杉沢毛伊子 静岡 104期 L級1班
信じる先に道は開ける
ガールズケイリンでは、今年も短期登録の外国人選手が各地で暴れまくっている。5月19日からの奈良は、マチルド・グロ(フランス)、ナターシャ・ハンセン(ニュージーランド)の2名が参戦。両者とも切れ味鋭いまくりで、ファンを魅了。対する日本勢の中に、杉沢の名前があった。
ガールズ2期生としてデビューしたのは、2013年5月。果敢に風を切るスタイルで、デビュー節の京王閣・一般戦で初白星。その年の12月には、松山で初優勝を果たす。15年5月に2度目のV。順風満帆に思われた競輪人生だったが、度重なる落車に苦しめられることになる。「調子が落ちたのは確かに落車がきっかけですね。もともと悪かった右膝を痛めたのもキツかったけど、頭を打つことが多くて…」。頭をバンクに叩きつけられるたび、積み重ねてきたものが崩れる…の繰り返し。練習でつかんだ感覚も、何もかもが吹っ飛んで、一からまたやり直しになってしまう。つまりは、しっかりした土台がなかった。体以上に、メンタルがむしばまれた。
トレーニング方法はいろいろ試した。そして、合わないと分かればすぐにきっぱり捨てた。試行錯誤の中で、半年前に自ら求めてトレーニングコーチを付けた。「コーチには基礎の部分から教えてもらった。腕立て伏せひとつでも、力の伝え方が違うと。自転車にも力が伝わっていないと。でも、教えを受けて変わったのは確か」。競輪選手は個人事業主。ともすれば練習も自己満足になりがちだが、他人にしっかり見てもらうことで、杉沢は殻を破った。「バンクでMAX57キロしか出なかったのが、コーチが付いてからすぐに5、6キロスピードが上がった。メンタル面も、100%の準備ができないと不安だった。それが、80%しかできなかったら、80%のすべて出せばいいと割り切れるようになった。あとは練習の感じを出せれば」と、光は見えている。
奈良での3日間は5、6、5着に終わった。杉沢は言う。「私、金銭欲も物欲もないんです。周りには、もっとそういうのを出したら(結果が)違うとも言われます。外並走した時に、内の選手を少し押し込んでおけば…とかね。でも、ガールズでそれはダメでしょう。甘いかも知れないけど、やっぱりクリーンに勝負したい。自分の思う通りに体が動いて、力を出し切れればそれでいい」。ストイックが過ぎるといえば、そうかもしれない。それでも"あの頃"の自分に戻る、いや、それを超えるために、努力を惜しむことはない。「自信を失って3年、底まで経験したのも勉強だと思っている。選手7年目で、やっと土台ができた。練習で今やっていることがレースで出たら、どうなるんだろうって自分でもワクワクしている。必ず進化した姿を見せます」。"ハマちゃんスマイル"が輝く日を、みんなが待っている。
奈良競輪場より