『第5回ウィナーズカップ(GII)レポート』 初日編

配信日:3月25日

 松阪競輪場で「第5回ウィナーズカップ(GII)」が、3月25日に始まった。一次予選から白熱のバトルが繰り広げられ、初日のメイン、特選の3個レースでは、寺崎浩平、山田英明、清水裕友が白星スタートを切った。26日の2日目は、初日特選を勝ち上がった9人による「毘沙門天賞」が行われる。3人のS級S班に地元の浅井康太も「毘沙門天賞」に進出し、シリーズ後半の行方を見極める意味でも見逃せない一戦だ。
 なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、シリーズの4日間の入場は、事前抽選に当選された方のみとなりますので、ご理解をお願いいたします。テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

園田匠選手
園田匠選手
 河合佑弥、伊藤颯馬の順で動いたところを、根田空史が叩いて主導権を握る。番手の中村浩士が口が空くと、根田を追いかけたのは伊藤。車間を詰める勢いで追い込んだ伊藤に続いた園田匠(写真)が、直線で中を鋭く伸びた。
 「伊藤君とは良く連係もしていたし、9車でも冷静に立ち回ってくれました。後ろから来てる感じもあったし、後ろに大坪(功一)さんもいたので(踏んだ)。FI戦の7車は(成績)悪いけど、脚の感じは問題ないし、セッティングとかもいいまま。グレードレースの9車がいいですね」
 ビッグレースの1レース1番車で人気を集めた山口拳矢は、経験不足を痛感。
 「前を取ったのが一番の原因ですね。早く寝て調整をしてきたんですけど…。バックで踏んだ時に進まなかったですね。そこまでに脚を使っていた。FIの決勝がずっとある感じで気を張っていないといけない。9車も走り慣れていないので経験不足ですね。そればかりも言っていられないんですけど」

<2R>

高橋晋也選手
高橋晋也選手
 中近ラインが赤板2コーナーで先頭に立つも、高橋晋也(写真)は間髪を入れずに反撃に出る。それを察知した南潤がペースを上げて、4番手に入りかけた高橋だったが、さらに踏み上げる。最終ホームで高橋が叩いて、北日本3車が出切る。切り替えた伊藤裕貴は、自力に転じて前団に迫る。ゴール前の勝負は、北日本勢に中部の2人が加わり5車が横一線。後続を振り切った高橋が、ギリギリで踏ん張った。
 「4番手にはまって一瞬ブレーキがかかった。だけど、そこじゃダメだと思って、すぐに行きました。そこからは出られるってわかったんで、落ち着いていきました。脚的にもすごくいいかなと。いつも練習している通りに走れたんで、このまま心の余裕をもちながらいければと思います」
 最終3コーナーからまくり追い込む伊藤に乗った川口公太朗が、外を伸びて2着。
 「(南)潤があんなに踏むとは思ってなかったんで、自分も口が空いた。でも、余裕はありました。そのあと(伊藤)裕貴が行ってくれた。その頑張りがあるんで、本当にありがたい。ただ、自分はそんなに伸びているっていうのがなくて、フレームが重たい感じがあります」

<3R>

小林泰正選手
小林泰正選手
 河端朋之が赤板の2コーナーから一気に踏み込んで主導権を取る。このラインを追いかけて4番手を確保した小林泰正(写真)が、最終2コーナーから力強くまくって金星をゲット。昨年の福井でのウィナーズカップに続いて1着スタートを決めた。
 「自分としては先に切らないと、本来は重なるところ。近藤(隆司)さんのヨコが甘くて、たまたま入れた。展開が向いた。あんなすんなりだったのに、思いっ切りいいのが欲しかった。昨年も1着スタートだったけど、2日目に失格をしている。今回は4日間で2回はバックを取りたい」
 古性優作は稲毛健太が不発の窮地になったが、冷静に状況を見極めて自らまくる。
 「(稲毛が)1コーナーでフワフワしていたので状況を見てからでした。3コーナーのあおりで車輪が飛んで伸びなかったけど、感触は悪くない。1カ月半あっせんが止まっている間にやりたいことが全部できたし、納得できる状態。それを(前回の)大垣で試すこともできたし、今回はフレームを1台しか持ってきていない。悩みがない状態です」

<4R>

岩本俊介選手
岩本俊介選手
 赤板の2コーナー過ぎから仕掛けた坂井洋が、最終ホームで主導権を奪う。坂井の動きに反応できなかった岩本俊介(写真)は、7番手に置かれる。後方の岩本は2コーナーから踏み出すと、抜群の加速力で別線をのみ込んで和田真久留とのゴール勝負を制した。
 「9車立てでみんな動けるから、(スタートで)前を取ると必ず後手になる。だから前は避けたかったんですけど…。そのあと(坂井ラインには)ちょっとスイッチできなかったですね。GIIになると全体のペースも速いし、道中も脚を使う。それでも今の自分にとっては、その方が仕掛けやすい。(前回)広島でだいぶ走れる感覚があったけど、まだ半信半疑だった。でも、(初日走ってみて)悪くないです」
 岩本のスピードにしっかりと対応した和田真久留が2着に入って南関ワンツー。
 「(岩本の)スピード感が良かった。自分は前に稲川(翔)さん、阿部(力也)さんがいるんで、余裕はあったけど、1人1人確認しながら抜いていきました。番手の経験が少ないから最後の間合いがうまく取れなかったけど、脚は自力でも勝負できる感じです」

<5R>

山本伸一選手
山本伸一選手
 赤板過ぎに切った飯野祐太を藤井栄二がすかさず押さえて逃げる。5番手以降は森田優弥が取鳥雄吾を警戒して車間が開く。詰める勢いで最終2コーナーから仕掛けた森田に合わせて山本伸一(写真)が番手まくりを打った。
 「(藤井)栄二がいい競走をしてくれた。なんとか残したいと思ったけど、森田がいいスピードで来たので出る形になった。半車出られたけど、巻き返しているので調子は悪くない」
 最終4コーナーから空いたコースを突いた阿竹智史が2着に強襲。
 「(取鳥)雄吾も脚を使ってなかったし、付いていって外を踏もうと思ったけど、スピードをもらう形になってたまたまコースが空いて入っただけ。(川崎の落車で)首がひどかったので、練習ではまったくだったし、間に合ったような、間に合ってないような」

<6R>

東口善朋選手
東口善朋選手
 打鐘前に出た小原佑太が、そのままペースを上げて先行策。7番手の松本貴治が4コーナーから巻き返すが、3番手をキープした中井太祐が最終1センターから合わせて出る。和田圭のブロックをこらえた中井がまくり切ると、その外を伸びた東口善朋(写真)がゴール寸前で交わした。
 「自分が(松本を)振ったら、(中井)太祐も調子がいいのか前に踏んだ。それでちょっと口が空きましたね。あとは僕も余裕があったんで、太祐のことを見て踏みました。(ラインでの)ワンツーだったんで最高です」
 細切れ戦できっちり3番手をキープした中井太祐が、まくりで逃げる小原を仕留めた。
 「あの位置(3番手)が欲しかったんで、そういう展開をつくれて良かった。(最終)2コーナーから仕掛けられてるんで状態はいいと思います」

<7R>

香川雄介選手
香川雄介選手
 赤板過ぎに黒沢征治と接触した人気の太田竜馬が落車のアクシデント。山田諒が逃げて、黒沢がすんなり3番手に収まる。目標の太田を失った香川雄介(写真)が5番手に切り替える形で打鐘、最終ホームを通過。黒沢が車間を詰める勢いで一気にまくり、松谷秀幸が続く。その後ろで溜めていた香川が直線外を鋭く伸び切った。
 「太田がコケて、アッと思ったけど、黒沢の3番手だったので、頭を切り替えた。太田がいなくなって、黒沢の3番手なら本線だなと。太田には申し訳ないですけど。黒沢がまくり切って松谷が内に差していたので、黒沢を目がけて踏んだら伸びた。(前回の落車で)今回は新車で思った以上に伸びた。まくりの3番手からですからね」
 まくった黒沢征治は末を欠いて3着。太田と接触のアクシデントで脚を使っていたようだ。
 「太田君に当たってバックを踏んだし、脚にきていた。立て直すのが遅くなりました。山田君が掛かっていてキツかった。自分の展開だったし、ワンツーを決めたかったです。松谷さんと一緒に勝ち上がれたので最低限ですね」

<8R>

内藤秀久選手
内藤秀久選手
 7番手で前団との車間が大きく空いた松井宏佑は、打鐘の3コーナーで仕掛ける。逃げる嘉永泰斗も懸命にペースを上げるが、松井がねじ伏せて最終2コーナーで出切る。武井大介は付け切れず、内藤秀久(写真)だけが続いて、田中誠が3番手に切り替える。人気の神奈川コンビでの決着かに思われたが、松井は直線で失速。番手の内藤は1着も悔しさをにじませる。
 「(別線が切り替えて)後ろがどうなっているかは、わかってました。自分は締めながら回ってたつもりだけど、田中君に入られてしまった。もっと車間を空けるなり、器量が自分にあれば。(落車明けだけど)鎖骨は正直、自転車に関しては関係ないのかと。今日(初日)の1走目は若干、レース勘がズレているのかなっていうのがあった」
 田中が神奈川勢の間を突いて、外を踏んだ坂本健太郎が伸びて2着。
 「前の2人がやることをやってくれたおかげですね。自分はやっと練習に身が入るようになってきて上向きつつあります」

<9R>

山田久徳選手
山田久徳選手
 前受けから7番手まで下げた深谷知広が、赤板の2コーナーから巻き返して主導権を奪う。鋭い踏み出しに諸橋愛は口が空くも、追いついて番手をキープ。深谷が軽快に駆けるが、中団の内に包まれていた石塚輪太郎を見切って最終バック前から自力に転じた山田久徳(写真)が、直線外を鮮やかに突き抜けた。
 「(石塚は)いつも頑張ってくれるので、信頼して付いていた。2コーナーで内に詰まっていたので無理かなと思って判断をしました。深谷が宮本(隼輔)を合わせていたから回しどころでしたし、隠れて行った。踏んだ感触は良かったけど、途中までは番手でしたからね」
 山田の強襲に屈した深谷知広だが、持ち味の先行勝負で2着に粘った。
 「早めの先行を考えていたのでその通りになってマイペースで踏めた。いい先行ができたと思う。(状態は)雨だったので良くわからない部分はあるけど、先行して残れているので悪くない。(二次予選に向けて修正点などは)これから考えます」

<10R>

寺崎浩平選手
寺崎浩平選手
 野口裕史が先行態勢を取り、前受けの寺崎浩平(写真)は3番手に飛び付く。6番手で反撃のタイミングをうかがっていた新山響平は、打鐘を通過して2センターで踏み込む。新山の勢いがいいが、北日本勢に続いた門田凌もその上をまくる。かぶっていた寺崎は、ようやく最終3コーナーからまくり気味に追い込む。門田をゴール前でとらえた寺崎が、追い込みで勝ち星を挙げた。
 「直線が長いし、脚的には届く自信があったけど、内容はあんまりですね。こういう大きいレースでああいう展開が初めてで、後手後手になってしまった。(前回とは違う自転車だけど)フレームはいい感じ。もうちょっと調整する部分もあるけど。明日(2日目)はしっかり自力を発揮したい」
 浅井康太はタッグを組んだ寺崎の仕掛けをギリギリまで待って、付け直す好プレーの2着。
 「僕たちが後方に構えてジャン過ぎの勝負かと思ったけど、寺崎君がいい判断で3番手を取り切ってくれた。中部勢が少ないなかで、近畿が前で頑張ってくれるのは大きなこと。しっかりと信頼関係を築けるように。自分はいつもの初日よりもいい感触で踏めているし、しっかりと状況判断ができている」

<11R>

山田英明選手
山田英明選手
 打鐘で飛び出した蕗澤鴻太郎が、緩めることなく駆ける。3番手に上田尭弥が入り、松浦悠士は5番手。松浦後位は3コーナー過ぎに内をすくった渡邉一成が奪取する。逃げる蕗澤との車間を空けた吉田拓矢は、後続との間合いを取って最終バック手前から出る。2コーナーからまくっていた松浦にいつものスピードがない。上田はいっぱいで山田英明(写真)はインから吉田を目標に踏み込む。押し切り図る吉田を山田がとらえて1着。
 「上田君のおかげですね。(普段の)上田君のレースを見ていて、中途半端な選手じゃないし言うことはない。ただ、あれで外を行っても(1着は)ないし、シビアにいかせてもらった。脚を使ってなかったんで、久しぶりに楽な展開でした」
 番手まくりで2着の吉田拓矢は、果敢に攻めた蕗澤を称えてこう振り返る。
 「(蕗澤は)絶対に行くって言ってくれたんで、その気持ちがうれしかった。あそこまで行ってくれたんで1着を取りたかったけど、僕の力不足で申し訳ない。ただ、前回よりも調子がいいんで、自転車がマッチしている」

<12R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 大方の予想通り眞杉匠と大石剣士で打鐘前から踏み合い。しかしながら、平原康多のけん制もあって、外に浮いた大石は早めに力尽きる。最終2コーナー手前で郡司浩平が自力に転じてまくり、清水裕友(写真)が追いかける。鈴木裕は連結を外して後方。逃げる眞杉の番手から出た平原を郡司がとらえるが、清水が直線で楽に抜け出した。
 「(眞杉と大石で主導権争いになると思ったけど)思ったより大石君は行ってなかったというか、中団くらいで併走になってた。そこでちょっと郡司さんとかぶってヤバいなと思った。でも、そのあとに郡司さんが外を仕掛けたんで、うまくスイッチできました。(脚の感じは)ちょっと重たかったんですけど、展開にも助けられて1着なので悪くないと思います」
 外に浮いた大石が後退すると、郡司浩平がまくりを打って前団を沈めた。
 「踏み出した感じは、自分のなかでは前回よりはいいです。(大石)剣士もちょっと力尽きたような感じで、自分もどうしようかなってところだった。自分で行かなきゃ(ライン3番手の鈴木)裕さんにも迷惑を掛けちゃうかなと。(平原の番手発進に)半車前に出られたので。最後踏み勝てたかなってくらいで、展開的には自分も苦しかった」