和田健太郎(千葉・87期・S級1班)
全日本選抜の決勝戦を見ながら伊勢崎彰大選手がポツリと呟いたのは「和田も特別の決勝に乗って当たり前の選手になってきたなぁ」というセリフでした。GIだけ見れば、2019年の寬仁親王牌、競輪祭、2020年の全日本選抜と3連続決勝に進出している。着実に力をつけてきている和田選手、その強さの秘密とは!?
やってきたトレーニングや、今の南関の層の厚さ、色んなことがかみ合ってきているんだと思います
-一番聞きたいことは、ずばり好調の要因は何ですか?
「最近はけっこうそれを聞かれるんですけど(笑)、でも、皆さんが期待されるような答えはないんですよね。自分もそこはよくわかってないので。ただ、言っているのは、数年かけてやってきたトレーニングだとかそういうものが上手く噛み合ってきたことと、あとは南関から若手が出てきたこととも大きな要因ではあると思います」
-トレーニングを変えようと思ったきっかけは?
「6年くらい前、その頃は成績がちょっと落ちていたんですよね。そこそこのペースであがってきてはいたけど、ちょっと勝てなくなってきていて、ケガなんかもあったんです。その時に元選手で、千葉で選手のトレーニングを見てケアをしている方がいるんですけど、その方にたまたま練習方法の相談をしたんです。僕の周りでは、街道練習で、ペースをあげて先頭交代とかやって、下り坂、登り坂、平坦とか、60kmのコースの中で全部やるみたいな練習が主流だったんですよ。でも、段々とそれで伸び悩んできた時に、その先輩に言われたのが『もっと理屈を考えた方がいいんじゃないかな』って言われたんです。わかりやすく言うとマラソンの選手は42.195kmを走るけど、その選手たちは短距離の練習をするかって言ったらしないですよね。マラソン選手は長い距離を走るためにもっと長い距離を走って体力をつけるし、逆に100mの選手だったら、その100mにどれだけ出し切れるかで、短い距離をバンバンやったりウエイトトレーニングをしたり体幹トレーニングをするじゃないですか。競輪はというとちょうど微妙な距離感になるんですよね。例えば2025mを走るけど、最初から全力で走るわけではないので、残り1周、2周から全力に近いところから始まるものなので、距離でいうと中距離くらいなんですよね。距離を乗るなら乗る、短いなら短いでやるってもっと分けて練習した方がいいんじゃないっていう話になったんですよ。今まで一色単にやっていたものを、もっと理屈を考えた方がいいんじゃないかって言われたんです。ウエイトトレーニングなど瞬発的なトレーニングをして、その次の日はそれ以上の出力はあがらないから、それを少し落とした距離を乗ろう、強度を下げて距離を伸ばしていく、3日目はもっと強度を落として距離を伸ばしていくようにしたらどうだろうかっていう話をされたんです。それを聞いた時にやるなら今かなって思って取り組み始めたのがきっかけでしたね。それまでは人と一緒に街道練習に行っていたんですけど、そういう組み立て方なので、やっぱり1人でやることをベースに考えてやるようになったことが大きかったんだと思います」
-6年かけて作ってきた身体とレースが今ちょうど噛み合っているんですか?
「そうですね、6年の間にギヤ規制とかもありましたし、自分の体力もあがってきたし、レースの見え方も違ってきたというのもあるかもしれないですね」
-今は自力もかなり出ていますね。
「前がいない時は意識的にやっていますね」
-レースに関して、前がいる時と自分で動く時は考え方も違いますよね。
「それはもちろん変わりますよね。それも難しいところですけど、やっぱり自分でやる時はしっかり組み立てて、ラインの選手、自分もですけど、お客さんに評価されるのはどうしても僕たちは3着以内だと思うので、そこが大事だというのは前でも後ろでも変わりなく考えています。前の時もそうだし、後ろの時もこのラインで、3人の時ならどうやったらワンツースリーを決めるか、あとは確率の問題になってくるので、全員で決まる確率なのか、2人で入るのか、もしくは1人しか入れないのか、やはり車券に貢献できないと評価されないと思うので。そこにさらに内容をつけていかないといけないと思うので、そこが難しいところですね」
-GIでの成績がこれだけ安定している中、これからの目標は?
「安定しているのは今の南関の層の厚さがあるからこそなんですけど、うーん、GIだからっていうのはないですね。GI戦線で活躍したいというのはありますけど、それには普段のレースを頑張らないとつながらないので、FIなくしてその先があるわけではないと思いますし。皆さんは、今年タイトルを獲ります!みたいな答えを期待しているのかもしれないけど(笑)、自分はまだそこのレベルにはないなって正直思っています。獲っている人たちを見ると、獲るべくして獲っていると思うし、たまたま運が向いて自分が獲れることがあるかもしれないけど、それは運だと思いますね」
-では、着実に力をさらにつけていったその先に見えてくる感じですか?
「そうですね、それはあると思います」
-最後にファンにメッセージをどうぞ。
「これからも応援よろしくお願いします!!」
PROFILE
和田健太郎 (わだ・けんたろう)
1981年5月27日生まれ。慎重172cm 体重78kg
Q最近の癒しの時間は?
「いやー、僕はそういう取材対象としては一番ダメな取材対象ですよ(笑)、インスタ映えするようなこともしないしー、本当に家でゴロゴロするっていうありきたりな過ごし方をしています」
-家でリフレッシュが一番ということですね。
「ポジティブに言ってもらえるなら(笑)。昔、山口幸二さんがテレビで言っていたのがすごく印象に残っていて、『サーフィンとか趣味を持っている人もいるけど、選手って普段身体を使うから、それでケガしたらレースや練習に影響しちゃうし、歩くと疲れちゃうから、そういうことを考えると何もできないんだよね』って言っていたのが、すごくわかるなって思うんですよね。そうなるとじっとしているってなるんですよね。
いいように捉えてくれれば、競輪が全ての基本の中にあるっていう感じですね」