月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
 誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20代前半から50代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2019年6月 西武園競輪場
「新車を買い発奮」
藤田 篤
北海道  61期
51歳  A級3班
昨年、3回の落車で合計15本の肋骨と鎖骨を骨折した。
「流石に応えた。それまで頑張れがんばれだった女房が、
辞めていいと言ったんです。
いざそう言われると、もう少し頑張ろうかなって」
限りある競輪人生、同期との会話が心に響いた。
「今のままだとどんどん弱くなっていく。
常に今より強くならないと現状ではいられない。
"そっか"もっと練習しなきゃダメだと感じました」
さらに800万円の新車を買い、自らを発奮させた。
「いま勝てないから全く面白くないけど、
今年一杯悔いのないようにやって、来年また考えます」
「受験は一回と決めていました」
柿本 大貴
東京  113期
23歳  A級2班
生きるか死ぬかの気持ちで取り組んだ練習。
「競輪学校の受験は一回と決めていました」
新たな目標を見い出し大学を休学した。
「野球を続けようと思っていたんですけど、
中学高校とやって、燃え尽きた感じもあったので、
チャレンジしました」
デビュー1年、再認識したことがある。
「いま、勢いが足りない。
強い気持ちでレースをして勢いを取り戻し、
先輩の教えを聞き、貫き通せるものを身につけたい」
「弟子の強くなる姿を見ていたい」
脇田 良雄
広島  66期
50歳  A級3班
もっと競輪と向き合えば良かったのかもしれない。
「20代後半は良かった時期で、勢いに任せたところがある。
漠然と夢ばかり追っかけていたなぁ。
気持ちや目標を明確にしていたらもう少しできたのかも」
いま、その悔しさを拭う昂揚感に包まれている。
「ワクワクする気持ちが減っている中で、
弟子の松浦悠士選手がすごく頑張っているのが嬉しいです」
この先の目標は明確だ。
「弟子の強くなる姿を選手として見ていたい。
まずはA級2班に再び上がり、1つずつ挑戦していきたい」
写真・文 中村 拓人