選手
 渡邉雄太が赤板2コーナー過ぎに出て、南関勢に続いた平原康多が3番手に入る。後方でタイミングをうかがっていた中川誠一郎は、打鐘の3コーナーで仕掛ける。中川がカマして山田庸平(写真)の追走。九州コンビに切り替えるようにまくった平原を山田がけん制して追い込む。平原マークから内をすくった佐藤慎太郎に踏み勝った山田が1着。
 「終わってみれば、もうちょっと平原さんを引きつけられれば良かったのかなと。そのせいで(佐藤に)内に入って来られてしまった。(中川)誠一郎さんのおかげですね」
 平原をブロックした山田の内を追い込んだ佐藤慎太郎は2着まで。
 「(中川が)掛かっちゃいましたね。平原君もうまく走ってくれたんですけど、いいブロックをもらっていた。自分はベストなタイミングで入ったつもりですけど、山田君がうまかった。一瞬怯んでしまったのも良くなかったのかな」

<12R>

守澤太志選手
守澤太志選手
 前受けの太田竜馬は、青板のバックあたりから誘導との距離を取って引き始める。押し出されるように新山響平が、スローペースで先頭に立つ。合わせて踏んだ古性優作が4番手を確保して、吉田拓矢が6番手の一本棒。太田竜馬も仕掛けず、後続を引きつけたまま新山の先行態勢で打鐘を通過する。新山が徐々にペース上げて駆けるが、4コーナーから太田が反撃に出る。太田に合わせて古性が最終2コーナーからまくる。3コーナー過ぎに古性と重なった守澤太志(写真)が外に張る。三度目のブロックで古性を阻んだ守澤が、松浦悠士との踏み合いを制した。
 「今回は特別(GI)じゃないですけど、特別級のこのメンバーのなかで優勝できたのは自信にもなるし、うれしく思っています。新山君はいつも強いんですけど、いつも以上に強かったですね。4番手は古性君がいるだろうと思っていた。古性君のまくりはキツいので、プレッシャーはかなりありました。太田君が来たのが見えていなくて、軽く振ってそのあと古性君を止められた。前に踏むしかないところでやっぱり松浦君がきた。ゴールした時はいかれたかなって思ったんですけど、ビジョンを見て、お客さんにも言ってもらえて勝ったかなって感じでした」
 太田が不発になると、松浦悠士は古性と荒井崇博の間をシャープに伸びた。
 「(太田が仕掛けたのが)だいぶスピードが上がっているなかだったので、ちぎれそうになりました。(打鐘の)4コーナーからの加速でかなり(脚を)使っちゃいました。荒井さんは外を踏むかなっていうのと、古性君なら(外に浮かずに)内を閉じ込めてくれると思ったので(あのコースを踏んだ)。悔しいですね」
 古性と守澤の攻防を見極めて外を追い込んだ荒井崇博は3着。
 「チャンスはあったね。とりあえず太田君だけは張って、自分のコースをって思っていた。(コースは)待って中だったかもね。外を回しても突き抜けられるように練習します。ちょっと自分の脚を過信したのと、コース取りのミスですね」

次回のグレードレースは、取手競輪場開設72周年記念「水戸黄門賞」が6月4日~7日の日程で開催されます。
今開催は吉田拓矢、松浦悠士、佐藤慎太郎、宿口陽一のS級S班4名をはじめとして、新田祐大、太田竜馬ら自力型の実力派メンバーが勢ぞろい。熾烈なV争いが繰り広げられるのは間違いなし!ファン必見の4日間です。

5月23日時点の出場予定選手データを分析した、取手競輪「水戸黄門賞」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてご覧ください。

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