原田隆 大阪 77期
復活劇の始まり
7月29日の大垣FII予選8Rで通算400勝を達成した。布居大地を追走から自力にスイッチしてのまくり勝利。自力の決まり手による区切りの勝利だけに満面の笑みで喜びを表した。
「必死。行けるかどうか半信半疑だった。だからめちゃくちゃうれしいよ。思い出に残る400勝の勝ち方になった」。
7月の高知での優勝など好調な近況。そんな原田を劇的に変えたのが2年前の大病である。
かつてはS級でバリバリの先行選手として活躍していたが、A級で平穏な選手生活を送っていた時に襲われたのが悪性のリンパ腫だった。「これでもう俺は死ぬのかな」と、どん底に突き落とされた。
現役復帰どころか、命にかかわる病気。そこで救いの手を差し伸べてくれたのが同じ病気を患って昨年死去した近畿の大先輩・斉藤哲也さん(兵庫・45期)。
専門の医師を紹介してもらい、自身も強い気持ちを持って病魔に打ち勝つことができた。
「斉藤さんのおかげで競輪に戻れた。くじけそうになったけど、頑張れ、頑張れと励ましてくれた。そんな斉藤さんの分もこれからは頑張らないといけないんです」。
病気が人生観を変えたといっていいだろう。以前は自分中心の生き方だったが「今は違う」とはっきり言う。「誤解されたら困るけど、競輪で勝った負けたなんて小さいことだと感じるようになった。自分の仕事のことしか考えてなかったのに、最近は人の話をよく聞くようになった。協調性でしょうね。そうしたらレースが楽しくなったんです」。
さらに2期連続で受け入れた弟子たちの存在も大きい。酒井拳蔵、谷口友真、堀僚介の109期に浜田翔平、山本隼人の111期。「強くてしっかりしている子たちといると、師匠としてゆっくりはしていられない。今は練習内容ががらりと変わったし、効率がよくなりましたね」。若者からの刺激も今の好成績につながった。
現在の目標はさらなる強化。来期のS級に向けて準備に余念はない。
「病気の経験を無駄にはできない。とにかくできることを一戦、一戦やっていく。そして斉藤さんのために戦い続ける」。気持ちも身体も蘇った男の復活劇は始まったばかりだ。
大垣競輪場より