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森山智徳 熊本 S級2班
10年ひと区切り、上を目指して着々と
2010年にデビューし、7月には選手生活10年目を迎える。高校からカヌーを始め、鹿屋体育大学に進学後、大学院まで競技を続けた。カヌーと言えば上半身を主に使うスポ―ツで競輪とは真逆だ。「まったく知らない世界に飛び込んだし、まず慣れることが第一でした。3年でS級に上がれればいいぐらいに考えていた」と言うものの、試行錯誤を繰り返し2年半でS級へ上がるなど、元々の運動神経を生かした適応力でハンデを跳ね除けた。
「自分は10年ぐらい時間をかけてやらなければ、次のステップに進めないんです。カヌーの時もそうで、15歳から10年やってようやく乗り方が分かった。自転車もそう。最初はギア、セッティング含め苦労したし、10年かかりました」
熊本の同僚たちからは〝ブランカ〟との愛称で呼ばれている。「ストリートファイター」という対戦型格闘ゲームに登場するアマゾンの奥地で育った野生児というキャラクターに起因している。パワフルにバンクを駆け巡る野性味ある身のこなしは、まさに愛称とピッタリ。出色のダッシュには力強さがみなぎっており、バンクで一緒に練習する選手たちからは同県の先輩、中川誠一郎に次ぐダッシュ力の持ち主と評価するほどだ。
昨年11月の「競輪祭」(小倉)で補充を走り、GIの舞台を経験したことも大きなモチベーションとなっている。「初めての経験ですべての面で圧倒された。たとえ、一般戦でも自分の手に負えるレベルじゃないと。これは、もっと走りたいと逆に気持ちが入った」
競輪祭はわずか1走しか雰囲気を味わえなかったが、そんな中でも攻撃的な実験を施したという。「せっかくの競輪祭だし、普段使わないシューズをレースで使いました。イチかバチかで。そうしたらすごく噛み合った。あの辺りから1着が取れだしたんです」
ただ、いかんせんレースでは組み立てが甘く、道中の想定外の動きに対応できず力を余したまま終わることも、しばしば。先輩の合志正臣は「練習での強さを競走で出せていない。それは初手の組み立て、展開や作戦を詰めないから。脚があるのにもったいない」と森山の秘めたる力を認めつつも課題を指摘。本人も強く自覚している。
とはいえ、今期は競走得点を大きく上げておりS級1班の点数も見えてきた。「初のチャンスなので狙っています。いずれはGIも出られるように。その前に、まず記念の準決ですね(笑い)。二次予選すら突破したことがない。壁を少しずつ破っていきたい」
10年目のステップアップを実践し、やれる事から着実にこなしていく。


熊本競輪場より