岩本俊介 千葉 S級1班
まだまだ伸びしろ十分
開眼、と言ったら失礼か。パンチ力のある自力を武器に、ずっとS級で戦い続けてきた岩本だが、昨年後半から急激に成績がアップ。12月の別府記念準V、今年初戦の平FIで完全V、続く大宮記念は3連勝で勝ち上がり、決勝は5着だったが大いに見せ場を作った。35歳の躍進の秘密を探ってみた。
本人が挙げたのは2点。1つめは「昨年の春から中村浩士さんの道場で練習するようになった」。GIの常連になった2011年、武雄G2「共同通信社杯春一番」で決勝に進んだ。その年には松戸で代替開催された取手記念も勝った。だが、そこから約8年半以上、GI決勝も、記念優勝もない。「行き詰まっていましたね。環境を変えてみようと思った」。選手になった以上は、頂点を目指さなければと奮い立ち、厳しいトレーニングで知られる先輩の門を叩いた。
そして2つめ。「奥さんに食事を変えてもらった」。夫人はアスリートフードマイスターの資格を取って、栄養面から岩本をサポート。「むしろ奥さんが積極的にいろいろやり出した感じ。マッサージもしてくれるし。だったら自分も本気でやらないと。後悔したくないので」。93キロあった体重は、すっきり絞れて現在87キロ。それでいてパワーアップしているのだから、効果は言うまでもない。
やる気スイッチが入った岩本だが、期待されて臨んだ2月の高松記念はまさかの二次予選敗退。それでも力を振り絞って、最終日に1着。「調子が悪いのかなと思っていたが、最終日はすごく力が出た。悲観する内容ではなかった」。いい流れを切らさず臨んだ豊橋G1「全日本選抜」。初日の一次予選、宮本隼の先行に対し、7番手からまくって快勝。通算300勝を達成した。「もっと大きいレースで決められればよかったけど、あきらめずに踏めたのはよかった」と笑顔。さらに翌日の二次予選Aも松岡健に閉じ込められて苦戦したが、最後は豪快にまくって301勝目を挙げた。「気持ちで負けないで、ヨコもできるところを見せないと」と、攻め幅の広さもアピールしてみせた。
準決勝は突破できなかったが、番手を回った郡司浩平の決勝進出に貢献してシリーズを盛り上げた。「脚力が付いて、先行するのが苦にならなくなったのが大きい。やりたいレースができて、勝ち上がりでしっかり戦えたし、次につながる」。目指す"次"は静岡「日本選手権」か。「今はようやく自分の体が環境に追いついてきた感じ。伸びしろが出てきたのかな。育ってます」と笑う。今年一年、どこまで突き抜けてくれるか楽しみだ。
豊橋競輪場より