『全日本プロ選手権自転車競技大会記念競輪 レポート』 最終日編
 
配信日:5月15日


 村上博幸が圧倒的なスピードで全プロ記念競輪を制覇した。2日間にわたって繰り広げられた熱戦のクライマックスは最終11Rの「スーパープロピストレーサー賞」。激しい主導権争いが展開されたが、一度は最終HSで立ち遅れた村上が、自力に転じて前団をひと飲み。SSシリーズ風光るに続き、また大舞台での勝利を積み重ねた。
 16日は「第57回全日本プロ選手権自転車競技大会」が開催されます。スプリントなど、プロ選手による真剣勝負は見所十分。ぜひ迫力のレースを生でご観戦ください。


スーパープロピストレーサー賞ダイジェスト
 号砲と共に、村上博幸と小倉竜二が飛び出すが、内枠の村上がスタート争いを制し、小嶋敬二を迎えいれる。隊列は小嶋―村上―市田佳寿浩の中近ラインが前受けとなり、中団は平原康多―岩津裕介―小倉、伏見俊昭―成田和也―岡部芳幸の福島勢が後ろ攻めとなった。
 レースは青板周回から動き出す。7番手の伏見が上昇し小嶋に並びかけると、小嶋は下げて福島勢を入れる。すかさず平原も踏み上げ打鐘で誘導を交わして先頭に立つが、ペースを上げないと見るや伏見が内から突っ張りハナを奪い返す。伏見が風を切り中団は内の小嶋と外の平原が併走のまま最終ホームを通過すると、最終1角で小嶋が空いた内を突き先頭に立つ。しかし、村上はこの動きに付け切れず、福島後位に切り替える。全開で踏む小嶋に対し、番手にハマった伏見だったが追走一杯で口が空いてしまう。先頭のまま直線に入った小嶋がそのまま押し切るかに見えたが、最終3角から自らまくりを放った村上が直線で強襲。ゴール寸前で小嶋を捕らえ優勝をさらった。3着は村上追走の市田で、一度は連結を外したものの、終わってみれば中近ラインでのワンツースリーとなった。
ゴール
ゴール
表彰式
胴上げ
表彰式
胴上げ


<4R>
井上昌己選手
井上昌己選手
   九州勢が先行する展開となり、絶妙なブロックを見せた井上昌己(写真)が抜け出して1着。
 「荒井さんのおかげですよ。まだフワーッとした感じがあって、うまく自転車に力を伝えられていないですね。自力じゃないから勝てただけで、昨日みたいにレースを作らなきゃいけない組み合わせになると、流れに乗れませんね」


<5R>
 松岡健介が8番手から一気にまくって豪快な勝利を収めた。
 「調子はそれほど良くなかったんですけどね。今日は、坂上さんがしっかり自分の勝つレースをしろと言ってくれたので、落ち着いて仕掛けられました。いつもだったら最終ホームで慌てて仕掛けていたと思いますけど、今日は向かい風が強烈だったので、あそこでしっかりまくりに構えて、脚を溜めてました。とりあえず1着に届いて良かった」


<6R>
菊地圭尚選手菊地圭尚選手
   菊地圭尚(写真)は昨日に続き後輩の仕掛けに乗って1着。最高の形で2日間を終えた。
 「連日、前の子が頑張ってくれたおかげです。次は自分がしっかり走らないといけませんね。それにしても、今回は本当に緊張しました。心臓が破裂するかと思いましたよ(笑)」
 2着の柴崎淳は頭脳プレーが光った。
 「菅田君の先行を予想していたので、まずは自分が一回押さえてから、打鐘からホームにかけてが勝負だと思ってました。思い切り踏んでおけば3番手は確保できるはず。後ろも付いてこなかったし、うまく位置を取れました。もちろん勝ちたかったけど、展開は思った通りでした」


<7R>
山口富生選手山口富生選手
    検車場がどよめくほどの強さを見せた深谷知広。完璧な内容の押さえ先行で最終日の勝利をものにした。「稲垣さんが相手だったので、出切れるかどうかドキドキしてました。うまくペースで踏めましたね」と涼しい顔でレースを振り返る。
 番手を回った山口富生(写真)は追撃及ばず2着。
 「今日は深谷が強かった。脚を使わずに駆けてるからね。鈴木君を牽制した時に踏み直されて車間が空いてしまったのが…」
 鈴木謙太郎は苦笑い。
 「完全にまくり切ったと思ったんですけどね。今日は深谷が強かったとしか言いようがない。次は勝てるように頑張りますよ」


<8R>
渡邉一成選手渡邉一成選手
   渡邉一成(写真)が得意のカマシ先行で押し切った。
 「新田君はカマシ、まくりが得意な選手。それなら僕が前の方が先行基本に戦えるので、前回りを決めたんです。もちろん競らせるつもりはなかったけど、結果的にそういう形になってしまって申し訳なかった。長い距離を踏めたし、感じは良かったですよ」
 吉田敏洋は珍しく位置をさばく競走を見せた。
 「最初から狙っていた訳じゃないんですよ。でも、前のレースで深谷君が勝ったでしょう。僕も若い子の後ろを回る機会は増えていくだろうし、粘られることもあると思う。その時、粘る方がどんな気持ちなのか知れたのは収穫です。組み立てとしては、突っ張りと粘りは半々ぐらいでした」


<9R>
武田豊樹選手武田豊樹選手
   中団を確保した武田豊樹(写真)が貫禄の勝利。これで節目の200勝を達成した。
 「本当は永井君の所まで行って先行したかったんですけどね。今日は浅井君の動きがうまかった。早めに行かずに正解だったと思います。200勝と言っても通過点ですし、300、400と勝てるようにこれからも頑張るだけです」
 単騎の戦いとなった山賀雅仁は「今日は周りの人が強すぎました」と見せ場を作れず。


<10R>
村上義弘選手村上義弘選手
   村上義弘(写真)がいつも通り強気な攻めで勝利をものにする。強引な仕掛けで後続はバラバラになってしまったが、ゴール前のシビアな戦いを制して最終日を締めた。
 「結果的に不意打ちのような形になってしまったけど、後ろに岐阜の2人も付いているし、とにかく前に攻めることだけを考えていました。今の僕に後方に置かれてまくり切るだけの脚はないですからね」
 渡邉晴智は3着での入線に相好を崩す。
 「(海老根)恵太が頑張ってくれましたね。いつもの走りが戻った感じ。緩んだところで仕掛けてくれたので、その気持ちが嬉しかった」



<11R>
小嶋敬二選手
小嶋敬二選手
伏見俊昭選手
伏見俊昭選手
   スーパープロピストレーサー賞は村上博幸が異次元のスピードでまくり、SSシリーズに続いて2場所連続優勝を果たした。この村上の強さに、他の選手は成す術なしといった様子。内を抜けて先行した小嶋敬二(写真)は「まさか伏見が突っ張るとはね。中団で併走して内に放り込まれたときにちょうど内が空いたんで、勢いで前に出てしまった。1人になってしまったけど、後ろの伏見と車間が空いてたんで、もしかしたらと思ってたら黒いの(2番車)に抜かれた。『連結を外したんじゃないの?』ってビックリした。博幸が強すぎる」と舌を巻く。
 伏見俊昭(写真)は懸命に小嶋を追ったが、予想以上に車間が空いてしまった。
 「今日はすんなりの中団からまくろうと思ってたんだけどね。2人(村上博幸、市田佳寿浩)が付いてくると思ったら小嶋さん1人だけだった。あれでワンテンポ待ってしまったから、車間が空いてしまったね。普通にスポッと番手に入れば面白かったかも。(バンクの)下から踏み上げていくのがキツかったし、全然前に追い付かなかった。そうしたらゴール前ですごいスピードで村上君が来て…」
 平原康多は自分のミスを悔やむ。
 「早めに押さえたら小嶋さんとモガキ合いになってしまうと思ったら(仕掛けるのが)遅くなってしまった。伏見さんに突っ張られて予想外の展開になったけど、周りがどうこうと言うより、自分が未熟だったし、自分のミスで負けた。情けないですね」

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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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