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小原周祐 高知 99期
忘れかけていた勝利の感覚
 今年5月の玉野競輪場で滝本泰行(岡山、107期)の2角まくりに乗り、後方からまくり上げてくる菊地岳仁(長野、117期)をブロックして優勝をもぎ取った。「本当にいつ以来か覚えていなかったのですが、うれしかったです」と白い歯をみせた。「その後、いつ以来か調べてくれた人がいて、6年7か月ぶりの優勝だったのです。言われてみたら(2013年8月の)高知で優勝したこと、すぐ後の(9月)高松で優勝したことは思い出したのですが、その年の10月に富山で優勝していたことは完全に忘れていました(苦笑い)。もう、優勝とは縁がないのかなと思っていたので、忘れかけていた感覚を思い出しました」とも。
 本人によると「要は気持ちの問題、気が緩み過ぎたのでしょう」で、この6年間は低迷を極めた。2016年後期はS級を体験するも振るわず、「1年半前(2018年後期)はチャレンジに陥落してしまいました。自分の中でも恥ずかしいと思いましたね。若い選手と対戦して、まったく敵わない自分がいるわけでしたから」と、唇を噛み締める。しかし、このチャレンジ時代があったからこそ、現在の躍進につながっているのは事実だ。「この(チャンレジの)期に(2018年9月奈良準決で)宮本隼輔(山口、113期)君の番手を回る機会があったのですが、打鐘から仕掛ける宮本君に、あおりも何もなかったのに簡単に離れてしまった。この時、真剣に〝やばい〟と思って、それから本腰を入れて練習するようになった」と言う。
 とはいえ、結果がすぐ出るわけでもなく「嫌になり、自暴自棄になった時期もありました。練習しても結果が出ないというのは本当に苦しかったです」と振り返る。それでも、昨年の後半から、ぼちぼち勝てるようになり、今期は5月25日現在で、33戦して1着10回、2着6回、の成績で5年ぶりのS級復帰もみえてきた。「結果が出なかった時に、セッティングもいろいろ試してみました。その時はダメだったけど、逆にそれが今、生きています。こうしたらダメ、こうしたら大丈夫みたいな感じで」と語る表情に自信も垣間見せる。玉野の後の別府競輪でも吉田智哉(愛媛、111期)の先行に乗り2度目の優勝を勝ち取り上昇気流に乗ってきた。「別府の準決では脇本勇希(福井、115期)君と対戦したけど、彼は強かった。彼の3番手に付いていた梶山(裕次郎、福岡、87期)さんが離れていたので、3着に届いたけど、やはり、上(S級)で戦えるまでのレベルに達していない」と、自力で勝ち切れない現状に不満は残るようだが、もっと強くなりたいという気持ちを取り戻したことが、一番の収穫なのではないか。


別府競輪場より