―高松記念杯 2020「決勝」―
今年の高松宮記念杯はGI初開催となる和歌山。しかしご存知の通り無観客レースでの開催で和歌山にとっては非常に残念なシリーズとなりました。
そして初日「雨の宮杯」。時期的には仕方ない。多くの選手はそれを受け入れています。高松宮記念杯の概定番組は準決勝が東西2個ずつの4個レース。その事により一次予選、二次予選ともに他のGIと比べれば楽な勝ち上がりかと。初日「東特選」は新田がかまし先行であったが、粘れず4着。先手を取った南関ラインの郡司が切り替え1着。調子を維持していると感じた。「西特選」は清水が脇本に合わせる様に先行。脇本は打鐘2センターでスリップして失速しつつも、4番手にハマり捲り1着。今回の脇本と新田は凄くハンドルを上げていた。確かに競技で走る250バンクはカントがきつくスピードが乗ってくると前走者が真上に感じる。故にハンドルの位置は高くなる。それをそのまま持ち込んだ形のセッティングでした。技術的には競技では分厚いスペーサー(間にはさむ器具)を入れハンドルを高くしている。普通にハンドルを上げる方法もあるが、強度が失われます。特に短距離種目はハンドル回りが柔らかいと力のロスになります。ただ競輪ではスペーサーを入れる事が認めておらず、フレームの上パイプの付け根から通常のフレームより高くし対処していました。でもその事がスリップにつながりました。重心位置が高くなったからです。ただその事がなかったとしても、行けなかったと思います。4番手にハマった事で1着がとれただけです。今、清水松浦ラインしか脇本を倒せない。決勝で一緒になる事を願っていましたが、清水が脱落。二次予選の先行はいい掛かりでしたが、番手の岩津に余裕がなく早めに交わされ4着敗退でした。
2日目「青龍賞」は岩本が先行し4番手を取った単騎の平原が捲りに行きました。単騎なので様子を見るかと思いましたが、思い切っての動き。全員が準決勝の権利を得ている事もあったでしょう。新田は7番手不発。打鐘過ぎに仕掛けるタイミングはありましたがスルー。そこで仕掛けていれば準決勝を楽に戦える事になります。なぜならあのタイミングで仕掛ければ、準決勝もそうなる可能性があるので同乗の先行選手の仕掛けが自ずと早くなるからです。捲るタイミングも作りやすくなるって事です。しかし準決勝は物議をかもしだす並びで番手戦となりました。「白虎賞」は脇本強し。ただそれだけです。
3日目準決勝。9Rは見応えがありました。郡司と平原の目に見えない攻防です。日頃の平原の位置取りが郡司をそうさせました。そうなった郡司もそれを受け入れ早めに仕掛け、勝ち上がる事ができませんでしたが、内容十分です。10Rは松浦が展開を受け入れ8番手ホーム捲りです。自信の表れですね。11R 北日本5車の並びには残念な感じがしました。12Rここも脇本強し。ただ打鐘から先行しても番手すんなりの稲川には抜かれない事を脇本が把握しました。脇本にとっては大きな意味を持ちました。
そして迎えた決勝。脇本の優勝は揺るぎないと感じます。期待するのは松浦です。松浦自身も清水のいないレースで真価が問われている事は理解していると思います。そこありきで平原となります。新田は更にその後の事になります。グランプリの様な飛び付きは無い。それは稲川がしっかり付いてくる事と、稲川の動きが激しい事です。仮に位置をとってもかなり脚を遣わされるでしょう。
展開予想
前受は新田、松浦3番手で平原ライン。そして脇本率いる近畿ラインと予想する。脇本が動く前に松浦が動き脇本をけん制。平原は松浦ライン追走で松浦に期待する。松浦はどうするかである。脇本に行かれれば番手飛び付き以外は大敗につながる。同じ大敗なら合わせる覚悟での勝負と感じる。ただ脇本はこの上を行く。仮に松浦が合わし切れば平原が優勝する。合わせられず脇本出っきりの優勝濃厚です。
決勝番組
1番 |
佐藤 慎太郎 |
福島 |
2番 |
脇本 雄太 |
福井 |
3番 |
松浦 悠士 |
広島 |
4番 |
稲川 翔 |
大阪 |
5番 |
平原 康多 |
埼玉 |
6番 |
芦澤 辰弘 |
茨城 |
7番 |
新田 祐大 |
福島 |
8番 |
稲垣 裕之 |
京都 |
9番 |
和田 健太郎 |
千葉 |
レース経過
スタートの位置取りは予想通り。そして赤板を迎え平原が車間を切った。平原は松浦待ちではなかった。待ちなら車間を切る必要がないので脇本と同時に踏み飛び付き狙いであった。新田もある程度その事を考えていたのか知れませんが、新田も踏んだ。その事により平原はあんこになって、仕方なしの3番手。新田ラインの後ろにいた松浦が8番手に置かれたが、臆することなくホームから仕掛けた。脇本を捲る選手はいないと誰しも思っていましたが松浦のスピードは光った。結果的には番手に追い上げの形になった。打鐘先行の脇本が逃げ切り、完全優勝で賜杯を手にしました。
優勝した脇本より松浦のインパクトが凄かった。清水不在で真価が問われる一戦。道中は立ち遅れとは感じますが、見事な戦いでした。優勝した脇本はGI乗り始めの頃は赤板突っ張り先行など徹底先行で魅力的な選手でした。しかしナショナルチームに入り強いが魅力の無い選手に変化していきました。しかし今回の脇本はその魅力が戻りつつあると感じました。ただオリンピックが1年伸び、本当の意味での競輪選手に戻る事も1年先延ばしです。
今回の高松宮記念杯決勝は本当に見応えのある一戦でした。