『全日本プロ選手権自転車競技大会記念競輪レポート』 最終日編

配信日:5月28日
 富山競輪場で開催された「全日本プロ選手権自転車競技大会記念競輪」は、5月28日に最終日が行われた。近畿勢がわかれた「スーパープロピストレーサー賞」で主導権を握ったのは北日本勢。4番手からまくった古性優作が、先まくりの松浦悠士をとらえてV。17年の和歌山以来、2度目の「スーパープロピストレーサー賞」を制して優勝賞金385万円(副賞含む)を手にした。

スーパープロピストレーサー賞 レース経過

 号砲が鳴ると牽制気味のスタートから脇本雄太が前に出た。初手は脇本-山田久徳、古性優作-稲川翔-東口善朋、浅井康太、新山響平-新田祐大、松浦悠士の並び。
 青板周回に入ると新山-新田がゆっくりと踏み上げ、松浦も続く。バックで新山が正攻法の脇本に並びかけると、脇本は一旦突っ張ってから車を下げた。新山-新田、松浦に古性-稲川-東口も乗り換えると浅井も続き、脇本は8番手で赤板を通過。先頭に立った新山はスローペースで後続の出方を窺っていたが、ジャン前から一気にベースアップ。番手の新田は2車身ほど車間を空けて後続の反撃に備える。最終ホームで3番手の松浦がスパート。気付いた新田は合わせに行くが、真後ろからなので対応が難しい。松浦は新田を乗り越えて2コーナーを立ち直ったところで先頭に躍り出た。2車身ほど離れて松浦を追っていた古性は、最終バックで追いつくと休むことなくまくっていく。松浦も抵抗してつば競り合いとなったが、直線の入り口で古性が松浦をねじ伏せた。古性は17年以来となる2回目のスーパープロピストレーサー賞優勝に輝いた。稲川-東口が古性にきっちり食い下がり、2着に稲川、3着には東口が入り、ラインで確定板を独占した。


<7R>

松谷秀幸選手
松谷秀幸選手
 野田源一が切った上を太田竜馬が叩いて、中四国ラインの主導権。8番手に置かれた根田空史は、打鐘過ぎから巻き返す。逃げる太田も抵抗するが、最終2コーナー手前で根田がねじ伏せる。切り替えた橋本強が中割りを試みるも、松谷秀幸(写真)が、落ち着いて番手から追い込んで根田とワンツー。
 「(根田に)久々に付いたけど、あれを行っちゃいましたね。脚力が違うし、タテが違う。昨日(初日)が不甲斐なくて、今日も心配だったけど、余裕があった。最近はその日によって体の感じが違う。こういう(成績の波)のが続かないようにしたい」
 ロングまくりで別線をのみ込んだ根田空史が2着。シリーズ2連対と上々の動きで見せた。
 「フタをされる展開も想定していたけど、野田さんが切ってくれて動きが出たので良かった。スピードの乗りが良かったので、行けるかなって思った。タイミングがいいところで行けましたね。(状態は)かなり良くなっているし、(前回の宇都宮から戻した)フレームも合っていますね。(失格があって)1班の点数が勝負っていうのは経験したことないけど、6月が勝負なので頑張りたい」

<8R>

松井宏佑選手
松井宏佑選手
 久米康平が先頭に立つと、4番手は前受けから下げた松井宏佑(写真)と嘉永泰斗の併走で赤板を通過する。嘉永と松井で空いたインを進出してもつれ、嘉永は前まで出て先行策に出る。松岡辰泰は連結を外して、久米が番手に入る。しかしながら、最後方から雨谷一樹が番手まで追い上げて、嘉永後位は併走。さらに松岡も追い上げて、7番手の松井は松岡を目標に最終ホーム過ぎから踏み上げる。逃げる嘉永の掛かりもいいが、まくった松井が直線でとらえて1着。
 「(嘉永と中団争いになって)そこから内にもぐり込まされる感じになった。どうすればいいかなと思ってたら、嘉永君が行っちゃった。ああいう展開になってしまったんで、行けるところですぐに行ければと。(前団の)山を乗り越えて、いいスピードが出てましたね。悪くないですね」
 結果的にはトリッキーな動きになった松井に続いた和田真久留が2着でラインの決着。
 「エリミネイションみたいにぐちゃぐちゃになった。自分はどこでも松井君を迎え入れようと思ってました。最終ホームくらいですかね、(松井が)単独になったのは。あれでも普通は行けない、(松井は)強いですよ。自分は見極めて、見極めてになったんで、その分差せなかった」

<9R>

犬伏湧也選手
犬伏湧也選手
 犬伏湧也(写真)に併せ込んだ菊池岳仁が、外併走から青板3コーナーで仕掛ける。赤板手前で菊池が先頭に立って主導権も、犬伏はすかさずスパート。全開で合わせる菊池を打鐘4コーナーで犬伏が叩き切る。阿竹智史は犬伏の加速に付け切れず、番手に入った菊池は車間が空きながら追いかける。ラインが崩れた5番手になった柏野智典がまくるが、和田圭がブロック。直線で和田が詰め寄るも、犬伏が押し切った。
 「中団から菊池君と一緒に出て行きたかったけど、押さえにくるスピードが早くて対応ができなかった。フタをされてからは冷静になって。阿部(将大)君の踏み方もどうするのかなっていう感じで、自分には行きやすくなった。踏み出しは微妙だったけど、あとから伸びていった。出切ってからはゴールまで押し切れるように踏んだ。ラインが4車だったのに、決められなくて申し訳なかったです。33バンクはあんまり走ったことがなくて、どうなるかと思ったが、競走になっていたので良かった」
 和田圭は菊池を目標に、後続との間合いを取る。柏野のまくりを止めて2着に追い込んだ。
 「菊池君なら追いつくと思っていたけど、犬伏君は思った以上に強かったですね。来る前は良くなかったけど、昨日(初日)、(新山)響平と話してセッティングだったりをいじってみて昨日よりは良くなった。いまの競輪は昔では考えられないようなスピードが出ている。僕らも脚があって、そのスピードについていかないと、最後にコースを見ることもできない。レベルアップして対応していきたい」

<10R>

成田和也選手
成田和也選手
 千葉コンビが出ると、3番手の外でタイミングを取った眞杉匠がじわり赤板で押さえて出る。眞杉は引きつけながら、山口拳矢の仕掛けに合わせて踏み込む。荒井崇博と呼吸が合わず、眞杉は1車になった山口を受ける。4番手で荒井と岩本俊介でもつれ、眞杉は最終ホーム手前で番手発進。眞杉のまくりを利した成田和也(写真)が、和田健太郎の強襲を退けた。
 「(山口が)1車だったんで、(眞杉は)その後ろでもいいのなかと。どうすんのかと思ったら(番手に)入った。でも、すかさず(仕掛けて)いったんでさすがですね。最近は成績も良くないんで、しっかり抜かなきゃと。(脚の感じも)悪くなかった。和田君も外を来てたんですけど、もう少し待っても良かった」
 荒井にからまれながらも、岩本が眞杉、成田の後ろを確保。最終3コーナーで仕掛けた岩本は外に浮いて、和田健太郎が直線でシャープに伸びた。
 「(岩本は)欲を言えば、荒井さんの前をすんなり取り切れればもっとおもしろかったかなと。自分はさすがにあの外はいけないんで。最近のなかではいい感じで伸びた。自転車は前回から新車でセッティングはいじっているけど、今回もその自転車できました。7、8番手からあそこまで突っ込んでこられたらって(自信になるかなって)いうのはある。でも、状態はまずまずかなと思います」

<11R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 吉田拓矢、三谷竜生の順番で出て、そこを深谷知広が赤板2コーナーで叩く。ペース上げながら深谷を出させた三谷が3番手。打鐘手前から仕掛けた山田庸平は、5番手で吉田と重なる。取り切った吉田がまくりに出て、三谷も最終バックから仕掛ける。逃げる深谷の掛かりも良く、三谷、吉田はまくり切れず、深谷の番手の佐藤慎太郎(写真)が抜け出した。
 「どこに行ってもファンの応援はすごいので励みになります。深谷君は絶対に仕掛ける選手。安心して付いていました。S班で決勝(スーパープロピストレーサー賞)にこぼれたのは自分だけだったので、確実に1着を取りにいきました。2日間とも前が強い。(初日の)新田君も100点のレースをしてくれたが、自分のミスが重なりました。(次の高松宮記念杯だが)GIだけではなく、その瞬間、瞬間に120パーセントを出せるように」
 3番手から仕掛けた三谷は行き切れずも、付けた村上博幸が中のコースを伸びた。
 「昨日(初日)もこのクラスの動きを体験して動きは早いなと。状態は良かったですし、(2日目は)脚がたまっていたので、おもしろいかなと思っていた。今年からGIに復帰して33バンクなら最終バック、400バンクだと2センター、そこから進むスピードが違う。今回、強い選手と走れて良かった。単純に全体的に脚力を上げていかないと」

<12R>

古性優作選手
古性優作選手
 青板3コーナーで脇本雄太が踏み込むも、新山響平が押さえ込んで主導権を握る。北日本コンビに単騎の松浦悠士が続いて、古性優作(写真)は赤板で抜かりなく4番手をキープする。もう1人の単騎の浅井康太が7番手。脇本は8番手でレースが流れる。打鐘2センター付近から新田祐大が、逃げる新山との車間をさらに開け始める。3番手の松浦はそのタイミングを逃さず、最終ホーム手前からスパート。新田のけん制を乗り越えた松浦が2コーナーで出るが、すぐさま古性がまくりで襲い掛かる。松浦とからんだ古性だったが、スピードの違いで抜け出して優勝。
 「(松浦が先に仕掛けたが)自分も道中すごい余裕がありました。詰まってしまったんで車間を切って助走つけないとまくれないなと思ったんですけど、その時に松浦君が行ったんでちょっと立ち遅れた。そこ(松浦)を目がけて思い切り行った。自分も当たられてスピードも落ちてましたし、結構苦しかった。もう(優勝は)稲川(翔)さんかなって思ったら、まさか粘れたかなって感じですね。東口(善朋)さんには(自分のラインか脇本ラインか)どっちに付くかって選択で苦しい思いもさせてしまいました。ワンツースリーだったんで僕に付いてくれて良かったなって思ってもらえていればうれしいかなって感じです」
 古性マークの稲川翔は、もつれた前の2人のあおりで最終2センターで外に膨れた。それも影響して4分の3車輪差の2着。
 「(古性を)抜きたかったですけど…。昨日(初日)離れているんで、それが頭にありすぎて余裕がなかった。松浦と古性の踏み合いになって前を見すぎた。そんなつもりではなかったんですけど、追走に専念してしまった。ただの言い訳になりますけど。(古性)優作を抜けるようになれば、もっと信頼をしてくれると思う」
 脇本は不発で古性ラインで上位を独占。分かれた近畿勢の古性ライン3番手を選択した東口善朋は、こう振り返る。
 「(脇本、古性)どっちに付くかは、賛否両論があると思います。結果、ワンツースリーが決まったんで良かった。33バンクだったし、(最終)3コーナーののぼりはキツかったですね。新田君とも併走しかけたのもあったし。ただ、自転車の流れ方、体の使い方がマッチして、必死ではあるけど、力が抜けて走れている。感触的には悪くなかったです」

次回のグレードレースは、大垣競輪場開設71周年記念「水都大垣杯」GIIIが6月3日~6日の日程で開催されます。
今シリーズはダービー王に輝いたばかりの山口拳矢が登場。ホームバンクで地元ファンの声援に応えるべく、地元Vに邁進します。もちろん、松浦悠士、郡司浩平のSS班も黙ってはいませんし、3月に当所記念を制した犬伏湧也も元気一杯。興味津々のV争いです。
また、最終日第9レースにてレインボーカップA級ファイナルが行われます。A級選手の頂点を決める一発勝負も見逃せません。

5月22日時点の出場予定選手データを分析した、大垣競輪「水都大垣杯」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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