今岡徹二 広島 S級2班
〝徹〟底先行の期待株
中国地区は自力型の層が厚くなって、勢いが増している。今岡もまた、次代のエース候補として期待がかかる1人。その戦いぶりをひと言で表すなら、「一直線」。円いバンクをまっすぐに駆けるような、気持ちのいい先行が持ち味だ。
広島市立工高から自転車競技を始めた。中国地区の「二枚看板」、松浦悠士(広島)は高校の先輩、清水裕友(山口)は同学年。今岡もインターハイの出場経験があるが、全国的には無名だった。日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)では14勝を挙げて在校11位だったが、意外にも先行での決まり手は0。デビュー後は地脚を生かしての逃げ切りが多かったが、その頃は「先行にこだわっているわけではない。行けるところで仕掛けているだけ」と、スタイルとは裏腹に、先行へのこだわりは薄かった。
S級には今年1月に定期昇級。直近4か月の34走でホーム25本、バック24本。A級時代も総じて20本近いバック本数を誇っていたが、S級でも先行勝負を貫いている。やっていることは同じだが、今は気持ちが違う。2月の静岡記念、初日一次予選。阿竹智史(徳島)―三ツ石康洋(徳島)を連れて、打鐘で叩いてペース駆けに持ち込んだが、7番手の伊藤信(大阪)に強烈な巻き返しを食らって5着に沈んだのがきっかけだった。「あれで意識が変わった。ペースに入れたりせず、最終ホームでスピードを乗せきって、あとはどこまで粘れるかという駆け方をしようと」。翌日の二次予選からさっそく実行すると、宿口陽一(埼玉)のまくり追い込みに屈したものの2着に逃げ粘り、手応えを得た。
3月の玉野F1ではS級2度目の決勝入り。3日間、がむしゃらに逃げて見せ場を作った。注目度が増す中で迎えた4月の高知記念は、初日1Rの1番車という「期待枠」に入れられた。ここでも先行に迷いはなかった。打鐘過ぎの3コーナーから叩いて出たが、500バンクということもあり、完全に踏み上げたのは最終2コーナーあたり。中団以降がもつれたこともあってラインで上位を独占できたが、マークの池田良(広島)、さらに3番手の藤田昌宏(岡山)にもかわされ3着。「最後まで踏めていなかった。あれで抜かれるんだから、練習不足ですね」と悔しがった。二次予選は鈴木謙太郎(茨城)の奇襲駆けに遭って主導権を握れず敗退したが、残り2日間はホーム、バックを譲らず、しっかりアピールして締めた。
先行を恐れる気持ちは、元からなかった。だが、そこにこだわる意識が高まったことで、芯ができた。今岡の走りは、期待を裏切らない。信じる道を貫いて、いずれ自分も「看板」になる。
高知競輪場より